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第六十七話

「それでは実際にマジックバックを作ってみましょう」

ハバロフは備え付けの棚からバックを無造作に引っ張り出してきて魔法陣の中央に置く。

「ほとんどは魔法陣が仕事をしてくれるのですが空間拡張と時間停止の魔法は術者が付与しなければいけません。これがマジックバックが世の中に普及しない一番の理由ですね」

カルマイン王国はマジックバックの生産で莫大な利益を出しているがその製造数はあまり多くない。

作れるのがハバロフのみな為、年に決まった数しか生産しないためだ。

そしてさりげなく引っ張り出したバックも高級品である。

皮には蛇系の上級魔物であるダークスネークという闇属性の大蛇の物を利用している。

何にでも付与事態は出来るのだが高級な材質の物を使った方が魔法を定着しやすくなるのである。

「基本的なことは亜空間を作った時とかわりません。莫大な空間と時間を停止する。それだけを考えてください」

ハバロフは簡単なように言っているがこれが実に難しい。

莫大な空間はまぁ、何とかなるだろう。

しかし、時間を停止するというのは本来ならありえない現象だ。

どのようにイメージすればいいのかリーシアが考えている間もハバロフは動きを止めることなく作業を続けている。

魔法陣に流された魔力がバックに収束していき光を発した。

どうやらマジックバックが完成したようだ。

「最初は失敗するかもしれませんが予算はたっぷりあります。実際に挑戦してみましょう」

今回のリーシアの修練には莫大な予算が下りている。

目的はハバロフの貴重な技術を継承すること。

リーシアはエルシュタイン公爵家を継ぐ立場であるがマジックバックを生産することが出来るようになれば間接的にせよ、王国にも税として大量のお金が流れることとなる。

「やってみます」

リーシアは適当に棚からバックを手に取り魔法陣の中央に置く。

亜空間と時間を停止するようにイメージしながら魔力を流す。

しばらく待っていると魔法陣に流した魔力が収束して光を発した。

ハバロフは難しい顔をしている。

「どうやら失敗したようですね。空間拡張はうまくいったようですが時間停止の方がうまくいかなかったようですね」

「すみません」

「いえいえ、空間拡張だけでも売れますから。それに最初から成功されては私の立場がありませんよ」

ハバロフも数えきれないほどの失敗を繰り返し習得した過去を持つ。

空間拡張だけでも成功させたリーシアは凄い方である。

この後、何度もチャレンジしてリーシアはマジックバックの生産法を習得したのである。

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