第六十四話
リーシアとハバロフの修行は順調に進んでいた。
「本日は私の亜空間の中に入ってもらおうと思います」
「よろしくお願いします」
ハバロフが魔法を発動させると黒い穴が現れた。
「これが亜空間の入り口です。入ってみてください」
おっかなびっくり黒い穴の中に入ってみるとそこは本の山だった。
「これは・・・」
「びっくりいたしましたかな?私は本を集めるのが趣味でしてね。亜空間を利用して蔵書を保管しているのです」
リーシアも本を読むのは好きだがここまでの蔵書となると軽く城の1個や2個建ってしまうだろう。
それぐらい物凄い数の本が貯蔵されていたのだ。
「私にも可能なのでしょうか?」
「それはこれからのリーシア殿次第ですね。最初は小さい物しか作れないでしょう。しかし、修練を積めば少しずつ亜空間の大きさは大きくなっていくものです。それに、亜空間は一つしか作れないものではないですしね」
どうやらハバロフはこの亜空間以外にも亜空間を所有しているらしい。
「それでは実際にやってみましょう」
ハバロフの亜空間から出て実際にイメージする。
実物を見た後だけあって黒い穴は簡単に現れた。
リーシアは自身で作り出した亜空間へと入ってみる。
ハバロフもそれに続き亜空間の中に入ってくる。
「広さはあまりありませんが成功でしょう。初めてでこれだけ出来れば上出来です」
しかし、リーシアが作り出した亜空間には致命的なミスがあった。
「なんだか息苦しいような」
「あっ~。なるほど。とにかく一度出ましょう」
ハバロフに言われた通り亜空間から脱出する。
「空間はうまく作れたようですが大切なものを忘れましたね」
「大切なものですか?」
「生き物が生きていくうえで空気は大切です。空気の調節がうまくいっていなかったのでしょう」
確かにそれは盲点だった。
空間を作ることだけに集中した結果、生物が生存出来る環境ではなかったのだ。
今は、短時間だったから穴を通して空気が入り込んでいたために大事にいたらなかったが閉ざされた空間で空気がなかったらと思うとゾッとする話だ。
「もう一度やってみます」
「えぇ、何度もやって失敗を繰り返しながら成長するものです」
ハバロフに後押しされもう一度、亜空間を作り出す。
亜空間の黒い穴に再び入る。
広さは先ほどと同じぐらいだが今度はどれだけいても息苦しさを覚えることはなかった。
「今度こそ成功ですね」
「広さについても何度も繰り返すことで広がっていくことでしょう」
リーシアはこの後も亜空間を何度も作り熟練度をあげることに集中したのであった。




