第六十三話
リーシアの指導係として選ばれたのはハバロフク・ニード・カルツェンという老齢の宮廷魔術師であった。
かつては筆頭宮廷魔術師として活躍していたが後進にその座を譲り今では悠々自適な相談役として過ごしていたがその腕は今でも健在であり、なおかつ珍しい時魔法と空間魔法の使い手であった。
国王であるミルハンスとしては魔法の全適正のあるリーシアにハバロフクの元で後継者として育ってほしいという願いがあった。
空間魔法は何が出来るのかと言えば一度行ったことがあるという条件はあるが転移魔法で瞬時に移動できたり亜空間を作り時魔法で時間を止めそこに物を収納出来たりと出来たら便利なものなのである。
ちなみにマジックバックの作成も時魔法と空間魔法を利用することで可能となっている。
リーシアとしてもマジックバックの作成を目標としていたのでありがたい話だった。
ちなみに他のパーティーメンバーもそれぞれ師匠をつけられ今頃はしごかれている頃だろう。
「リーシア殿。時魔法と空間魔法で最も大事なものはなんだかわかりますか?」
「他の魔法と同じようにイメージなのではないですか?」
「その通りですがそのイメージを固めるのが難しいのです」
確かに空間や時に干渉するといってもどうしたらいいのかわからないのが現状だ。
「私も正直に申し上げれば最初はどうしたらいいのかわかりませんでした。師の技を見てもどのように発動しているのかさっぱりでした」
宮廷魔術師随一の経験を持つハバロフクですら最初はうまくいかなかったのだ。
独学で身につけようと足掻いていたリーシアは褒められることはあっても非難されるようなものではない。
「リーシア殿。よく見ていてください」
そういってハバロフクは一瞬で姿が掻き消え少し離れた場所に現れていた。
「今のは移動魔法ですか?」
「そうです。小規模なものですが基礎となる部分でもあります。コツは移動したい場所を強くイメージして魔力を込めることです」
リーシアは言われた通りに少し離れた場所を強く思い描き魔力を流していく。
すると浮遊感の後、イメージ通りの場所に移動していた。
ただし、体勢が崩れて腰から落ちるという失敗をしたがハバロフクは予期していたのか老齢差を感じさせぬ動きで抱きかかえてくれていた。
「ははは。優秀とは聞いていましたが一発で成功させますか。姿勢を崩したのはイメージが甘かったからですが回数をこなせば使いこなせるでしょう」
リーシアはハバロフ監修の元、移動魔法を繰り返し練習したのだった。