第五十四話
ドロップ品の買い取りも済ませ無事に屋敷に戻ってきた。
相変わらず冒険者組合の監視は続いているが2つ目のダンジョン攻略を済ませ順調と言ってよいだろう。
「お帰りなさいませ。お嬢様。代官様がお待ちです」
「代官がですか。わかりました。すぐに行きます」
使用人の後に続き応接室に入ると代官が立ち上がり頭を下げてくる。
「何か問題でも起きましたか?」
「人攫いの件でお耳に入れたい情報があります」
代官には全ては無理でも攫われた人々を出来る限り追跡調査するように指示を出していた。
「何でしょうか」
「調査の結果、多くの子供達が近隣の村に買い取られていることがわかりました」
「近隣の村ですか?それは不自然ですね」
多少の子供が買い取られたならそれはまだわかる。
しかし、多くのとなると不自然極まりない。
違法奴隷と言えどもその取引価格は安くはない。
普通の村がそれだけの代金を支払うのは難しい。
それに急に子供が増えれば買い取った以外の村人も不自然に思うはずだ。
だというのに調査するまで発覚しなかったということは何かがあるのだ。
「調査の結果ですが、村とは言っていますが山賊に近いようです」
普通の山賊は山に隠れ家を持ち旅人から金品を巻き上げるのが普通だ。
しかし、村に擬態しているということはかなり頭がまわるようだ。
山賊行為が発覚しずらい上に元々いた村人を働かせることで食料などの安定供給も期待できる。
「これはまためんどくさいことになりましたね。冒険者組合の方にこの話は?」
「まだですがお嬢様の許可がいただけ次第依頼を出そうと考えていました」
以前の規模に衛兵が回復していたなら良かったのだが残念ながら人手不足の状態だ。
お金はかかるがこうなると冒険者の応援が必要だ。
「囚われている村人と買い取られた人々の救出が第一優先です。その手の得意な冒険者を中心に集めてください」
「心得ました」
荒事を得意とする冒険者なら誰でも良いというわけではなかった。
今回は人質を取られている形に近い。
こうなってくると隠密に特化した冒険者が必要になってくる。
「それと少数の手練れと馬車の手配をお願いします」
「それは構いませんが直接乗り込むつもりですか?」
「えぇ。私が囮となれば作戦の成功率が上がるでしょう」
褒められたやり方ではないのかもしれないが山賊達が食いつきそうな獲物を用意しそちらに意識を集中させる。
そうすることで忍び込む冒険者達を掩護するつもりなのだ。
代官は難色を示したものの強引に納得させ作戦の準備がはじめられた。




