第五十三話
迷宮主の間に侵入するとそこはもぬけの殻だった。
「あれ?主がいない・・・」
「あのやたら強いトレントって・・・」
「あれが主だったんだね」
「まぁ、何にせよ、宝箱の中身を確認したら戻ろう」
アリスが宝箱を開けると回復薬と攻略を証明するメダルが入っていた。
これで夕闇が攻略したダンジョンは2つ目となる。
帰還用の魔法陣で地上に戻り冒険者組合を目指す。
「それにしてもモンスターパレードかぁ。私達って運悪いのかな?」
「やめてよ。考えないようにしてたのに」
1つ目の試練の洞窟では召喚型のボスに遭遇した。
2つ目のダンジョンであるはじまりの森ではモンスターパレード。
確かにこの2つにぶち当たるとは運が悪いように見える。
「まぁまぁ、無事に切り抜けられたんだし気にしない気にしない」
本当に運のない冒険者は魔物に倒されるものだ。
それに別の見方をすれば実力を大きく伸ばすという意味では恵まれている。
「あ、ちょっと待ってて」
そう言ってアリスは露店の串焼き屋に突撃していく。
屋敷に戻れば料理人が手の込んだ料理を出してくれるがそれまで待てなかったらしい。
アリスは人数分の串焼きを持って戻ってきた。
「もう。アリスったら行儀が悪いわよ」
とかいいつつ全員串焼きを受け取りかぶりつく。
「攻略中はまともな物食べられないからね」
攻略用の食事は効率をとことん突き詰めた物だ。
一般的に硬く焼いたパンに野菜を細かく刻んだ粉を入れたスープ。
そして塩漬けされた干し肉。
栄養を最低限取れる物を食べるのが普通だ。
マジックバックを持っているリーシア達も冒険者ご用達の3点セットを利用している。
「う~ん。食事に関しては少し考えてみるわ」
「本当?」
「今回の攻略のドロップ品は多かったけどまだ余裕があるからね」
実は上級の冒険者程、食事に気を使っている。
マジックバックを確保できているのもあるが食事におけるストレス緩和は士気に大いに関係するからだ。
長い迷宮攻略になればなるほどその効果は実証されている。
そういうわけで夕闇の食事事情は改善されることとなった。
話をしている間に冒険者組合に到着した。
「着いたわね」
「じゃぁ、ドロップを売り払って軽く打ち上げして帰りましょう」
ラーシャが買い取りの為に並び他の面々は併設されている酒場に移動する。
年齢的には成人扱いされるのだが果実ジュースを注文する。
女性だけのパーティーなので絡まれやすく酒を飲んでいたがために不覚をとるのだけはごめんであった。




