第五十一話
迷宮の主は基本的に最奥から動かない。
しかし、最奥から動くパターンというのが存在していた。
その現象を冒険者達はモンスターパレードと呼んでいる。
最奥から動き出した迷宮主は迷宮の魔物達を従え冒険者に襲いかかる。
原因は不明とされながらも一説では攻略されなかった迷宮で起こりやすいと言われていた。
「ねぇ。さっきからなんだかおかしくない?」
「えぇ。バラバラに動くはずの魔物がここまで連係してくるなんて」
リーシア達はそれと知らずにモンスターパレードに巻き込まれていた。
「これは一度引き返した方がいいかもね」
攻略できるならそれに越したことはないが無理をしてまでする必要性を感じていなかった。
しかし、その判断は少し遅すぎた。
それに最初に気づいたのは斥候役であるアリスだった。
「ちょっと待って。囲まれてる」
退路には大量のシャドウウルフの群れ。
左右にはコボルトが展開している。
正面には異常ともとれるトレントがうごめいている。
木の上にはポイズンスネークが隙を伺うようにこちらを見ている。
「はぁ・・・。やるしかないわ。覚悟はいい?」
「勿論」
リーシアが背後のシャドウウルフを迎え撃ちラーシャとアリスが左右のコボルトに対峙する。
ミリスは距離を開けてトレントに魔法を放つ。
時折、ポイズンスネークが襲い掛かってくるが対処は慣れたもので躱してそれぞれ排除する。
かなりきつい展開ではあるがまだ対処できる状況だった。
しかし、それも元凶であるエルダートレントが現れるまでだった。
エルダートレントは名前の通り長い年月を過ごしたトレントが変化したものだ。
トレントとの最大の違いは魔法を操ってくること。
ミリスが対抗して魔法を相殺するが分が悪く追い詰められる。
そこにシャドウウルフの群れを倒し終えたリーシアが駆けつけた。
リーシアとミリスが協力して魔法を相殺するがこのままでは先に魔力切れに追い込まれる危険性もある。
「ミリス。悪いけど少し持ちこたえて」
「何か考えがあるのね?」
リーシアは集中してある魔法を唱え始める。
実際に使ったことはないが今はこの魔法に頼るしかなかった。
「火の精霊よ。我が声に応えよ。大炎を燃え上がれ!フレイム」
リーシアの魔法は発動されエルダートレントを火柱が襲う。
ダンジョンの中とは言え森の広がるこの場では火災に繋がるかもしれないが四の五の言っていられる場合ではなかった。
火柱が消えると体中が焼け焦げたエルダートレントが残され霧となって消えていった。