第五十話
組合長の元を辞したリーシアは冒険者組合に併設された酒場でくつろいでいた皆と合流した。
「リーシア。話って何だったの?」
「ここではちょっと。お屋敷に戻ったら話しますね」
「ふ~ん。まぁ、いいわ」
リーシア達は会計を済ませ冒険者組合を後にする。
屋敷に戻る道すがらアリスが異変に気付く。
「何か見られてる?また、ストーカー?」
「気づかないふりをしてください」
「リーシアがそういうならいいけど」
屋敷に戻ると不快な視線はなくなった。
「それで、どういうわけ?」
「昼間、私達をストーカーしていた男達がいたでしょ?」
「そんなのもいたわね」
「冒険者組合に私達に襲われたって虚偽申告をしたらしくてね」
「なにそれ!信じられない」
「まぁまぁ、落ち着いて」
「組合長には事情を説明したけど処罰は難しいそうよ」
「ふ~ん。それで?」
「相手と私達に組合から監視がつくことになったわ。アリスが気付いたのは監視員ね」
「はぁ・・・。なんだか面倒なことになったわね」
「大丈夫じゃないかしら。本気で疑ってるなら何も言わずに監視をつければいいだけだもの」
「信頼されてるのかされてないのか」
「組合としても何もしないわけにはいかないってだけでしょ」
「何はともあれすることは変わらないわ。今日はもう休みましょう」
「それもそうね」
リーシア達は屋敷の料理人が作ってくれた料理を食べて明日に向けて休むことにした。
翌日、リーシア達ははじまりの森に来ていた。
今回、目指すのは下層である。
下層からはトレントという木の魔物が現れる。
擬態するのがうまく知らず知らずのうちに攻撃を受けて壊滅するパーティーが出るなど悪名高い魔物だ。
ドロップ品としては高品質の木を落とすのだが普通の冒険者では持ち運ぶことが難しくあまり出回っていない。
しかし、リーシア達はマジックバックを持っているので例外だ。
アリスが探知し誘い出すとそこにリーシアとミリスが魔法を容赦なく放ち効率よくトレントを狩ってはドロップ品をマジックバックに放り込んでいく。
ラーシャは他の魔物が来ないか警戒している。
時折、他の魔物の襲撃を受けたりするが上手く連携して捌いていく。
今回の目的は迷宮主を討伐することだが戦いを避けるようなことはしない。
迷宮主の間の前には必ず安全地帯があることを知ったからだ。
そこで十分な休息をとってから迷宮主に挑めばいいと考えていた。
しかし、そんなリーシア達に脅威が迫っているなどこの時はまだ知る由もなかった。




