第四十九話
ミリスの元に離脱したと思われたリーシア達が集まってくる。
「はぁ。何と言うか拍子抜けね」
「下衆な上に弱いとは救いようがありませんね」
「それでどうするの?」
「冒険者証を回収して放置しましょう」
「えぇ~?こんな奴らの懐なんて探りたくないよ」
「私がやるわ」
リーシアは何の躊躇もなく男達の懐を探り冒険者証を回収する。
死なれても困る為、最低限の治療も施す。
「これに懲りて悪さは辞めることね」
そう言い残してリーシア達は移動を開始した。
その後も中層で狩りを続け夜にはダンジョンを脱出し冒険者組合に顔を出した。
魔石やドロップ品を買い取って貰うために列に並んでいると職員に呼び出された。
「すみません。組合長が呼んでいるのですがよろしいでしょうか」
「構いませんよ」
全員でいく必要はないだろうとリーシアが代表して職員の後に続く。
「組合長。お連れしました」
「あぁ。ありがとう。下がってくれ」
職員はお辞儀して退出していった。
「狩りで疲れてるだろうに呼び出してすまんな」
「いえ、それでお話とは何でしょうか」
「ダンジョンでお前さん達に襲われたって奴らがいてな」
組合長に言われてリーシアも思い出した。
「ダンジョンでストーカーされて襲われそうだったので返り討ちにした人達のことですね」
そう言って冒険者証を取り出す。
「そういうことか。訴えがあったから聞いたんだがお前さん達が襲うメリットなんてないしな」
組合での夕闇の評判は高い。
塩漬け状態の依頼を積極的に受けてくれるので大変助かっているのである。
「この場合どうなるのでしょうか」
「ダンジョン内のことは扱いが難しい。当人同士の証言だけだしな。悪いが処罰はできん」
「やはりそうなりますよね」
「とはいえ、組合としても何もしないわけにはいかない。鬱陶しいかもしれんがしばらく双方に監視をつけさせてもらう」
「わかりました」
組合も綺麗ごとだけでまわっているわけではない。
裏の仕事を請け負う者達もいる。
極秘裏に対象を監視し素行調査を受け持つ者達も存在していた。
本来ならリーシアにばらすのは公平性にかけるかもしれない。
ばらしたのは組合長の善意だった。
そして調査を行う者の安全の為でもあった。
ダンジョン内は別として公爵家側もリーシア達の安全には配慮している。
屋敷を守るように隠密に護衛についている者達がいる。
この話も筒抜けになっていてもおかしくない。
彼等と敵対するようなことがあれば双方にいらぬ被害が出るだけである。
事前に敵意がないことを伝える。
組合長としては苦肉の策でもあった。




