第四十八話
はじまりの森中層。
ここからは難易度が一気に跳ね上がる。
コボルトに加えシャドーウルフという小柄の狼とポイズンスネークという大型の蛇が出てくるのだ。
シャドーウルフは常に集団で行動し小柄で素早い特徴を持つ。
シャドーウルフのドロップである牙や爪は武器に加工が可能だ。
ポイズンスネークは名前の通り牙に毒を持っている。
ポイズンスネークは皮と毒腺が採取できる。
毒など何に使うのかというと加工すると解毒薬になるのだ。
需要はあるのだがお金にすれば微々たる物にしかならず冒険者からは嫌われる傾向にある。
リーシア達は魔物の相手をしつつ小声で相談していた。
その理由はダンジョンに入ってからずっとつけられていたからである。
「まだついてくるよ?」
「狙いは何かしらね」
「わからないけど気味が悪いわね」
「う~ん。気はすすまないけど一芝居してみようかしら」
作戦はいたって単純、魔物を倒しきれずに逃げ出すというものだ。
隙を見せれば何かしらのアクションを起こしてくるのではないかと考えたからだ。
おあつらえ向きにシャドーウルフの群れが襲い掛かってくる。
まず、最初にアリスが逃亡するふりをする。
続いてラーシャとリーシアが別々の方向に逃げる。
残されたミリスがシャドーウルフの群れに囲まれる。
ミリスは魔法を撃ちながらも逃げ出すがシャドーウルフに行く手を阻まれる。
リーシアはいつでも助けられるように魔法をスタンバイしていたが動く必要がなかった。
つけてきた相手が動きミリスとシャドーウルフの間に割って入ったからだ。
「あはは。見捨てられてやんの。抵抗はするなよ?シャドーウルフなんぞに手こずるぐらい弱いんだからよ」
現れたのは30代ぐらいの男数人だった。
「どうする気?」
「見れば見る程上玉だな。他の奴らを捕まえられなかったのは残念だが諦めな」
この発言で男達がなにを考えてつけていたのかがわかった。
リーシア達は美人冒険者パーティーとして有名だ。
しつこく誘われたことも1度や2度じゃない。
大方、ダンジョンで疲れたところを襲いかかろうと狙っていたのだろう。
「ふぅ。残念だけど好みじゃないのよね」
そういってミリスは魔力を一気に開放する。
あたり一面に黒い炎が揺らめいている。
これはミリスが新しく身に着けた嫉妬の炎である。
通常の水では消えず対象にまとわりついて離れない性質を持っている。
男達はあっという間に嫉妬の炎にまとわりつかれ地面をゴロゴロと転がっている。
リーシア達はそれを冷たく眺めていた。