第四十七話
迷宮都市アルスヘルム、冒険者組合組合長ヘンゲスは頭を抱えていた。
発端は衛兵達の穴を埋めるために冒険者に依頼を出したことに由来する。
冒険者達は勤勉に働いた。
その結果、貧民街の孤児の子供達の多くを捕まえるにいたった。
彼等は真っ当に食べていくことが出来ず犯罪行為に手を染めていた。
支援の手は教会をはじめできうる限り差し伸べされているがそれでも救える数には限りがあるのが現状だ。
捕まった子供達はやせ細り満足に食べれていない状況をうかがわせる。
犯罪に手を出せば当然危険なこともあるだろう。
そう考えればここで捕まった子供達はよかったのかもしれない。
裁きの日までであるが最低限の食事も出される。
子供のやったことであるし状況が状況だ。
判定もそこまで厳しいものにはならないだろう。
この日もヘンゲスは夜遅くまで仕事に打ち込んだのだった。
そして、リーシアが来てからはじめての裁きの日がやってきた。
犯罪者達が引きずり出され行政府の前に並べられていく。
「まずは街を守る為の衛兵が犯罪に手を出していたことを謝罪する」
リーシアが頭を下げて謝罪する。
広場に集まった人々は驚きで固まる。
公爵家の人間に頭を下げられてどう反応したらいいのかわからないのだ。
怒りは当然ある。
しかし、リーシアが決断したことで街は変わった。
いなくなった子供達も少数ではあるが戻ってきている。
「貴方方の怒りはもっともなものです。監督すべきであった公爵家に非があります。よって被害にあわれた方々に賠償金として一律金貨1枚を交付いたします。また、犯罪に手を出していた衛兵は資産没収の上鞭打ち100回。後に犯罪奴隷として鉱山での永久労働を命じます」
住民の信頼はこの程度では戻らないだろう。
しかし、これが今出来る精一杯であった。
「次にスラム街の子供達の判決に移ります。彼等は本来庇護されるべき存在です。ですが、犯した罪は償わなければいけません。鞭打ち5回。そのうえで公爵家の指定する施設にて更生していただきます」
施設は適正検査をしたうえで軍の施設をメインに名乗り上げてくれたいくつかの商会など多岐にわたる。
子は国の宝である。
犯罪に手を出す必要もなく手に職をつけさせることで罰とした命裁きであった。
この後も次々と罪人を捌いていく。
住民はいいご領主様が来たとありがたかったのである。
実際に手配をする代官は頭を抱えていた。
先の衛兵達を捕らえる件でも大量のお金を使った。
そして今回でも賠償金として多額のお金を支払わなければならない。
子供達を受け入れてくれる商会などにも手付金が必要だ。
将来的にはプラスになるかもしれないが現状お金が足りなかった。




