第四十六話
リーシア達は新しいダンジョンに挑んでいた。
始まりの森という名の森林型のダンジョンだ。
低層ではゴブリンの代わりにコボルトという犬耳の2足歩行の魔物が現れる。
ゴブリンと違い厄介な所は敵と遭遇すると遠吠えして仲間を集める性質があることだ。
しかし、旨味も十分ある。
ゴブリンが魔石しかドロップしなかったのに対してコボルトは毛を一定の確率で落とす。
この毛は高い値段では売れないが安くて丈夫ということで人気のある商品に化けるのだ。
リーシア達は遠吠えをわざとさせコボルトを引き寄せ乱獲していた。
最近では試練の洞窟をクリアできる冒険者が少なかったことと力のある冒険者は少しでも実入りの良いダンジョンに移動してしまうため貸し切り状態に近い形となり他の冒険者を気にすることなく狩ることが出来た。
以前にも話した通り魔力持った生物を倒せば倒すほどステータスが上がる。
その為、今は少しでも基礎ステータスをあげるべく地道に魔物を倒すことにしたのである。
今回の狩りで一番成長したのはアリスである。
今では気配を殺し忍び寄り確実にコボルトの急所に短剣を突きつけられるようになっていた。
次点でミリスで明らかに魔力の総量があがり魔法の威力を増している。
ラーシャも複数の相手をしているからか体力があがりヘイトコントロールがうまくなった。
リーシアは魔法と剣技のコンビネーションが一段と深みを増している。
全体として確実に成長している夕闇の面々ではあるが一つ悩みを抱えていた。
それは、全面的に公爵家のバックアップを受けていることだ。
実績はあげているがそれは装備がいいことや消耗品を気にせずに使える環境のおかげだと噂する冒険者の話を聞いてしまったのである。
確かに装備のおかげというのは大いにあるだろう。
食料や回復薬なんかも気にせずに使ってきた。
それでも自分達は努力してきた。
女の身で男ばかりの冒険者の世界で戦う上で様々な苦労があったのだ。
筋力ではどうしたって男より劣る。
補うために技術を磨いてきた。
修練もまわりより長時間してきたつもりだ。
それを否定などさせないし認めさせてみせる。
その為には実績作りが必要だ。
ダブついているクエストを積極的にこなし自分達の実力を伸ばすこと。
これを新たな目標として設定してダンジョンに挑み続ける。
目指すのはS級冒険者。
誰もが認める冒険者になること。
道のりはまだまだ遠いけどいつの日にか高みに昇ってみせる。
そう誓いを新たに今日もEランクパーティー夕闇は行く。




