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第四十一話

アリスは大家族の長女である。

まだ幼い弟や妹を抱えている両親を少しでも手助けしたくて冒険者を目指した。

しかし、ラーシャやリーシアと違い小柄な自分では前衛として動くのは難しい。

ミリスやリーシアのような魔法の適正もない。

そんな彼女が少しでも役に立つには斥候としての役割しかなかった。

斥候役の勉強はとにかく難解だった。

地図の読み方から罠の見分け方、解除の仕方。

他の面々が眠っている間も知識を詰め込み実地で腕を磨く日々。

成績は決して良くなかったがそれでも受け入れてくれた仲間の為に必死になって食らいついた。

そして試験ではなく実践のダンジョンで失敗を犯した。

罠を警戒する自分が罠を作動させて仲間たちを危険に晒してしまった。

ミリスもそこから体調が悪い。

全ては自分のせい。

そう思うと気が気でなかった。

リーシアが忙しく動き回っている中、自分にもできることはないか。

そう思ってミリスの部屋を訪ねる。

「どうしたの?アリス」

「どうしたのは私のセリフだよ。あれからずっと部屋に籠りきりだし何かあったんじゃないの?」

これは幼い弟や妹達の面倒を見ていたおかげか隠し事を察する能力に長けていた。

ミリスは自分の心を吐露するように喋りだす。

「はぁ・・・。自分の不甲斐なさに絶望してただけ。心ではわかってるんだけどね。リーシアのあの活躍を見たでしょ。魔法しか能のない私とは違って何でもできる」

「それを言ったら私なんてもっとダメダメでしょ。皆を危険に晒しちゃったし」

「嫉妬しても仕方ないことだとはわかってるのよ。それでもね。綺麗だし公爵家のお嬢様だしまさに完璧。嫉妬してしまうわ」

「私はそれは悪いことじゃないと思うわ。だって嫉妬するってことは悔しいってことでしょ?なら努力してその差を埋めればいい」

大家族の弊害で食べる物はどうしても少なくなるし遊び道具や服なんて満足に買って貰ったこともない。

それでも弟や妹には少しでも喜んで貰おうと内職でお金を貯めたりした。

そうして貯めたお金でほんのわずかに増えた食料を美味しそうに食べる弟や妹を見て喜びを感じていた。

努力は人を裏切らない。

これはアリスの短いながらの人生の中で絶対のルールだ。

「私ももっと努力する。だから一緒に頑張ろう」

「アリス。貴方って子は・・・」

きっと優秀なリーシアの隣にいればずっと嫉妬し続けるだろう。

しかし、それの何が悪いのか。

リーシアに追いつき追い抜く為にもっと力を身につけよう。

ミリスはそう強く思うのだった。

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