第三十九話
リーシア達は何とかゴブリンの群れを討伐ことに成功した。
ドロップ品である魔石を回収して安全地帯を目指す。
安全地帯に戻って休憩を取っていたが明らかにミリスの体調が悪い。
初級ダンジョンである試練の洞窟を早くクリアしたい気持ちもあるが何が起こるかわからないのがダンジョンである。
安全策として一度地上に戻ることにした。
冒険者組合で魔石を売却して屋敷に戻る。
ミリスも見た目は普通に見える。
しかし、付き合いの短いながらもパーティーメンバー全員が違和感を覚えていた。
何と言うか黒いオーラのような物を感じるのだ。
冒険者になる理由は実に様々だ。
リーシアのように自由を求めて貴族がなるパターンもあるしラーシャのように跡継ぎ争いを回避するために冒険者になる者もいる。
では、ミリスはどうだったのかというと他に選択肢がなかったからだった。
ミリスは赤ん坊の頃に教会の前に捨てられていたのだ。
教会は親を探したが見つかることはなくそのまま教会の運営する孤児院にて育てられることとなった。
教会の運営する孤児院は実に様々な理由で多くの子供を受け入れていた。
ミリスも親の愛は知らないがシスターに愛されて育った。
そんなミリスは孤児院の中でも可愛くちょっかいをかける男の子達がいた。
幼い男の子達は少しでもミリスの気を引こうと悪戯したり意地悪をするようになった。
その影響かミリスは男の子のことが嫌いになっていく。
シスター達も気にかけていたが他にも色々と仕事があり常に見守れるわけではなくまた男の子達もシスターに見つからないように動くためミリスの精神に変化が起きていることに気づくことが出来なかった。
教会では子供達の未来を少しでも広げるために10歳になると魔術適正を調べることになっている。
そして、10歳となり魔法の水晶で魔術適正を調べることとなった。
ミリスの適正は闇属性であった。
珍しい属性ではあるが魔法適正があったことによりミリスは他の子供達が遊んでいる間、魔法の練習をすることとなった。
元々あった悪戯や意地悪に加えて嫉妬による嫌がらせが増えていく。
完全に孤立してしまったミリスはそれでも必死に魔法の練習をするしかなかった。
唯一の救いはシスター達が決して見捨てなかったことだった。
そうして15歳となり冒険者になれる歳となったミリスは迷うことなく冒険者学校の門を叩いたのだった。
そしてそこでリーシア達と出会いパーティーを組むこととなるのだった。