第三十五話
公爵家のお城で過ごすこと数日。
いよいよ迷宮都市へと向かう日を迎えた。
お父様が手配した商隊の一団を護衛して向かうのだがその商隊の一団を率いるのはカネゴンだった。
カネゴンはあの後もダイエットを続けていたようで少しほっそりとしている。
「お久しぶりです。カネゴンさん。頑張っていらっしゃるようですね」
「リーシア殿。お会いできて光栄です」
「今回はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
カネゴンの率いる商隊はリーシア以外にも専門の護衛を雇っている。
リーシア達の仕事はその護衛で手に負えない場合の対応だ。
新人の冒険者にはありえないほど好待遇だがチャンスでもある。
有名商会の護衛をやったことがあると言えば他の商隊に雇われる際、好待遇で迎え入れられる可能性が高い。
そんなわけでリーシア達はカネゴンと同じ馬車で揺られている。
道中はずっと会話をしているがカネゴンのリーシア熱はまだ健在のようだった。
そしていくつかの街を通り過ぎ迷宮都市へとたどり着いた。
ここでカネゴン達とはお別れだ。
カネゴンは別れ際に一枚のプレートを渡してくれる。
何でもこのプレートを見せれば付き合いのある商会で割引してもらえるとのことだ。
これから色々な物が必要になった際、重宝する物だった。
迷宮都市には公爵家の保有する屋敷がある。
以前はイーリッヒが滞在する時に利用するだけだったが常に使用人と護衛は配備されている。
ここ以上にセキュリティーの高く安全な場所はないだろう。
荷物を置いたら冒険者組合に顔を出す。
護衛依頼の完了と迷宮に潜る挨拶に行っただけだったのだが何故か組合長の部屋へと通された。
「ようこそ。迷宮都市アルスヘルムへ。組合長のヘンゲスだ」
「Eランクパーティーの夕闇です」
「君らのことは冒険者学校の方から聞いている。優秀なんだってな。期待しているよ」
顔見せだけだったようで会話はそれだけだった。
用事も済んだので屋敷に戻り夕食を取った後、疲れをとる為に早めに床につく。
馬車に乗っていただけとはいえ長距離を移動したのははじめてだったためすぐに夢の世界へと旅立っていった。
翌日、朝食を取った後早速ダンジョンへと向かう。
まずは試練の洞窟と呼ばれるダンジョンだ。
出てくるのはゴブリンのみで全10階層。
階層を上がれば上がるほど難易度はあがり様々なゴブリンが登場する。
ゴブリンと聞けば誰でも攻略できそうに見えるが試練と言われる通りここで躓く冒険者も少なくない。
リーシア達は緊張しながらダンジョンに足を踏み入れるのだった。