第三十四話
冒険者仲間の三人は満足したのか使用人に連れられお風呂へと向かった。
その間にまだ私はすることがある。
「お父様。さらっと聞き流しそうになりましたが迷宮都市の運営とはどうすればいいのですか」
「普段は派遣している代官が業務を遂行してくれるが対応出来ない事態が起きた場合は別だ。そして、罪人の処罰などもしなければならい」
「普段はどうしていたのですか?」
「罪人の処罰の為に年に数回、私が出向いていた。緊急事態は幸いなことにここ数年は起きていないな」
それを聞いて安心した。
罪人の処罰をしなければいけないのは憂鬱ではあるが過去の判例などを参考にすれば難しいことはないだろう。
「運営などというからもっと難しいことをさせられるのかと思ってしまいました」
「実を言うと私も冒険者時代にやらされてね。派遣している代官は公爵家の立場を最優先するが冒険者目線での改革なんかにも期待しているよ」
緩いことをいいつつも厳しいことを言ってくれる。
公爵家の利益を守りつつメインの住人である冒険者の側にも立って統治しないといけないということだ。
「今日はもう休みなさい。迷宮都市に行く手配はこちらでしておく」
どうやら拒否権はなさそうだ。
でも冒険者としての立場も理解しているお父様に任せるのは悪くないのだろう。
久しぶりにお風呂に入るとほっとする。
どうやら他の皆ももう部屋に案内されて休んでいるようだ。
リーシアも横になると眠りに落ちていった。
翌日、目を覚まし朝食を食べ終わるとパーティーメンバーと共にお父様に呼ばれた。
「来てもらって悪いね。渡したい物があるんだ」
そう言って用意されたのはいかにも高そうな装備だった。
アリスには動きやすいようにワイバーンの皮鎧とミスリル製の短剣が2本。
ラーシャには見事な彫刻の入ったミスリル製の鎧にミスリルの長剣。
ミリスにはこれまた見事な刺繍の入ったローブと千年樹の木でつくられた杖。
千年樹は名前が示す通り千年魔力の濃い地域で育った木で魔力との親和性が高い。
そしてリーシアの装備は公爵家の家紋の入ったミスリル製の鎧に妖精銀で作られた長剣だった。
妖精銀は妖精が住む地域で見つかる希少な金属で魔力の増幅効果と魔力を通した際に斬れ味を増す効果がある。
それとは別にマジックバックが一つ。
「お父様。ありがとうございます」
冒険者にとって装備は命を預けるものだ。
それをプレゼントするということは将来への投資という面もあるだろうが娘達の安全を図ろうとする親心もあるのだろう。
ありがたく頂戴するのだった。




