第三十三話
馬車は何の問題もなく公爵家の居城に到着した。
城の入り口ではお母様が待ち構えていた。
「お母様。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
「無事ならいいのです。どこも怪我はありませんね」
そういってお母様は隅から隅まで確認するように見てから抱きついてくる。
お母様は若々しく豊富な物をお持ちだ。
当然、押し付けられるわけで柔らかい感触が襲いかかってくる。
「お母様?」
「取り乱してごめんなさい。こうして無事な姿を見て安心しました」
「何も心配ないと言っただろう?」
「それはそうですが」
「お嬢さん達もすまなかったね。歓迎の支度をすませてある。ゆっくりしていってくれ」
そういってお父様は城の中に入っていきます。
私達も慌てて後を追う。
後を追うとセバスチャンが待ち構えていて先導するような形で1階の食堂に案内された。
食堂には既に多くの料理が並べられている。
「皆様。好きにお食べください。リーシア様はこちらに」
セバスチャンに案内され別室に入るとメイド達が待ち構えていた。
あっという間に服を脱がされドレスに着替えさせられる。
メイクと髪もセットされメイド達はご満悦だ。
食堂に戻るとお父様とお母様がパーティーメンバーと談笑していた。
「お待たせしました」
「はぁ・・・。リーシアってばドレス姿もよく似合うわね」
「ほんとほんと。美人なのが羨ましい」
「貴方達も着てみる?」
「あー。そういうのはいいや。なんか肩凝りそうだし」
そういって料理に手を伸ばす三人娘。
色恋より食気優先らしい。
良くも悪くも冒険者らしいと思ってしまう。
「リーシア。改めておかえり」
「ただいま戻りました」
「今後のことについて話をしておこうか」
「はい」
「冒険者をしつつ迷宮都市の運営に関わってもらう」
「冒険者を続けてもいいのですか?」
てっきり反対されるものと思っていたのだが拍子抜けだ。
「実を言えば私も昔は冒険者をしていた時期があるのだよ。そこで得た経験というのは馬鹿にできないものでね」
お父様は強いと思っていたけど元冒険者だったとは意外だった。
「お父様も冒険者だったのですね」
「必ずしも必要ではないけれど軍を率いる者として強いということはプラスになるんだ」
公爵家は優秀な騎士団を抱えている。
確かに率いる者が強ければ士気は高まるだろう。
「ちなみにお父様の冒険者ランクはどれぐらいなのですか」
「私はAランクだね。Sランクも夢ではないと言われていたけど爵位を継ぐことを優先したから」
お爺様が体調を崩し後を継ぐこととなり冒険者を辞めざる得なかったとのことだ。
ちなみにお爺様は健在だ。
今は公爵家の保有する保養地にてお婆様と隠居生活を楽しんでいるのだとか。
こうしてリーシアの家出生活は終了するのだった。