揚羽ルート14 俺が止める
俺は気が付いたら闇の中を漂っていた。
なんで、俺がこんな所にいるんだ?
俺は今までの記憶を思い出そうとした。
「あー、そっか負けたんだっけ」
揚羽の一撃を喰らい俺は意識を失った。
「いや、まだ負けていません」
「誰だ」
俺はいきなり声が聞こえてきたので驚いた。
「お久しぶりです。宿主」
そしたら、目の前に白い毛並みを持つ虎が現れた。
「お前は確か、ハクだな」
「はい、ハクです」
ハクは微笑んだ。
「懐かしいな。お前と最後に話したのっていつだっけ?」
「あなた様が高校に入学された頃ですなあ」
「そうか、そんなに経つのか。それで、さっきまだ負けていないと言っていたがどうゆう意味だ?」
「誠に勝手ながら力を暴走させました」
「おいおい、そうすると周りにも被害が起きるぞ」
「それはわかっています。でも、まだ揚羽殿の相手をしていますので、まだ時間があります」
「そうか、ならいいんだが。ハク、お前はこんなことを言う為にわざわざ俺の目の前に現れたんじゃないんだろ?早く本題に入れ」
「さすがは宿主。わかっておりますね。では、いくつか質問させてもらいます。まだ、あなたは戦いますか?」
そんなの決まっている。
「戦う」
「負けるとしてもですか?」
「ああ、そうだ」
「なぜ、そこまであの子鬼と戦うんですか?」
「姉さんと約束したから」
倒すって、何度も立ちふさがって止めてやるって。
「あなたにとって聖純揚羽はどんな存在ですか?」
「姉さんは俺にとって姉であり、一人の女性として一緒に歩いて行きたい」
「それは、友達としてか恋人としてですか?」
「それはもちろん。恋人として」
「揚羽は好きですか?」
「好きだ!」
つか、今思ったけどなにこの質問?
「わかりました。ならば勝って聖純揚羽を助けて見せなさい!」
ハクがそう言った瞬間、俺は光に包まれた。
「あ、そうそう、最後に一言ですが、あなたが倒したいのは本当に死神なんですか?」
俺が倒したいのは。
「はあああああああああ」
「危なっ!」
次に気が付いた時には、揚羽の拳が顔面に迫ってきていたのでギリギリの所で避け、距離を置いた。
「どうやら、暴走が治まったみたいだな」
揚羽は少し残念そうにしていた。揚羽の服装は所々破けて、肌が見えていた。
「これで、楽しみがなくなってしまったな」
「それは悪かったな。俺だってあのまま意識を意識を失っていたかったさ」
「なら、また意識を失えばいい。まあ、今度は永遠だけどな」
揚羽から禍々しい気が浮き始めた。
「悪いけど。それは無理だ。約束したから」
俺は手を振った。
「約束だと?」
「そう、約束。何回も倒れたって何度でも立ちふさがって止めてやるってね。だから、そろそろ止めようよ。姉さん、死神に頼らないでそろそろちゃんとやろうよ」
「何のことだ?もう一人の私はお前と戦いたくないといつも言っているんだぞ」
「それは知ってる。でもそれが嘘だとしたら?」
「・・・・・・」
揚羽は何も言わない。
「姉さんは言ったよね。力の制御ができず大切な人を傷つけてしまったって」
俺はお構いなしに話を続ける。
「だから、怖かったんでしょ。俺と戦うのが。また、大切な人が傷つくのが見たくなかったから」
「違う」
「違わない。だから、死神という人格を作り出し、戦いだした。その人格に戦いを任せて姉さんは自分の殻に籠っていた。もう一人の自分に任せて逃げ出したんだ」
「違うっ!!」
揚羽は思いっきり叫んだ。
「私は逃げ出していない」
ようやく、本物の姉さんが出てきたな。
「なら、なんで今まで、死神が俺と戦っていたんだ?」
「そ、それは」
「俺は姉さんに言ったはずだよ。姉さんがもし死神だったら何度でも立ちふさがって止めてやるって」
「・・・・・」
「大丈夫だって、俺はそう簡単には傷つかない。それを一番わかっているのは姉さんでしょ?」
つうか、姉さんのおかげでこうなったもんだしな。
「本当にいいのか?もう、手加減はできないぞ」
「構わない」
「本気で行くぞ?お前が負けを認めても止めないぞ?壊れるまでやるぞ?」
「ああ、こっちも遠慮なしで行かせてもらう。何回も倒れたって立ち上がって姉さんを止めてやる」
「・・・・・一つ、いいか?」
「何?」
「なぜ、お前はそんなに私にそこまで言うんだ」
「それは」
・・・・・つか、待て。ここでそれを言っていいのか?なんだか、ギャラリーもすんげー注目しているんだけど。
「それは?」
しかも、姉さん。なんで、顔を赤くしているんだ?ええい、もう、腹くくれ。
「姉さんが俺にとって大切な人だからだよっ!」
今、俺はすんげー顔が赤くなっているのがよくわかる。
「え、えっと、それは友人としてたか。そ、それとも」
「好きだからだよっ!!俺は姉さんが好きだからここまでやるんだ。好きだからこそ、大切な人だからこそ。もう、傷つく姿を見たくないから姉さんを止めるんだ!!」
俺はもう叫んでいた。自分の気持ちを正直に伝える為に叫んでいた。大切な人に伝える為に。
「そうか、大河が私の事を」
「姉さん。もういいだろ?そろそろやろうぜ」
俺は構えた。
「あ、ああ、そうだな。そろそろやるか」
揚羽も構える。
「私の事が好きだからって手加減はするなよ」
「それはこっちのセリフだ」
俺と揚羽は気を集中させる。
「行くぞっ!!鬼流奥義 六道輪廻!!」
「来いっ!! 琥牙流奥義 森羅万象!!」
俺と揚羽は技を出し合いぶつかり合った。