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揚羽ルート9 告げられる言葉

死神が揚羽だと解り、一週間が経過した。

 青空が広がる中、グランドでは今週の土曜にある体育祭の練習が行われていた。

 でも、俺はそれに参加しないで、屋上で寝ころんで考えごとをしていた。

 考えていることはもちろん揚羽のこと。

 あの後、揚羽は俺の目の前から逃げるように立ち去った。

 俺はその後、携帯で煉磨に連絡し、揚羽の事をふせて状況を説明した。

 煉磨はお礼をすると言ってきたが、俺は揚羽のことを隠しているのでそれを断っておいた。

 そして、それから俺は揚羽に今までのことを説明してもらいたくて、この一週間、何度も会いに行ったが、揚羽に会うことはできなかった。

 確実に避けられているな。

「おい、不良少年。授業サボって何をやっているんだ?」

 そんなことを考えていると、誰かに話しかけられた。

「ん?」

 俺が寝転がったままそちらの方を見てみるとそこには、今まで避けられていた揚羽が立っていた。

「俺と同じで授業をさぼっている人にそれは言われたくないよ」

 俺は起き上がりながら言い返す。

「あはは、確かにな」

 揚羽は笑いながら俺の隣に座った。

「とりあえず、まず礼を言わせてくれ。私のことを爺に言わなくてありがとう」

「別にいいよ、それぐらい。そんなことよりも、なんで今まで俺の事を避けていたの?」

 俺は単刀直入で聞いた。

「・・・・・それは言わないと駄目か?」

「言いたくないなら言わなくてもいい。それはもちろん死神のことも含めてね」

 本当は聞きたいけど、無理意地は良くないよな。

「いや、大河には迷惑をかけたから話すよ。まず、避けていたのはこの一週間、私なりに考え事をしていた」

「考え事?」

「ああ、今までのことをどうやって説明しようか?ってな。もし、考えが纏まらないうちに、お前に会うと私はどうゆう行動をするかわからなかったんだ。だから、お前を避けていた」

「じゃあ、今、俺に会っているってことは考えが纏まったってこと?」

「ああ、そうやって解釈してほしい。それで、何から聞きたい?」

「とりあえず、今までのことを全部聞きたい。姉さんに何が起きているのか?どうしてそうなったのか?全部」

「それを話すにかなり時間がかかるけどいいか?」

「ああ、かまわないよ」

「わかった」

 そうして、揚羽は話し始めた。

 自分が子供の頃、力の使い方がわからずに親を傷つけて、聖純家に預けられたこと。自分は本当は産まれてはいけない存在だという事。力の暴走により、夜になると性格が変わり、強い奴なら誰でもいいから破壊したくなること。自分は本当はそんなことはやりたくない事と。様々なことを聞かされた。

「最近では、夜の方の私が本当で昼の私が偽物と思えてきてしまっている始末だ」

 俺はそれを黙って聞いている。

「なあ、大河。お前はどう思う?こんな私をお前は化け物と思うか?」

 揚羽は悲しそうな顔をして静かな口調で聞いてきた。

「・・・・・思うわけないだろ」

 俺はそっけなく答える。

「姉さんが化け物なら、姉さんと渡りあえる俺もその化け物の仲間に入る。いいじゃないか、人がなんて呼んでこようが関係ない。要は自分がどのように思うかだ。周りが姉さんのことを化け物と呼んでも、俺や龍達は絶対に呼ばない。姉さんはどっからどう見ても、普通の女子高生だ」

「あ、ありがとう。大河」

 揚羽を見てみれば今にも泣きそうで、瞳に涙を溜めている。

「私は良い弟を持ったよ」

「それはよかった」

 俺は心からそんなことを思っていた。

 さて、後は姉さんのもう一つの人格の方だな。ようは、姉さんの力が暴走している為にもう一つの性格が出て来ている訳だから、その暴走をどうにかすればいいんでしょ。なら、話は簡単だ。それには、姉さんの協力も必要だな。

「ねえ、姉さん。死神と話しできるの?」

「ん?ああ、私と性格が変わる時にできるぞ」

「じゃあ、伝えてほしいことがあるんだけど、いいかな?」

「ん?ああ、構わない」

「それじゃあ、大会の決勝に壊し合いをしようと伝えといて」

「え?」

 揚羽は俺のセリフを聞いて固まってしまった。


次回予告

作《いよいよ、武道大会が始まります》

大《お、いよいよか》

作《長かった。やっとで、揚羽ルートも終盤に差し掛かってきた》

大《お疲れ様》

作《大河を苛める機会が少なくなってきている》

大《俺的に喜ばしいことだな》

作《私的には大河をもっと苛めたい》

大《あのさ、前から思ってたけどもう少し、主人公に優しくしようよ》

作《絶対に嫌だね》

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