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揚羽ルート5 老人の依頼

「駄目だな」

 私は真っ赤に染まった手を見ていた。

「最近のは壊れやすくてつまらない」

 私は転がっているそれを蹴り飛ばした。

「おご」

 それは見事にゴミ箱に突っ込んだ。

「やっぱり、あいつではないと駄目だな。あいつじゃないと私を満足にさせてくれない。うっ!」

 私はそう思うと突然、頭に痛みが走り頭を押さえた。

「だ、駄目だ。あいつはだけは駄目だ。あいつは私にとって、うっ!」

 ちっ、もう出てきたか。まいい、それで、あいつは私にとっての何なんだ?

「あいつは私にとって大切なんだ」

 でも、私はあいつに選ばれてはいけない。

「だ、黙れ!お、お前に私の何がわかる!」

 わかるさ。私はお前なんだから。

「で、でも、私はこんなことを望んでいない」

 いや、違うね。お前は心のどこかで望んでいるだろ。もっと壊したい。もっと暴れたいってね。

「うるさい!」

 私はビルの壁を拳で殴った。ビルの壁はいとも簡単にその部分が壊れてしまった。

「私は絶対にそんなことを望まない。望んでたまるか」

 ・・・・・まあいいさ。今日はもう時間だし、私は去るとしよう。でも、これだけは私はお前なんだから、いつでも、お前の側にいることをな。それじゃあ、私は消えるよ。

 その言葉が聞こえてきた瞬間、私の心から何かがいなくなった気がした。

「消えたか」

 私はそっと、真っ赤に染まった自分の手を見た。

 自分には覚えがない拳の感触。でも、それは確かに私の中にある。

「この頃、頻繁になってきたし、体が疼くのも早い。気を付けなければ私はあいつを壊してしまう」

 それだけは絶対に避けなければ。

 私は心にそう思いながら、その場を去った。



「うりゃあああああああ!」

「打ち抜けええええええ!」

 渚と鈴は一斉に俺に襲いかかって来た。

「遅い」

 俺はそれを簡単に避ける。

 今、俺たちは中庭で武道大会の為の特訓中です。

「優燈!」

「アイアイ」

 鈴の合図と共に優燈が俺に向けて撃ってきた。

「鈴と渚が囮という作戦はいいと思うけど、囮に当たったら意味ないよね」

 俺は鈴の腕を掴んで引っ張り、銃弾の壁にした。

「危なっ!」

 そしたら、鈴はすぐに自分に向かってくる銃弾を撃ち落とした。

「そして、優燈。当たっても当たらなくてもさっさと移動しろ」

 そしてその後、弾に意識が向いていた鈴を思いっきり優燈に向けて投げ飛ばした。

「きゃあ!」

「にゃあ!」

 優燈と鈴はぶつかり気絶した。

「まず、二人」

 後は。

「隙ありいいいいい!」

 渚が後ろから木刀を降り下げてきた。

「渚は気を使えるようになってきたが。まだまだだな」

 俺は木刀が振り下ろされる前に渚の脇腹に回し蹴りをいれた。

「ごほっ!」

 渚はそのまま横に飛んで、そのままうつ伏せに倒れてしまった。

「そこまで」

 龍が試合終了の合図をだした。

「ふぅー、音葉、剛。みんなの手当てを頼む」

 俺は呼吸を整えながら音葉と剛に言った。

「へいへい」

「はい。わかりました」

 音葉と剛はすぐに動き出した。

「鈴さん、優燈さん、大丈夫ですか?」

「また、負けちゃった」

「う~、どうせなら。大河に殴られて気絶したかった」

 なんか、やばいことを言っているけど気にしないことにしよう。

「くそ、なんで勝てないんだ」

「そりゃ、大河は姐さんとタメを張られるから、そう易々と負けるはずかねえよ」

 渚は脇腹を押えながら、剛に肩を借りこちらに歩いてきた。

「はい。大河。リストバンド」

 透はリストバンドを俺に手渡してきた。

「サンキュー」

 俺は透からリストバンドを受け取り、手足に巻きつけた。

 そういえば、透って久々に話に出てきたんじゃないのか?もしかして、作者に忘れられていた?

 はい。忘れていました。

「龍。タイムは?」

「お前を相手に十分は持つようになってきたよ」

 龍はストップウオッチを見ながら言ってきた。

 そこまでいけば大会では上位の方にはいけるな。

「ほほほ、やっているの」

 そんなことをやっていると、塀の上から声が聞こえてきた。

「何やっているの爺さん?」

 塀の上を見てみると、煉磨が立っていた。

「散歩じゃ」

 散歩なら普通に道を歩けよ。

「まあ、それはついでなんじゃけど。大河、今日はお主に用が合ってきた」

「俺に用?」

 俺、何かしたっけ?

「そうじゃ、、ああ。こんな所でもなんだし、ちっとワシに付いてきておくれ」

 煉磨はそう言って、塀の向こう側に降りた。

「と、いうことだから、後はみんな自由にやっていてくれ」

 俺はそう言い残して、煉間の後を追うように壁の向こう側に跳んだ。

 道路に着地すると、煉磨が待っていたので、煉磨と共に歩きだした。

「それで、話って何?」

「お主、最近街の方で起こっている事件を知っておるかの?」

「いや、知らない」

「そうか、実はな、この頃強者達が何者か襲われて病院送りになっているんじゃ」

 俺はそれを聞いて、ある人物のことを考えた。

「まさか、姉さんが?」

「それはまだわからん」

 わからないということは可能性があることだよな。

「ワシが揚羽に聞いた時には知らないと言っておった」

 煉磨は髭を撫でながら言ってくる。

「できれば、ワシも揚羽ではないと願いたい」

「それは俺も一緒だよ。それで、俺に何をしてほしいんだ?」

 そんな話をしてくるんだから、キチンとした訳があるんだろう。

「その犯人をお主が倒してくれ」

「姉さんや生徒達、爺さんじゃ駄目なのか?」

「生徒たちだと返り討ちにあうだろうし、揚羽だと不安がある。それにワシだと出てこない確率がある」

 まあ、それもそうか。

「OK。わかった。引き受けるよ」

「すまぬな」

「あ、でも報酬は貰うから」

「ちゃっかりしておるな」

 だってそうしないと、割が合わないんだもん。

「それで、相手の特徴とかどうなっているんだ?」

「全身黒尽くめに黒の帽子を被っており、周りからは死神と呼ばれている」

「わかった。今日から探してみるよ」

「ああ、頼むな」

「へいへい」

 さて、今日の夜から忙しくなるな。


次回予告

作《さあ、どんどん話が進んで来たな》

そうだな

作《次回はいよいよ、謎の人物と勝負だな》

大《もちろん勝つよな》

作《さあ、今ネタばれしちゃあ。駄目だろ》

それもそうか

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