No,24 安らかな眠りをこの子に 後編
「ここどこ?」
私は幼い姿で闇の中をひたすら歩いていた。
「お父さ~ん。お母さ~ん」
どこに行ったの?早くあたしを迎えに来てよ。
周りでは闇が続くばかりで一向に誰とも会わないし、どこにいるのかもわからない。
「歩くの疲れちゃった」
あたしはその場に座り込んだ。
「なんで、誰もいないんだろう?私はずっとこんなところで独りぼっちなのかな?」
そんな事を考えていると、段々と涙が流れてきた。
「早く誰か来てよ。寂しいよ」
涙がどんどん流れてくる。もう、自分でも押さえられない。
「おーい、りーん、どこだー」
そうしていると、あたしの後ろの方から声が聞こえてきた。
あたしはこの展開を覚えている。きっと、また、あれが私を迎えに来たのだろう。
至る所に穴が開いていて、その穴からは内臓やら血が流れ出ている両親が。
あたしはそう思うだけで恐怖を感じた。
「お、こんなところにいたか」
声が真上から聞こえてくる。
あたしはただ怯えながら下を見ていた。
「おい、コラッ。無視するな」
そうしていると頭を何かで小突かれた。
「な、何?」
あたしは頭を押さえながら、顔をあげるとそこには幼い頃の大ちゃんが、何故か肩にハリセンを担ぎながら立っていた。
なぜ、ハリセン?
「人がせっかく迷子になったお前を迎えに来てやったのに、無視をするなんてひどくないか?」
「え、迷子?だって、周りは暗闇しかないはずだよ」
「暗闇?何言っているんだ?どこに暗闇があるんだ?」
「え、だって。周りには暗闇しか」
その時、あたしは驚いた。だって、あたしが居た場所はいつの間にか、暗闇は無くて、その代わりにどこかの河原になっていたんだから。
「なっ、暗闇なんてないだろ?ほら、そんなことより帰るぞ。みんながお前のことを心配している」
大ちゃんはそう言って、あたしに手を差し伸べてきた。
「う、うん」
私はその手に捕まり、立ち上がった。そして、手を繋いだまま大ちゃんが歩きだしたので、あたしはそのまま腕を引っ張られながら大ちゃんの後ろについて行った。
「・・・・・ねえ、大ちゃん。怒ってる?」
私は大ちゃんの背中に話しかけた。
「ああ、怒ってるよ」
大ちゃんの表情は見えないが、声からして本当に怒っているようだ」
「ご、ごめんなさい」
「なんで俺に謝るんだよ」
「だって、みんなに黙って勝手にいなくなったし、大ちゃんに心配かけちゃったし」
「なら、それはみんなに謝れ。それに、俺はお前が迷惑をかけることには慣れている」
「じゃあ、なんで怒っているの?」
あたしがそう聞くと、大ちゃん立ち止まり、私から手を離した。
「お前と俺は家族なんだから、寂しいなら俺に相談してほしかった」
この時の大ちゃんの顔は見なくても照れていることすぐにわかった。
「前にも言ったが、お前が寂しい時は俺がいつでも側にいてやるから」
「うん。ごめん」
あたしは嬉しくて。泣きそうになった。でも、泣かない。大ちゃんがまた心配しちゃうから。
「ほら行くぞ」
大ちゃんはそう言って、歩き出した。
「あ、ちょっと待ってよ。あっ」
あたしは急いで追い掛けようとしたら、石につまずき転んでしまった。
「おい、大丈夫か?」
大ちゃんは心配そうにしてくる。
「うん。大丈夫。いっつ」
膝に痛みが走り、見てみると皮が剥け血が流れてきていた。
「あ~あ、早く消毒しないとな」
大ちゃんはポケットから消毒薬と傷バンをだし、すぐに治療してくれた。
それは大ちゃんが愛用していて、いつ、私が怪我をしてもいいように持ち運んでいる物だ。
大ちゃんはいつもそうやって私に気を使ってくれる。
「ほれ、これでもう大丈夫だ」
「あ、ありがとう」
「歩けるか?」
「ん~、ちょっと無理っぽい」
「なら、こうするか」
大ちゃんはしゃがんで、あたしに背中を向けた。
「ほら、早く乗れ」
どうやら、おんぶをしてくれるようだ。
「え、でも、あたし重いし、悪いよ」
「親父曰く、同年代の女の子ぐらい背負えなきゃ男じゃないらしい」
それじゃあ、仕方がない。意味がわからないがあたしは大ちゃんの背中に乗せてもらった。
「よいしょっと」
大ちゃんは掛け声を出しながら、私を背負った。
「大丈夫?重くない?」
「大丈夫。見た目より軽いから」
大ちゃんはそう言って、歩き出した。
あたしはそのまま、大ちゃんに体重を預けた。あ、そういえばまだ見つけてくれたお礼いってない。
「大ちゃん」
「ん?」
「あたしを見つけてくれてありがとう」
「ん。どういたしまして」
大ちゃんが照れているのがすぐにわかった。
「鈴。疲れたろ?着いたら起こしてやるから少し寝ていろ」
「うん。そうする」
あたしは大ちゃんの言葉通りにすぐに目を瞑った。
そしたら、すぐに眠ることができた。
次に、目を覚ますとそこは見覚えがない天井だった。
あれ、あたしどうしたんだろ?
「起きたか?」
大ちゃんがあたしを覗きこんできた。
「あれ、あたしどうしたの?」
「俺の部屋で無理やり寝かせた」
ああ、思いだした。あたし、大ちゃんにあの事を話したら、無理やり大ちゃんに眠らされたんだっけ。
「気分はどうだ?」
大ちゃんが心配そうに聞いてくる。
「うん。とてもいい」
「そうか、それは良かった。なら、これはもういいな」
大ちゃんはそう言って、今まで握っていた手を離そうとした。
「あっ」
あたしは思わず、またその手を握ってしまった。
「・・・・・鈴?」
大ちゃんは呆気にとられていた。
「あ、ごめん。え~と、その、も、もう少し寝ていたいから握っていていいかな?」
あたしは、適当な言い訳をした。自分の顔が赤くなっていることがわかる。
「ああ、いいよ」
大ちゃんもそう言って、また、あたしの手を握ってくれた。
「なあ、鈴」
「何?」
「俺はお前が寂しい時、いつでも側にいてやる。一人で抱え込むな」
大ちゃんは夢の時と同じことを言ってくれた。
「・・・・・うん」
私はそれが嬉しくて、思いっきり大ちゃんの手を握ってしまった。それから、今まで忘れていた感情を思いだした。
どうやったらいつまでも大ちゃんと一緒にいられるかな?
そして、私はあることを思いついた。
帰ったらお姉様とじぃちゃんに相談してみよ。
あたしはそんなことを思いつつ、また眠りについた。
鈴のことがあってから、数日が経った。
「え~と、みんな。忙しい中、集まってくれてありがとう」
俺は寮のメンバーを全員集めてリビングにいた。
「ん、それは構わないが。これは何の集まりなんだ?」
龍が寮生みんなの代表として聞いてきた。
「えっと、急なんだけどこの寮にまた新しい人が入ってくることになった」
俺が説明するとみんなして驚きが隠せないようだ。
「え?また転校生が来たんですか?」
音葉が不思議そうに聞いてくると。
「いや、そんなはずはない。俺の情報にそんなのはなかったぞ」
直斗が俺の代わりに答えてくれる。
「誰でもいいが強い奴だといいな」
そこ、今はそんなの関係ないだろう。
「それで、大河。一体誰が来たの?」
最後に優燈が俺に聞いてくる。
「誰と言われてもな。なんというか。俺も何故こうなったのか不思議なくらいだ。まあ、説明するよりは見た方が早い。おい、入ってきていいぞ」
「は~い」
俺の合図と共に、いつもの鈴の髪飾りを揺らしながらそいつは入ってきた。
「今日からこの琥牙寮でお世話になる聖純鈴です。よろしくお願いします」
「えええええええええええっ!」
寮生は鈴を見た瞬間、全員、叫びながら驚愕していた。
なんで、こうなったかな?
俺はというと、その声を聞きながらそんなことを思っていた。
次回予告
作《えー、前回の言ったとおりにここでルート分岐が行われます》
大《ということは、鈴ルートでいくことになるのか?》
作《う~ん、このまま鈴ルートでいってもいいんだけど。今、書いているのは揚羽ルートの方なんだよね》
大《あ、だから、分岐点なのか》
作《そゆこと。私的に鈴ルートでもいいんだけど揚羽ルートもいいんだよね》
大《ちなみに揚羽ルートはどのくらいできてんの?》
作《まだ序盤だね》
大《鈴ルートは?》
作《頭の中にある。あ、言っとくけど揚羽の場合はバトルが多めに入ってっきて、鈴は優燈並みに甘えてくるから。大河はどっちがいい?》
大《どっちも嫌だ!!》
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作者の執筆が早くなるかもしれません。




