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No,.23 安らかな眠りをこの子に 前編

辺り一面、闇に包まれていた。

 痛いよ。

 熱いよ。

 苦しいよ。

あたしは幼い姿になっていて、その中で傷だらけで丸くなっていた。

お父さん。

お母さん。

どこに行ったの?

あたしはここにいるよ。

 だから、早く迎えに来てよ。

 あたしはその闇に脅えながらも両親が来ることを信じていた。

「・・・・・どこだー」

 遠くから声が聞こえてくる。

 お父さん?お母さん?

 ここだよ。あたしはここにいるよ。

 あたしは声にならないが思いっきり叫んだ。

 そしたら、誰かがあたしに近づいてくるのがわかった。

「おお、・・・・・ここにいたか。捜したぞ」

「もう、・・・・・だめよ。勝手にいっちゃあ」

 声は私の真上から聞こえてきた。

 お父さん。お母さん。やっぱり来てくれたんだ。

 あたしは嬉しくなり顔をあげた。

 しかし、それはすぐに絶望と変った。

 そこにいた筈の、お父さんとお母さんは血だらけで至るとこに穴が開いており、そこから血などが出ていた。

「い、いやああああああああああああ!!!!」

 私はそこで目をさました。



「はあ、はあ、はあ」

 目を覚ますといつも見慣れている天井があった。

「夢?」

 起き上がり周りを見回す。

 いつも使われていない机。学校の制服。古びた筋トレ道具。

 ここは確かにあたしの部屋だ。

「そうか。もう、そんな時期なんだ」

 あたしは寝汗を腕で拭きながらそう思った。

 また、あの夢か。最近は見ていなかったのにな。

 時刻を確認するとまだ夜中の三時過ぎ。

 もう一度、寝ようと思ったがまたあの夢を見ると思うと怖くて眠れない。

「しょうがない」

 私は最終手段として、複数の写真立てがあるところから一番古い写真を挿んでいる写真立てをとり、その古い写真を取った。

この写真は私に、物心がついた時に幼馴染の少年と一緒に撮った写真である。

 あたしはその写真を枕の下に隠し、また眠りについた。

 これで、少しはいい夢が見られるかもしれない。

「おやすみ。大ちゃん」

 あたしは幼馴染で少年の名前を呼んで夢の中に落ちていった。



「やっぱり、朝の散歩は気持ちいな」

 俺は朝から外を歩き回っていた。

 元の姿に戻って、三日が経過している。

 俺はこの三日間、体の感覚を戻す為に朝から運動していた。

 う~ん、だいぶ感覚が戻ってきたみたいだな。この調子だと来週の月曜辺りからほとんど動けるようになるな。

 そう、思いながら散歩コースになっている公園を訪れた。

 チリーン。

 すると、遠くから聞き覚えがあるすずの音が聞こえてきた。

「朝早くから、あいつがここにいるのは珍しいな」

 俺は音が聞こえる方に行くと案の定、そこにはりんがいた。

「おはよう、鈴」

「ひぃ」

 鈴は何かに脅えるように突然振り向いた。

「て、あ、大ちゃんかおはよう」

 しかし、俺だとわかるとすぐに冷静になった。

 ・・・・・おかしいな。

 俺はすぐに疑問に思った。だって普通なら、鈴は俺が声をかけなくてもすぐに匂いで相手が解るし、何より何かに怯えるということはまずありえない。

「もう、いきなり声をかけたから驚いたよ」

「ああ、それは悪かったな」

 俺から見れば驚いたより怯えたって風に見えたけどな。・・・・・ん?怯えた?まさか。

「それよりさ、一つ聞きたい事あるんだがいいか?」

 俺は鈴の様子からある考えに至って質問することにした。

「うん。いいよ。何?」

「お前、またあの夢見たんだろう?」

「あ、あの夢?一体何の事を言ってんの?大ちゃん?」

 こいつはまたとぼける気だな。

「とぼけるな。お前と何年一緒にいると思っている。お前の嘘ぐらいすぐにわかるよ」

「う、嘘なんてついてないよ」

 鈴は俺から顔を逸らし、髪をいじり始めた。

「お前は知らないだろうけど、お前が嘘を言っている時は大抵、髪を弄っているんだぞ」

「マジ?」

 鈴はすぐに髪をいじるのを止めた。

「マジ。たくっ、他人を巻き込ませたくないのはわかるが、俺ぐらいには相談してほしかった。ガキだった頃からの付き合いなんだしな」

 俺は鈴に近づき、鈴を撫でてあげた。

「うん。ごめん」

 鈴は落ち込んで下を見ていた。

「それで、またあの夢を見始めたと考えていいんだな?」

「うん」

「いつから?」

「三日前」

 三日前か俺がちょうど戻った頃だな。

「つ~ことは、三日前からあまり寝ていないと考えていいんだな?」

「うん。三日前にあれを見始めてからは寝ても二、三時間で起きちゃう」

「そうか、わかった」

 なら、先にこいつに十分な睡眠時間を与えないとな。

 俺は考えて、すぐに実行に移す。

「おい、鈴。今から俺の所に来い」

「え、なんで?」

 鈴は不思議そうにしていた。

「お前にきちんと睡眠を取らせるためだよ」

「え、でも」

 鈴はまたあの夢をみるのではないかと恐れているようだ。こうゆうところは昔から変わってないな。

「大丈夫。俺が近くにいてやるから」

「本当?」

「ああ、本当だ」

「わかった。大ちゃんを信じる」

 鈴は頷き。そうして俺は鈴を寮に連れて帰った。

 寮に連れて帰ってすぐに、俺は鈴を自分の部屋に連れて行き、布団をしいて鈴を寝かせた。

「ねえ、大ちゃん。やっぱ寝ないとだめ?」

「ああ、だめだ」

「でも、全然眠くないんだけど?」

「眠くなくても、目をつぶれは勝手に寝るから」

「で、でも」

 鈴は何かと理由を付けては寝ようとはしなかった。

「でもじゃない。ほら、手を握っていてもいいから早く目をつぶれ」

「ありがとう」

 俺は鈴に手を差し出すと、鈴はお礼を言いながら、それを強く握るとすぐに目をつぶった。

「す~、す~」

 そうすること一分。鈴はすぐに寝息を立てていた。

 眠れないって言って置きながら、寝るの早いな。

「まあ、いいや。早速、俺も作業に取り掛かろう」

 俺は目をつぶり集中を始めた。そうしていると、鈴が握っている方の手から鈴に向かって、気が注ぎ込まれていく。

「今、良い夢を見せてやるからな。鈴」

 俺は、いつもは強がっているけど本当は寂しがり屋で泣き虫の幼馴染に向かって言い、気を集中することに専念した。


次回予告

作《次回は後編に入ります》

大《ところでさ、誰ルートでいくか決めたの?》

作《大まかなところは考えが出来て来ているよ》

大《へ~、それじゃあ、誰ルートなの?》

作《それは次回のお楽しみ》

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