No,19 揚羽とパーティー 後編
前回の続きです。
「え~、それではこれより。今回のパーティの主役の稲葉直哉対どこにでもいる高校生琥牙大河の手合わせをしたいと思います」
俺の説明だけ適当だけじゃないか?
パーティー会場の中心にいつの間にかリングができていて、俺と直哉はそこにいて、それを囲むように招待客が立ち並んでいた。
つか、やっぱり金持ちは違うな。あっという間にリングとか用意するんだから。
俺は自分の私服に着替え、体をほぐしながらそんなことを思っていた。
「大河―、頑張れよー」
揚羽は人ごとみたいに観戦していた。
いや、これあんたの問題だから、何勝手に他人事みたいにしているの?
「両者、前」
いつの間にか現れたレフリーが俺と直哉に指示をした。
「たく、面倒だな」
俺はレフリーの指示に従って前に出た。直哉もそれにつられて前に出てくる。
「無理を言ってすまないね」
直哉が俺と向かい合いながら話しかけてきた。
「いえ、あまり気にしないでください。姉さんの我が儘はいつものことなので」
「それじゃあ、我が儘ついでに、僕の願いも聞いてくれないかな?」
直哉は声を小さめにしながら言ってきた。
「・・・・・内容によりますね」
なんかこういう金持ちに奴に限ってくだらないことを言ってくるんだよな。
「大丈夫。簡単なことだよ。この手合わせ揚羽さんいい所、見せたいから、僕にわざと負けてほしい」
ほらね。くだらない。
「ほら、だって今日のパーティーは僕が主役なんだから、みんなして主役が勝つところを見たいじゃない。それに、これは揚羽さんが君に勝てたら僕との婚約も考えてくれるって言っているんだし、頼むよ」
「一応、聞きますけど。なんでそんなに姉さんと婚約したいんですか?」
「ほら、だってあの聖純と婚約すれば、世界的に影響力を持つということになるんだよ。それに、揚羽さんのルックスも最高だし。婚約できたあかつきには、あの体を好きにできるなんて最高だよ。な、だから、僕に負けてくれないか?」
あ、わかった。
「頼むよ。もし、引き受けてくれたなら後で、たんまりと褒美を出すからさ。まあ、でも、断るってことはないよね。もし、断ったら、君を含め君に関係する人達を災いをもたらせてあげるから」
こいつ屑だ。
「まあ、そうゆうことだから。よろしくね」
直哉はそう言って離れていった。俺もそれに合わせて離れる。
さて、あいつが屑ってわかったから、俺がやることは一つだけだな。それをやるには姉さんの許可が必要だな。
「姉さん」
「ん、なんだ?」
揚羽はセコンドーの場所にやって来た。
「飽きてこない?」
「そうだな。飽きてきたし、そろそろどこかに遊びに行きたいな」
「なら、俺にいうことはわかるよね?」
「だな。相手は可哀想だが、私達にとってそんなことどうでもいいしな。遠慮はいらん・・・・・潰せ」
「OK」
俺は両手両足首のリストバンドを外した。
「眼帯は外さないのか?」
「これを外したら、ここにいる人達の大半は気絶しちゃうでしょ」
「まあ、それもそうか」
揚羽は俺の意見に同意した。
「さて、そろそろ始めますけど。両者よろしいですか?」
レフリーが俺と直哉に聞いてくる。
「いつでも構わないよ」
直哉は構え。
「こっちもいいっすよ」
俺は構えもしないでただ仁王立ちをしているだけ。
「それじゃあ、始め」
レフリーが試合の合図を出した。
「それじゃあ、打ち合わせ通りに頼むよっ!」
直哉が俺の仁王立ちが約束を守ると受け取ったのか、いきなり俺に拳を突き出してきた。。
「ぐはっ」
しかしその瞬間、俺は拳をいなし、とりあえず顎に一発入れ、足が少し空中に上がった瞬間。
「琥牙流奥義、隕石」
腹を思いっきり拳で殴りつけた。
「ごほっ!」
直哉はそのまま後ろに吹っ飛び、倒れた。
周りでは揚羽意外、呆気にとられていた。レフリーでさえも何が起こったのかわかっていない。ゆういつ揚羽だけ腹を抱えながら笑っていた。
「はい、終わり。審判、早くジャッジをしろ」
「え、ああ」
レフリーはようやく俺が勝ったことに気が付き、ここで宣言した。
「しょ、勝者、琥牙大河!」
しかし、誰も歓声を上げることはしなかった。それもその筈だ。なんせ、今回の主役を簡単に倒してしまったんだから。
「さて、姉さん。行こうか」
「ああ、そうだな」
俺はリングから降りて、姉さんと共に会場を後にしようとした。
「おい、待てよ!」
そしたら、後ろから声をかけられた。
「ん?どうしましたか?」
俺と姉さんは振り返り、直哉を見た。
直哉はSPに支えられながら立ち上がっていて、俺達を睨みつけてくる。
お~、思いっきりやったのに、もう、起きたのか。
「約束と違うじゃないか」
直哉は怒りを表しながら俺を睨んできた。
「約束?一体何のことだ」
「とぼけんじゃねー!俺を勝たせる予定だったじゃないか!」
あー、あれのことか。
「何か勘違いしてない?俺がいつお前とそんな約束をした?お前が勝手に話していただけで俺は一度も了承なんかしてないぞ」
「なっ!」
「それにな。俺はお前みたいな権力でどうこうしようとしている奴が一番大っ嫌いなんだよ!権力ないと何にもできない坊ちゃんやろうが!」
俺がそういうと揚羽が俺の肩に手を置いてきた。
「良く言った大河」
いや、そこ褒める場面じゃないと思うんだけど。
「まあ、そういうことだから私との婚約は諦めてください。御坊ちゃん」
揚羽は直哉をさらに挑発した。
姉さん、それじゃあ、火に油だよ。
「こ、このくそガキ共っ!」
直哉は顔を赤くした。
「もういい。お前らこの二人を逃がすな」
直哉が指示を出した瞬間、SP達が俺達を囲んだ。
「どういうつもりだ?」
俺は直哉を睨むと直哉は俺達を見下すように見てきた。
「そのままの意味だよ。悪いが、揚羽さんとは無理にでも婚約してもらうよ。そして、そこのクソガキには地獄のような人生を味わさせてやる。それと、お前に関係する人物全員にもだ。あ、でも、揚羽さんが婚約した後、一生俺に尽くしてくれるなら話は別かな?」
「屑だな」
俺の怒りは頂点に達していた。
「ああ、そうだな。屑だな。こっちが下手に出れば大きく出やがって」
姉さんに至っては怒りどころか、それを通り過ぎて呆れていた。
「姉さんがやる?」
俺はSPを見回しながら聞いた。
「いや、この格好だと。動きにくいからお前がやれ」
あ、そっか。姉さんは着物なんだっけ?
「わかった」
「それと、眼帯を外してもいいぞ」
「いいの?」
「ああ、いいぞ。私の分までこいつらに地獄を見せてやってくれ」
「わかった」
俺は左の眼帯を外し、ゆっくりと左目を開けた。
そして、その瞬間、このパーティー会場は地獄と化した。
三十分後。
「あ~、久々にやったから疲れた」
「やはり、一ヶ月に一回はガス抜きをしないといけないな」
俺と姉さんはパーティー会場があったビルの近くを歩いていた。
「そうだね。この頃、さぼり気味だったから力の調整が難しかったよ」
「いいじゃないか。暴走だけはしなかったんだから」
「まあ、それもそうだね。それよりこれからどこに行こっか?」
「そうだな。とりあえず聖純院に戻って着替えるか。それから、どこかに遊びに行くことにしよう」
「うん。そうだね」
こうして、俺と姉さんはまず聖純院に戻った。そして、その後、着替え終わった揚羽と一緒にゲーセンとかに遊びに行った。
一方、パーティー会場ではいろんな場所にSP達が倒れており、リングでは直哉がカタカタと「ば、化け物」と呟きながら下半身から液体の物を流し、震えていた。
次回予告
作《次回は音葉の出番です》
大《お、やっと後輩の話か》
作《ちなみに、存在自体忘れかけてました》
大《それってちょっと可哀想じゃない?》
作《まあ、いいんだ》
大
作《ちなみに、大河にも異変があるからよろしく》
大《え、俺どうなっちゃうの?》
作《それは次回のお楽しみ。ちなみに次回は今日中にアップします》




