No,18 揚羽とパーティー 前編
土曜日
俺は約束通り揚羽姉さんと出かけてはみたものの、何故かパーティ会場見みたいな場所にいた。
周りでは金持ちそうな人たちが高級そうなスーツを身にまとい、話や食事を楽しんでいた。
どうしてこんなところにいるんだろう?
俺はというと黒いスーツを着て、飯を食いながらそんなことを思っていた。
「お、大河こんなところにいたか。捜したぞ」
後ろから揚羽に話しかけられた。
「姉さん。俺を置いていったいどこに行っていたんだよ?」
「ああ、ちょっとな。挨拶周りに行ってきた」
俺は後ろを振り向くとそこには着物を着た揚羽が立っていた。
「どうだ?綺麗だろ」
揚羽はわざとらしく俺に着物を見せびらかす。
「ああ、綺麗だよ」
「ありがとう」
揚羽は満足そうに微笑んだ。
「で、この集まりはなんなの?」
「ああ、これか。これはどこかの会社の社長の馬鹿息子の誕生日会なんだとさ」
あ~、だから、こんなにも金持ちそうな奴らばっかりなんだ。
「そのパーティーと姉さんの関係性は?」
「本当ならじじいがここに来る予定だったんだが。急に別の集まりが入ってそっちにいってしまったんだ」
「つまり、姉さんは代行役ということだね」
「まあ、それもあるな」
「俺が来た意味は?」
「一応あるにはある」
「一応かよ」
それって下手すれば俺の出番はないかもしれないと言う意味じゃないのか?
「まあ、なければないでこんなうまい飯をただで喰えたと思えばいいじゃないか」
「まあ、それもそうか」
俺はあっさりと納得した。
「これはこれは揚羽さんじゃないですか?」
俺と揚羽が話をしていると、SPらしき人物を二人連れた青年が現れた。
「げっ」
揚羽はとても嫌そうな顔をした。
「この度は私の誕生日会にわざわざお越しいただき、誠にありがとうございます」
青年は揚羽を見つめながら挨拶をしてきた。
「いえいえ、こちらこそ招いていただき、とても感謝しております」
揚羽も無理やり笑顔になり、挨拶を返した。
姉さん。笑顔が引きつっているよ。
「ねえ、姉さん」
「ん、なんだ?」
「誰こいつ?」
俺のこの一言で周りの空気が一気に低くなった。
ん?俺、なんか変なことを言ったかな?
「大河。お前こいつを知らないのか?」
揚羽も驚きな隠せないようだ。
「知らない。こんな奴、見たことも無いし、見たとしても覚える気がない」
周りでどよめきが走った。
「揚羽さん。この方は?」
青年は少し笑みを引きつりながら聞いてきた。
「こいつは私の弟みたいなものだ。名を琥牙大河という」
揚羽は簡潔に俺の説明をしてくれた。
「そんで、大河。この方は今日の主役の稲葉直哉といって、稲葉製薬会社社長の一人息子だ」
へ~、社長の一人息子ね~。すごいね~。
「そうですか。初めまして琥牙大河さん。私は稲葉直哉と言います。以後お見知り置きを」
直哉はそう言って俺に手を差し伸べてきた。
「以後、お見知り置きをと言っても俺はお前に会う気はないし、会いたくもない」
しかし、俺はその手を払いのけた。
揚羽は笑いを堪えて顔を隠していた。
何がそんなに面白いのかな?
「ど、どうやら嫌われてみたいです。そ、それで揚羽さん。あの件は考えてくれましたか?」
「ん?あの件とは?」
揚羽は笑うのを止め、直哉の方を見た。
「え?わ、私と婚約する話ですよ」
「え?あれって本気だったのか?冗談と思っていた」
揚羽は驚いていた。
「冗談も何も本気ですよ」
「すまん。冗談とばかり思っていた」
「そ、そうですか。そ、それで僕と婚約してくれますか?」
「ん~、そうだな」
揚羽はそこで俺を見てきた。
なんか、すげ~、嫌な予感がするんですけど。
「こいつに勝てたら考えてもいいぞ」
揚羽は俺の腕を引き、俺の腕に抱きついてきた。
やっぱりね。
「ちょっと待ってよ。俺を巻き込まないでくれないかな」
「ということは、大河君に私が勝てたら婚約してくれるんですね」
「婚約をするんじゃない。婚約を考えると言ったんだ」
しかし、揚羽と直哉は俺の話を聞いてくれなかった。
いや、聞いてくれよ。
「解りました。まあ、そういうことなので。大河君、私と一つ手合わせをしてくれませんか?」
直哉は俺に視線を送ってきた。
「嫌です」
俺はすぐに断った。
「まあ、そうだろうな」
揚羽は俺の性格をよく知っているので納得していた。
「そこをなんとかしてくれませんか?」
直哉は喰い下がってきた。
「嫌なものは嫌です。もともと、俺に利益がありません」
「じゃあ、これなんかどうだ?」
揚羽はいつの間にか俺の携帯を握っていた。
「なんであんたがそれを持っているの?」
「まあ、気にすんな。それより、今からお前を十分やる気にさせてあげるから」
やる気にさせるどうやって?
「まず、始めにメールを開き、宛先に優燈をセットします。そして、文章に『今夜、一緒に寝てもいいよ。それから、優燈がしたいことをしてもいいよ』と打ち込みます。そして、後は送るだけ」
「ストップ!」
俺はすぐに揚羽を止めた。
「ん?なんだ?私は忙しんだぞ」
揚羽は俺に携帯を見せびらかしながら微笑んでくる。
悪魔だ。悪魔がここにいる。
「やるから。やるからそれだけは許して」
「そうか。私の為に手合わせをしてくれるか」
むしろ自分の為です。
「それじゃあ、会場を用意するのでこちらに来てください」
直哉は俺が手合わせしてくれることに対してすごく嬉しがっていた。
「へいへい」
俺はというと、もうどうでもよくなっていたので、ただ直哉に従うだけだった。
次回予告
作《次回は後編をお送りいたします》
大
作
大
作
大《・・・・・・あれ?今回はこれだけ?》
作
大《なんで?いつも、俺をバカにすることばっかり言ってるじゃん》
作《だって、時間がないんだから仕方がないじゃん》
大《なぜ?》
作《日曜が試験で、勉強しないといけないからだよ》
大《じゃあ、投降するなよ!!》
作《だって、続きが気になる読者がいるかもしれないじゃん》
大《でも、お前って文の才能がないから読みにくいぞ。それに、この小説を待っている奴なんかいないって》
作《大河、俺が気にしていることをそれ以上言うと大変だぞ?》
大《何が?》
作《優燈と揚羽に襲わせてやる》
大




