No,15 揚羽の思いと優燈の気持ち
今回は揚羽視点でお楽しみください。
私はゆっくりと顔を近づいていく。
大河は覚悟を決めて眼を閉じた。
相変わらず可愛い奴だ。
私はこの時は本気で大河にキスをしようと思っていた。
しかしこの時、私はある気配を感じた。
気配からしてこれは優燈だな。
たぶん、優燈のことだから大河の昼食を持って来たんだろうな。そして、偶然この場所に居合わせてしまった所か。優燈の為にもこれ以上は止めとくか。
「ぷ、あははははは」
私はとりあえず起き上がり、笑い声をあげといた。
「いや~、こんなに本気にするとは思わなかったぞ」
大河は驚きながら目を開ける。
「あ~、やっぱり。冗談だったんだ」
大河は冗談とわかった所で、複雑な顔をしていた。
「いや~、悪い悪い。」
「それで真面目な話で、本当に俺に何をしてほしいの?」
う~ん、明日は確か面倒なパーティがあったからそれに付き合ってもらうかな?
「そうだな、お前、明日は何か予定あるか?」
「え?明日?明日は確か土曜日だから暇だけど」
「じゃあ、明日一日だけ私に付き合え」
「なんで?」
「それは明日になったら教える」
今、教えるとつまらないからな。
「わかったよ。それじゃあ、明日そっちにいけばいいの?」
「ああ、そうしてくれ。時間はそうだな。一〇時頃になったら来てくれると嬉しい」
そんで、来たら服を着替えさせて、パーティ会場に行こう。
「わかった」
「それじゃあ、私は戻るけど。お前はどうする?」
私は立ち上がり、大河を見下ろす。ついでにパンツもわざと見せてみた。
大河はこれでどういった反応をするのが楽しみだ。
「いつも通り。昼休みが終わるまで寝ているよ」
大河はただスカートの中を意識しないようにしているようだった。
うぶな奴だな。そこがまたからがいがあって楽しい。
「わかった。授業には遅れるなよ」
私はそう言って、屋上を後にする。
「わかっているよ」
後ろからそんな声が聞こえてきた。
私は屋上を後にし、旧校舎の中に入り、階段の踊り場で止まった。
「私に対してのかくれんぼは意味がないんだから、そろそろ出てきたらどうだ?」
私がそうゆうと物陰から、サンドイッチやカツサンドが入っている袋を持った優燈が出てきた。
予想通り、大河に飯を持ってきたんだな。相変わらずこいつは健気だな。
「お姉ちゃん」
優燈は深刻そうな顔をしながら、揚羽を睨みつけてきた。
「ん?」
「単刀直入に言うけど、大河と付き合ってんの?」
う~ん、どうやらさっきの状況を見られたようだな。まあ、私はあまり気にはしないがな。
「付き合っているっていったらどうする?」
「もちろん、大河のことを諦めるよ」
優燈は静かに言った。
嘘だな。
なんせ、現にホルスターに片手が伸びているし。たぶん、私が答えた瞬間、銃で撃ってくるつもりだな。じじい共が来るのも厄介だし、ここは優燈の為にも正直に話すのが賢明だな。
「・・・・・いや、付き合ってはいないぞ」
「じゃあ、なんでキスをしたの?」
キス?ああ、優燈から見ればそう見えたんだな。
「キスなんてしてないぞ」
「嘘だ!」
優燈は大声で言ってくる。
おいおい、そんな大声出すと大河に聞こえるぞ。
「嘘なんかじゃない、本当だ。私は少しばかり大河に悪戯をしただけだ」
「でも、私は見たんだよ。お姉ちゃんが大河にキスするところ」
「あれはお前の方から見てそう見えただけだ。それになんだったら大河に聞いてみればいいさ。私とキスをしたのかどうか」
私は威嚇するように優燈を睨みつけた。
「そ、それは」
優燈は眼をそらしながら口を濁らす。
やはり、まだまだ精神は弱いな。
「だったら、この話は終わりだ。私は戻るぞ」
私は優燈にそう言い聞かせまた階段を降りはじめた。
「ねえ、お姉ちゃん一つだけ聞かせて」
私が優燈の隣をすれ違う習慣、優燈が私に話しかけてくる。
「なんだ?」
私は足を止め、振り向かずに話を聞いた。
「お姉ちゃんは大河のことを男として好き?」
「ああ、好きさ」
私は正直に告白した。
「私は大河を男として好きだ」
「告白はしないの?」
「告白?私が?はっ、そんなのやっても意味ないさ」
「そんなのやってみないとわかんないよ?それとも私に気をつかっているの?」
「いや、気を使っているわけではない」
「なら!」
優燈が振り向いて話しかけてくるのがわかった。
「『告白すればいいじゃない!』って言いたいのか?それは無理だよ。私にはそんな資格なんてないんだから」
私もゆっくりと振り返った。
優燈はどこかとても悲しそうな顔をしていた。
「資格?それってどういうこと?」
「いずれ話すよ。まあ、そういうことだから優燈はがんばって大河を自分の物にしろよ。なんせ、私というライバルが辞退しているんだから」
私は苦笑いしながらゆっくりと大河の頭を撫でてあげた。
「うん。がんばる。でも」
「でも?」
「大河がお姉ちゃんに告白したら受け入れてほしい」
「なっ」
優燈の思いがけない一言に私は驚いた。
「何?その驚がくな表情は?」
「いや、優燈が意外なことを言ったからつい」
「失敬な。私はいつも大河の気持ちを第一に優先しているんだよ」
いや、確実にしてないから。
「わかった。約束しよう」
「うん。約束」
「じゃあ、約束ついでに一つ、大河についてのおもしろい情報を教えてあげよう」
私はこの時、仕返しとばかりにある事を思いついた。
仕返し?誰にだろ?まあいい、大河辺りにしとこう。
「面白い情報?何?」
優燈は見事に喰いついてきた。
「じゃあ、ちょっと耳を貸してくれ」
私はそう言って、優燈に耳を傾けさせた。
「ごにょごにょごにょ」
私は優燈の耳元で囁いた。
「え?それ本当?」
「ああ、本当さ。なんだったらすぐに大河のところに行って確かめればいいさ」
「うん。わかった」
優燈は急いで大河の所に向かった。
私はそれを静かに見送った。
「さて、私も戻らないとな」
私は再び歩き出した。
『大河がお姉ちゃんに告白したらそれを受け入れてほしい』か。優燈それは無理な話しだよ。だって私は・・・・・本当は生れてはいけなかった人間なんだよ。
でも・・・・・。
それでも、大河がの事を好きでいさせてくれ。
次回予告
作《今回は特別ゲストとして聖純揚羽に来てもらいました》
揚《ども~、聖純揚羽です》
作《いや~、今回は大胆な行動に出ましたね》
揚《いや、あれは私にとってまだ序の口の方だ》
作《あれで序の口なんですか?》
揚《ああ、そうだ》
作《それじゃあ、本気でやるとしたらどうゆう風になるんですか?》
揚《そうだな~。とりあえず、あのまま連れて帰って私の部屋に監禁するだろ。んで、大河か感じやすいところを攻め、精神が折れる寸前まで我慢させる。そして》
作《すみません。もう、結構です》
揚《お、そうか?これからがいいところなのに》
作《いや、マジで勘弁してください。これ以上言ったら大河が可哀想になってきます》
揚《そうか。なら仕方がない》
作《それでは、そろそろ次回予告をしましょう》
揚《そうだな。次回は私のアドバイスにより、また優燈が暴走するから。よろしく》
作《結局はあんたのせいなのね》
感想などをお待ちしております。また、訳合って今週の土曜日には投降ができないので一週間後の木曜日に投稿いたします。




