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No,11 授業前の一時

「さて、遅刻した言い訳をどうしようかな?」

 俺は学校の中に入り、教室に向かっている途中だった。

「言い訳って、寝坊をした訳ではないだろ」

 そして、俺の隣には何故か作業着を着たお爺さんが歩いていた。お爺さん立派な髭を撫でながら窓を見て俺に話しかけてくる。

「まあ、それもそうだけどさ。でも、遅刻は遅刻だろ」

「だったら、ワシがお主の担任に言っておくか?」

「いや、いいよ」

「何故じゃ?」

「俺、権力使うのってあんまいい気分がしないんだよね」

「まあ、それもそうか。ワシもあまりこういうことで使いたくないからの」

「だったら言うなよ」

「お前だから言っているんだぞ?」

「その気持ちだけ受け取っておくよ」

「あああ、そうしとけ。まあ、後でまた何かお礼するかもしれんから楽しみにしとけ」

 お爺さんはカッカッカッと笑った。

「野菜以外で頼むよ。ああ、それと、今頃になったけど野菜ありがとう。すごく助かるよ」

「うむ、どうじゃ?美味かったか」

「もちろん」

 俺はそこで、自分の教室に着いた。

「それじゃあ、これで」

「うむ。勉強を頑張るのじゃぞ」

「わかっているよ。じーさん」

 そうして、俺は自分の教室の扉を開けて、中に入った。

 中に入ったらやはりクラスのみんながこちらに視線を送ってくる。

「主席番号一二番琥牙大河。遅刻しました」

 俺は教卓にいる適度に髪を切り揃えた何故か上着代わりに胴着を着た先生の方を見て言った。

「琥牙が遅刻なんて珍しいこともあるんだな。それで、理由は?」

 教卓にいる先生は、日誌を見ながら聞いてくる。

「不良どもとケンカしていました」

 俺は遅刻の理由を考えるのが面倒だったので素直に答えた。

「勝ったのか?」

「一応、勝ちました」

最後の最後に優燈に助けられたしね。あれがなかったら俺は今頃、病院送りだ。

「まあ、今の状態のお前が負けるとしたら師範か俺や揚羽ぐらいだからな」

 先生は笑いながら具体例を出してくる。

「そうなりますね」

 俺もその事を本当に思っているので頷いておく。

 この先生は、隼剣はやぶさつるぎと言って、俺らの担任であって、聖純院の師範代をやっている人だ。科目はもちろん体育でみんなからけんさんと呼ばれている。

 ちなみに、さっきの作業着のお爺さんは聖純煉磨きよずみれんまと言って、この学園の理事長であり、聖純院の師範。そして、揚羽と鈴の祖父だ。でも何故そう言う人が、作業着を着ているのかというと、答えは簡単で単に事務員も兼ねているからである。しかし、この学園の大抵の生徒は煉磨が理事長だということを知らない。

「それじゃあ、琥牙は座れ。あ、それとお前は遅刻扱いにはしないから」

 隼先生は名簿表に書き込みながら言ってくる。

「え、どうしてですか?」

 俺は席に座りながら。

「どうせ、お前のことだから巻き込まれたんだろ」

 先生。よくわかったね。

「それに、鈴が『大ちゃんは私の代わりになってくれたんだから遅刻にしないで』って頼んでくるわ。優燈がいきなりロッカーからスナイパーライフルを出して外に射撃した後、『大河を遅刻させたら、一人でいる時、気を付けた方がいいよ』って脅してくるし大変だったんだぞ」

「あははは」

 俺は優燈の話を聞いて笑うしかなかった。

《真面目な話で。お前、後でちゃんと優燈に注意しとけよ》

 隼先生が俺にアイコンタクト送ってくる。

《わかってますよ》

 俺も隼先生にアイコンタクトで返した。

 無いと思うけど、俺の仲間に人殺しを出したくないもん。

「ああ、悪い。琥牙の件でホームルームが長引いてしまったな。それじゃあ、今日も一日勉学に励むこと。日直挨拶」

「起立。礼」

 龍が挨拶をすると隼先生は教室から出ていった。

「大ちゃん大丈夫だった?」

 鈴が心配そうな顔をしながら俺に近づいてきた。

「ああ、大丈夫だよ」

 俺は鞄から荷物を出して机の中にしまう。

「でも、最後は危なかったけどね」

 優燈は俺にゆっくりと後ろから抱きついてきてくる。

 俺はいつものことなのであまり気にしない。

「優燈。それは言わない約束だ」

「貸し一つだからね」

 優燈は耳元でぼそっと呟いた。

「その話はまたあとでな」

 たぶん、優燈のことだから無茶なことをお願いしてきそうだな。

「ところで、鈴。みんなにOK貰ったのか?」

 俺は話題を変える為、鈴に今日の朝に言われたことを聞いてみた。

「あ、そういえばまだだった」

「ん?それって何の話?」

 優燈が興味ありげに聞いてきた。

「今日の放課後、大ちゃんを私に貸してくれないかって話?」

 鈴は微笑みながら優燈に説明した。

「だめ、大河は私の物っ!」

 優燈は何かを勘違いしたらしく俺を引き寄せる。

「鈴、ややこしい言い方をするな。それと優燈、いつから俺はお前の物になったんだ。つか、いい加減、離せ」

 頭にすごく柔らかい物が当たっているんだよ。

「お、なんか面白いことをやっているじゃん」

「くそ~、大河~、相変わらず優燈といちゃつきやがって。羨ましいな」

 俺の声を聞きつけたのか、龍と直斗が近づいてきた。

「あ、ちょうどいいや。龍達にも聞きたいことがあるんだけど」

「お、何何?好きな人のタイプ?それなら、鈴のそんな膨らみのない胸じゃ俺のタイプにはならないぞ」

「・・・・・とりあえず、くたばれ」

「え、ちょ、待っ、ぎゃー」

 鈴は青筋を立てて直斗に襲いかかった。

 直斗、お前は少し黙っていた方がいいぞ。

「それで、一体何の話だ?」

 龍は鈴達の様子を見て苦笑いをしながら俺に聞いてくる。

「大河は胸が大きい方か小さい方どっちが好きかって話」

 優燈は頬を赤くしながら龍に教えた。

「おい、勝手に話を捏造ねつぞうすんな」

「大河はどっちかというと、揚羽姉ぐらいがいいんじゃないのか?」

「そうそう、あの柔らかさがって、おい、勝手に俺の好みを決めるな」

 俺は龍を睨みつけた。

 そして、何故だか優燈が俺の頭にしつこく胸を当ててくる。

「・・・・・優燈。頼むから、頭に胸を押しつけてこないでくれ」

「大河は私とお姉ちゃん。どっちの胸が好き?」

 ・・・・・あ~、もう頭が痛くなってきた。

 そんな、授業前の休み時間だった。


次回予告

作《次回はちょっとした授業風景になります》

大《やっと、学園物になってきたな》

作《大河はいつもどおり被害者になります》

大《あ、それは変わらないのね。そろそろ、主人公に優しくしようって思わないの?》

作《次回もお楽しみに》

大《うわ~、無視された》

作《感想などお待ちしております》

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