仔猫と日向ぼっこ~夜と月~
このお話はナオとユキのお話をと、リクエストを頂いて書きました。
「ぼくはナオ。きみは?」
月は、普段は黄色っぽく見えるけど、満ちて丸くなると夜空を白く照らし出す。
秋のとある夜にそのネコ、
「ユキ」
――ユキを見かけた時も、真っ白い体は地上の月みたいだなと思った。
◇◇◇
ユキと出会った時の夢を見てから目を覚ますと、真っ暗だった。どうやらまだ真夜中みたい。
……あれ? 妙に窮屈だな?
寝床のちぐらは大きくはないけど、子ネコサイズのぼくにはそれなりの広さがある。
それなのに、今はやけにギュウギュウな感じがして、おまけにぬくぬくと温かかった。
その時、カーテンの隙間からちらりと月の光が差し込み、ちぐらの中を薄く照らす。
「ユキ?」
真っ白い体がぼくの横にキュッと詰まっていた。クンクンと鼻を動かすと、すっかり嗅ぎ慣れた優しい匂いもする。うん、ユキだね。
でも、どうしてぼくのちぐらに居るのかな? 今日は別に寒くもないのに。
「ナオ……」
首を傾げていると、ユキが呟いてもぞもぞと動いた。寝言みたい。
それがなんだか切なげに聞こえて、ぼくはユキの体をぺろぺろと舐めた。
ほら、ぼくならここにいるよ?
するとユキは目を覚ました。
ぼんやりしていた瞳のまま、狭い中でキョロキョロして、ぼくを見付けて「良かった」と言って笑った。
「どうしたの?」
「夢を見て……。ナオとお別れした時の夢」
「もう雪みたいにはならないよ」
ひと呼吸も開けずに返す。
前はうまく返事を出来なかったけど、今ならいくらだってしてあげられる。
ユキはまた嬉しそうに笑って、「うん」と頷いた。
「今日はこのまま一緒に寝てもいい?」
「良いよ」
「狭くない?」
「狭くないよ、あったかい」
なんならもう一つ、少し大きめのネコちぐらを買ってもらおうかな? ううん、この方がぴったりくっ付けて良いよね。
「そうだ、初めて会った時のこと覚えてる?」
「もちろん、覚えてる」
「ぼくはユキのこと、月かと思ったんだよ」
水面に月が映ると、月が二つになって明るさが増すでしょ? あんな感じを覚えたんだ。
すると、ユキはくすくすと楽しそうに笑った。何か変なこと言ったかな?
「こっちこそ、ナオのこと『夜』かと思ったよ。だって、真っ黒なんだもん」
「夜?」
そっか、そうだったんだ。ぼくは凄く納得してしまった。
――ぼくが夜だから、月が必要だったんだって。
「それじゃあ夜さん、今夜は仲良くしてください」
「今夜だけじゃなくて、ずぅっとよろしくね。お月さま」
《終わり》
二匹のイチャイチャが見てみたい、というリクエストでしたが、少し切なさのあるほのぼの話になりました(^^)