第5話 絶対にぶっ掛けてやるからなっ!
やってくれたな神(笑)さんよー!
俺は草原に一人、絶望の中で打ちひしがれていた。。
台無しだ、俺の計画が。。
街中で安全なボーション無双で勝組ライフが…
何だよローションって!違うだろーがクソがっ!
あの時だよな、スキル付与のときに『あっ。』とか聞こえた時だよな。
可怪しいと思ったんだよ、でもさ?仮でも神が間違う訳がないと信じてたんだよ。
あの後やたら気前良くスキルや神具なんかをポンポンくれる筈だよ。
あれか?靴もそうなのか?何か取って付けた様にヌメリでも歩けるとかさ?
アレ、ローションの事言ってやがったのか!
最後もそうだよ、如何にも神妙に『何が有っても恨まない様に』とかさ?
優しげなセリフの中に混ぜて来やがって!
恨むに決まってるだろーがっ!
1番やっちゃ駄目な奴だろ?
俺が選べたたった一つの特典スキルじゃねーかよっ。
他のスキルならまだ許せたかも知れないけど、これは駄目な奴だろーが!
格好付けて無数のスキル並べやがって、その挙句にこの仕打ちか?
ちゃんと確認しねーから間違えるんだよ。
自分で『やり直しは出来ませんよ?』とか振ってきたクセに
お前自身が間違ってりゃ世話ねーよ!
『余程の事が無い限りは、二度と合うことはないでしょう。』
だと?余程の事だよっ!出てこいこの野郎!
覚えてろよ!何時か聖王国に行ってお前の石像にローションぶっ掛けてやるからな
このクソ神(笑)がーっ!
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何時終わるやもしれぬ呪詛の数々が頭の中でグルグルと流れて行く。
「ローションでどうすれば良いんだよ?売れるのか?王都とかの都会ならまだ夜の店でワンチャンあるかも知れないが、開拓村でどうしろと?いや、まだ慌てる時じゃ無い、効果は付けられるはずだ。」
前に読んだラノベでは、ボーションは飲むだけじゃなく掛けても効果は有った。
俺は先程のボーション……ローションの容器を地面に叩きつけ、その破片で自らの右手親指を傷付けた。そして。。
「治療ポー……クソが…治療ローション出ろっ!」
都合3度目の見慣れた容器、中身は半透明の緑、治療ローション(泣)
それを傷口に掛けてみた。
「ヤダッ、何かヌルヌルするっ!って、おぉ?傷が消えた?」
効果は確かに在る様だ、まぁこれで無かったら救われないのだが。
「これなら何とかなる?かも知れない気がする…なったらいいなぁ……。」
希望を取り戻して顔を上げたその時、遥か道の彼方にこちらに向かう何かが見えた
近付いて来るとそれが馬車だと確認できた。
幌の無い荷馬車の様な物に、食糧や丸太等の資材らしき物、乗員は御者を含めて6人、馬車を中心に三角形に囲んだ武装をした3人その様子が確認された。
俺に気付いたらしい武装をした内の一人の男が腰の短剣に手を掛けて誰何して来た。
「お前は何者だっ?」
「いや、俺はこの先の開拓村で働く予定なんだけど一人だからどうしたら良いのか悩んでた所なんだ。」
男は御者に目配せしながらも会話を続ける、御者は何か皮の様な物を取り出した。
「確かに先に開拓村へ向かう予定の者が一人居た筈だが名前は?」
俺は先程確認した名前を告げる。
「シュートって言います。」
名を告げると御者はさっきの皮に目を通す
「確かにその名前は名簿に乗っているな、間違いないみたいだ。」
安心したのか男は短剣から手を放して一息付いた。
「悪かったな疑って、だがな?街道の草むらから行き成り出て来たら盗賊を疑うだろ?お前もわるいぞ。」
「王国は治安が良いと聞いてたんですが盗賊がいるんですか?」
俺は神(笑)に聞いた情報に疑問を持った、まぁ比較的とも言ってた気もするが。
アイツはもう信用できないからな!
「何だ?お前も流れか?どこから来たのか知らんが盗賊が一人も居ない国何かねぇよ、まぁ王都周辺なら街道警備も多くて比較的安全だけどな?」
やっばり比較的なのかよ。
「シュートとか言ったか?俺はギゼルここに居る全員が第三期開拓民だ、俺とあいつ等三人は組合で依頼を受けて馬車の護衛、その後は村の警備をして村が出来上がったら組合員を引退してそのまま移住の予定だ。」
「組合員?ですか?」
「なんだ、どこの田舎から出てきたんだ?俺等3人そっちの男はハマギってんだ、そしてもう一人の女がタバサっつって三人共【自由職業斡旋所組合】って所の組合員て奴さ。何時も三人パーティーでつるんで依頼を受けていたが、いい加減蓄えも出来たしここいらで危険な仕事をなるべく控えて、開拓村でのんびり狩りでもしながら過ごすのも良いかと思ってな?今回の開拓村護衛依頼を受けたって訳だ。」
【自由職業斡旋所組合】って。。長いし名前ダサっ!
これが神(笑)が言ってた冒険者に似た組織って奴か?
まぁ、仕事全てが冒険って訳じゃ無いだろうし、所詮ラノベの中の名前だしな、現実はこんな物か。
「まぁ話は取り敢えず開拓村に着いてからしようや!こんな場所だといつ本物の盗賊が出るかわからねぇしな!これからは同じ開拓民だ、宜しくなシュート!」
そう言って笑顔で差し出された右手を俺は力強く握り返した。
「ヤダッ、何かヌルヌルするっ!」
あっ、さっきの治療ローション手に付けたままでした。。
やってみせるぜ、ローション無双をなぁ!