第2話 説明回拡大すべっしゃる
そこは一切の光も存在しない真っ暗な世界、小部屋なのか永遠に広がる空間なのかそれすらも分からない。
なのに不思議と自分の身体は視認出来る、手足を軽く動かして見ても違和感は無い本当に死んでいるのだろうか?
『アナタの記憶にある通り、間違いなく強盗に撲殺されましたよ。』
その声は子供の様な年寄りの様な男なのか女なのかも分からない、どれも正解でどれも間違いの様な気もする。
遠くから響いてくる気もするし頭の中で囁いている気もする、そんな感覚。
「あの、貴方は何方様でしょうか?」
『ふむ…アナタの質問に対する答えならばワタシは超高位精神エネルギー体、アナタの住んでいた世界から僅かにズレた世界に位置する存在、アナタ達人類が概念として認識する所の神という者に近しい存在かも知れません。名前と言う固有の記号は持ち得ませんので好きに呼んで頂いて構いません。」
その存在(仮に神と呼ぶ事にする)は何の目的で俺の前に現れたのだろうか。
『別にアナタだけと言う訳では有りません、これまでも過去に多くの者達がワタシとの対話を経て行きました。それと目的ですが、アナタにはお願いとしてワタシの実験にお付き合いして貰いたいのです。』
実験…何故か神の実験とやらに殊更MADな香りがするのだが気のせいだろうか?
断固として拒否したい所だが、仮にも神の願いを断るという勇気が無い。
正になにが起こるのか分からない。
『心配しなくても断ったとしても別に何も有りません。ただアナタと言う存在が消滅するだけですよ。アナタ方人類が定義する様な天国や地獄、ましてや輪廻転生と言う物も存在しません、ただ消滅するだけです。』
いやいやイヤイヤ嫌嫌〜!怖いから、怖すぎるからっ!
「き、聞きます!何をすれば良いのでしょうか?実験とは何でしょうか?」
選択肢なんか無かったのだ、存在の消滅それは強盗に撲殺された時よりも遥かに恐ろしいと感じる。何も無くなると言う事が……
『ご協力感謝します。どんな実験かと言うと、そうですね……。』
そこから神(仮)の長い説明が始まった。
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或る時その存在は産まれた。
永遠とも言える遥か昔に、気付いたらそこに居た。
誰かが産んだのかそれとも造ったのか?それすらも分からない。
ただ、最初にそれに与えられた情報は【創造せよ】それだけだった。
最初に暗闇の中に光を作り、一つの星と呼ぶ大地を造った。
その星に極微小な生命を作り出し、その微生物に【増えよ、そして進化せよ】
という命令を与えた。
だが、何が悪かったのかその微生物は程なく死滅する。
それから永い時を掛けてあらゆる環境を変え数多の星を作り出し失敗を重ねる。
いくつかは成功に近い星も産まれた。
ある星では植物が進化し成長を遂げた。
が、成長し過ぎた植物は星の栄養を吸い尽くし枯れ果ててしまった。
またある星では虫が、爬虫類が、鳥が、海洋生物が、ネズミが、イヌが、猫が………
その尽くが進化半ばで失敗し、滅んで行った。
その残骸が宇宙と言う空間と様々な星達の集合体であると言う。
その中にある時地球と言う星が産まれる。
その星では様々な生物が奇跡の進化を遂げ共存して行く。
そして人間と言う種が産まれた。
その種は驚くべき進化をし、様々な道具を作り出し数を増やし続けた。
だが、いつしか進化を止め、その他の種を根絶やしにするばかりか同種間ですらも、領土、資源、宗教、思想、人種等の争いが絶えず、自らが破滅へと進んで行く
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『このままだと、程なくして地球は滅びるでしょう。人間は科学と言う物を進歩させ過ぎました、自らの首を絞める程に。やがて誰かがその終わりの口火を切るでしょう。それは確定した未来です、なので新しい星を創る事にしました。』
その星は奇跡の進化を遂げた地球とよく似た環境だと言う。
そして微生物からではなく最初からある程度の進化をした様々な生物を作り出し。
人間の様に知性を持っている種も居るのだと言う。
更に同種で争わない様に、色々な人種を造り同種で協力する様にした。
科学が発展し過ぎないように一部を除いて殆どの生命には魔力と言う地球には無いエネルギーを与えた。
だが、その為に弊害もあると言う。
『例えば人間は火と言う物を作る為にマッチやライター等の道具を作り出しましたが、その星では魔力によって火という現象を作ります。同じ様に様々な現象が魔力によって起こせる為に道具と言う物が中々進歩しないのです。』
そりゃそうだ、人間だって思うだけで色々な事ができるならば便利な道具何て作ることもなかったろうしな。
『その為に一部の魔力が少ない者達には不便な生活が與儀無くされているのです、だから無駄に膨大な雑学を持っているアナタには、その星で生活して貰いたいのです。そして密かに道具の発展に貢献して貰いたいのです。』
は?無駄とか言ったかこの神(仮)は?
無駄じゃねーよ!今迄に幾つのベストアンサーを貰ってきたと思ってるんだ!
神(仮)だと思って聞いてりゃ言いたい放題だな、怖いから言い返さないけど。
『その星に移住して貰うにあたってアナタにはいくつかの特典を与えましょう。』
「特典っ!それは?!」
少し、いやかなり現金だが特典と言う物に反応する。
『まずは新しい肉体、その星の知識、魔力とそれを利用するスキル、そしてアナタへの御礼としてワタシから一つだけアナタが欲しいと思うスキルを選んで貰います。勿論何でもと言う訳には行きませんが。』
まぁ、そう上手くチート無双ができる訳ないか。
大きな力は破滅への第一歩だしな、貰ったスキルで星が滅ぶとか怖いし。
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まずは新しい肉体だ。
悩んだ末に、新しい星では成人となる15才とした、身長は178センチでアスリート体型、黒髪黒目で微妙にイケ寄りにして貰った。
折角の新しい肉体だからと、すこし?希望を聞いてもらった。
次に知識だ。
昨今の異世界転移物ではその多くが何の知識も持たせずに放り出す。
普通にそんな事したら困るどころか下手すれば死んじゃうからね?
まず、その星の地理、軽く歴史等の時代背景等。
『その星には名前は有りません、まだ宇宙と言う概念が無いせいか星と言う認識も有りません。アナタの行く予定の大陸はクエスタと呼ばれています、主にアナタと似た姿のヒュームと言われる純人種が多数存在します。他にもライカンと呼ばれる獣人種やエルフやドワーフ等の半妖精種、フェアリー等の純妖精種、エレメント等の精霊種、ウルムと呼ばれる魔人種』
「魔人っ?」
『魔人と言ってもアナタの世界の小説や創作物で有る様なイメージの悪と言う訳ではなく、普通にその星で生きる一人種ですよ。まあ、どの種族も少なからず諍いなどを起こす場合も有りますが、概ねその星で協力して生活していますのでご心配為さらず。説明を続けても?』
「あ、ハイ。話を中断させて済みません。」
『お気になさらず、疑問もある事でしょう。主な人種はその辺りですが、他にもその亜種が少数存在します。他にも地球に居た物と似た生物、虫や魚、鳥、獣なども多種多様に居るのですが、大きく違うのは魔物や魔獣と呼ばれる生物が存在する事です。先程も言った通り、その星では略全ての生物が多少に関わらず魔力を持っています、魔物や魔獣はそれをスキルとして昇華し、体術や魔法と言う攻撃手段を持っています。そして、その多くが人間種に対して敵対性を持つのです。極少数の友好適性も存在しますが基本は敵対的と思ってください。クエスタ以外にも大陸や諸島、様々な島も存在しますがまだ海路の航行が発達していませんので行き来は難しいでしょう。勿論そこにも様々な生物が居ますよ。』
エルフにドワーフ、魔物や魔法スキルとか、正にファンタジー世界だな。
『次に情勢ですが、やはりどの世界も同じなのでしょうか、小規模ながら戦争のような物も時折起こります。大体は他種族との戦争ですが、同種の領土戦争や身分の開放等の争いも起こりますね。後は稀に魔物や魔獣の氾濫等も起こります、しかしどの争いも地球の様に科学の発展が無いので大量破壊兵器等の虐殺は行われません』
核やミサイルが無いだけで大分マシなのか?魔法とやらが少し心配だけどな。
大規模殲滅魔法でドッカーンとか、有る有るだよな。。
『心配しなくとも、まだそこ迄の魔力を持つ者は居ないようです。その星、まぁ世界としましょう、その世界には地球の創作物の様なレベルと言う物は有りません。上限も有りませんが鍛錬すればする程肉体や魔力は成長します、レベルで行き成り強くなる事は無いのです。しかし強大な力を得る前に寿命等でで死んでしまいますし、長命な種族は軒並べて穏やかな者ばかりです、自衛以外では力を行使することは無いでしょう。永遠の生命を持つ者が居ない限りは大丈夫です。』
なんか今、壮大なフラグが立つ瞬間を見た気がする……
キノセイか?
『次に経済の説明をしましょう。』
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『経済の話をするに当たって、少しアチラの世界の宗教について教えましょう。この話は後に経済と少し関係がありますので必要なのです。ワタシは過去に2度だけその世界に干渉した事があります。1度目は人類を創った直後、後に宗教戦争が起こらない様に、この世界には神は居ない、超高位精神エネルギー体であるワタシだけがそれに当たる存在だと告げる為に。その時に名を聞かれましたが、ワタシには名が無いので【管理者】であると名乗りました。それが訛って今では【神カリシャ】と呼ばれる一神教が出来たようです。』
出来たようですって、いい加減だなっ!それで良いのか信者!
『2度目の干渉は、それから少し経って各集落や種族間での物のやり取り、物流が盛んになった頃です。流通の活性化の為にそれまで物々交換だった所にお金と言う概念を与えました。その時に見本で作ったものが今では神貨と呼ばれています。絶対に劣化しない様に不壊の属性を持つ金属で作ったので、まだ残っているようです。』
何気なく出鱈目に凄いなこの神(仮)、やる事がとんでもスケール過ぎるだろ。
話が経済に繋がったのは分かったけども、宗教やらお金やら地球を反面教師に争い事が起きそうな問題を先に片付けた感じか?
『その時の硬貨を基本に今では数種類のお金が流通しています。』
(神)によると
地球の(日本の)価値観で言う百円に相当するのが銅貨らしい。
それを基準に
銅貨×20=大銅貨≒二千円
大銅貨×5=銀貨≒一万円
銀貨×20=大銀貨≒二十万円
大銀貨×5=金貨≒百万円
金貨×20=白金貨≒二千万円
白金貨×5=神金貨≒一億円(これは価値以上にプレミアが付いて粗使われる事が無い)
になるらしい。
昔は銅貨の更に下に半分に切った半銅貨や更に半分の四分銅貨と言う物も流通していたのだがバラ売りが少なくなり、今ではまとめ売りで銅貨からの取り引きが主流になったようだ。まだ使えると言う事だが
今では半銅貨や四分銅貨は子供のお駄賃として利用されているらしい。
それにしても、流石に(神)が作った神金貨、一億円とか凄いな!
いつ使うんだよ?家買う時か?
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『最後に大陸クエスタに置ける情勢の説明をします。』
やっと終わりか。結構長い説明だった気もするが知らなきゃヤバイ事も沢山あったしな、今更だけどかなり親切設定な気がする。
これを聞かずに放り出されて居れば確実に何処かで詰んでたかも知れない。
『クエスタには国と呼ばれる物がいくつか存在します。純人種の国では大きく4つ、一つはアナタを送る予定のネフタリス王国そしてアリシア皇国、この2つは比較的に治安の良い国で他種族とも有効的に交流がある国です。』
おぉ、良かったよ治安が良くて。比較的ってのが少し引っ掛かるけどな!
取り敢えず修羅の国じゃ無いだけ助かったと思おう。
『次にカリシャ聖王国、これは一神教である神カリシャを崇める国です』
どっか聞いたなその名前、てかアンタの事だろーが!
『その国では法皇と呼ばれる者が国を治め、その下に教義を管理する教皇、神官を束ねる枢機卿、民を癒やす聖女が存在し、更に司祭、司教、神官と呼ばれる者が信者である国民を管理する宗教国家です。治安は悪くはありませんが、閉鎖的で少し融通の効かない所もあるのが難点ですね。』
イヤイヤ、他人事の様に語ってるけども、その国の真のトップはアンタだからっ!
最後の説明だと思って突っ込みどころ満載だな?やっつけか?
『そして4つ目がグリンド帝国です。軍事国家を掲げて国民総兵制を義務付け度々他国へ侵略戦争を仕掛けています。ここが4つの中では1番治安の悪い国でしょう。』
帝国ヤバ過ぎるだろ、王国で良かったよ本当に。(神)有り難う御座います!
『先の聖王国とこの帝国は純人種至上主義を信じ、他種族に対して排他的な思想を持っています。ただし聖王国が他種族には干渉せずに静とするならば、帝国は他種族を排除せよ蹂躙か従属かの動と言う風に違いがあります。』
その後も説明は続いた……
獣人種は獣王と呼ばれる者を頂上に懐き、その地位は力至上。
3年に1度、獣王杯と呼ばれる闘技大会が行われその勝者が王を名乗る。
魔法は苦手で肉体的な個の力が重要視されると言う。
だが、普段は陽気でその日幸せで満腹なら他はどうでも良いと言う種族らしい。
エルフは長命で温厚、自然を愛し多くの者が森の木を住処に静かに隠居生活の様な暮らしをしているらしい。稀に人里へ旅立つエルフも居るみたいだ。
時折、生活圏の被る獣人種が狩りなどで森に入りエルフと諍いを起こす事もある様だ。
ドワーフは国と言う物を持たず、各地の鉱山で小規模ながら集落を作り、採掘をしているらしい。
極少数のドワーフは他種族の街に出て鍛冶や建築、工作などをしながら生活すると言う、鉄や火を愛するドワーフは、森や自然を愛するエルフとは相性が悪いとか
なんだかエルフぇ。。敵だらけかよ!温厚じゃなかったか?
フェアリーやエレメンタルと言った妖精や精霊は結構どこにでもいるらしい、ただ認識阻害の魔法によって普段は気づかれ難い、だが偶にイタズラ好きなフェアリーが他種族にちょっかいを掛けバレて捕まる事もあると言う。
それでも何故か直ぐに逃げられるらしい。
魔人種は魔王を筆頭に統一国家を築き上げ、絶対君主制度を確立している
ヒュームの国を挟んだ山脈の東側に君臨するその名も魔王国ダグニス
ちなみに魔王は死ぬと何処かで新たな魔王が産まれるらしい。
その産まれた子供が例え平民だとしても王として迎えられると言う。
やっぱり居たのか魔王!勇者も居るのかな?
まぁ、(神)によると悪では無いらしいし関係ないのか?
正にファンタジー!聞いていて段々と楽しみになってきた。
後はアレだな。スキルと特典だっ!
まだ駄目よ〜。まだ慌てて押すような時間じゃ無いよ〜。。