01話 『10歳の誕生日』
「ベルも今日で10歳ね」
「あぁ、ベルがどんなギフトを授かるのか楽しみだ」
そう言って嬉しそうに食事をしているのが僕の両親だ。
「お前には農地を継がせてやれないからな、せめて良いギフトを授かる事が出来ればいいんだが…」
父、ゲイルが少し申し訳なさそうに僕の頭を撫でる。僕の生まれた家は平凡な農家で跡取りは6歳年上の長男である兄ルイアスに決まっている。
「大丈夫よ、ベルは良い子だもの。神様もきっと素敵なギフトを授けてくださるわ」
「そうね!神様が私の可愛いベルに良いギフトをくれないわけがないわ!」
母であるマリーナと4歳年上の姉アイシャの言葉で緊張していた僕の体から少し力が抜けた。
僕、ベルリッツ・ネリウスは今日で10歳になる。辺境の村に次男として生まれた僕は成人するとたぶん村を出て自分の力で生きていくことになる。
僕の住むラハジ村は王国の西側の辺境伯が治める領地にあり、豊かな村だが、田舎である。
領主様の屋敷がある領都は冒険者ギルドや商人ギルドなどの各ギルドの支部などもあり街として栄えているが他は農地や森が多く長閑な風景が広がっている。
「ベルは何かしたいことはあるのか?」
「んー、あんまり思いつかない…あ、王都に行ってみたいかも」
「それなら王立学園に行けば良いと思うよ。あの学園は入るのは難しいけど色々な事を学べるらしいから、きっとベルのやりたいことも見つかるよ」
「あはは、王立学園は無理だよ…」
「はは!冗談だよ、あそこは貴族様や一部の天才が行く学校だからね、僕らみたいな辺境の村人とは住む世界が違うさ。」
兄さんの言葉に苦笑する。
王立学園に入るのは難しいどころではない。
村で1番優秀な兄でも到底無理だろう。
国内一と言われる王立学園に入学するには特別な何かがないといけない。
選ばれた人達のための学園なのだ。
「兄さん!ベルはまだギフトも決まってないからどうなるか分からないわよ、もしかしたらすっごいギフト貰って推薦とか来ちゃうかも!」
「ね、姉さん、苦しいよ…」
弟大好きな姉アイシャはそう言って僕に抱きついてくる。姉さんはいつも僕の事をほめてくれる。それは嬉しいけど抱きつくのはもう照れ臭いからやめてほしい…
「ギフトは遺伝する事が多いし、多分ベルも水系統のギフトだろ?」
兄さんの言葉に姉さんは拗ねたように頬を膨らます。
うちの家族はみんな水を生み出すギフトを持っている。水を生み出すと言っても1日にバケツ1杯程度なので少し生活が楽になるくらいのものだ。
「そろそろ時間だな」
父さんの視線を追って時計を見ると僕の生まれた時間が迫っていた。
いよいよかと姉さんから逃れて姿勢を正す。
ドキドキしながら目を閉じて待つが、何も起こらない。もしかして何も貰えないのかと不安になってきて恐る恐る目を開けた。
すると――
目に入った僕の体は淡い紫色の光で包まれていた。
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