話し合い
僕らは今カラオケの一室にいた。
しかし、だれも歌を歌うことはない。
「どう・・・・しようか。」
僕はうつむきながら独り言のように声を出した。
異世界に行ける事がうれしいとはいえ、殺し合いをしなくてはいけない。殺し合いという事実が空気を重たくしていた。
急に純がマイクを取り立ち上がった。
「アーアー、マイクテスト、マイクテスト・・・・ゴホン、あー静粛にお願いします。えーただいまから、念願の異世界転生に関する会議を始めたいと思いましす! 拍手―」
そういいながら元気よくバチバチと一人で手を叩いていた。
・・・「静粛に。」ってみんな静かにしてるだろ。 そう思いながら、僕は苦笑いをし立ち上がりもう一つの方のマイクを握った。
「えーー、今回のアジェンダは、異世界に行ったらまず何をしたいかについてです! 転生的なアレでで無双するのも、ダンジョンに行って財宝ゲットしちゃうのもありです。そして、醍醐味はエルフとイチャイチャしたり、ケモミミとイチャイチャしたり、小人族の合法ロリとイチャイチャしたり、ラノベ風の女とイチャイチャしたり、巨乳とイチャイチャしたり、貧乳とイチャイ・・・」
「長いって。お前はそれ言っちゃダメだろ。 唯ちゃんにおこられるぞ。」
純がやっとで突っ込みを入れてくれた。
ほかに誰とイチャイチャするか案がつきかけていたから助かったよ。
「まぁーそんなわけで異世界でどうするかを話し合おうか。」
僕は近くのテーブルにマイクを置き、普通通りの声で言った。
「とりあえず、転生ってことは赤ちゃんからってことか。」
純が意味深にいった。実に真剣な顔だ・・・。
「もしかしたら、5歳あたりで記憶が戻るって感じのやつかもしれないぞ。」
「そうか、それは困るな。」
「何が困るんだよ。」
「なにって、そりゃー、若人妻の〇っぱいをぺろぺろできないだろ。幼児プレイもできないしーー」
純は悔しそうに真面目な顔で言った。
「・・・・・いや・・でもな・・・・・お前、母親が相手だぞ。・・・それにお前ペドだろ。人妻もいいのかよ。」
おっぱ〇はともかく、幼児プレイには引いてしまった。そんな性癖があるということを今まで知らなかった。
ペドフェリアだけじゃなく幼児プレイにも興味があったなんて・・・
「ペドじゃなくてロリコンだっての!・・・はぁー、なんだよその顔は、異世界に転生したら誰もが一度はワクワクすることだろ。若人妻のおっ〇いだぜ。」
僕が引いているのは母親ってのと幼児プレイというとこ・・・
「・・・なんで、二人はそんなに楽観的なの?・・・旅行に行くわけじゃないんだよ。」
圭が僕らの言動が全く理解できないといった表情をしながら言った。
言葉はか細く、少し怒りも混じっているような気がする。
「殺し合いをしなくちゃいけないんだよ。みんな殺されちゃうかもしれないんだよ。なのになんでそんなに。・・・・純くんだって殺されるかもしれないのに何でお、おっ〇いとか幼児何とかとか、なんでそんないつもにみたいにエッチなこと言えるんだよ!」
圭はおびえた顔をしていた・・・。
圭の性格上やはり殺し合いは怖いようだ。家柄を考えれば圭が最も頼りになるし、死ぬ可能性が一番低いのも気はずなんだけど・・・。
・・・・・・そもそも、僕も殺し合いが怖くないわけではない。
しかし、女神の言葉を考えれば・・・・
「圭、あの美人女神の話聞いてたのかよ。」
純が笑いながらそう言った。
圭はぽかんとした顔で純の方を見た。
「女神は70年までに必ず一人殺せ。って言ったんだぜ。ハーレムを築いて周りからキミTHUEEEされて生きていけりゃあ十分だろ。」
純はやれやれっといった感じで言った。
「い、いやでも・・・・」
「顔も名前も変わってるんだ。ばれるわけないだろ。 何なら4人で一緒にいて襲ってきたやつをリンチにしてやりゃあいいんだよ!」
「そういうことだよ。だから圭も安心して巨乳探しでもしてなよ。あ、でもいざっていうとき頼りにしてるよ。」
圭の腕っぷしを叩きながら僕は圭を励ますように言った。
「・・・・そうだよね。大丈夫に決まってるよね。・・・・うん、任せて敵が来たら僕が返り討ちにするよ!」
圭は最後に「ありがとう」と小さく言い笑った。
「それじゃあ、大まかな方針としては、あっちに行っても殺し合いは避け、70年後に死ぬ。って感じだな。」
圭が落ち着いたのを確認し純が改めて話し合いを再開させた。
「そうだね、みんなでどこかに集合しようよ。」
「集合するのは賛成だがどうやって集合するかが難点だね。転生する顔も場所も知らないわけだし。」
「あ、そっか。顔も名前もだけど、どんな場所さえもわかってないのか。・・・・・あ、じゃー掲示板とかに僕らにしかわからない暗号で集合場所を伝えておくとかはどうかな。」
「難しくないか・・・それ」
「なんでだよー」
「掲示板があるかわからないし、仮にあったとしてもそれを見れるかわからない。ましてや暗号なんて言葉が変わるから無理だろ。ここの言葉で書いたらほかのやつにも内容がわからないとしても近くにいることはばれるだろうしな。」
「むー、じゃー純くんはほかになんかあるわけ。」
「いや、ないけどさ・・・・。」
そういい、二人ともうつむいてしまった。
30分後~
「顔も場所もわからないと集合するなんて難しいよ。」
「ダメもとで集合場所、時間を決めておこう。」
「だから和樹、なんもわからない状態でどうやって決めるってんだよ。」
「集合場所は、異世界でも最も大きな国のどこか。・・・・首都の冒険者ギルドあたりに。集合時間は18年後あたりでどうだ。成人して1年もたってるなら旅もできるだろ。できないなら使いを出せばいい。」
「そこに集まることができたとしてもどうやって俺らかどうか判別の?」
「誕生日は同じってことだったよな。なら、その18歳誕生日から30日間毎日決まった時間、決まった場所に来るというのはどうだ。30日間もおんなじ場所、時間に同じ人がいればもしかしたらとは思うだろ。」
「・・・・まー確かにそれならできそうなのか。」
純が首をひねりながら言った。
「でも、もし仮に和樹くんかもって思ったらどうやって声をかけるのさ。」
「お互い何日もそこにいるんだから声はかけやすいだろ。それとなく聞きゃあいいんだよ。」
「まぁそれはいいとして集合場所は最大国家の首都、冒険者ギルドでいいかな。」
「ああ、時間は人が少なそうなギルドが閉まる1~2時間前にしようぜ。時計がなかったら体感だな。仮に一日中開いている場合は日が昇る1時間前でどうだ。」
「僕はそれでいいと思うよ。」
圭が同意し僕も特に反論はないのでうなずいておく。
なんだかんだ、決まったことにほっとした。
これは文殊の知恵ってやつだな。
とはいえ、最大の国ってのがあいまいだし、期間に間に合わないってのもあるだろうから予備の案も考えておかないといけない。
「あとは何か話し合うことはなにかあるかな。」
「家族にお別れを言わなきゃいけないな。事情は説明できないが別れくらいは言えるだろ。そのための3日間かもしれないしな。」
純が寂しそうな感じで言った。
異世界に行けるといっても家族と離れるのはきっと悲しいのだろう。
といっても僕は仕事ファーストな親でまったくと言いていいほどかかわりのない家族たったからそこまで悲しくないけどね。
「あ、そっか。父とも別れることになるのか。」
・・・圭の家なら案外あっさりとした別れをしそうだな。
「和樹もいくら家族と疎遠だからって別れくらいちゃんとは言えよ。」
純が笑いながらいった。
「・・・言えたら言うよ。」
「おまえ、それ絶対言わないだろ。」
「置手紙くらいはしておくよ。あーでも、唯くらいにはちゃんと言っておくよ。」
「唯ちゃんも17歳だから選ばれているかもしれないよ。」
「そうか・・・・その可能性もあるのか・・・・・・。」
唯とは幼馴染の彼女というだけあって付き合いは長い。だから殺し合いに参加するとなっていたら嫌だ。
いろいろ、ダメな発言をしていたが唯を愛している。もし、唯もそうなら僕は何を犠牲にしてでも唯を守るつもりだ。
「・・・・まぁ、明日、どうにかして聞いてみるよ。・・・・・・・・・・さて、今日はここまでにして帰ろう。純も圭もいろいろあるだろ。悠大には今日のことメールしておくよ。」
「そうだな、俺んちはちょうど仕込みを始めるころかな。最後だし店の手伝いでもしてきてやるか。」
純の家は昼は定食屋、夜は居酒屋の人気店だ。
人通りが多い所にあり、かなり繁盛している。
当然僕らもよく昼飯なんかを食べさせてもらったものだ。
少しでも店の手伝いをしたいということで、今日のところは解散となった。
結局1曲も歌わずに1時間ぐらいでカラオケを出た。
薄暗くなった帰り道を一人で歩き、家に帰り着いた。
父は銀行員、母は弁護士だ。だから家もなかなか立派である。
外見だけは立派な家に鍵を開けて入った。
当然家の仲は真っ暗だ。二人はいつも遅いし帰ってこないときなんて珍しくもない。
この職業で家に帰ってこれないほど忙しいなんて・・・どんな仕事をしているんだか・・・。
ダイニングテーブルの上には札が五枚。1週間分の食事代とおこずかいだ。
毎週こんな感じだからお金に困ったことなどない。
貯金の意味もなくなった。・・・せっかくだから今日は寿司でも取ろう。もちろん特上だ。
アニメの映画を55型のテレビで見ながら届いた寿司を食べていた。
玄関からドアの開く音が聞こえた。
まだ、7時をちょっとすぎたくらいの時間だ。両親がこの時間に帰ってくるはめったになかったからすこしだけ不思議だった。
ドタドタと廊下を歩く音が聞こえてきた。
「なんだ、かえって来たのか。お帰りの一言でも言ったらどうだ。」
父だ。僕は特に振り返りもせずに「おかえり」と言った。
僕が「おかえり」といっても父の返事は聞こえなかった。すでに部屋に戻っていったのだろう。
十分くらいだろうか、しばらくすると喪服に着替えてどたばたとしていた。
テレビの音がよく聞こえないから音量を上げた。
「これから葬式に行ってくるから。 ・・・・まったく忙しいってのに勝手に死にやがって。死ぬなら迷惑をかけないように死ねってんだよ。」
父がいらいらとした口調で言った。父はずいぶんとご立腹のようだ。
「そ、いってらしゃい。」
どうでもいいから適当に返事をした。
アニメの音に父の声が混じるだけでストレスがたまる。
「お前はどうする。」
「行くわけないじゃん。」
先ほどよりも強い口調で答えた。話しかけるなオーラを出しているのによく話しかけてくるよな。ほんとに空気が読めない人だ。
はぁそんなことよりアニメだ。いま、感動的な場面なのだ。涙なしでは見れない場面なのだ。
近くにテッシュを置いておかないと水浸しだ。
その後、いろいろして達成感に包まれながら眠りについた。
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朝、制服に着替えて学校へ向かう。
もう学校には行かなくてもいいと思うが、圭たちとの待ち合わせがあるから行かなければならない。
階段を下りてリビングへ向かう。
いつも朝飯は用意されていない。
お湯を沸かしインスタントの味噌汁と炊いてあるご飯を食べる。今日もいつもと変わらない。
父さんが一緒に朝食を食べているが特に会話はない。
・・・・これからの事を話そうとは思わなかった。
僕の方が早く食べ終わり皿を洗い、カバンを手に取り外へ出る。おはようもただいまもないがいつものことなので特に気にすることではない。
自転車に乗って学校へ向かった。
ホームルームの10前ということもあり教室にはすでにほとんどの生徒が登校していった。
窓際の後ろの席、裏番が座るところが僕の席だ。
「和樹君、おはよう。」
陽気な声が聞こえてくる。
僕が荷物の整理をしていると圭が挨拶をしてきた。
圭が学校に来るは早い。なんでも、朝の稽古をやってから学校に来ているらしいのだ。
大変なことだ。
「おはよう、よく眠れた?」
カバンの中身を引き出しに入れながら聞いた。。
「んーまあまあかな。和樹君は?」
圭の目元あたりは少し赤くなっていたが特に何も言うまい。
「僕はぐっすり眠れたよ。生前整理をしっかりとしてきたからね。フィギアや紳士本は土に埋葬しておいたよ。」
胸を張りどや顔で答えた。
これで、土に還ることだろう。
これらにはずいぶんお世話になったものだ。
「そ、そう。」
圭はこいつ何やってんの?みたいな顔をしていた。
失礼極まりない奴だな・・・。
「相変わらず、お前らは早いな。」
純が眠そうに声をかけてきた。ホームルームの1,2分前。
圭はともかく、僕が早いわけではない。単純に純が来るのが遅いだけだ。かなりギリギリである。
「純君が遅いだけでしょ。ほら、先生もちょうど来たじゃん。」
先生が教室に入ってきて、圭は苦笑しながらそう言った。
いつものように先生がホームルームを行う。
「休みは浦河だけだな。」
周りを見渡し空席に目を止めて言った。
浦河というのは誠のことだ。あいつはちょくちょく学校さぼったりするからな。特にゲームの発売日の次の日なんかは必ずと言っていいほど休んでくる。徹夜でゲームをしているに違いない。
その後先生がいろいろ話した。
その中で、一つ気になることがあった。
“昨日の夕方、ある事件に巻きこまれた者がいる。その人は昼休み会議室に来るように”という連絡だった。
事件というのは異世界に関することだろう。生徒会長が何かしら手をまわしたのかもしれない。異世界のことは知られてはいけないからこんなあいまいな言い方をしたのだろう。
ホームルームが終わり純と圭で集まった。
「事件ってあれのことだよな。」
純が小声で話した。周りはガヤガヤしてるとはいえ、あまり周りに聞こえていい会話ではない。
「そうだと思う。」
「ここじゃ、なんだしよ、どこかに移動しよーぜ。もうすぐ授業は始まるからよ。」
「そうだね、もう授業も出なくていいからね。」
僕らはそう決めると教室を出た。
僕らは、学校の屋上に来ていた。
誰かほかの人もいる可能性も少し考えていたが幸いなことに誰もいなかった。
「事件って異世界に転生されることだよね。」
「俺もそのことだと思う。」
「会長が指示したんだろうな。」
「やっぱ、忠司君だよねー。頼りになるなぁ。」
「昼休みは会議室に行くか。」
「当然だよ。」
「和樹は。」
僕が黙っていたから、純が聞いてきた。
多少不安なことはあるが行く方がメリットが多い。少し懸念があるけど大丈夫だよね。
「・・・僕も行っていいとおもう。」
「ずいぶん悩んだな。何か心配事があるのか。」
「いや、大丈夫だと思う。気にしないで。」
そんなわけで昼休みに会議室に行くことが決まった。
数時間後、僕らは会議室へ向かった。
昼ご飯を売店で買いそれを食べてから向かているのですでに昼休みになってから30分ほどたっている。
別に詳しい時間の指定はなかったから遅刻はしていないよ。
会議室の前には眼鏡をかけた真面目そうな女子が立っていた。
「えーと、昨日のことで。」
ちょっとだけビビりながら言った。
あくまでちょっとだけだよ。
眼鏡をかけた女子、この学校の副会長である人に声をかけた。副会長は背が高いから結構怖い。漫画でいうとゴゴゴーーて効果音がつきそうだ。
副会長は僕らを一瞥し質問を投げかけてきた。
「昨日起こった事とはなんですか?」
「えーと。」
答えていいものか。もし、何も知らない人だとしたら、僕らはチーンである。・・・・・・・危険だ。
「・・・・ふむ、転生予定者のようですね。ここにクラスと名前を記入してお入りください。」
僕が戸惑っていると副会長は当然のように言った。
もともとこういう反応で確認していたのかな。
渡され紙に名前を書き会議室にドアを開け入った。
会議室にはすでに生徒たちが来ていた。教頭先生や体育の先生までいた。もちろん生徒会長もいる。
「さて、そろそろ話しましょうか。昼休みもあと30分ほどで終わることですし・・・。」
僕らが入ってきたと同時に、会長が穏やかな声で言った。
「さて、僕らは今日を入れて二日後に異世界に転生することになった。そのことを嘆いても仕方のないのでこれからのことを話合おうと思う。」
やはり話合いをするみたいだ。
しかし、嫌な予感がする。ここにいるのは僕らを入れて16人。4人余ってしまう。
「しかしその前に12人に絞らせてもらう。・・・そうだな、ここに一緒に来た人たちでまずは集まってもらえるかな。」
やはり、12人に絞るのだ。
周りを見るといくつかのグループができていた。
「さて、5人、2人、3人、1人、そして僕らとドアの前にいた副会長入れた5人・・・計5グループ16人ですね。」
会長は周りを見渡し穏やかな顔をしていった。
これで12人に絞るとしたら、まずい。12人にはいることができないかもしれない。
僕の額に冷や汗が垂れるのがわかった。
「同じグループの人たちを引き裂くわけにはいきませんからね、今の組み合わせでできる12人を考えると・・・・5、5、2の組み合わせがベストですね。 ということなので、そこの3人とそちらの方は退出してください。」
会長は穏やかで演技くさい笑顔を作りながら僕らともう一人の男子を見て言い放った。