元の世界へ
「さて、何か質問はあるかな。 質問があるなら手を挙げてね。・・・わかってると思うけどくだらない質問はしないようにしてね。」
女神は無事に説明を終わることができたことがうれしかったのか達成感に満ち溢れた声でそう言った。
声が出ないのに質問なんかできものか。そう思っていたら僕の右後方一人の男子高校生がまるで普段通り先生に質問をするかのように手を挙げた。
あ、なんか、見覚えがある顔だ・・・・あ、そうだ! 僕の学校の生徒会長だった。
名前は・・・まぁーいいか。確か、圭と知り合いだったような気がするけど。
会長もここにいるということは探せば知り合いが他にもいるのかもしれないな。
「とりあえず、一人なのかな。 それじゃー きみ。」あたりを見渡して会長を指さした。
「話せるようになったみたいですね。・・・・ではいくつか質問をさせていただきます。・・・まず一つ目にどのような基準で私たちを選ばれたのでしょうか。」
会長はいつも集会で話すときと全く変わらずにそう聞いた。
こんな状況でも変わらない態度だった。
・・・・・・・・さすがだなー
「えーと選抜基準ね。・・・・・・・・・」
間が開く。目がすいすいと元気よく泳いでいる。冷や汗のようなものまで見える。
・・・・・・・・・・知らないな。
「選抜基準はきみたちの町、願成地町の者たちだ。異世界の成人年齢17歳ということよりそちらの世界で17歳の男女を最頻値とした老若男女を集めた。それだけを知っていればいい。」
女神のすぐ左、僕らから見て右にいる耳の長いエルフのような美形の男性がクールキャラを装うかのように会長の方を向いてそういった。装うかのようにっていうか多分彼はクーキャラだな。
スカしててむかつくなぁー。
女神の方をフォローしたつもりなのかもしれないけど明らかに女神は落ち込んでる。
「コホン、えーなぜ、願成地町か知りたいところですが・・・教えてくれないのならいいです。知ったところで、ですので。
では、二つ目の質問を。・・・・異世界に転生し争うとしても寿命によって優劣が出てくるのではないのですか。それともみんな同じ寿命のなのですか。」
言われてみれば確かに種族の優劣があるよな。
一人でも倒してしまえば長寿の種族によっては何もしなくてもいいのかもしれない。
・・・・・放っておけば寿命で死んでしまうのだから。
人に至っては数十年くらいだろうからね。
「それは、問題ない。17歳の誕生日になったと同時に不老薬を与える。飲んだ年齢から老けなくなる。もちろん不老であって不死ではない。寿命で死ななくなるというだけだ。」
さっきのクーキャラが女神の方を睨みながら淡々とさげすむようにいった。
フォローのために1度目の質問を答えたのかと思ったが全然違ったみたいだ。
完全に侮蔑している。
きっと、このことも説明しなきゃいけないときに言わないといけなかったんだろう。
・・・・・あぁ、女神が泣きそうな顔になっている。
女神の隣にいるJCくらいの女の子、たぶん“ねぇーさま”って言っていた子が女神の手を両手で握ってクーキャラをにらんでいる。
「はぁー、まだ質問はあるかの?」
JCの隣にいる顎髭の立派な老人が呆れた様子で会長を見た。
「私たちが転生者を殺した時その人が転生者だと判別することは可能ですか?」
「可能じゃ・・・転生者を殺した時、不思議とそいつが転生者だったと理解することができた。だから、そなたたちがノルマを達成したかどうかは殺したらすぐにでもわかる。・・・・・・・・・・他に?」
「・・・・私はこれで以上だ。」
そう言うと一礼し手を顎に当て何か考えこんでしまった。
「・・・他にあるかの。」
老人は会長から視線を外しあたりを見渡した。
隣で動く気配がした。
隣を見ると純が手を挙げていた。小学生が手を挙げるときのような感じで・・・
「そこの・・・」
老人は純を一瞥し顎で指名した。
老人の声がこのなかで一番重みを感じてしまう。最も神様に見え、年を取っているというのもあると思うんだ・・・。
「ステータス画面やチートはありますよね。」
純は当然という感じで元気よく聞いた。
・・・・純、勇気あるよな。ある意味、尊敬するな・・・・。
あんな顔で見られたら質問なんてとてもじゃないけどできる気がしない。
「そのようなもの・・・あるわけないじゃろ。」
虫を見るような目で純を睨み、さっきよりもいっそう重みのある声で答えた。
こ。怖すぎる・・・
純もさすがに老人の声にビビったのか目をそらしうつむいてしまった。
「なんだ、ないのかよ}
ぼそっとそんな声が聞こえた。
・・・・・・こいつ、神経図太いな・・・。
それから手を挙げるものはいなかった。
気になるところはたくさんあるが怖くて聞けない・・・。
ほかの人もそうじゃないのだろうか。
「ほかにないようじゃな。 では元の世界に戻ってもらおう。次に来るのは3日後の今じゃ。くれぐれも秘密を洩らさんようにな。」
・・・・・・・・・・気づいたら教室だった。
「うお、どうしたんだよ、急に止まって。」
声がする方、後ろを振り返った。
あの空間にはいなかった誠が急に止まった僕らに困惑の表情をしていた。
「何があんのか見に行こうぜ。」
誠がそう言うと窓の方に小走りで近寄り、窓から顔を出してきょろきょろし始めた
しばらく外を見渡して誠は僕らの方に近づいてきた。
「何もなかったぜ。なんだったんだろうな。」
特に興味がなさそうにポリポリと頭を掻きながら言った。
「そう。・・・・・・ごねん、用事思い出したから今日は帰るよ。」
純と圭に目配せをして誠に向かってそういった。
「・・・あぁいいけど。本屋もいかないのか? 新刊の発売日だろ。」
誠は心配そうな顔でそう答えた。
僕らの態度に何か気づいてしまったのかもしれない。
「あー本屋ももう行かなくていいかな。もう・・・必要ないと思うから。」
作り笑いをしながら自嘲気にいった。
「そうか、じゃー俺も帰るから。 また、明日な。」
そう言うと誠は荷物を取って小走りで走って行ってしまった。
多分だが空気を読んでくれたんだと思う。
ありがたいと思ったけど何かさみしい感じがした。
「・・・・・どこか、話ができるところに行くか。」
誠が出て行ってから僕らの中で沈黙が流れていた。
それを破るかのように、純が静かにそういった。
周りは野球部の声やクラスの人たちの声で静かというわけではなかったのに、やけに純の声が響いたような気がした。