オタクなお友達
「な、なにがおこったの・・」
その声は妖艶な声でもなく、声変わりしていない女の子の声でもなく、はたまた枯れたじじいの声でもなかった。・・・聞き飽きた声だった。
まぁはっきり言うと、さっきまで教室で話していた友達の一人だね。
「なぁ、これって、あれだろ。」
もう一人の友達が戸惑いながらも興奮を隠せずにいった。
僕らは自然と向き合う形となった。
チビで絶賛ビビり中の友人(童顔)“圭”、少し肥満気味で鼻息が荒く場所によってはおまわりさんを呼ばれそうなもう一人の友人“純”。
反応はそれぞれだ。
僕は、どんな顔をしているのだろうか。どちらかというと純の表情に近いだろう。・・・・あそこまで興奮はしてないと思うが。
ここにいるのは僕も入れて3人。もう一人教室で一緒に話していた友達がいたがはずだが・・・そう思い周りを見渡しても同じ制服を着ている人たちはいてもその友人の姿は見当らかった。
「誠が見渡らないね。」
「そ、そうみたいだね・・・ここにはきてないのかな。」
僕と圭が周りをきょろきょろしながら言った。
純もそれにつられて興奮した顔を落ち着かせ周りを見始めた。
「お、あれ悠大じゃないか。」
純が細めの男子生徒を指さしていた。
「おーい、悠大」
純はその男子生徒の方へ手を振りながら走っていった。
僕らも純を追いかけるようにその男子生徒のところへ近寄った。
「悠大、おまえも来てたんだな。」
純はそう言いながら悠大の肩をトントンと叩いた。
悠大と純が並んで立っていると悠大は細めの体がより細く見えた。
デブとヒョロだから余計ね。
悠大は僕らの友達だ。ここにいる僕ら4人とここにいない誠は学校ではもちろん、休日でもよくみんなで遊びに出かけていたりする仲良しグループだ。
この5人グループは、オタク集団と周りの人からは言われているのだろう。よくアニメの話やゲームの話をしていたから。
オタク集団とひとくくりにされていたが、僕はアニメを少し見たりする程度だ。
まぁほかのクラスメイトからは同じようにみられていただろうけどオタク呼ばわりされるのはなんかいやだ。
実際アニメの話も純とかに比べれば拙いしアニメの話でついていけないことや負けることもあった。
しかし、“アニメのヒロインは巨乳“これは譲れなかったし負ける気もしなかった。
こんなわけで僕ら5人は仲が良かった。
ちなみに、悠大は貧乳派だというのを昔聞いた。
アニメで貧乳を求めるとは、まったくもって理解できない話だ。
リアルならまだしもアニメでも貧乳とは何の需要があるのやら・・・。
ちなみにその日、悠大は学校には来ていなかった。
学校の朝のホームルームの時、先生が山本(悠大)は家の事情で休むとホームルームで言っていた。
そしてホームルームの後、僕らだけには父親が自殺した。ということを知らされた。
きっと、仲が良かったということで知らせてくれたのだろう。
だから、悠大を見つけたとき僕はどう声をかければよかったのかわからなかった。
純が初めに声をかけてくれたおかげでその心配はなくなりホッとしていた。純もいつもはぐいぐいと気を遣わない性格だがさすがに今回は気を遣っているのだろう。
少し優しく感じた。
悠大は僕らに声をかけられると特に表情を変えることなく僕らと接した。
「ああ、純たちもここに・・・・・誠は・・・いないみたいだね。」悠大は僕らの周りを見渡しながらやけに落ち着いた様子で答えた。
僕はあまりにも落ち着いていたので正直気味が悪かった。
だって、父親が自殺して失意のどん底に陥っているとき、それに追い打ちをかけるように今の状況だ。発狂、もしくは放心状態になっていてもおかしくないと思った。
だから、ついふれてしまった。
そのまま、何もせずに話題に触れないようにしていたほうがよかったのかもしれないが・・・
「悠大。そ、その・・・親父さん。残念・・・だったな。 大丈夫なのか。・・・・・僕らにできることがあれば何でも言ってくれよな。」
一瞬、目を見開いてこちらを睨んだような気がした。
しかし、その表情はすぐに消え、さっきまでと変わらない穏やかなものに戻っていた。
諦念のように見えなくもないのかな。少し諦念とは違うような気もするが・・・・
とは言えやっぱり気にしていたみたいだった。 ・・・そりゃそうか・・・何も言わなければよかったな。
「えーと、とりあえずいまの状況を確認しようよ。」
圭が勤めて明るい声でそう言った。
きっと、今の雰囲気をどうにかしようとしているに違いない。
「これは、きっと定番の異世界ものだよな。 お前、憧れているってよく言ってたよなー。」
純は悠大の肩を組んだ。
「この後は、お前の好きな貧乳の女神さまが出てくるんだろうな。」
にやにやとした顔で悠大の脇腹をツンツンしてからかった。
「貧乳じゃなくてシンデレラバストです。 それに、ヒロインはシンデレラバスト派であって異世界の女神さまはかわいい、かわいい幼女派です。」
口調は強いが顔は朗らかでいつもの会話のような感じがした。ただ、いつもは敬語なんて使っていない・・・・
「当然だな。女神は幼女でヒロインも幼女。これが絶対不可侵だ。」
「でた、純のペドフェリア・・・」
僕の言葉に純がムッとした顔をした。
「僕はペドじゃない。ロリコンだ!まったく、何度言えばわかるんだよ!ペドなんかと一緒にするな!」
ロリコンはよくてペドフェリアはダメなのか・・・・
性的にいろいろしたいんならペドフェリアだと思うんだけどなぁ。
「胸とか、女神さまの話はいいから今の状況のことを話合おうよ。」
「圭は胸とかエッチィ話になるとすぐ話を帰えようとするからなぁ。お前はそんな顔して巨乳が好きなこと知ってるんだぞ!」
僕はからかうように圭の顔をにやにやしながら見た。
「べ、別、顔は関係ないだろ。和樹くんだって巨乳が好きなくせに・・・ってそんな話じゃなくて今の状況を話し合わなきゃ。」
照れているのか顔が少し赤くなっていた。
純粋だなぁー。
「僕は“巨乳も“好きだが”貧乳も“好きだ。 唯は貧乳だからね。それにおっぱいに貴賤はないのだ。おっぱいを差別なんてしてはならな・・・。」
大事なことを示そうとしていたのに急にしゃべれなくなった。
口は動くのに声が出ない。
声が出ないから口をパクパクしている。
耳が聞こえなくなったのかとおもった。
しかしほかの人ものどを触っていたり、口を大きく開けていたりする人がいるからそれは違うとすぐにわかった。
友人たちもさっきまでのお茶らけた雰囲気は消え失せさすがに動揺しているのがわかった。
異世界へGOするまでしばらくかかるかもしれませんがご了承ください。