表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖王伝  作者: 竜人
第四章 新たなる脅威
87/800

第87話

フランドールは邸宅に戻ると、客間に入ってベットに倒れ込んで悶絶していた

確かに剣は素晴らしく、炎が出るのは恰好良かった

しかし訓練場でみんなに注目され、そこでの称賛の注目は恥ずかしかった

後から考えて、もう少し人が居ない時にすれば良かったと思った

夕食の準備が進められていて、旨そうな匂いが漂って来る

そんな中で、アーネストが部屋に尋ねて来た

それはギルド長から剣を渡した事を聞き、その成果を聞きに来たのだ


コンコン!

「フランドール殿、よろしいですか?」


フランドールは気が付き、慌てて起き上がって返事をした。


「ああ

 どうぞ」


アーネストが入って来て、フランドールの前の椅子に座った。


「どうやら剣を受け取った様ですが、どうでしたか?」

「ああ…」


フランドールは質問に答えつつ、少し不満も溢した。


「立派な剣に仕上げてくださり、ありがとう

 しかし…

 あれはどうにかならなかったのか?」

「え?

 あれとは?」


「剣から炎が出る事だよ」


そこでアーネストは気が付くが、何が問題か気になった。


「何か問題がありましたか?」

「うーん

 問題は無いんだが、ちょっと…」

「ちょっと?」


「武器としては強力なんだが、少し恥ずかしかった」

「え?」


「訓練場で試してみたんだが、みんなが注目してね」

「ああ、なるほど」


そこで思わず、アーネストはクスリと笑った。


「笑うなよ

 すごく恥ずかしかったんだぞ」

「それは…また

 でも性能は良かったでしょう?」

「まあ、それは…」


それからフランドールは性能と炎の効果を話した。


「先ずは重さはほとんど感じなかった

 さすがは身体強化の付与がしっかりと効いていたね」

「そうですね

 魔石はオークの魔石を使っていますから、効果は高いですよ

 ですから刀身に使った魔石に細工が出来ました」

「なるほどね

 確かに炎が出るのは助かるよ

 もし剣が効かない魔物が現れても、炎で焼けば何とかなりそうだ」

「そうでしょう

 他にも魔法を仕込めそうなんですが、今回は試しという事で炎にしてみました」


「炎以外にも組み込めるのかい?」

「そうですね

 試していませんが、マジックボルトやライトニングボルトが試せそうですね

 ただ、雷は金属を通しますから…」

「あ…

 自分が食らう可能性があるのか」

「ええ

 炎もあまり多用していると刀身が焼ける可能性があります

 一度使ったら、少し冷却する様にしてください」


「刀身が焼けたらどうなるんだい?」

「そうですねえ

 耐久力が落ちたり、熱で曲がったり

 最悪は付与した魔法の効果が無くなったりするかも知れません

 そこはまだ試してませんが、危険ですから注意してください」

「そうか…

 分かったよ、気を付けるよ」


フランドールはそれから再度礼を言い、アーネストは部屋を出て行った。


フランドールは再び長剣を見て、その使い方を考えていた。

炎が伸びるので、多少離れた相手でも攻撃できる。

それこそ使い様では跳躍しなくてもオーガの頭や胸に攻撃を当てれそうだ。

そう考えると、オーガに対しても有効な武器だと思える。

もし問題があるとするなら、打撃も炎も効かない魔物が現れたらだろう。

そんな魔物が存在するかが問題だが。


そうして考え事をしていると、夕食が出来たとメイドが呼びに来た。

フランドールは武具を脱いでガウンに着替え、風呂に入ってから夕食に向かう事にした。


フランドールが夕食の席に向かうと、そこではすでにギルバートがアーネストと談笑していた。

話題はどうやらあの長剣の事のようで、些か気恥ずかしくなる。

それを見越してか、アーネストが話題を変えようとした。


「フランドール殿

 明日も森に出るんですか?」

「ん?

 ああ」


「現在森には、オークのみ出ていますよね?」

「そうだねえ」

「他の魔物は見ませんでしたか?」

「うーん

 私は見ていないね

 ギルバート殿はどうなんだい?」

「私ですか?

 そうですね、今日もオークしか見てません

 もう少し奥に行かないと魔物も減ってますしね」

「そうなんだよな」


最初の2、3日はオークも沢山居たが、段々と数が減って来ていた。

これは森に出る人数が増えて、狩る魔物の数が多くなった為だろう。

北から逃げて来ているにしても、その数より多く狩れば、いずれは魔物が居なくなってしまう。


「どうだろう

 思い切って北の森に向かってみないかい?」

「北ですか?」

「ああ

 魔物は北から来るんだろう?

 それなら北の方が多く逃げて来るんじゃないかい?」


「そうですね

 このまま東に出ても、肝心の魔物が見当たらないのでは訓練になりませんものね

 それでは、明日からは北の城門から出ましょう」

「ああ

 後で私兵達にも伝えておくよ」


フランドールの意見を採用し、オーガを狙って北の森へ向かう事になったが、問題は肝心の魔物が出てくれるかだろう。

本当は魔物が出ない方が良いのだが、魔石や訓練の為にも魔物に出てもらわなければならない。

こればっかりは魔物次第だから、内心は魔物に出て欲しいという複雑な悩みになる。


「そういえば、私兵は現在、どれくらいスキルを会得してますか?」

「そうだねえ

 今日も8名増えたって話だから、今は90名は居ると思うよ」

「オレの聞いた話では、明日には100名になるんじゃないかって言ってたよ

 何とか魔物が来る前に、半数は行けるんじゃないかな」

「そうだな

 後はスキルが無い者は、城壁の中から弓や投石で攻撃してもらうか」

「そうですね

 スキルが使えない以上、足を引っ張る事に成り兼ねない

 それなら最初から下げてた方が良いでしょう」


「せめて、全員がブレイザーまで使えていれば、城壁の前で頑張れるんだけど

 スキルが使えないんじゃ、下手に出すワケにはいかないな」

「コボルトまでは戦えても、オークやワイルド・ボアが来たら危険だ

 それにワイルド・ベアがどのくらい来るのかが分からない

 下手したらスキルがある者でも出せないかも知れない」


「そうなると、どうするんです?」

「称号かジョブがある者だけで戦うしかないでしょう

 称号やジョブがある者なら、ある程度は称号の効果があるので、オーガでも数人で倒せます」

「そんなに違うんですか?」

「ええ

 やはり称号やジョブは違います

 何も付与されていない剣と付与された剣を考えれば早いかと」

「称号やジョブがあれば、付与されているのと同じという事ですか?」

「ええ」


フランドールも称号を得て、自身の力が増したのは実感していた。

だが、他の兵士がどれほど強くなったのかはいまいち分かっていなかった。

それは称号の格が違うのと、装備や地力の差があった為だ。

同じ兵士が称号を得る前と得た後では、やはり大きな差は出ていた。


「そうなると、その人数次第で作戦も変わってきますね」

「ええ

 ですから、フランドール殿にも作戦と戦術はよく考えてもらいたいです」

「それはあの本を参考にするって事ですか?」


フランドールは先日アーネストに貰った本があった。

それはアーネストが翻訳した昔の本で、そこには色々と面白い戦術や陣形が書いてあった。

それをりようすれば、確かにより大きな戦果を期待出来そうだ。

問題は、陣形に関しては事前の訓練が必要だという事だ。


「戦術は何とかなりますが、陣形は…

 ギルバート殿、将軍は陣形の訓練はされていますか?」

「あ…

 多分していないだろうな」

「おじさんはそんなに頭が良くないから」

「え?」

「アーネスト

 それは酷いだろ…」


「将軍は確かに、考えて戦うよりは自分が前に出て引っ張って行くタイプだから

 下手に陣形だ戦術だとか言っても、逆に失敗しそうだな」

「そうですか

 それなら、戦術だけこちらで事前に話し合いましょう

 森でも使えそうな物が幾つかありましたから」

「なるほど、それは良さそうですね

 いよいよ魔物が来そうになった時に、出来得るだけの準備をしましょう」


三人は夕食を食べながら、そんな話を延々としていた。

その向かい側では、母や妹が不機嫌そうに食事をしていたが、三人は気が付いていなかった。

そして、フィオーナが何か話したそうにしているのも、気が付いていなかった。

三人はそのまま食事が終わると、執務室に向かった。

そこからは夜遅くまで戦術や陣形の話を談義して、翌日の連絡を済ますと時刻は12時を回ろうとしていた。

翌日も魔物の討伐に向かうので、少しでも寝ておこうと話し、そのままアーネストも泊まる事になった。


夜が明けると、外は霧雨が降っていた。

いよいよ、魔物が来る予定まであと1週間になった。

今日から北の城門を出て、オーガに狙いを絞って討伐する事となった。

勿論、自信が無い者はオークでも良かったが、オークも東では少なくなっていたので、やはり出るのは同じ北の城門からとなった。


「今日から北に向けて出る事になるが、注意する事は同じだ

 魔物にバレない様に接近する為に、大声や物音は厳禁だ」

『はい』


「それから、オーガは大型の魔物だから、接近すればすぐに分かる

 森の上に頭が出るからな、見つけたら自信が無い者はすぐに下がる様に

 下手に残って居ると、他の者の戦闘に巻き込まれるからな」

『はい』


将軍の注意にみなが返事をし、徐々に士気が高まって行く。

そしていよいよ城門を潜ると、12名ずつに分かれて移動を開始した。


「フランドール殿はどうします?」

「私は私兵達と移動するよ

 もしオーガを見付けたら、私が戦わないといけないからね」

「そうですか

 ただ、無理はしません様に

 1匹、2匹なら良いですが、多い様なら撤退してください」

「それは十分承知しているよ

 私もこんな所で死にたくないからね

 そちらも気を付けてください」


そう言ってお互いに挨拶を交わすと、それぞれ別の方向へ向かって行った。

フランドールはすぐにオークの群れを見つけ、兵達に戦わせる。

自分も出たいが、オークは14匹しか居ないので、ここで出れば兵士の訓練にならない。

フランドールは周囲の警戒をしつつ、部下達の戦闘を見守っていた。


ギルバートもすぐにオークの群れを見付けた。

こちらはオークが8匹とワイルド・ボアが5匹連れられていた。


「よし、あれは貴重な食料になる

 先に君達がオークを狙い、こっちでワイルド・ボアを逃がさない様に抑える」


ギルバートは私兵達にオークを戦わせる事にした。

その間にワイルド・ボアを倒しても良かったが、出来ればこれも私兵達に倒させたかった。

その方が訓練になるし、何か称号やスキルが得られるかも知れない。


私兵達が慎重に後方に回り、その間にギルバート達も配置に着く。

合図を送ると、私兵達が声を上げてオークを急襲する。

それに合わせてワイルド・ボアが逃げようとするが、ギルバート達がそれを阻止する。


「よし、こっちは抑えてるからオークを頼む」

「はい」

「うりゃああ」

「うおおお」


私兵達が頑張っている間、ギルバート達もワイルド・ボアに攻撃して気を逸らさせる。

上手く囲めたので、ワイルド・ボアは右に左に逃げ惑い、囲みから出れなかった。


その間に私兵達が、1匹、2匹とオークを倒して行く。


「こいつで最後だ

 スラッシュ!」

ズバッ!

ブギイイイイ


止めのスラッシュがオークの胴を薙ぎ、腹の辺りから上下に別れて崩れ落ちる。


「よし、後はこのワイルド・ボアだけだ」


プギイイイ

ドドドド!

「うおおおお

 ブレイザー」

ザシュッ!

プギャッ!


私兵の一人がワイルド・ボアの突進を躱しながら、上手くスキルで首を刎ねる。

その間にも、もう一人の私兵がスラッシュで足を切り落とし、動けなくする。


「良いぞ

 残りは3匹だ」


残りも上手く連携して、苦も無く倒す。

私兵達も最初の頃と比べたら、技量も格段に上がっていた。

それは毎日の様な魔物との戦いもだが、自身の未熟さを知って頑張ったからだ。

彼等は選民思想者と違って、自分の技量や未熟さを受け入れる度量があった。

その事が素直に努力する事に繋がり、結果として腕を上げて行く事となった。


そして、強い魔物を倒せた事が自信に繋がり、臆する事無く戦う勇気にもなった。

実際に、オークを倒す前だとワイルド・ボア等見たら逃げ出していただろう。

しかしオークに比べたら突進するだけの魔物だ。

その突進さえ気を付ければ、後は難なく倒せる魔物だ。


「オレ、こんなに強かったんだ」

「馬鹿

 それはみんなが手伝ってくれたからだろう」

「勿論そうだが

 それでもこんな魔物まで倒せる様になっていたんだ…」

「そういえば…そうだな」


私兵達は魔物を倒せた事で興奮していた。

ギルバートは、最初は注意しようかと思ったが止めた。

その方が自信が付くだろうし、どうせ少しは休んだ方が良い。

それならこの場で休ませようと思ったからだ。

兵士達が興奮して話しているから、その声で魔物も近付かないだろう。

ギルバートは守備部隊の兵士達に合図して、周囲を警戒させた。


その頃、少し離れた場所で将軍は奮闘していた。

今日は待望のオーガに出会ったのだが、いきなり3匹に当たり、自分で1匹を受け持っていた。

そのまま倒しても良いが、折角だから倒した事が無い兵士達に戦わせる事にしたからだ。

残りの2匹を、兵士達が必死になって倒そうとする。

既に1匹は両足をズダズダに切られて転倒している。

もう1匹も右足を切られ、転倒した。


グガアアア

グギャアアア


倒れた2匹に向かって兵士が群がり、腕や胸を狙って攻撃をする。

それを横目に、将軍はひらりと攻撃を躱して行く。


グガアアア

ブン!

「甘い」

ドスン!


1匹は虫の息

もう1匹もすぐに済みそうだ

後はこいつを…


将軍がそう思って攻撃を躱していた時、向こうの森からヒョッコリと頭が出た。


「げっ」


グガア?

グゴオオオ


続け様にヒョコヒョコと頭が出て来た。

その数は全部で5つ。

さすがに将軍はマズいと思った。


「そいつをやったら、急いで助けを呼べ!

 さすがにこの数は危険だ!」


その声でオーガに気付かれたが、この際止むを得ない。

将軍は今まで戦っていたオーガの腕を切り飛ばしながら、後方に下がった。

そして、将軍の声で数人の兵士が走り出し、応援を呼びに向かった。

それは丁度、ギルバートとフランドールが居る方角だった。

昨日が更新が遅くなったので、2本目も上げました

今日も夜に時間があれば、もう一本更新します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ