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聖王伝  作者: 竜人
第三章 新たなる領主
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第73話

アーネストはセリアに手を引かれて、会場の人込みを掻き分けて進んだ

その手は小さく、まだまだ子供であった

後ろからはフィオーナが裾を掴んで着いて来る

彼女は更に年下で、まだまだ人見知りが激しかった

そんな二人を見ていると、アーネストは婚約話が可哀想に思えた

フランドールは良い人そうだし、彼が望んだ話では無いだろう

それでも、まだまだ子供の彼女達に、婚約話は苦痛だろう

アーネストはそう思いながら進んで行った

これから話す男の、人となりを見極めようと

ギルバートは会場の奥でフランドールと会話を楽しんでいた

これからダーナの統治を行うに当たって、注意しなければならない事などを話していた

ダーナは港とは別の統治になるので、基本は農業が主流となる

その他は森の外れから鉱山に入るのだが、そこも最近は魔物が現れるので警戒が必要であった

その他に、ここ数年は魔物由来の素材が手に入るのと、魔石も魅力的な商品となっていた

しかし魔物の討伐には危険が付き物

冒険者だけでは対応が出来ず、兵士の出動が必要となっていた


「南門から数㎞離れた場所に砦を構え、鉱山に入る集落を守っています

 しかし最近は魔物も増えています

 鉱山に入山する者が減っていて、それが鉱石の供給に影響しています」

「そうなると、鉱山の守備も固める必要が有るな

 安心して入山出来るようにしなければ、鉱山自体を閉鎖しなければならない」

「ええ

 難しいところです」


二人がそう話している所へ、アーネストが引っ張られて来た。


「やあ

 楽しい会話中にすまない

 セリアがどうしてもと言うから」

「違うの~

 お兄ちゃんに頼まれたんだから」


セリアは口を尖らせて言い、さっさと母親の元へ引き上げた。

ギルバートとアーネストは顔を見合わせ、クスリと笑った。


「へえ

 セリアちゃんって言うんだ

 可愛いね」


フランドールは笑顔でそう言うと、うんうんと頷く。

それを見てアーネストは思わず呟く。


「言って置くが、あの子はやらないぞ」

「おい!

 それはオレが言うセリフな」


ギルバートは思わず突っ込む。

それを見て、フランドールは楽しそうに笑う。


「君達は仲が良いんだね

 まるで兄弟の様だ」

「ん?

 そうすると…オレが兄か?」

「いや、オレだろ?」


二人の反応を見て、またフランドールは笑い出す。


「君が噂の魔導士君かい?

 私はフランドール

 王都産まれの騎士だ」

「御高名はうかがっております

 しがない田舎の魔術師ですが、よろしくお願いします」


アーネストはそう言うと、深々と礼をして見せる。

その作法のしっかりとした様を見て、フランドールは感心した様に呟く。


「ほう

 私よりはしっかりとした礼をする

 これではどちらが貴族か分からないね」


ははははと笑い、フランドールは握手を求めて来た。


「君の話も聞いている

 アルベルト殿はもう一人の息子と呼ばれていた

 その知恵を私にも貸して欲しい」

「それは…

 家臣への勧誘ですか?」

「え?

 うーん…

 どっちかと言えば、友となって欲しい…かな?」


「友ですか?

 確かにそれなら、家臣では無く気軽に助言を貰えますね」

「おい!」

「はははは

 こりゃ手厳しい

 どうやら彼は、既に叙勲後の事も考えている様だね」

「え?」


アーネストの言動は、貴族になった際の立ち居振る舞いも計算されていた。

それは成人後に叙勲が約束されており、それからの付き合い方も考えているという事だ。

今は子供同士だからと目を瞑られているが、いずれは身分で差が出て来る。

アーネストはその為にも、今からギルバートと対等に話せる地位に上がれる様に、考えて行動しているのだ。

その為にも、フランドールの家臣にはなれないし、貴族の振舞を身に着けようとしていた。

それを見抜いたフランドールは、改めて握手を求める。

今度は違った形で。


「よかったら

 私とギルバート、この三人で友として誓いたい

 これから多くの困難に見舞われるだろう

 それでも、生涯を友として助け合おう」

「分かりました

 しかしオレの忠誠はこいつの物です

 それだけは理解してください」


アーネストはそう言って手を差し出し、フランドールと握手を交わした。


「私は王都でも平民の出でね

 騎士団務めの間も、友と呼べる者は居なかった

 だから、ここでは同世代の君達と仲良くやって行きたい」


そうフランドール言い、ニコリと笑う。

その様子はとても年上の男に見えず、寧ろ同年代の悪戯好きな友人に見えた。


「でも、良いんですか?

 私達は貴方よりも年下です」

「そうだねえ

 私がもうすぐ18になる

 それでも…

 君達とは気が合いそうだから」

「え?

 5歳も上なんですか?」

「今更敬語なんて駄目だよ

 少なくとも、ここは王都ではない

 気にしなくても良いからね」


フランドールはそう言い、ウインクをしてみせる。

そうしてグラスを手に取ると、二人に向けた。


「新しい場所と、新しい友に乾杯」


そう言ってグラスを呷ると、一気に飲み干した。


「大丈夫ですか?」

「ああ

 騎士団ではこれぐらい、成人したら当たり前の様に飲まされるからね」

「うへえ」

「オレは好きになれないな」


ギルバートもアーネストも、まだ成人してはいないので、お酒は祝いの席でも薄めた葡萄酒だった。

その味が薄いのもあってか、酒の味が好きになれなかった。


「まあ、その内好きになるさ

 でなきゃ、貴族の間ではやっていけない」

「そうですね」

「ううん

 貴族って面倒臭い」

「お前はこれからなるんだろ

 今の内から慣れておけよ」


アーネストは嫌そうな顔をするが、チビチビと葡萄酒を舐めた。

そうして三人で話していると、メイド達が気を利かせて料理を運んでくれた。

フランドールはダーナのよく好まれる料理として、豚や牛の肉の燻製を野菜で巻いた物を摘まむ。

アーネストはローストした鳥と豚の肉を摘まみ、時々チーズを食べていた。

それを見ながら、ギルバートも串に刺して焼いた肉と野菜を食べて、少しずつ葡萄酒を飲んだ。


一心地着いた頃、フランドールは顔を赤くしていたが、急に真面目な顔をして話し始めた。


「ところで、ギルバート殿

 私が領主を拝命するまで居る様に仰っていたが、その後はどうするつもりです?」

「え?」

「王都に行く話だよ」


アーネストが合いの手を入れる。


「王都にて使命が有ると話されていたが…

 それは王命ですか?」


その質問に思わずアーネストの方を見るが、アーネストは首を振る。

それを見て、フランドールは溜息を吐く。


「どうやら、簡単に話せない内容の様だね」

「ええ」

「申し訳ありませんが、こればっかりは…」

「いや、良いんだ

 アルベルト殿も黙っていたし、余程の事なんだろう

 だから、私もこれ以上は聞かない」


フランドールはギルバート目を真っ直ぐ見詰め、真剣な表情をする。

それは酒に酔っているからではなく、本当に心配している様だった。


「だが…

 これだけは覚えておいて欲しい

 私は君の父上から頼まれたから、ここの経営を引き継ぐ

 だが、決して君を追い出そうとは思っていない

 それだけは覚えておいてくれ

 帰って来たい時は、必ず帰って来てくれ」


フランドールはそう言うと、言った事が恥ずかしかったのか、ふいとそっぽを向いた。

アーネストはそんなフランドールを見ながら、ギルバートの肩を叩く。


「大丈夫ですよ

 オレが着いて居ますし

 それに…ここがオレ達の家ですから」

「アーネスト…」


「オレがフィオーナを貰って、ここを守ります

 ギルが帰れる様にね」

「ん?」


アーネストの不穏な発言。

見るといつの間に酔いが回ったのか、すっかり真っ赤になっていた。

そのままギルバートの肩をバシバシ叩き、上機嫌に笑ったと思ったら潰れた。


暫し沈黙が続き、ギルバートとフランドールは見詰め合った。


「ぷっ、はははは」

「あはははは」


二人は声を上げて笑い、暫くは笑い続けた。


暫く笑い、またフランドールは真面目な顔をして言った。


「どうしても…言えない事情なんだよな?」

「ええ」


「それなら…

 その間は家族はどうする?」

「どうするとは?」


「暫くは私はここで客室を借りて過ごすだろう

 だが、私が本格的に領主と成ったら、君達の家族は出て行かなければならない」

「ええ」

「君の家を奪う事になる

 心苦しいが、これは貴族の慣習の様なものだ」

「はい」


「王都に親戚はいるのかい?」

「国王が叔父に当たりますが、母上は恐らくは頼らないでしょう

 母上の親族も王都には居ますが…

 多分ここに暮らす事を望むでしょうね」

「そうか

 まあ、アルベルト殿の墓もあるし、それが良いだろうね」

「ええ」


フランドールは少し考え、取り敢えずの提案をする。


「ここに家を作り、そちらに移っていただくのが良いか

 それならば、早急にギルドに話を通しておく方が良いな」

「よろしいのですか?」

「ああ

 満足のいく家を建てれる様に、ギルドには打診しておくよ

 私もその方が良いと思うし」


「父上は妹達の事も考えていた様です

 二人の内、フィオーナをと考えていた様ですが…」

「ああ

 でも、実際には親子ぐらいの年の差がある

 彼女が成人した時、改めて考えれば良いさ」


そう言いながら、フランドールはアーネストの方を見る。


「いや、あれは冗談でしょう?

 あいつも多分、本気では無いでしょうから」

「そうか?

 人は酔ったら本気を漏らすと言う

 少しは考えても良いんじゃないか」

「まさか…ね?

 本気なら、暫く妹には近づけさせれないな…」

「ぷっ、くくく」


それを聞いて、フランドールは笑いを堪える。

こりゃあアーネストの恋は前途多難だなと笑っていた。


「もう一人の妹はどうする?」

「セリアですか?」

「ああ」


そこでギルバートは、セリアの出自を語る。

魔物によって滅びた集落。

そこから助け出された子供と、それを養女として引き取った話を。


「そうか…」

「最初はフィオーナの侍女にするつもりだと

 しかし、二人を引き合わせた時に、母上は娘として育てると言いました」

「だが、いずれは知られるぞ

 その時はどうするんだ?」

「その時はその時です」


ギルバートは黙っていたが、実は自分も実の子では無い。

母は知らなかったとは言え、今まで育ててくれた。

それだけでも家族として大事にしたいと思っている。

それに、今ではセリアも実の妹として大事に思っている。

彼女の希望次第では、いずれは別れも来るかも知れない。

それでも、自分は妹として守ろうと思っていた。


「君の家庭の事だ

 私は口出しはしないが、いずれは真実を告げるべきだと思う

 それで彼女がどういう道を選ぶのかは、彼女自身が決める事だろう」

「…そう、ですね」


ここでギルバートは、改めて彼女の事を考えた。


例え血が繋がっていなくても、だからどうだって言うんだ?

オレ自身が元々繋がっていない

いや、正確には母上達とは親戚になるが、セリアは他人という事か

セリアが一人、身寄りが無くなった場合はどうする?

妹として引き取るのか?


これから王都に向かい、王子として生活しなければならない。

それに、女神の下した神託も気になる。

そうなれば、セリアは連れて行けないだろう。

母親に任せるのが一番だが、いずれ真剣に話し合う必要が有る。

ギルバートはそう思った。


ギルバートのその決意を見て、フランドールは頷く。

もし、彼等の家族に苦難の道が立ち塞がっても、私が手助けをしよう。

それが縁あって引き受けた、前領主へ報いる事にもなるのだから。


「妹さんの事

 これからの事

 色々大変だと思うが、何かあったら相談してくれ

 私も力になりたいから」

「はい」


ギルバート頷き、それからニヤリと笑った。


「でも、その前に

 ザウツブルク卿には領地経営に慣れていただかなければ

 明日から大変ですよ

 取り急ぎは、兵士の練度と魔物の強さを見ていただきましょう」


フランドールは一瞬不意を突かれ、ポカーンとしてしまう。

その直後にウインクするギルバートの頭を掴んで拳を押し付けた。


「このう

 悪ふざけが過ぎるぞ」

「痛い、痛い」


フランドールは押し付けた拳でグリグリと擦った。

そうしながら二人は笑っていた。


こうしてパーティーの行われた夜は更けて行き、二人は暫く談笑した。

翌日は約束通りに訓練場で模擬戦が行われる事となる。

二人はあまり遅くならない様に就寝する事にして、パーティー会場を後にした。

次は翌日の話

模擬戦と魔物との戦いになります

といっても、魔物が攻めて来る訳ではなく、森に狩に行く事になります

果たしてフランドールの実力は如何に

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