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聖王伝  作者: 竜人
第二十二章 魔物との決戦
724/800

第724話

アーネストは、王都近郊の戦闘を確認する。

こちらはギガースが、50体ほど出現している

そのほとんどの魔石は、竜神機の攻撃で破壊されている

しかし中には、何とか負傷しても攻撃を躱している魔物も居た

竜神機は魔物に向かって、次々と爪や蹴りを振るう

50体居たギガースも、この頃には20体ほどに減っていた

しかしギガースも、必死に抵抗していた

魔物も生き物なので、死にたくは無いのだろう


グガアアア

ブン!

ザシュッ!

グゴオオオ


「これは…

 なかなか手強いな」

「竜神機の被弾はありません」

「しかし攻撃をガードしていますので、マナを少量消費しています」

「問題は無いのか?」

「はい

 魔物を攻撃した際に、魔石から回収出来ています」

「魔石から回収出来るのか?」

「はい」

「しかし大半は、負の魔力に変換されています」

「くっ…

 そこが問題か…」


攻撃が当たった際に、魔石から魔力を回収している。

しかし大半の魔力は、そのまま黒い靄に変化している。

それに注意深く見ていると、魔物の身体も分解されていた。

そうして負の魔力が充満して、新たな魔物の贄となってゆく。


ヴーヴーヴー!

「新たな魔物の反応!」

「キマイラが5体」

「次いでヘカトンケイルも現れます」

「ヘカトンケイル?」

「ギガースよりも上位の、危険な巨人種の魔物です」

「ヘカトンケイルだと?

 あれの設計図も持ち出したのか」

「イスリール?」


イスリールはヘカトンケイルと聞いて、慌ててアーネストのパネルを覗き込む。

そこには黒い靄が集まって、さらに大きな黒い影が現れていた。

それは10体の巨人で、ギガースよりもさらに大きかった。

体高10mほどの竜神機を、さらに上回る12mほどの大きさだ。


「お、大きい…」

「ああ

 しかも個体差があるが、二対から四対の腕を持つ

 その大きな腕で、暴れ回る危険な魔物だ」

「設計図と言っていたが?」

「遺伝子の設計図だ

 魔物を生み出すにも、元になるデータが必要なんだ」

「この魔物のデータもあったのか?」

「そうね

 イチロの頃に、何体か作られていたわ

 しかし危険だと判断されて、そのデータは付印されていた筈なの

 それまで持ち出したとなると…」

「他にもあるのか?」

「ええ

 封印された魔物となれば、竜神機でも危険だわ」

「何だって?」


事実として、その巨人は今までのまものとは違っていた。

大きさも大きいが、その動きも洗練されていた。

竜神機の攻撃を躱して、反撃に殴り掛かって来る。

攻撃こそ直撃はしないが、複数の腕が振るわれては回避も難しい。

竜神機は一旦距離を取り、魔物と対峙していた。


「このまま押し切れないのか?」

「1対1なら…

 しかし相手は複数です」

「それにキマイラも居ます」

「むむ…」

「先にキマイラに攻撃します

 トレーサービーム」

キュイイイイイン!


竜神機は宙に浮き上がると、両腕を前で合わせる。

そのままエネルギーを貯めるが、それを魔物が黙って見過ごさない。

キマイラは翼を広げると、そのまま竜神機に襲い掛かって来た。

竜神機は両腕を組んだまま、魔物の攻撃を躱す。


「くっ

 何とかならないのか?」

「難しいです」

「レーザーキャノンは使えません

 バスターランチャーもトレーサービームにエネルギーを回しているので…」

「他には?

 腰や脚の箱は?」

「そうです

 弾数に限度はありますが、ミサイルがあります」

「ミサイル?」

「はい」


竜神機は不規則に飛び回りながら、腰と脚の箱の蓋を開ける。

そこには丸い穴が複数開いていて、そこには筒状の物が並んでいた。

アーネストはそれが、また魔法の様な物を発射する筒だと思っていた。

しかしそれは、予想を反する物だった。


「ターゲットロック」

「キマイラ及び、ヘカトンケイルに照準を設定」

「キマイラ1体につき、ミサイルを5発ずつ振り分けます」

「一斉斉射!」

「ミサイル発射!」

シュドドドド!

バシュウウウ!

ズドン!

ドガン!


腰と脚の箱から、金属製の筒が発射された。

それは矢の様に飛んで、白煙を引きながら魔物に向かった。

そうして魔物に当たると、激しく爆発した。

その爆発は、火球が炸裂した物の数倍の威力があった。


「な!

 何だこれは?」

「ミサイルです」

「爆発する火薬と魔石を詰めた、筒状の物を発射します」

「魔法に抵抗力があっても、これは主に物理的な爆発です

 物理的な防御力が無い限りは、効果的な兵器です」

「これも…

 兵器なのか?」

「はい」


ドガン!

グギャアアアア

ギュオオオオ


飛翔していたキマイラは、ミサイルの直撃を受ける。

そうして翼をやられて、そのまま地面に墜落した。

中にはミサイルの爆発で、そのまま死んだキマイラもいた。

そしてミサイルは、ヘカトンケイルにも向かって行った。


ゴアアアアア

グガアアア

ドガン!

ゴガン!


しかしヘカトンケイルは、その爆発に耐えていた。

倒されたのは1体だけで、それも他のヘカトンケイルの爆風に巻き込まれた為だ。

ヘカトンケイルは腕でガードして、爆発の威力を抑えていたのだ。

そうして腕を負傷しても、そのまま健在だった。


「くっ!」

「さすがにヘカトンケイルは、物理防御力も高いわね」

「あれを耐えられるのか?」

「ええ

 爆発自体は派手ですが、魔法の盾を10枚ぐらい張れば…」

「あくまでも爆発ですから」

「しかし…

 筋肉で耐えているぞ?」

「そこが危険なところです」


ヘカトンケイルは、その筋肉も強さの一部なのだ。

多少は火傷や傷を負っているが、ほとんど無傷に近かった。

そうして竜神機に向かって、ゆっくり進んで来る。

しかしその間に、竜神機のエネルギーが溜まっていた。


「トレーサービーム!

 発射!」

シュババババ!

ドシュドシュ!

グゴオオオ


竜神機の腕から、光弾が発射される。

それは負傷したキマイラの、胸を貫いて魔石を破壊する。

しかしヘカトンケイルは、再び腕でその光弾を弾いた。

分厚い筋肉の塊が、光弾を防いでいるのだ。


「な!

 あれを防ぐのか?」

「やはり…」

「侮れませんわね

 ですが2体は…」


全てを防ぎ切る事は出来ない。

1体は腕の傷もあって、光弾を防ぎ切れなかった。

もう1体は、回り込んだ光弾を背中から受けていた。

さすがに背中の筋肉までは、そこまで強化されていなかった。

しかし残りのヘカトンケイルは、負傷しながらも耐えていた。


「さっきの…ミサイル?

 あれはまだ使えるか?」

「駄目です

 魔力で作れますが、弾の補充に時間が掛かります」

「数分は撃てません」

「他の武器は?

 今のビームは?」

「充填に時間が掛かるので、囲まれては危険です」

「レーザーキャノンぐらいしか…」

「後は肉弾戦か…」

「はい」

「しかしこのまま時間を掛ければ…」

「やむを得ないか

 突っ込んでくれ」

「はい」


竜神機は再び、魔物に向かって接近する。

ヘカトンケイルも負傷しているので、先ほどよりは動きは遅かった。

しかし複数の腕での攻撃は、油断できる物では無い。

攻撃を躱しながら爪で切り付けるが、思う様なダメージは与えられない。


「厳しな…」

「はい」

「しかし…

 そろそろミサイルが、使え無いか?」

「用意出来ましたが…」

「どうしますか?」

「一気に踏み込んで、周りにバラ撒いてやれ」

「しかし!」

「危険ですよ?

 いくら竜神機の装甲が頑丈でも…」

「しかしそうでもしなければ、魔物は倒せない」

「それは…」

「分かりました」


竜神機は魔物の真ん中に入って、必死に攻撃を躱す。

そうして一瞬の隙を突いて、ミサイルポッドの蓋を開けた。

魔物との距離は近いが、上手く行けば爆発で一気に倒せる。

ミサイルは白煙を上げて、一気に四方に向けて放たれた。


「ミサイル発射!」

「行け!

 その魔物を倒せ!」

シュババババ!

ドガドガゴガン!

グガアアア

ギガアアア


魔物の悲鳴が聞こえて、間近のヘカトンケイルは爆散する。

離れていた魔物も、その爆風に巻き込まれて吹き飛ぶ。

そして囲んでいたヘカトンケイルは、その攻撃で全て倒されていた。

中心では煙が上がって、竜神機の姿は見えなかった。


「やったか?」

「7体の魔石の破壊を確認」

「しかし1体が…」

「何か使える武器は?」

「レーザーキャノンがあります」

「よし

 それで狙うんだ」

「はい」

ドシュッ!

グゴガ…


最後の1体も、腕を破壊されていた。

それで尻尾のレーザーキャノンを、防ぐ事は出来なかった。

胸に大きな風穴を開けて、ゆっくりと崩れ落ちる。

魔石の砕ける乾いた音が、静寂の中で響いた。


「竜神機は?」

「損傷率30%

 損傷は軽微です」

「思ったよりも装甲が、爆発の衝撃を防ぎました」


煙が晴れて来ると、竜神機がその場に立っているのが見えた。

右手の盾や魔石は壊れていたが、腕は破壊されていない。

他にも装甲に、亀裂が入っている箇所が何ヶ所か見える。

しかし大きな損傷は無く、思ったよりも無事だった。


「至近距離でミサイルなんて…

 正気を疑いました」

「しかし上手く行って良かったです」

「魔物の反応は収まっています」

「暫くは発生しないでしょう」

「そうか

 良かった」


こうして王都近郊の、魔物の群れは全滅出来た。

しかし集まった魔力は、再び魔物を呼び出すだろう。

ジャーネは竜神機を出すと、神殿の上空に待機させていた。

もう1体のアインスも、森の中で待機している。

これで後は、勇者の封印を解くだけだった。


「エルリック

 封印は?」

「精霊力は溜まったと思う」

「そうですか

 それではジャーネはこちらに」


イスリールに案内されて、ジャーネとエルリックが封印の前に移動する。

そうして先ずは、エルリックが封印の解除に入った。

エルリックは封印の前に跪くと、頭上に首飾りを掲げた。

そこから光が走り、中心の勇者の首飾りに光が当たった。


「これが…」

「どういう仕組みかは、私にも分かりません

 しかしこれで、この封印が解かれる日が来たと分ります」

「え?」

「今までも、何度か試してみたのです」

「その度に首飾りに、魔力や精霊力を込めました」

「しかし何も効果がありませんでした」

「こうして何かが起こった事こそ、封印が解かれる日が来た証拠なのです」

「なるほど…」


光は勇者の身体から、レリーフ全体に流れて行った。

その状態で今度は、精霊と協力して封印を解く事になる。

そこで今度は、ジャーネが精霊を呼び出す事になる。

ジャーネはエルリックの後ろに立つと、両手を合わせて精霊に祈った。


「お願い、みんな

 私達に力を貸して」


暫く静寂が訪れる。

誰もがその様子に、失敗したのかと思っていた。

不意にジャーネの周りの床に、草花が広がって行く。

そこから手が出て、小人が地面から這い出して来る。


「ふう、ふう…

 ここまで来るのは大変じゃのう」

「文句を言うな

 みんな大変なんだ」


小人の愚痴に、宙に現れた火の玉が応える。

そして草叢に水が湧きだし、そよ風が集まって精霊が姿を現す。

こうしてここに、四大精霊が集まった。

これはイーセリアが、妖精郷で呼んで以来の事だった。


「みんな♪」

「来てあげたわよ」

「大変だったんだから」


実はこの時、精霊達は別の場所に集まっていた。

そこからこの神殿まで、急いで移動して来たのだ。

しかもこの神殿には、女神が張った結界が作用している。

それで精霊達は、なかなか中に入れなかったのだ。


「これで条件が揃ったわね」

「うむ

 しかし時間が無いぞ」

「どういう事?」

「向こうも大変なんじゃ」

「向こうの妖精の国も、今攻め込まれようとしているの」

「なんて事!

 それでこれだけの魔物が…」


この時、魔物の群れは妖精の国に向かって進んでいた。

妖精の国では、ドワーフ王が協力して防衛体制を築いている。

しかし魔物の群れは多く、今も増え続けていた。

このまま攻め込まれれば、美しい妖精の国は数日で落ちるだろう。


「あっちには黒騎士が居る」

「黒騎士?」

「正体不明の騎士よ!」

「女神が魔王の代わりに、魔物の統制を任せているの」

「そいつが負の魔力を集めておってな

 それにファクトリーも稼働しておる」

「それで多量の魔物が、あっちにもこっちにも…」

「そういう事じゃ」


「どういう事なんだ?」

「向こうはファクトリーを起動して、常に一定量の魔物を補充出来るわ」

「魔物自体は生み出されたばかりで、そこまで強力では無いわ」

「しかしのう、数が多いんじゃ」

「万を超える魔物が、今も妖精の国に向かっておる

 それだけでも十分な脅威じゃ」

「それに倒された魔物の負の魔力が、こっちの魔物を生み出しているわ」

「こっちのファクトリーは起動させておらんが…

 向こうの負の魔力で生み出されておる」

「そしてここで死んだ魔物を使って、こっちにも魔物を生み出せる」

「どうやら本格的に、ここを攻め落とす気の様じゃな」

「そうね

 時間が無いわ

 封印の解除を急がないと」

「うむ」

「ええ」

「急ぎましょう」

「私達も協力するわ」


精霊達は頷き、レリーフを囲む様に四方に立った。

精霊が移動した事で、封印を囲む様に淡い光がレリーフを包む。


「ふむ

 あの小僧っ子を目覚めさせるとはな…」

「感慨に耽ってる暇は無いわ

 妖精の国も危険なのよ」

「焦らんでも時間はある

 確実に封印を解くぞ」

「そうじゃな

 早くあの子らも解放してやらんとな」

「ええ

 やっと会えるのね…」


精霊達はそう言うと、目を瞑って集中を始める。

そしてレリーフは、穏やかな光に包まれて行った。

まだまだ続きます。

ご意見ご感想がございましたら、お聞かせください。

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