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聖王伝  作者: 竜人
第二十章 女神の神殿
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第663話

ギルバート達は、部屋の隅を回り込んで抜ける

そのまま中に入れば、ブラッド・ワームが居て危険だからだ

ギルバートの予想通り、近付かなければ魔獣は出て来なかった

どうやら罠として機能するには、近付かなければならない様だ

そのまま部屋の向こうに回り、先を進む。

少し進んだ所で、後ろから何かの悲鳴と騒ぐ音が聞こえる

アーネストが魔力察知を使って、元居た部屋の様子を探る

そうして暫く観察してから、首を振って告げる


「どうやら偽の女神は、あまりこちらを見ていない様子だな」

「どういう事だい?」

「向こうの部屋に向かって、何処からか魔物が入った様だ」

「それは本当か?」

「ええ

 魔力の大きさから、再びフロスト・ギガースが現れたんでしょう

 しかしブラッド・ワームに襲われて…」

「ああ…」

「そういう事か」


「魔物はどうやってあの部屋に?

 他に入り口は見当たらなかったが?」

「恐らくは隠し通路の様な物が…

 そもそもこの通路、あの魔物では通れないだろう?」

「あ…

 そういえば」


部屋の中は広くて大きいが、通路はそこまでの大きさでは無い。

ルシフェルも通路を通る時は、身体を小さくして通っていた。

3m以上の大きさのギガースでは、この通路では身体が詰まってしまう。

部屋への移動は他の通路があると考えるべきだろう。


「それで魔物は?」

「当然あの部屋に突入して、オレ達を探したさ

 それで足元のブラッド・ワームに…」

「あれはその音か?

 それで?」


既に音はしなくなり、静かになっている。

予想は出来たが、ギルバートは念の為に確認する。


「部屋にはあの時、4体の魔物の魔力を感じていた

 今はもう、何の魔力も感じない」

「うわあ…」


恐らくギガースは、ブラッド・ワームに食われたのだろう。

聞こえて来た悲鳴や争う音は、ギガースがブラッド・ワームと争う音だったのだろう。

魔力も騒動の音も消えたので、既に胃袋の中なのだろう。

アーネストがあまり言いたがらないのは、その時間があまりに短かったからだ。


「先を急ぎましょう」

「そうだな

 あんなのが他に居たんじゃあ…」

「うむ

 この先がファクトリーの筈じゃが…

 一筋縄ではいかぬじゃろう」


次の通路は細なぐ長く、グルグルと曲がって続いている。

分岐が無いので迷わないが、階段を登ったりして随分と時間が掛かった。

この様子では、この先にも魔物が潜んで待っているだろう。

ルシフェルとギルバートは、用心しながら先を進んだ。


「そろそろの筈じゃが…」

「随分と長いんだな」

「ああ

 こちらは本来なら、使われる事の無い道じゃ

 ワシ等は先程の…」

「ああ

 隠し通路か?

 ん?」


そこでギルバートは、ふと疑問に思っていた。


「何でそっちを使わないんだ?」

「それは…」

「隠し通路とは、基本的に一方通行です

 そして入り口の鍵は、向こうが握っている可能性が高い

 そんな所に入って行きたいですか?」

「あ…」

「魔物が来た道以外にも、連絡通路とかあるのか?」

「こっちが本来の連絡通路です

 私も詳しくは知りませんが、ここを作った際に使っていたそうですよ」

「それで入り組んでいるのか…」

「入り組んで?

 一本道じゃ無いか」


ギルバートの発言に、アーネストとアスタロトは頭を抱える。


「ギル

 あのね、私にもここに道が見えるよ」

「へ?」

「分かり難く作っておるからのう」

「道?」


ギルバートはセリアが指差した、岩だらけの壁に近付く。

そこは一見すると、岩の壁にしか見えなかった。

しかしよく見ると、周りの岩と色合いが違っている。

長い時間を経て、岩に偽装した壁が劣化したのだろう。


「なるほど…

 ならこっちの通路を使えば…」

「ま、待て!」

「え?」

カチッ!

バシュッ!


ギルバートが壁に触れると、すぐ右の壁が僅かに開く。

そこから金属の串が、無数に生えて来た。

咄嗟にギルバートは、後方に跳んで難を逃れる。


「な…」

「誰も触らない理由が分かったか?」

「何処に何の罠があるか分からないんですよ」

「だから入らなかったんだ

 そんな事も分からないのか」


止めにアーネストに言われて、ギルバートは顔を赤らめて反論する。


「そんなの分る訳無いだろう」

「迂闊に触るなと、事前に注意されただろう」

「だからってこんな…

 そもそも通路に罠だなんて」

「正式な通路では無いからな

 脱出経路や避難民の誘導の為の経路じゃ

 じゃから攻めて来た者が、引っ掛かる様に罠を仕掛けておる」

「なるほど…」


ルシフェルの説明を聞いて、ギルバートも納得が出来た。

この近くには村か町だった跡があり、そこには亜人や獣人が住んでいたのだ。

彼等が人間に攻め込まれた時に、ここは逃げ込む場所だったのだろう。

そう考えれば、複雑な道が作られたのも納得だ。

今ギルバートが通っている道は、敵が侵入した際に進む道なのだ。


「これは攻め込んで来た人間を撃退する…」

「まあ、実際には使われた事は無いんじゃがな」

「代わりにこんな事に使われて…

 悔しいです」


ルシフェルもアスタロトも、本来なら別の通路で楽に進んでいる。

しかし今は、そこの通路は偽の女神に押さえられている。

それでこうして、敵が通るべき道を進んでいる。

これは二人にとっては、屈辱的な事なのだろう。


「あの女め…」

「今は急ぎましょう

 そろそろ三階のファクトリーの近くです」


進んで行くにつれて、次第に外壁の間から金属が見え始める。

そしてそのまま、通路は不意に金属の壁に変わっていた。

所々金属の隙間に、見慣れない色のガラスが填め込まれている。

それが明滅して、幻想的な通路を浮かび上がらせる。


「うむ

 そろそろじゃな」

「これは…

 機械という物では?」

「正確には、機械を埋め込んだ通路ですね

 エネルギーを通したり、情報を送ったり

 この機械が様々な事を担っています」

「エネルギーや情報を?

 それじゃあ魔力を?」

「いいえ

 エネルギーとは魔力だけではありません

 雷や火もエネルギーなのですよ」

「ううむ

 言いたい事は分かるが、理屈が理解出来ない」

「そうでしょうね

 私も半分しか理解出来ていません」


アーネストは暫く、興味深気に壁を見ていた。

この中を通して、色々な物が流れている。

それを不思議に思いながら、思わず魅入っていたのだ。

しかし皇女に促されて、再び先に進み始めた。


「アーネスト?」

「気持ちは分かりますが…」

「もう!

 アーネスト」

「ん?

 あ、ああ…」

「行くわよ」

「今は先を急ぐんだ」

「そ、そうだな…」


アーネストは後ろ髪を引かれながら、通路を先に向けて進む。

時間があったならば、この通路を色々と調べていただろう。

情報やエネルギーを流せると言うのなら、色々な使い道が考えられる。

しかし今は、先ずは偽の女神をどうにかしなければならない。


「見えて来たぞ」


ルシフェルの声が前方からする。

通路はいよいよ輝いていて、まるで昼間の様に明るかった。

しかしその先の部屋からは、さらに明るい光が漏れている。

一瞬目を瞑ってから、改めて部屋の明るさに目が慣れるまで待つ。


部屋の中は広く大きく、今までの中で一番大きな部屋だった。

壁には光耀くガラスが填められて、周囲を明るく照らしている。

天井には蒼く澄んだ光が差し込み、まるで外に居ると錯覚しそうだった。

何よりも驚くのは、その部屋の規模だろう。


「何だ?

 あの尖塔は?」

「向こうはまるで、砦の様だな」

「ふむ

 ファクトリーは見た事が無いのか?」

「いや、こんな感じじゃ無かったぞ」

「ギルバート

 あれはファクトリーの一部だ

 こっちが本体になる」

「一部?」


ギルバートの言葉に、エルリックが説明をする。


「向こうで見た物は、ファクトリーの本の一部なんだ

 だから魔物もそんなに居なかった」

「一部であの規模なのか?」

「そうだ

 それでも十分に機能していたからな」

「ここにあるのは、本格的な魔物を作る工場じゃ」


ギルバートが以前見た物は、ファクトリーの一部であった。

魔物を生み出す目的よりも、複数の魔物を組み合わせて実験をする。

そういった実験用の施設であったのだ。

だから魔物を生み出すのにも、相応の時間が必要だったのだ。


この施設は本格的に、魔物や兵器を生み出す向上になっている。

だから砦の様な大きな機械で、大型の魔獣を生み出す事も出来る。

また、小型の魔物はガラスの筒や、寝台が並んでいる場所で作られる。

そこで一度に大量生産して、戦場に送り込めるのだ。


「あのガラスの寝台…」

「人間サイズの魔物

 または亜人や獣人を生み出す機械ですね」

「亜人も生み出せるのか?」

「出来ると聞かれれば…出来ます

 しかし女神様の許可が無ければ…」

「出来るのか?」

「そうですね」


「それではここで、人間も生み出された?」

「そうですね

 確認はしていませんが、その可能性はありますね

 元々そういう目的の場所ですから」

「そんな…」

「もしかして

 先の竜神機というのも?」

「ええ

 あれで作ったのでしょう

 と言っても、いつ作られた物かは分かりませんが」


アスタロトはそう言って、砦の様な大きな建物を指差す。

竜神機やキマイラの様な、大きな物はそこで作られるらしい。

そしてそれは、機械や生き物など関係無く作れるのだろう。

今はその場所では、大きな巨人の様な物が入っていた。


「あれも作られた魔物か?」

「そうじゃなあ…

 亜人にも見えるし、区別が出来んのう」

「魔物と人間の区別なんて、所詮は言葉が通じるかどうかですからね」

「そうなのか?」

「ええ

 以前は人間は、私達魔族を亜人と呼んでいました

 しかし今は、魔族も魔物と同義となっています」

「確かにそうだな

 魔導王国の資料ではそうなっていた」


獣人にしても、本来なら亜人の一種である。

しかしそれが、いつの間にか獣人と蔑称で呼ばれる様になった。

今では普通の呼び方だが、元は人間と区別する蔑称だったのだ。

それはドワーフや、エルフに対しても同じだった。


最初は人間も、女神の言葉に従って共に暮らしていた。

しかし時間が経つと共に、エルフやドワーフ達を亜人として区別する様になる。

そこから優劣を区別して、互いを見下す考えが広まっていった。

いつしかそれが、争いの元になるとは考えずに。


「元々は、みんな同じ人間と獣だったのに…

 いつしか区別する様になったそうです」

「それからじゃな

 亜人や獣人と使い分ける様になったのも」

「それで魔物と人間ですか?」

「ああ

 人間以外は、魔物と変わらん

 そういう考え方じゃな」

「随分と無茶な…

 女神はそれを、許していたのですか?」

「許さなかったからこそ、勇者が異界から呼ばれた

 差別する事を止めさせる為にな」


勇者イチロは、人間が迫害するのを止めさせる為に呼ばれた。

しかし人間と戦う内に、次第に人間側に流れてしまった。

そうして最後は、女神に逆らったとして処刑されている。

その時に人間は、彼を裏切り者として差し出していた。

結局人間は、味方してくれた勇者をも裏切ったのだ。


勇者が召喚された頃は、魔物はそれ程種類は居なかった。

だから亜人である筈の、巨人も魔物とされていた。

今の様に魔物の種類が増えたのは、勇者であるイチロの仕業でもあった。

イチロが考案して、キマイラの様な魔物が増えていた。


「ワシ等がイチロに出会った頃は、キマイラの様な魔物は居らなんだ」

「イチロのせいで、魔物が増えたとも言えますね…」

「勇者が?

 何で?」

「魔物を守る為に、より強い魔物を作ったのじゃ」

「それにあの…

 竜神機も…」

「竜神機?

 あれは翼人が設計したのでは?」

「そうじゃな

 オリジナルはそうじゃ

 しかし量産したのは…」

「女神様とイチロが、魔物の楽園を守る為に作ったのです

 より効率の良い、量産された竜神機を…」


アスタロトが指差す先には、3体の竜神機が座っていた。

それは装甲を張る前の、まだ骨組みのままの状態だ。

剥き出しの骨格と配線が、まるで生き物の骨格と血管の様に見える。

その姿はまるで、今すぐにでも動き出しそうな様子だった。


「あんな物まで…」

「動きはしないでしょうが…

 動き出したら厄介ですね」

「それよりも、魔物の方が問題じゃな」

ブシュー!


ルシフェルが指差す先で、音がしてガラスの筒が動き始める。


「次の魔物が目覚めた様じゃぞ」

「くそっ」

「また4体ですか?」

「その様にプログラムされておったんじゃろう

 来るぞ!」

グガアアアア


フロスト・ギガースが、ガラスの筒の中から出て来る。

生まれたてなので、武器も衣服も身に着けていない。

素っ裸のままで、魔物は咆哮を上げながら向かって来る。

ルシフェルはそれを見て、腕を4本に増やしながら剣を構える。


「それで?

 ここではどうすれば良い?」

「私が調べますので、その間に魔物をお願いします」

「分かった」


エルリックは駆け出すと、部屋の一角のガラスの板の前に立つ。

そのまま手前にある、四角いボタンを叩き始める。

ボタンには文字が一字ずつ書かれており、エルリックはそれを叩いている。

叩いた文字に合わせて、ガラス板に文章が書き出されて行く。


「この部屋の何処かに、電源ケーブルがある筈」

「ふむ

 私も調べてみましょう」

「お願いします」


アスタロトも別のガラス板の前に立ち、ボタンを叩き始める。

この場に分る者が居れば、それを見てコンピューターみたいだと評じただろう。

手前のボタンはキーボードに似ていて、ガラス板がモニターに酷似していた。

エルリックとアスタロトは、文書を打ち込んで検索を始めていた。

まだまだ続きます。

ご意見ご感想がございましたら、お聞かせください。

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