第661話
ギルバート達は、部屋の中でフロスト・ギガースと戦っていた
見た目はギガースなのだが、吹雪を吐く事が厄介だった
しかしセリアが呼んだ精霊の加護で、吹雪の力は弱められた
その加護が無ければ、戦いは厳しい物になっていただろう
アーネストとアスタロトは、部屋の入り口から魔法を放つ
拘束の魔法を掛けてから、効果的な炎の魔法を浴びせる
それでギガースに手傷を与えて、確実に弱らせる
8体居たギガースの内、3体が炎に焼かれて弱っていた
「そのまま拘束してください
残りは私が…」
「分かった
ギルの方は?」
「何とか健闘しています」
ギルバートの方は、ルシフェルが3体を受け持つ。
ダメージこそ少ないが、確実に削って押さえている。
その間にギルバートは、2体を相手に戦っている。
吹雪は厄介だが、加護のお陰で何とか凍り付かずに戦えていた。
ウガアアア
ゴウッ!
「ぐうっ
このっ!」
ザシュッ!
グガアアア
魔物は2体居るので、片方が攻撃してもう片方が吹雪を吐く。
しかし寒さによるダメージはあるものの、凍り付いて動きを制限される事は無い。
それでギリギリまでブレスに隠れて、手前のギガースに攻撃を加える。
「うおりゃあああ」
ズバッ!
グゴアアア
「よし
1体は倒せた」
「早くしてくれよ
ワシもいい加減キツぞ」
「分かっている」
ルシフェルは何とか耐えているが、さすがに3体相手は分が悪い。
少しずつだが吹雪を浴びて、動きが鈍り始めていた。
最初に加護を受けていれば、こうはならなかっただろう。
ルシフェルが飛び出した事が、ここに来て影響していた。
「アスタロト
ルシフェルは凍っていないか?」
「あの馬鹿…
加護を受けていないから」
「マズくは無いか?」
「急ぎましょう
炎の槍」
シュバババ!
ドシュドシュッ!
グゴオオオ
「よし
1体が倒れました」
「もう一息です」
「ああ
早目に頼む」
そうは言ったものの、アスタロトも手一杯だ。
アーネストも炎で拘束しているので、身動きが取れない。
このままルシフェルが倒れれば、戦況は逆転されるだろう。
ギルバートもそれが分かっているので、無理をして戦っていた。
「うおおおおお」
ズバッ!
グガア…
「こっちは倒したぞ」
「は、はや…く…」
「大丈夫か?
うおおおお」
ガギン!
ルシフェルは2体に掴み掛かられ、1体から吹雪を吹き付けられていた。
ギルバートはその背後に回って、吹雪を吐いている魔物に切り付ける。
グ…ガ…
魔物は背後から不意を突かれて、慌ててギルバートの方を向く。
それでルシフェルの拘束が緩み、ルシフェルは魔物を振り解く。
「うがああああ」
ガギン!
ズドシュッ!
グガアアア
ゴガアア
ルシフェルは拘束を振り解くと、そのまま左右に切り付ける。
身体の一部に氷が着いているが、そのまま振り解いて切り付けた。
この攻撃でギガースは転倒して、ルシフェルは身動きが取れる様になる。
そのままギルバートに切り付けていた、ギガースを背後から切り付ける。
「掛かって来い!」
グガアアア
「させるか!」
ズガッ!
グゴオオアアア…
ギガースは背後から切られ、大きな痛手を負っていた。
そのまま態勢を崩し、ギルバートの前に大きな隙を見せる。
「上手いぞ
喰らえええ」
ザシュッ!
ウゴオオ…
ギルバートの攻撃が入り、ギガースは倒れた。
これで残りは2体となり、それぞれ手近なギガースに向かう。
「もう少しじゃ」
「ああ
このまま倒すぞ」
グゴオオアアア
ガギン!
その間にアスタロトも、魔法で1体を倒す。
残りは1体となり、アスタロトはそちらに向けて炎の槍を放つ。
アーネストが炎の拘束で留めていたので、こちらもあちこち火傷を負っている。
次々と炎の槍が突き刺さり、こちらも苦悶の声を上げて倒れる。
「これで…
止めです!
炎の槍」
ゴウッ!
ズガズガ!
グオオオ…
「あっちはどうなった?」
「倒せた様ですよ」
ギルバートが止めを刺し、ルシフェルも残りの1体を蹴り倒す。
そのまま馬乗りになり、ギガースの身体に剣が付き刺さる。
グゴア…
「はあ、はあ…」
「倒したな」
「ああ…」
ルシフェルは肩で息をして、ふらふらと立ち上がる。
そのまま維持出来ないのか、腕は2本に減っていた。
それでも何とか立ち上がると、ルシフェルはアスタロトの方を見る。
アスタロトは親指を立て、勝ったとアピールする。
「くそっ
向こうの方が早かったか」
「競争じゃ無いんだから…」
「それでもじゃ
アスタロトがニヤニヤ笑っておる」
アスタロトが笑っていたのは、実はルシフェルが無事だった事だ。
加護が掛かっていない分、かなり消耗している筈だ。
だからアスタロトは、ルシフェルの身を案じていたのだ。
それで無事を確認して、親指を立てて合図を送っていた。
「これでここも、通れる様に…」
「アスタロト?」
「しまった
罠だったか」
「え?
何!」
アスタロトに続いて、アーネストも魔力を感じていた。
この部屋の先から、増援の魔物が向かって来ている。
しかも魔力の大きさから、先ほど倒したギガースの増援の様だ。
魔力を感じたアーネストは、ギルバートに向かって声を掛ける。
「ギル!
増援が来るぞ」
「何?」
「恐らく同じフロスト・ギガースだ
一旦こちらに来い」
「ルシフェルも
こっちに来て加護を受けてください」
「何を馬鹿な事を
ワシはこのまま…」
「意地を張らないでください
あなたに倒れられたら…」
「むう…
分かった」
ギルバートとルシフェルは、一旦部屋の入り口に向かう。
そこでセリアと合流して、再び加護を掛けてもらう。
まだ効果は残っていたが、再三のブレスで大分弱まっていた。
ルシフェルも今度は、しっかりと加護を掛けてもらった。
「増援が来るじゃと?」
「ああ」
「私も感じましたから、間違いありません」
「しかしファクトリーは…」
「権限は取れていませんが、魔物の製造はそのまま行われているのでしょう
それで生まれた魔物を、こちらに向けているんです」
「そんな馬鹿な
それじゃあ倒しても…」
「ええ
再度向かって来る可能性は高いでしょう」
「それじゃあキリが無いな」
「ええ」
「むう…」
魔物が際限なく来るとなると、さすがにルシフェルも苦い顔をする。
1体1体は脅威では無いが、なんせ数もそれなりだ。
倒すだけでも手間が掛かり、こちらも無傷という訳にもいかない。
皇女が目覚めていたので、魔法で手当てを受ける事は出来た。
しかしそれでも、そう何度も繰り返せないだろう。
「大丈夫?
私も戦った方が…」
「いいえ
皇女、あなたの魔力は回復しきっていないでしょう?」
「それは…」
「それに大型の魔物です
下手に前に出ても、危険なだけです」
「でも…」
「そうじゃぞ
どうするつもりじゃ?」
「せめて製造を止めれれば…」
「ワシ等には権限は無いぞ」
「それなら私が」
ここで今まで空気の様に存在感が無かった、エルリックが挙手をする。
「むう?」
「あなたは権限が無いでしょう?」
「そうじゃ
元々ここは、女神の直轄のファクトリーじゃ
じゃからあの女も権限が…」
「止めるだけなら、私の使徒としての権限でも…」
「そうか
要は電源を落とせば良いんだ」
「電源?」
「ファクトリーとは、元々複数のエネルギーを利用しています
その内の電気だけでも止めれれば…」
「可能なら水も止めます」
「そうですね
そこまですれば、止める事も…」
「最悪でも遅らせる事は出来る」
「そうですね
少しでも遅らせれば…」
「しかしどうする?
魔物が向かって来ているんだろう?」
今もファクトリーから、魔物が生まれて向かって来ている。
その先に向かうには、魔物をどうにかしなければならない。
「ファクトリーから直接は来ないでしょう
出入り口を塞げば…」
「時間稼ぎぐらいは出来そうじゃな」
「そうなると…
先ずは」
部屋の入り口から、入って来る魔物の数を確認する。
さすがに入って来るのは、フロスト・ギガースで間違いは無かった。
しかし入って来たのは、先ほどの半数である4体であった。
「どういう事だ?」
「さあな
反応はどのぐらいだったんだ?」
「いえ
数は合っています」
「一度に作れるのは、どうやら4体までなんだろう」
「そうか
それなら…」
敵が半数の4体なら、先ほどよりも早く倒せる。
残る問題は、その後にファクトリーで生まれる前に進む必要がある。
長引けばそれだけ、奥に進む時間が無くなる。
ここは一気に攻め込み、早急に片付ける必要がある。
「アーネスト
オレはルシフェルと手前の2体を狩る」
「分かった
こっちは残りの2体を押さえる」
「頼んだぞ」
「アスタロト」
「分かっています
行ってください」
「うむ」
ルシフェルとギルバートは、部屋の中に駆け込んだ。
「うおおおお」
「行くぞおおお」
グガア?
ゴガアアアア
魔物は二人に気付き、剣を構えて向かって来る。
さらに幸いな事に、魔物は剣しか身に着けていなかった。
鉄製とはいえ、先ほどの鎧は破壊に手間取った。
だから鎧を着てないこの魔物は、明らかに先ほどの魔物よりも狩り易かった。
いや、狩り易い筈だった。
グゴアアア
「くっ
こいつ…」
「むう?
先ほどよりも素早い?」
鎧を着ていない為か、魔物は動きが良かった。
ルシフェルの攻撃もだが、ギルバートの素早い剣戟にも反応していた。
「アーネストは大丈夫か?」
「アスタロトが居る
安心して任せろ」
「あ、ああ…」
「それにこいつらも…
油断出来んぞ」
ガギン!
今度のフロスト・ギガースは、思ったよりも狡猾だった。
先程のフロスト・ギガースは、力任せに向かって来ていた。
しかし今回のフロスト・ギガースは、素早く動いて攻撃を躱している。
どうやら力任せでは、こちらに敵わないと判断した様子だ。
「ううむ…
ちょこまかと」
「なかなか厄介だな」
しかしルシフェルも、魔王と呼ばれていたほどの男だ。
数合攻撃したところで、魔物の動きを把握していた。
「ギルバートよ
次の一撃で左に合わせろ」
「左に?
分かった」
ルシフェルはそう言うと、ギガースの攻撃を剣で受ける。
そのまま腰を落とすと、力任せに左に押し込む。
そこへギルバートが切り掛かった、ギガースが後退する。
そのまま2体がぶつかり、一瞬だが身動きが取れなくなる。
「今じゃ!」
「おう!」
二人は前後から挟む形で、同時に魔物に切り掛かる。
即席の連携攻撃だったが、魔物は見事に挟み込まれた。
そのまま数合切り裂かれ、先ずはギルバートの側の魔物が膝を着く。
「うおおおお」
ズドシュッ!
グガアアア
魔物は胸を貫かれ、断末魔を上げる。
それを背後で聞いて、ルシフェル側の魔物も焦る。
そこで剣を構えていれば、まだ攻撃が防げただろう。
しかし魔物は、ルシフェルに向かって切り掛かった。
グゴアアアア
「甘いわ!」
ドシュッ!
ルシフェルは剣を弾きながら、返す一撃で首を刎ねる。
魔物は声を上げる間も無く、そのまま崩れ落ちた。
「ふう、はあ…」
「くっ
連戦はキツイな…」
二人が顔を上げると、目の前で2体の魔物が焼けていた。
こちらも二人が連携して、火球と炎の槍で攻撃したのだ。
魔物2体は追い込まれて、躱す事無く火球で焼かれていた。
「そっちも倒したか?」
「ああ
2体だけだったからな」
入り口に向くと、エルリックが頷いていた。
「急ぎましょう
次の魔物が現れる前に」
「そうじゃな」
「さあ、急ぐぞ」
先頭にルシフェルが立ち、その後をギルバートが駆けて行く。
エルリックはその後ろを、他の者と一緒に走っていた。
見た目は大人の男なのだが、実はアーネストよりも体力が無かったのだ。
だから息を切らせながら、後ろを走っていた。
「ふむ
ガーディアンの割には体力が無いな」
「ああ
まさかアーネストと変わらないとは…」
「…」
本当はアーネストも、身体強化でもっと早く走れる。
しかし持久力が無いのと、無駄なのでそのまま走っていた。
いくら他の者が早く着いても、肝心のファクトリーを止めれないからだ。
だからアスタロトも、そんなに急いではいなかった。
「もうすぐ次の部屋じゃ」
「ルシフェル
一旦部屋の前で待ってください」
「何を悠長な…」
「良いから
何が待ち構えて居るか分かりません」
ルシフェルは何か言いたそうだったが、黙って部屋の手前で止まる。
ギルバートも止まると、そのままそこから中を覗き込む。
部屋の中には、確かに何かが居る筈だ。
生命力察知のスキルで、ギルバートはそう感じていた。
しかし中を見回しても、何も居る様には見えない。
「どういう事だ?
スキルで感じられるのに…」
「そうだな
はあ、はあ
魔力察知でも、感じられる」
「そうですね
どうも妙ですね」
何か居る筈なのに、何も居る様には見えなかった。
姿を隠すスキルでも使っているのか、何も居る様に見えないのだ。
「スキルか?」
「そうじゃな
隠れるスキルか…
しかしそれなら」
「ええ
私の目には誤魔化されません」
「分かるのか?」
「そうですね
これもスキルの様な物です
しかしそれでも…」
気配はするのに、実体が何も見えない。
それは非常に厄介だった。
「スノウ・ウルフの様に…」
「いや
隠密のスキルは、あくまで見つかり難くするだけだ」
「それじゃあ姿を見せなくする能力か?」
「ううん…
隠蔽や認識障害のスキルでも、姿を隠せる物は聞いた事も無いですよ」
アスタロトも首を振り、そんな物は存在しないと告げた。
「それじゃあ一体…」
「分かりませんが、用心して進みましょう
何処に隠れているか分かりません」
「そうだな…」
ギルバートとルシフェルは、慎重に部屋に足を踏み入れた。
まだまだ続きます。
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