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聖王伝  作者: 竜人
第十八章 北へ向けて
605/800

第605話

ギルバート達は、山の洞窟の中で機械を発見する

その機械を使って、アーネストは過去の映像を映し出す事に成功する

そこにはこの世界の成り立ちと、過去の英雄達の記録が残されていた

ギルバート達は、そこでその映像を解析していた

カイザートの長い戦いを見て、ギルバートは色々と思うところがあった

しかしそれを議論する前に、先ずは食事を摂る必要があった

気が付けば半日以上、この映像を見続けていたのだ

そのせいでセリアは、すっかり不機嫌になっていた


「だから悪かったって」

「ふーんだ」

「なあ、これもやるから」

「物で釣ろうとしたって…」

「じゃあ、こっちの木の実ならどうだ?

 甘くて美味しいぞ」

「物でなんか…」

「じゃあ、両方ならどうだ?」

「むう…」


最初は頬を膨らませていたが、セリアの前には木苺と木の実が並んでいた。

その甘い匂いに、セリアの表情も少しずつ緩んで来る。


「むう…」

「ほら、美味しいぞ」

「しょうがないなあ…」


セリアはそう言いながら、ギルバートが剝いた木の実を頬張る。


「ん~♪

 美味しい」

「そうか?

 良かった」


これで木の実が酸っぱかったり、苦かったら益々拗れていただろう。

安堵の溜息を吐きながら、ギルバートは美味しそうに頬張るセリアを見ていた。

木の実を食べ終わる頃には、セリアの機嫌もすっかり直っていた。


「にゅふふ~♪」

「ふう…

 何とかなった…」

「んみゅう?」

「な、何でも無いよ」


ギルバートはそう言いながらも、兵士達にもっと木の実を採って来る様に指示を出す。

木の実を食べている間は、さすがにセリアも機嫌を損ねないだろう。

そう思ってギルバートは、兵士達に木の実を集めさせる。

尤もセリアが飢えていたのは、お腹よりも心の方だった。


この機械の山の中で、ギルバートはアーネストと知識の探求に精を出していた。

確かに女神と戦うには、もっと相手の事を知る必要はある。

しかしその事で、セリアは暫く置いてけぼりにされていた。

それでセリアは、不満で頬を膨らませていた。

食事の間は構ってもらえたが、その後はまた映像に集中するだろう。

その事を思うと、セリアはまた頬を膨らませていた。


「殿下

 あまり木の実を食べさせては…」

「だってセリアの機嫌が…」

「それは殿下が、イーセリア様を構わないからですよ」

「そうですよ」

「そうなのか?」

「ええ」

「構ってもらえないから、ああして…

 ほら」

「また膨れてますよ」


兵士達はセリアが、不機嫌になって頬を膨らませる様を示す。


「それに木の実ばっかり食べてたら…」

「吹き出物が増えますし、体重も…」


兵士の言葉が聞こえたのか、セリアが不機嫌そうに睨む。


「う…」

「怖い…」

「馬鹿

 レディに体重の話題は…」

「という事で、殿下」

「ちゃんとイーセリア様の事を構ってあげてください」

「分かったよ」


映像の続きは気になったが、セリアの機嫌はすこぶる悪かった。

それでギルバートは、兵士達によく見ておく様に指示を出す。

そうして自分は、セリアを連れて洞窟の外に出た。

セリアも構ってもらえるとなると、機嫌を直して楽しそうにしていた。


洞窟の外には、魔物の気配もある。

しかし洞窟に近い場所では、さすがに魔物も暴れる事も無い。

むしろ中に居る兵士達を警戒して、迂闊に近付こうとはしなかった。

それでギルバートは、セリアを連れて近くの草原に来ていた。


そこには花が咲いていて、セリアは上機嫌に花を摘んでいた。

摘んだ花を器用に組んで、花の冠も作ってみる。

それはフィオーナに教わった、花の冠だった。

嬉しそうにそれを、ギルバートの頭に載せる。


「お兄ちゃん

 ほら」

「へえ…」

「綺麗でしょう?」

「ああ

 ありがとうな」


ギルバートは素直に礼を言うと、セリアの頭を撫でてやる。

それだけでセリアは、嬉しそうにニコニコと微笑んでいた。


二人がそうしている間に、アーネストは兵士達と映像を見ていた。

そこにはカイザート達が、魔物と戦う姿が映し出されていた。

カイザート達は協力して、魔物と戦っていた。

兵士達はそれを見て、魔物との戦い方を考えていた。


「あのワイバーンというのは厄介だな」

「いや、グリフォンと言うのも厄介そうだぞ」

「どちらも空を飛べるから、先ずは落とす必要があるな」

「それなら弓の必要もあるな」

「オレ達が魔法を使えたらな…」


騎兵達はそう呟くが、今なら彼等も魔法が使える可能性はあるのだ。

それを示す様に、映像の中でアランやアモンも魔法を使っていた。

身体強化で魔力を使っていた事で、彼等の魔法力も上がっている。

後は呪文を覚えたり、その効果をイメージ出来れば使えるのだ。

訓練を積んで、使いこなせる様になるには時間が必要だが。


「お前達だって、その気になれば使えるぞ」

「え?」

「本当ですか?」

「ああ

 必死に訓練して身体強化を身に着けただろう?」

「ええ」

「それで何度も魔力枯渇も冒して、魔力を上げる事が出来た」

「それはそうですが…」


「後は呪文を覚えて、繰り返し使うだけだ

 そうすればイメージも定着して、使える様になる」

「そうなんですか?」

「いや、アーネスト様の話だ

 そんなに甘くは無いだろう」

「おい

 お前達…」

「どうせ何年も修練するとか…」

「そうだな

 死ぬほど魔法を使うとかありそうだな」

「そりゃあそうだろう?

 そんなに簡単なら、誰だって魔術師になれるだろ」

「やっぱり…」

「アーネスト様…」

「なあに

 オレだって数年で出来たんだ」

「それはあなただからでしょう?」

「やれやれ…」


兵士達は溜息を吐きながら、再び映像に目を向ける。

映像の中では、1体目のドラゴンが現れていた。

それは以前に見たドラゴンよりも、一回り大きな成体のドラゴンだった。


「こいつがドラゴンだ

 体色から推測して…

 恐らく深紅色(レッド)・ドラゴンだろう」

「レッド・ドラゴンですか?」

「この前のとは違うんですか?」

「ああ

 この前に戦ったのは、不完全に育ったドラゴンだ

 完全に育ったドラゴンは、何らかの属性を持っている」

「属性ですか?」

「ああ

 例えばこいつは、朱色の鱗と翼を持っている

 他にも青銅色(カッパー)翡翠色(エメラルド)黒檀色(ブラック)などがいるな」

「色によって違うんですか?」

「ああ

 クラスはクラスCと変わらないが、それぞれ何らかの属性を持っている

 このレッド・ドラゴンは、炎の属性を持っている」


映像の中でも、カイザート達がレッド・ドラゴンだと叫んでいる。

そして炎のブレスに気を付けろと、各自に注意を促していた。

魔法を使える者は、属性に合わせた魔法を撃つ様に指示を出す。

レッド・ドラゴンは火属性なので、水や氷の矢が放たれていた。


「なるほど

 あれは火の属性なんですね」

「そうだ

 だから水や氷の魔法が有効なんだ」

「しかし我々では…」

「そうだな…

 もしこいつに出会ったら、オレしか対処出来ないか…」


騎士達も懸命に攻撃するが、鋼の剣ではダメージを与えられない。

その様子を見て、マクツースが横から声を掛ける。


「それは鋼じゃから無理なんじゃろう

 ミスリルなら…」

「どうにかなりそうか?」

「うむ

 ミスリルは魔力を通し易い

 身体強化を使えばそれなりには…」

「そうか

 しかし属性が付与されていないだろ?」

「それでも鋼の武器に比べれば、少しはマシじゃろう」

「それでは力尽くになりませんか?」

「それで良いじゃろう?

 それでも魔力を流したミスリルなら、そう簡単には壊れん」

「それで勝てるのか?」

「そう聞いておったが?」


確かに映像の中でも、騎士達は鋼の剣でも健闘していた。

それがミスリルに変わるだけでも、攻撃力は上がるのだろう。

ならばドラゴンに対しても、ある程度のダメージが期待出来るのだろう。

事実騎士達の攻撃も、多少ながら傷を与えていたのだから。


「ドラゴンに対して力尽くか…」

「うむ

 ブレスさえなんとかなれば、少しずつでも削れるじゃろう」

「しかし危険じゃないのか?」

「そこはお前さんとギルバート殿に懸かっておるじゃろう

 あれほどの攻撃力があるんじゃからな」

「ううむ…」


つまるところ、ギルバートの攻撃力次第なのだ。

それならばギルバートだけでも、属性の付与した武器を使うべきでは無いのか。

アーネストはそう考えて、マクツースに質問してみる。


「なあ

 ギルにだけでも属性の付与した武器は作れないのか?」

「作れるか問われれば、作れるじゃろうな」

「それならば…」

「しかしここには、ミスリルを加工する炉が無い」

「あ…」

「それに属性の付いた魔石や、それを加工する工具も無い」

「ううむ…」

「それにな、もし工具があったとしても、一々加工する暇も無いじゃろう?」

「それなら事前に…」

「何本も用意しておくのか?

 持ち運びにも不便じゃのう」

「それもそうか…」


「結局直前で、剣に魔力を付与した方がマシじゃ」

「そんな事が出来るのか?」

「よく見て見ろ

 当時の魔導王国では、それが出来ていたという話じゃ」

「え?」


アーネストは映像を巻き戻して、もう一度最初の辺を再生してみる。

すると確かに、魔法を付与している姿が見られた。

鋼の剣に魔法を掛けるので、それほど強力な魔法は掛けれない。

しかし魔力を帯びた剣は、白く氷の力を纏っていた。


「なるほど…

 魔法を直接かけているのか」

「ああ

 ワシもその様に聞いていた」

「しかし難しいな…」


魔術師達は、騎士の剣に魔法を行使して、魔力を刀身に注ぎ込む。

それで刀身が魔力を帯びて、一時的に魔力付与をした剣が出来ていた。

しかしその剣をもってしても、ドラゴンの表皮には小さな切り傷しか付かない。

それだけ属性を持った鱗は、硬くて厄介な物だった。


「だが、あの程度しか…」

「それは鋼じゃからな

 ミスリルなら切れ味がそもそも違う」

「なるほど…

 それならば身体強化でも…」

「ああ

 それに頑丈じゃから、攻撃を受け流す事も出来るじゃろう」

「さすがにそれは…」

「難しいがやるしかなかろう…」


映像の中の騎士達も、剣で必死に攻撃を防いでいる。

しかしドラゴンとの対格差があるので、それでも弾き飛ばされている。

死者が少ないのは、神聖魔法の使い手が居るからだ。

そうで無ければ、もっと被害が大きかっただろう。


「アーネスト殿も神聖魔法は使えるじゃろう?」

「しかし回復は得意では…」

「はて?

 そうなのか?」

「ええ

 私はまだまだ未熟でして…

 上手く傷を塞げないのです」

「ううむ…

 それはアーネスト殿が、怪我や病気をあまりした事が無いからじゃないか?」

「え?

 それはどういう…」


「魔法とは呪文とイメージじゃろう?

 ワシ等ドワーフでも、初めて使う魔法の付与は効果が低い」

「それは普通では?」

「そうじゃあ無い

 イメージが上手く出来ておらんからじゃ

 イメージさえ出来れば、最初っから上手く行く事もある」

「それでは神聖魔法の回復も…」

「ああ

 傷の治りや病の事をよく知らんのじゃろう…

 じゃから効果を発揮し難い」

「なるほど…

 確かに皇女も、王国の病に関しては難しいと言っていた…

 そう言う事か!」


皇女が王都に滞在している際に、風邪に罹った者を治そうとした。

しかし風邪自体が帝国では珍しい病気で、皇女はなかなか治せなかった。

その内にポーションで治ってしまったので、その時は有耶無耶になっていた。

しかし症状がよく分からないので、治せなかったのなら筋が通っている。

彼女は毒や傷に関しては、素早く癒せていたのだ。


「効果か…

 確かに魔法でも、イメージが重要だ

 それならば付与や神聖魔法も…」

「ああ

 それが出来てこそ、一流の魔導士と言われておったそうじゃ」


マクツースの言葉を聞いて、アーネストは映像をしっかりと見る。

この魔法の効果を見て、イメージをすれば良いのだ。

それぐらいの事ならば、なんとか出来そうな気がする。

アーネストはそれから、暫く映像に集中していた。


その後も数日掛けて、アーネストは映像の解析をする。

時には魔導王国時代の貴重な資料や、女神の来た世界の資料も調べていた。

そうする事でアーネストは、女神の正体と能力を調べていたのだ。

もし戦いになっても、彼女に勝てる様に。


「それで?

 何か分かったのか?」

「ああ

 色々とな」

「そうか

 それは…」

「今は言えない…

 間違えている可能性もある」

「何だって?

 それじゃあこれまでの時間は…」

「いや、調べる事は重要だったんだ!

 だけどそれで…

 益々女神の正体が分からなくなった」

「分からないって…

 別の星…だっけ?

 そこから来たんだろう?」

「それは本物の女神だ

 問題は偽物と思われる女神だ」

「それは偽者じゃあ…」

「はあ…」


ギルバートの答えに、アーネストは溜息を吐く。


「確かに偽者だと思うよ

 しかしそれなら、そいつは一体何者なんだ?」

「え?」

「使徒を操り、世界の声も使える…

 おまけにファクトリーまで動かしている」

「あ…」


アーネストんも言葉に、ギルバートも言いたい言葉の意味が分かった。


「偽者にしては、本物と同等の力が使える?」

「そうだ!

 勿論完璧じゃあ無いんだろう

 ファクトリーの機能に制限はあるみたいだし

 エルリックは掛かって無いわ、魔王も呪縛から解放されているわ…

 操る能力も不完全だ」

「そうだよな…」

「そもそもが女神は…

 本物はそんな操る様な真似はしていない」

「ううむ…

 そう言われれば確かに、操る様な事はしていないな」


映像の中の女神は、操ってはいなかった。

指示に従う者は、女神を信奉して従っていたのだ。

しかし今の女神は、言う事を聞かせる為に操っていた。

そこからして違っているのだ。


「だったら何で…」

「調べていたのは対抗策だ

 どうやって女神に操られない様に、その力に対抗するか…」


アーネストはそう言いながら、ギルバート達に話し始めた。

まだまだ続きます。

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