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聖王伝  作者: 竜人
第十八章 北へ向けて
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第594話

ギルバート達は、引き続き映像を見ていた

本当はこうしている間にも、女神が何か起こしているかも知れない

しかし何か情報があるかも知れないので、こうして映像を見ていたのだ

そこでは今は、過去の勇者や英雄の姿が映し出されていた

彼は人間の国をまとめ上げて、英雄として剣を授かっていた

それは二代目勇者である、イチロと呼ばれる人物が使っていた剣だった

彼の竜退治だけが伝えられて、竜退治の英雄の剣として伝わっていたのだ

そしてその英雄も、英雄王として剣を授かっていたのだ


「竜退治の英雄王

 ギルガメッシュの誕生の瞬間だな」

「彼がバビロニア?

 その国を興したのか?」

「バビロニア王朝

 あくまで彼は、バビロニア王朝の英雄王だ

 その他の人間の国は、この王国に従属する形になる」

「従属と言う事は…」

「あくまでも属国という形だ

 しかしこの事で、人間の国は暫く落ち着く事になる

 それだけでも評価すべき国王なんだがな」

「へえ…」


彼の力を恐れて、他の国は争いを避ける様になる。

それで紛争が少なくなり、魔道具による国の発展が大きくなる。

その最たる結果が、浮遊大陸であるシャンバラであった。

シャンバラは翼人達と協力して、一つの山を空に浮かび上がらせる事に成功する。


「ほら

 あれがその魔道具の様だな」

「ドワーフの郷にあった物とは違うな?」

「ああ

 あれは破壊を目的にした兵器だ

 こっちは陸を浮かべる魔道具だ

 使用目的が違うな」


陸地の他にも、建物も浮かべる実験が行われる。

最初は小さな船で試されて、魔道具の重みで墜落する。

その結果は散々で、多くの怪我人が出ていた。

船が空中で真っ二つになり、大きな魔道具が落下したからだ。


「うわっ…

 悲惨だな…」

「ああ

 下で見てた者達には災難だな

 それで死人も出たみたいだ」


実験の結果がレポートとして、シャンバラの国王に提出される。

それを見た国王は、次に頑丈に補強した建物を用意させる。

二階建ての家が選ばれて、周りを木で補強される。

しかしそれは、ギルバートが見ても不安になる程度の補強だった。


「大丈夫なのか?

 あんな程度の補強じゃあ…」

「珍しいな

 オレも無理だと思っている」

「いや、あれじゃあ無理だろう?

 まださっきの木のボートの方が…

 あ!」


バラバラ!

「うわーっ!」

グシャッ!


鈍い音がして、家の残骸が人々の上に落ちて来る。

事態を重く見た国王は、見物人を柵の外に追い出した。

そして今度は、金属の板で補強された家で試される。

しかし金属が重たいので、家は浮き上がる事は無かった。


「あれ?」

「重すぎるんだ

 それで先ほどは、危険だが木で補強したんだな」

「なるほど…」


それから暫く、映像では何度も実験が繰り返される。

魔道具を何回も作り直して、家の補強も見直されていた。

そうして遂に、家よりも大きな教会が浮かび上がった。


「おお!」

「成功だ!」

「やったぞ!」


「凄いな…」

「ああ

 こうやって何度も失敗して、浮遊大陸は浮かべられたんだな」


そこから研究が続けられて、やがて一つの城が築かれる。

そしてその城は、翼人の王宮として空に浮かべられた。


「これで一段落だな」

「へえ…」

「この城が翼人の城として、暫く使われる事になる」

「あれ?

 シャンバラってこれの事か?」

「違うぞ

 これが最初の計画だったんだ

 シャンバラはこの後の事だ」

「それじゃあ…」

「ここには出て来ないな

 次の英雄の物語になるからな」

「え?」


「ここから翼人と、人間の戦争が起こるんだ

 後の戦争に繋がる、最初の戦争だな」

「え?

 この城って人間が…」

「ああ

 翼人達の為に作ったんだ

 しかしそれが問題でな…」


翼人達は、その城を自分達の城とした。

確かに人間では、翼人の力を借りないと出入り出来ない。

しかしその事で、人間と翼人の間に諍いが起こる。

それが原因で、翼人と人間の間に亀裂が入った。


「この戦いは痛み分けに終わったんだ

 翼人達も城の一部を壊されて、人間の和平に応じたんだ」

「何でだ?

 翼人の方が優位なんだろう?」

「そうなんだが、これ以上壊されたく無かったんだろう」

「なるほど…」


宮殿の一部が崩れて、城の美観が損なわれていた。

これ以上壊されては、城を作った意味が無くなる。

そこで翼人は、人間との和平を受け入れたのだ。

これ以上城を壊されたく無かったのだ。


「これから暫く、翼人達も大人しくしていたんだ」

「なるほどねえ…」

「その間に人間側では、浮遊大陸の計画が進んだ訳だ」


画面に資料が映し出されて、何度も実験が繰り返される。

しかしアーネストには分かっても、ギルバートにはただの難しい文書にしか見えなかった。

そうして実験が繰り返される内に、英雄王は老人になっていた。

彼は自分が生きている内に、計画が完遂出来ない事を嘆いていた。


「こうして英雄王は、神の地に向かう事無くその生涯を閉じた

 ここにはそう書かれている」

「え?

 読めるのか?」

「何とかな

 だけど所々読めない箇所もあるんだ

 だから浮遊の魔道具に関しては、詳しくは分からないんだ」

「それは分からなくても良いよ…」

「何を言っているんだ!

 人間の夢だったんだぞ!

 これが叶うなら…」

「気持ちは分かるが、今必要なのは違うだろ?」

「あ…

 こほん」


映像は再び進み、今度は浮遊大陸の姿が映し出される。

それは大きな山が、空の上に浮いている奇妙な光景だった。


「へ?」

「どうだ?

 凄いだろう?

 こんな山が宙に浮かんでいたんだぞ」

「いや、急に浮いているんだが?」

「ああ

 途中の経緯は映されていないな

 ここから次の英雄の話に変わるみたいだ」


映像は浮遊大陸が、翼人に攻め込まれるところから始まる。

大陸には街と城が作られていたが、瞬く間に翼人に攻め込まれる。

そして逃げ場を無くした人間達は、次々と大陸から身を投げ出して…。

それは絶望的な光景だった。


「な!」

「仕方が無いんだ

 他に逃げ場は無いしな」

「しかし彼等は…」

「ああ

 翼人みたいに飛ぶ事は出来ないんだ

 だからあの高さからでは…」


身を投げ出した人間達は、叫び声を上げながら落ちて行く。

ほとんどがその途中で、意識を失うのか叫ぶのを止めていた。

しかし中には、最期まで叫び続ける者も居た。

そうして叫びは地面まで尾を引いて、最後にグシャリと鈍い音を立てていた。


「こうして浮遊大陸は、翼人に奪われたんだ」

「酷いな…」

「ああ

 そして翼人達は、この大陸は最初から自分達の物だったと主張した

 神から授かった、自分達の聖地だとな」

「え?

 だってこれは人間が…」

「ああ

 だから嘘の神話まで作って、自分達の正当性を主張したんだ」


アーネストが言う通り、そこから翼人達の作った神話が流される。

彼等が神に選ばれ、如何にしてこの大陸に辿り着いたかを物語る。

その中には人間に迫害されて、一時はこの地を奪われたという物語まで組み込まれていた。

そうして奪い返した聖地を、守る為に戦うと宣言していた。


「なあ

 この物語じゃあ…」

「ああ

 先の襲撃は、あくまでも聖地を取り返す為の正当な手段だと

 そうしてこの浮遊大陸が、自分達の聖地だと主張したんだ」

「何だってこんな…」

「他の種族に関与させたく無かったんだろう?

 あくまでも人間が悪者で、自分達は被害者だって

 そしてその主張は、その前の神魔大戦にまで言及されたんだ」

「神魔大戦?

 それって昔にあった…」

「ああ

 人間の生まれる前の、ハイエルフの戦いが最初だ

 そして勇者の戦いは、一般的には神魔大戦には含まれない

 しかしこの頃の人間達は、その戦いも神魔大戦と呼んでいたんだ」


勇者との戦いで、人間は女神の神殿に攻め込んでいた。

その事があったので、他種族からは人間は嫌われていた。

しかし人間の側では、その戦いの歴史は無かった事にされていた。

だから他種族の態度は、人間には理解出来なかったのだ。


「人間側からすれば、よく分からないけど他の種族からは嫌われている

 そして今回の事も、一方的に人間が悪い事にされていた」

「何でだ?

 攻め込んだのは翼人だろう?」

「ああ

 しかし過去に、人間が女神の神殿に攻め込んでいただろう?

 だから今度も、人間が攻め込んで奪っていたと思われたんだ」

「何でそんな…」

「人間の寿命は、精々70年ぐらいだ

 それに対して、一番短い獣人でも人間よりも長い100年前後だ

 だから人間は覚えていなくても、他の種族では当事者が生き残っているんだ」

「え?

 それって…」

「ああ

 人間は当事者が、既に死んで居なくなっているんだ

 だから適当な物語で誤魔化しても、もう誰も分からなくなっているんだ」

「そりゃあ…」

「だから当時を覚えている他種族の者からすれば

 ああ、また人間が何かやっていたのかと思われたんだ

 自業自得だな」

「ああ…」


これは納得するしか無かった。

そもそも人間の側でも、無かった事にしていたのだ。

それに対して、翼人達も真似をしたのだろう。

だから他種族も、今回の件には関りを持ちたがらなかった。


「それで?

 その後はどうなったんだ?」

「ここから暫くは、シャンバラの説明だな

 場面を切り替えるか?」

「ああ

 どうせオレが見たって、チンプンカンプンだからな」


ギルバートはアーネストに頼んで、その先の続きを見る。

翼人達は城を弄って、自分達の好みに変えて行った。

その内に装飾に飽きると、今度は維持する為の奴隷を欲し始める。

そして奴隷にする為に、彼等は人間の国に攻め込み始めた。


「卑小な地虫共を捕まえろ!」

「我等に奉仕させるのだ!」


「こいつ等…」

「ああ

 懲りていないんだろう

 しかし他の種族も、最初は見過ごしていたんだ」

「何でだ?」

「それは人間は前科があるからな

 暫くは他の種族の者達は、見て見ぬふりをしてたんだ」

「だからって放置なんて…」

「ああ

 暫くしてから、他の種族達も問題視し始めた

 特に前に対立していた、ハイエルフ達は危険視していたな」

「そうか、ハイエルフ達も…」

「ああ

 以前に奴隷になったり、翼人達を奴隷にしてたな

 それで女神にも睨まれていた

 しかしこの時は…」


女神はこの時、まだ眠りに着いていた。

だから誰も止める者も居なくて、警告を発する事も無かった。

そしてハイエルフだけが、翼人達の行動を問題視していた。


「そんな事を言われてものう」

「そうじゃぞ

 ワシ等は関係無い話じゃ」


ドワーフ達はそう言って、ハイエルフの呼びかけを無視した。

獣人や魔族にも呼び掛けるが、誰も見向きをしない。

そうこうする内に、翼人達はシャンバラで魔道具の製造を始めた。

それは強力な兵器で、彼等はそれを使って、他の種族にも攻撃を始めた。


「翼人だ!

 翼人が攻めて来たぞ!」

「何故だ

 我々は何もしていないぞ?」

「はははは

 貴様等獣共も、ワシ等の僕にしてやろう」

「従順に従う様に、首輪も用意してやるぞ」

「くそっ!

 誰が従うものか!」

「奴隷になんかならんぞ」

「無駄じゃ無駄じゃ」

「所詮は獣じゃなあ」


翼人達は炎や雷を放つ筒を持ち、獣人達を襲って行った。

そうして力尽きて倒れた者を、首輪を着けて連れ去る。

文字通りペット可家畜の様に、獣人達を捕まえて行ったのだ。


「何て酷い事を…」

「ああ

 これでシャンバラの近くの、人間と獣人達は捕らえれてしまったんだ」


シャンバラは最初は、人間の国の城だった。

しかし翼人達によって、奪われてしまった。

そしてその近くには、獣人達の集落もあった。

その獣人達の集落も、翼人達によって壊滅してしまった。


この段になってから、魔族が動きを見せる。

しかしドワーフ達は、そのまま地下から出て来る事は無かった。

獣人達の生き残りは、エルフの郷に助けを求める。

そこに魔族も集まって、浮遊大陸に攻め込む方法が検討される。


先ずは最初に、獣人達がロープを投げたり飛び付こうとする。

それ自体は滑稽な様子で、当然ながら全然届かなかった。

次に魔族が、魔法を使って地面を隆起させる。

土を使った魔法で、それなりの成果を出す。

しかし地面が数m隆起するだけでは、当然浮遊大陸には届かない。


「何だか下らない事をしているが…」

「いや、当人達は至って大真面目だぞ?

 それが証拠に…」


隆起した地面から、さらに獣人達がロープを投げたり飛び上がったりする。

しかし当然ながら、それでも浮遊大陸には届かなかった。

大陸は地面から数十mも上にあるので、それは無理からぬ事だった。

しかしその後も、彼等は色々と試みる。

中にはハイエルフが矢でロープを飛ばすシーンもあった。

しかし届いたロープは、立ちどころに翼人達に切断されて行く。


「あ!

 惜しいな…」

「そうか?」

「気付かれなければ…」

「しかしロープが届いても、登っている間に見付かるだろう

 そうすれば翼人達に…」

「そうか

 彼等は空を飛べるのか」

「そういう事だ

 だから無理なんだよ」

「こっちも飛べないのか?

 例えば空を飛ぶ魔法とか…」

「そうだな

 当時は真剣に考えられたよ

 しかし実用化は無理だった様だな」


アーネストが言う様に、当時の資料が映されて、飛翔の呪文も真剣に考えられていた。

しかし結局は、空に飛べても無駄だったのだ。

翼人ほど自由に飛べないので、たちまち見付かって落とされて行った。


「あ!

 ああ…」

「という状況だったんだ」

「なるほどな…

 空を飛ぶ事に慣れていたのか

 しかしこの呪文は…」

「ああ

 今も研究されている

 しかし魔力が問題でな

 そう長くは飛べないんだ」


魔族は魔力が多いので、何とか大陸に近付いていた。

しかし魔力が切れた時点で、その力は失われる。

空に浮いている時点で、彼等は非常に有利だったのだ。

まだまだ続きます。

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