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聖王伝  作者: 竜人
第十八章 北へ向けて
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第591話

ギルバート達は、機械から不思議な映像を見せられる

それはここに似た、別の世界の映像の様だった

そこでは機械人間と人間が、共存する世界が映し出されていた

それは最初の方は、理想郷の様に映し出されていた

その世界は、初めの頃は穏やかな日々が続いていた

人々はまるで奴隷の様に、機械人間達の世話をしていた

しかしそれで、人間同士は争っていなかったのだ

それはまるで、理想郷の様な世界であった


「これが…」

「世界の終わりか?」

「いや、まだ時間が残されている」

「そんな!

 まだ何かあるって言うのか?」

「そうよ

 これ以上に悲惨な事は…」

「世界の終わりって言ってたよな

 そうならこの先に…」

「まさか?」

「この最後の人間達まで?」


皇女は悲痛な声を出して、映像の中の人間達を見ていた。

金属の塊は既に、数えるぐらいしか残されていない。

そして地上は焼き尽くされて、草木一本すら残されていなかった。


海の方もそれは酷い有様だった。

あちこち炎に巻かれて蒸発して、すっかり干上がっている場所も見えた。

そして水が残された場所も、生き物は居ない状態になっていた。

さらに気化した水が、災害を引き起こしていた。


やがて雨となって降り注ぐのだが、地面には草木は生えていない。

あちこちで山が崩れて、土石流を引き起こす。

そうでない場所でも、溜まった水が引かないで洪水を引き起こす。

それはまるで、この世では無い地獄の様な光景だった。


「これが…

 本当にあった出来事なのか?」

「もしそうなら、この世界はどうやって出来たと言うの?

 女神が造り直したとでも言うの?」

「待て

 まだ続きがある」


世界は人間達と、機械人間達によって破滅を迎えようとしていた。

僅かに残された者達は、金属の塊の中でその光景を見守っていた。

しかし世界は確実に壊れていて、修復は不可能に見えていた。

残された者達は、僅かな希望に縋って生きていた。

しかしそれすらも、そう長くは続かなかった。


一つの金属の塊の中では、再び争いが起こっていた。

生きる希望を失い、自暴自棄になって暴れていた。

また、別の金属の塊の中では、互いに責任を擦り付け合って争っている。

中には機械人間達が、人間を殺して回る場所もあった。


「ここに来て、まだ争うと言うのか?」

「何て愚かな事じゃ…」


それに応える様に、再び声が聞こえ始める。


こうして我々は、静かに滅びに向かって進んで行った

しかし中には、それに抗おうとする者も少なからず残されていた

私は彼等の中に、一縷の希望を見出そうとした

そうして私達は、人類再生の計画を立てる

星屑(スターダスト)(メモリーズ)計画(プラン)

それは何とも儚くて、妄想にも似た計画だった


景色は再び変わって、白いローブを纏った人間が集まる光景に変わった。

彼等は金属の箱の前で、熱心に議論を繰り返す。

そして何かを集めては、熱心に機械に入れたりしていた。

そうしてある程度進むと、それは小さな金属の塊に変わって行った。


これは私達が…

人間という存在が生きてきた証

それを詰め込んで、星の海原に流す計画だ

上手く流れ着いたなら、それは何処かで芽吹くかも知れない…


金属の塊は、キラキラと輝きながら撃ち出される。

それは星の海に向けて、撃ち出された新たな星に見えた。

そして希望の星は、何処か新たな地で希望を芽吹かせるのだろう。


私達は自身の遺伝子を、プログラムとして保存した

いや、私達だけでは無い

この星に生きてきた全ての生き物の情報を、この機械に詰め込んだ

そうして一つの使命を、この機械に命令として残す

我々の歴史を学び、それを繰り返させない様にする

勿論マザーコンピューターの様に、表に出て行動はしない

あくまで陰で見張り、過ちを犯させない

そうだ、まるで神の様に…母の様に見守る

このプログラムに名を与えよう

プログラムMEGAMI

自走式AIを基幹プログラムとしてプロットした…


「何だって!」

「しっ!

 聞こえないだろう」

「しかし今、確かに女神と…」

「うるさい!

 黙れ!」


ギルバートは驚き、思わず声を上げた。

それでアーネストに、鋭く睨まれていた。

なおも何か言いたそうだったが、アーネストが本気で怒っていた。

それでギルバートは、不満そうに口を閉ざすのだった。


このSuper Organic Root Navigation Systemを幾つか作ってみる

失敗する可能性の方が高いだろう

しかしこれは、我々が生きてきた証を残す為の行為だ

神々にせめて、一矢報いたという自己満足にしか過ぎない

だが、それでも構わないと思う

もしかしたら、我々に近い文明を持った、新たな人間の世界が生まれるかも知れない

そんな淡い期待を持ちながら、先ずはNo.001~008までを射出する

この星の意思を継いだ芽が、この宇宙に散らばる様に…


そう告げると、白ローブの男が何かのボタンを押す光景に切り替わる。

そうして金属の塊が、次々と8個撃ち出された。

それは光の軌跡を残して、星々の海へと消えて行った。

まるで星屑が、その中に流れて行く様に…。


ここにこの世界の、歴史と記録を残す

いずれ何者かが、この記録の意味を理解出来る様に…


そこから暫くは、彼等の世界の歴史や化学の発展が説明される。

それは膨大な量の資料であり、一目で理解出来る様な内容では無かった。

そしてギルバートも、さすがに堪えられなくなっていた。


「なあ

 あれってやっぱり…」

「うるさい!

 オレは暫く、こいつの解析をする」

「ええ…」

「向こうで話し合ってろ」

「はあ…」


ギルバートは溜息を吐くと、皇女達とアーネストから離れた場所に移動する。

下手に声が聞こえたら、またうるさいと怒られそうだったからだ。

そしてアーネストは、流される資料に集中していた。


その中には兵器だけでなく、生物や宇宙に関する知識も詰め込まれていた。

ほとんどが研究論文で紹介されていて、画面にそれが映し出される。

アーネストは何とかして、画面の一時停止を繰り返し操作して覚える。

そうして膨大な量の論文やジャーナルに目を通して行った。


「なあ…」

「驚きじゃった…」

「まさか女神が…」


ギルバートは、皇女とマクツースを相手に確認する。

アーネストが一番分かっていそうだが、まだ論文を見ている。

そこで間近で見ていた、二人に確認しているのだ。


「あの話から察するに…」

「そうね

 あの金属の塊の中に入った…

 プログラム?」

「ああ

 どうやらその様だな」

「うむ

 ワシもそう聞こえた」

「それじゃあ女神ってのも…」

「しかし…

 神には違いが無いじゃろう?

 何せワシ等を作り出したんじゃ」

「そうだな

 そういう意味では、創造主なんだろうな」


厳密に言えば、神とは違うのだろう。

しかしこの世界を創ったのは、確かにあの女神なのだろう。

それがどうやったのかは、ギルバート達には理解が出来ない。

しかしこうして今、自分達が存在する事が証明している。


「あの金属の塊

 ここに似ているよな?」

「そうじゃな

 それに、その金属の塊を作っていた場所もじゃな」

「そうなると、あの金属の塊がファクトリー?」

「いや、恐らくはその元になった物じゃろう

 それで同じ様な、ファクトリーという物を作った」

「なるほど…

 それじゃあやっぱり」

「ああ

 あの金属の塊こそが、女神の本体なんじゃろう」


そう考えてみれば、色々と辻褄合いそうだった。

女神が外から来たと、精霊達は言っていた。

それに元になる人間が居たから、自分達も作られたのだろう。

そしてあの声は、女神が陰から間違わない様に見守ると言っていた。


「それじゃあ、人間を滅ぼすというのは…」

「それは早計じゃ!

 偽物の可能性があるんじゃろう?」

「しかしあの声の説明では…」

「そうね

 私達が誤った道を進みそうだから、何とかしようとしている?」

「じゃがのう、あの声はこうも言っておったじゃろう?

 あくまで陰から見守る

 そして直接は…表には出ないと」

「そうか…」

「そう言えばそうよね」


確かに過去の女神は、表には出ていなかった。

あくまでも神託を下したり、使徒に命じてどうにかしていた。

自分が直接、表には出て来なかったのだ。


「お前さんの話じゃあ…

 結婚式にも現れたんじゃろう?」

「ああ

 お陰で式がめちゃめちゃさ」

「そこはどうでも良いが…」

「良く無いよ!

 そのせいでセリアと、正式な夫婦だと名乗れ無いんだ

 それに戴冠式も…」

「まあ、それは今の事とは関係無い」

「そうよね

 問題は女神と名乗る者が…」

「オレには大いに関係あるんだが」


ギルバートは不満そうに、顔を顰めて愚痴る。


「その話は一先ず置いておけ」

「そうよ

 今はあの話の真偽が重要よ」

「むう…

 それはそうなんだが…」


「兎に角

 女神が別の世界から来たのは間違いないわ」

「そうじゃな

 それは精霊様も仰っておった」

「そしてその世界って…

 世界って広いのね」

「そうじゃな…」

「ん?」


「だってそうでしょう?

 夜空に光る星が、実はあんな土の塊で…」

「そこにはワシ等と同じ様な世界があった…」

「そう言われればそうだな」


あの映像を見て、三人は改めて考えさせられていた。

確かに子供の頃には、あの星の中にも世界があるんじゃ無いかとか想像する事はあった。

しかしまさか、それが本当の事だなんて思わなかった。

それも小さな世界じゃ無くて、自分達が住んで居る様な世界が在るだなんて思いもしなかった。


「あの月だって、もしかしたら誰か居るのかもね」

「そうじゃなあ

 月に行く事は出来んからのう

 確認する事は出来んじゃろう」


二人は昼に姿を見せる、白き月のセレネを見上げる。

夜の月と違って、こちらはほとんど姿を変えない。

ごくまれに半月や欠けた月になるが、ほとんど年中満月の姿を見せている。

そんな白いセレネの大地に、同じ様な人間が住んで居るかも知れない。

そう思うと、なんだか不思議な感じがしていた。


「おっと

 女神の事じゃったな」

「そうね

 しかしあの話からすれば…」

「なあ」

「ん?」

「どうしたの?」


「女神がどうとかって、問題あるのか?」

「ええ?」

「何じゃい?

 お前も女神には…」

「それなんだけどさ

 結局女神がどうであれ、魔物を生み出す力はあるんだろう?」

「それはそうだけど…」

「しかし偽物なら…」

「でも、偽者でも魔物は生み出しているだろう?」

「そりゃあ…」


ギルバートの疑問も尤もだった。

例え偽者で、本来の力を持っていないとしても変わらないだろう。

事実ここにも、待ち伏せする様に魔物が配置されていた。

そう考えれば、本物だとか偽者だとか関係無いだろう。

そもそもが、それが誰であれ止めるしか無いのだ。


「それにさ…

 あんな危険な兵器?

 作ってたんだろう?」

「ううむ

 それが作れるかどうかは…」

「だってそう考えると、帝都が砂に埋もれたのも納得が行くだろう?」

「そうね…

 あんなとんでもない事、普通じゃあ出来ないわ」

「それも女神の作った兵器じゃと?」

「兵器かどうかは分からないけど、そんな事を出来るんじゃ無いかって」

「ううむ…」

どうやったかは分からないが、その女神は帝都を砂の底に沈めている。

そんな事を出来るとなると、最早本物とか偽者だとかどうでも良いだろう。

今は兎に角、これ以上人間を殺さない様に止める事が先決だ。


「しかし、そうなるとアモンは…

 何であんな物を残したんだ?」

「そうじゃのう

 女神の正体を教えるにしても、あれは必要無い様な気もする」

「いいえ

 あれは恐らく、私達への警告よ」

「警告?」


「ええ

 アモンがあれを残したのは、嘗てこういう世界が在ったって言う警告だと思うの

 私達に、ああならない様にって」

「あんな事を?

 まさか?」

「そうでも無かろう?

 先日の帝国の件もある」

「あの選民思想者達の事か?」

「そうじゃ

 ワシ等も道を誤れば…」

「ああなるって言うのか?」

「そうね

 あそこまで酷く無くても、十分に危険だって事ね」


アモンが残したディスクは、彼等に警鐘を促すには十分だった。

それだけあの映像は、心に迫る物があった。

しかし彼等は、ディスクが三枚あった事を忘れていた。

先に見たのはその内の一枚で、他にも二枚のディスクが残されている。


「何にせよ

 ここで立ち止まっている訳には行かないな」

「そうね

 早く止めないと」

「しかしアーネストがのう…」


アーネストはその後も、何度も止めながら映像を見ていた。

中には確かに、気になる事柄が沢山残されていた。

それこそ一度見た程度では、分からない違和感などもだ。

それを踏まえて、アーネストは何度も見返していた。


「なあ

 アーネ…」

「うるさい!

 これはかなり問題がある事なんだ」

「しかし女神が何者であろうと…」

「分かっている

 それでも調べなければならないんだ」


アーネストの頑な態度に、ギルバートも肩を竦める。


「しょうがない

 今日はここで休もう」

「え?

 この中で?」

「ああ

 ここなら外から、魔獣が入って来る事も無いだろう?」

「だけど…」


皇女は魔物が入っている、ガラスの水槽の方を見る。


「なんじゃ?

 怖いのか?」

「そんなんじゃ無いわよ」

「そうか?」

「無理しなくても良いぞ?」

「うるさいわね

 違うと言ったら違…」

「お前ら!

 うるさくて聞こえないだろうが!」


アーネストは大声で怒ると、再び映像に見入っていた。

そこから何が分かるのか、ギルバートには理解出来ない。

しかしこれ以上言うと、再びアーネストが怒り出すのは目に見えていた。

だから静かにしながら、騎兵達に野営の指示を出すのだった。

まだまだ続きます。

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