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聖王伝  作者: 竜人
第十八章 北へ向けて
589/800

第589話

ギルバート達は、女神の神殿に向かう旅を続けていた

途中で魔物に襲われ、その周辺で魔物が出て来た場所を発見する

そこに何か無いかと、その洞窟の中に足を踏み入れる

しかしそこで、彼等は予期せぬ事態に見舞われていた

騎兵達の数名が、異常な行動を取っていた

アーネストが魔力の異常に気付き、それを察知する事が出来た

しかし肝心の原因が、何か分からなかった

そこで洞窟の外で待つ、マリアーナ皇女が呼ばれた


「何なの?

 誰か怪我でもしたの?」


皇女は早足で、洞窟の中に入って来た。

しかし誰も怪我をしている様子が無くて、拍子抜けした表情で中を見回す。

唯一おかしな事は、壁際で縛られた騎兵達だろう。

状況が理解出来なくて、皇女はアーネストに質問する。


「一体何なの?

 あの兵士達は何?」

「落ち着けって

 こっちもよく分かっていないんだ」

「よく分かっていないって…

 それじゃあ何で?」

「あの騎兵達をよく見てくれ

 魔力に異常は無いか?」

「魔力に異常?

 何が…」


皇女はそう言いながら、騎兵達を魔法で調べてみる。

所謂鑑定の魔法なのだが、そこには見た目には異常は無かった。

しかし魔力を調べると、確かに違和感が感じられる。

まるでそこに、騎兵以外の誰かが潜んでいる様だった。


「え?

 何?」

「それが分からないから、皇女にも来てもらったんだ

 分からないか?」

「そうね…

 アーネストが分からない事が、私に分ると思って?」

「いや、何かの病なら、皇女の方が分かるだろう?」

「病?

 何か病気に罹っているの?」

「そうだな

 病気か分からないんだが…

 ライカンスロープの返り血を浴びたらしい

 それから様子がおかしいんだ」

「ライカンスロープって、さっきの魔物の事?」

「ああ

 狼の魔物だ」

「うーん…」


皇女は眉間に皺を寄せて、真剣に考える。

そして何か思い当たる事があるのか、暫く考えてから光の精霊を呼び出した。


「セロ!

 セロ!」

「どうしたんだい?

 マリアーナ」

「ちょっと聞きたい事があるの

 魔物化についてなんだけど」

「魔物化?

 あれは魔物の因子が関わるから、そう滅多には…」

「その中にライカンスロープってあるかしら?」

「ライカンスロープ?

 あれは魔物化というよりは、取り付いて寄生する魔物だよ?

 気を付けないと魔物に…って!」

「セロも気が付いた?」

「ああ

 まさかこんな所で見掛けるとは…」


光の精霊セロは、出て来てすぐに騎兵達の方を凝視する。

その様子は慌てていて、明らかに動揺していた。


「待て!

 寄生するって…」

「言葉通りだよ

 ライカンスロープとは魔物の事だけど、本体は小さな魔物なんだ

 それが生き物に取り付いて、寄生して動かすんだ」

「それじゃあ寄生虫と同じなのか?」

「ああ

 しかしそれ以上に凶悪で厄介なんだ

 よく気が付いたな」

「ああ

 彼等に異常な魔力が付いていたからな」

「なるほど…」


どうやらやはり、ライカンスロープが原因で間違い無さそうだった。

しかし魔物の本体は狼の魔物では無く、その中に入り込んだ寄生虫の様な魔物らしい。


「それで?

 どうやったら治せるんだ?」

「それは…」

「セロ?」


「一度症状の出た者は、治せないんだ」

「え?」

「魔物に身体の中に侵入されて、同化されるんだ

 そうなってしまったら、もう…」

「まさか?」


「そんな!」

「嫌だ!」

「ひい!」


縛られている騎兵達は、悲しそうな声を上げて絶望する。

彼等は既に、魔物に操られていた。

それが治せないと聞けば、絶望もするだろう。


「嫌だ!

 死にたくない!」

「こんな所で死ねないよ!」

「魔物に成り下がって死ぬだなんて…」

「ああ

 こんな事なら、エレンちゃんに告白しとけばよかった…」

「お母ちゃん!」


騎兵達から絶望の声が上がり、中にはすすり泣く声も上がっていた。

周りに立っていた騎兵達も、何人か目頭を押さえていた。


「くそっ」

「そんな

 お前には妹を頼もうと思っていたのに…」

「すまん

 昨日の干し肉、あれはオレが食べたんだ」

「あ!

 おい!

 やっぱりお前だったのか!」

「いや、ついな…」

「ふざけんな!」


中にはついつい、罪の告白をする者も居た。


「セロ…」

「いや、こればっかりはな…」

「そうじゃ無くて

 本当の事を言いなさい」

「え?」

「魔物に支配されたらでしょう?」

「いやあ…」

「ん?」


セロは何事か誤魔化す様に、不意に飛んで逃げようとする。

その羽をしっかりと掴んで、皇女は精霊を睨み付ける。


「ライカンスロープって、確かに発症すれば完治できないわよね

 発症したらだけど」

「はははは…」

「どういう事だ?」

「発症するには、体内に魔物が入る事が前提なの

 爪や噛み付いた時に、傷口から侵入するとか」

「え?」

「それじゃあ返り血では?」

「返り血を浴びただけなの?」

「そうだが…」

「お前等!

 怪我はしていないのか?」

「は、はい」

「今のところは…」

「良かった…」


皇女は隔離された者達が、怪我をしていないと聞いてほっとしていた。

ここで怪我をしていれば、そこから魔物の侵入を許したかも知れない。

そうでなくても、返り血の中からなんとかして口中などを介して侵入された可能性もあった。

しかし騎兵達は、今のところは身体の表面にしか魔力は確認出来なかった。


「身体の表面にくっ付いても、多少は操れるんだ

 しかし寿命もあるからね

 体内に入ろうとはするけど…」

「今のところは大丈夫だと?」

「そうだね

 誤って返り血を飲んだり、血を目や口元に浴びていないかな?」

「ええ」

「すぐに拭き取りましたし」

「拭き取っても残っていると思うよ

 食事や水を飲む前で良かったよ」

「あ!」

「ん?」


その後の調べで、一人を除いては大丈夫そうだった。

その一人に関しても、水を飲んだだけだった。

何の為に魔力も調べたが、今のところは感染している様子は無かった。

何とか水を飲んだ時に、体内に侵入はされていない様子だった。


「それにしても…」

「体内に侵入するのか?」

「ええ

 それで宿主を操って…」

「体内で増えて、他の者にも移す訳か」

「それで不治の病とも言われていたわ

 尤も感染されればだけど」

「体内に入られなければ、魔法で何とかなるんだな?」

「ええ

 だけど気を付けてね

 一応まだ生きているから」

「ああ」


アーネストは隔離した騎兵達を、一ヶ所に集めさせる。

それから彼等に、雷の魔法を掛けて回る。

雷の魔法と言っても、騎兵を殺す為では無い。

あくまで彼等の、表面に生き残った魔物を殺す為の物だ。

だから威力は抑えて、身体の表面を主に伝わせる様に雷を放った。


「サンダー・レイン」

バシュッ!


騎兵達の身体の周りで、無数の魔力が弾けて消えた。

それで魔法を掛け終わった後には、彼等からは異常な魔力は感じられなくなっていた。


「もう大丈夫そうだな」

「ええ

 身体にも以上は無さそうだし」

「念の為に、他に異常な行動を取る者が居たら、直ちに報告する様に」

「はい」


こうしてライカンスロープに関する問題は、一先ずは収束していった。

身体の中に入られる前に、アーネストが何とか退治したからだ。

しかしこの事は、後々に影響を現わす事になる。

ライカンスロープが現れたのは、ここだけでは無かったのだ。


「それで?

 問題はそれだけでは無いのよね?」

「へ?」

「だって、まだ見付かって無いんでしょう?」

「ああ…」


部屋の奥への行き方は、未だ見付かっていなかった。

アーネストがライカンスロープを退治する間も、マクツースが引き続き壁を調べていた。

しかし結果は、壁には何も仕掛けが見付からなかった。


「つまりこれは、中からしか開けられないと?」

「恐らくは…」


ギルバートは手詰まりを感じて、素直に皇女に話した。

もしかしたら、何か妙案が出ないかと期待もしたからだ。

しかし皇女の答えは、意外な物だった。


「だったら壊しちゃいなさいな」

「え?」

「だって、こっちからは開けられ無いんでしょう?」

「それはそうだけど…」

「なるほど

 それは一理あるな」

「アーネスト?」


「ここには恐らく、何かの機械がある筈だ

 そうすればこのディスクの秘密も…」

「しかし壊すだなんて…」

「大丈夫だろ?

 恐らくそこには、壁を動かす仕組みしか無いから」

「そういう問題か?

 壁に穴なんて開けたら…」

「問題無いだろう?

 出入りが楽になるだけだ」

「しかし侵入者が…」

「侵入者はオレ達の方だろう?

 出入りが楽になっても、女神にとっては問題でも、オレ達にとっては関係無いし」

「それもそうか…」


アーネストの指摘に、ギルバートは暫し考える。

それから剣を引き抜くと、色の違う壁に向かって行った。


「この辺りで良いんだな?」

「ああ

 そこが入り口の筈だ」

「え?

 剣で壊せるの?」

「ああ

 こいつはミスリルの剣だ

 並みの魔鉱石なら…

 ふん!」

カキン!

ギャリン!


ギルバートは言うなり剣で、壁に切り付けた。

そのまま数度壁を切り付けると、そこから亀裂が入って行った。


ピシッ!

ガラガラガラ!


壁は静かに崩れると、そこには人が通れる大きさの穴が開いていた。

ギルバートはそこを潜って、中を見回してみる。

その中には大きな部屋があって、大小様々な金属の箱が所狭しと置かれていた。

一部の金属の箱には、ガラスの様な物が填め込まれている


「何だ?

 この部屋は?」

「恐らくは、これもファクトリーの一部だろう

 見てみろ」


アーネストが指差した先には、大きなガラスの嵌った箱が鎮座している。

そこには液が満たされていて、中には泡が幾つも浮かんでいる。

泡は下の方の管から出ていて、その先には何かの生き物がくっ付いていた。


「何だ?

 これは?」

「恐らくはこれで、魔物を作っているんだろう」

「魔物を?

 それじゃあこれは?」

「ああ

 魔物の素だな

 子供みたいな物だろう」


箱の大きさは、おおよそ4mぐらいの大きさである。

そこに3mほどのガラスが嵌っていて、中が見える様になっている。

そして管の先をよく見ると、確かに何かの生き物が付いていた。

注意深くそれを観察すれば、それが何かの胎児だと分かっただろう。


「これが…

 魔物の素?」

「ああ

 人間で言えば、赤子の元になる物だな」

「赤子?

 この小さな物が?」

「小さいのはまだ育っていないからだ

 人間の赤ん坊だって、母親のお腹の中では最初はそんな物だ」

「え?

 そうなのか?」

「ああ

 それが母親の中で育って、やがて赤ん坊になるんだ」

「それじゃあジャーネも?」

「うちの娘を引き合いに出すな

 そもそもオレやお前だって、元はそんな物だぞ」

「へえ…」


ギルバートは言われて、しげしげとガラスの中を覗き込む。

そこにはまだ細胞分裂を始めたばかりの、胎児の元である卵が着いている。

少しは形を造り始めているが、まだまだ未発達な状態だ。

だからこれから、そこで何が生まれるか分からなかった。

分からなかったが、箱の大きさも大きかった。

恐らくは巨人やオーガの様な大きな魔物が生まれるのだろう。


「他にもあるな

 こっちは蜥蜴かな?」

「へえ…

 確かにそんな感じだな」


そっちのガラスの中には、ある程度育った生物が入っていた。

その見た目は大きな蜥蜴で、どことなくアーマード・ライノに似ていた。


「ここで魔物を作っているのか?」

「いや

 ここは何か別の目的かも知れないな

 どう考えたって、あの数が出来るとは思えない」

「そうじゃな

 ここは何かの実験をする場所かも知れんのう」

「実験?」

「ああ

 例えばこの前のキマイラとか…」

「ああ

 あれは変わった魔獣だったな」

「ああ

 ああいう変わった魔物を生み出す為に、色々と実験をしているのかもな」

「ここでか?」

「ああ

 オレも詳しくは分からないから、あくまでも想像だがな」

「ふうん…」


ギルバートは頷きながら、周りのガラスの水槽を見て回る。

確かに言われてみれば、ここに居る生き物は何か奇妙だった。

角が生えたり腕が余分にあったりと、これまで見て来た生き物と微妙に違っている。

それを目的に作っているのなら、確かにこの様な姿になるのだろう。


「それで?

 目的の機械だっけ?

 それは見付かったのか?」

「いや、まだだ」

「これなんかどうじゃ?」


マクツースが奥から、こっちに来いと手招きする。

そこに向かうと、ガラスの嵌った箱が壁に並んでいる。

そしてその一角に、丸いガラスの蓋が開いていた。

確かに大きさからすると、ちょうどディスクが入りそうな大きさだった。


「これなのか?」

「さあ、分からん

 しかし大きさで言えば…」

「そうだな」


アーネスト試しに、ディスクの一枚をそこに填めてみる。


プシューッ!

カシャン!

キュィーン!


甲高い音を立てて、ディスクはガラスの中で高速で回り始める。

すると壁の箱が、不規則に色々な光で明滅を始めた。


「何だ?」

「間違えたのか?」

「しかし動いておるぞ?」

「そうなんだが…」


三人が慌てふためいていると、壁面に棒みたいな物が映し出される。

そこにはReadingという文字が出ていて、棒が左側から色が変わって行った。


「な、何じゃ?」

「Reading?

 古代文字で確か…」

「読んでいるという意味だって

 セロがそう言っているわ」

「読んでいる?

 誰が何を?」


後ろから皇女が、セロに意味を聞いて答える。

しかしその意味は、彼等には分からなかった。

そして棒の色が全て変わった時に、更なる異変が待ち受けていた。


ホワン!


何とも言えない奇妙な音がして、壁の上に何かの絵が映し出される。

そこには大きな文字で、Emotioalと表示されていた。

それからcautionやnonfiction documentaryという文字が浮かび上がる。

意味は分からなかったが、それが何かを意味しているだろうと思われる。


彼等はそれから、何が起こるか身構えていた。

何かの情報と言われていたが、それがどうやって見れるか分からなかったからだ。

そうして唐突に、壁に何かの絵が浮かび上がった。

まだまだ続きます。

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