表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖王伝  作者: 竜人
第十八章 北へ向けて
588/800

第588話

騎兵達は苦戦しながらも、何とか魔物を倒す事が出来た

この時騎兵達は、返り血を浴びている者もいたのだ

しかし気にせずに、そのまま返り血を拭くだけにしていた

彼等はライカンスロープが、どういった物だか知らなかったのだ

魔物を倒した事で、ギルバート達は魔物が出て来た方に向かう事にする

何も無かった場所から、不意にあれほどの大きさの魔物が現れたのだ

それを隠しておくような、何かがその辺りにある筈だった

慎重に進んで行くと、山の中ほどに洞窟の入り口が見えた。


「あそこから出て来たのか?」

「その様だな」

「それではあそこに?」

「ああ

 恐らくはあの中に、ファクトリーがある筈だ」

「あまり気が進まないな」

「入るの?」

「ああ

 アーネストが気になるらしくてな」


ギルバートとセリアは、中に入るのは反対だった。

しかしアーネストは、情報が得られると考えていた。

それは女神の事もだが、その他にも情報があると考えていたのだ。

なんせファクトリーには、何らかの機械が置かれているからだ。

それが例のディスクに関係する物ならば、情報が得られる筈だからだ。


「またあの時みたいに…」

「そうだな

 ドラゴンなんて居たら…」

「そんな事は無いだろう?

 あの時は待ち構えて居たみたいだし」

「分からんぞ?

 帝国の奴等のせいで、結構時間が経っている」

「それは…」


「ドラゴンじゃと?

 そんな物まで現れるのか?」

「ああ

 マクツースは知らないのか」

「そうだな

 それは龍の背骨山脈での事だ

 ここに居るとは…」


一行は洞窟の入り口で、馬をドワーフ達に預けた。

そうして騎兵とハイランドオークを先頭にして、洞窟の中に入って行った。


「龍の背骨山脈では、既にファクトリーは起動されていた

 それで雑魚の魔物を贄にして、ドラゴンを生み出したんだが…」

「ここでもあり得るだろうが」

「それはそうなんだが

 エルリックの話では、魔物の魔力を集める必要がある

 それに死骸も…」

「死んだ魔物を使って、強力な魔物を呼び出すのか?」

「ああ

 だからここでは、そう簡単には…」


しかしそれは、あくまでもエルリックの説明であった。

洞窟の中には大部屋があって、そこには3体のミノタウロスが待ち構えて居た。


「ほら

 そう甘くは無いだろう?」

「それはそうだが…」

「警戒しつつ囲むんだ」

「無理はするなよ

 1体はオレが受け持つ」

「はい」


「残りはアーネストが足止めしてくれ」

「分かった

 その間に倒してくれよ」

「はい」


ギルバートが前に出て、先頭のミノタウロスに対峙する。

今回は3体とも、巨大な戦斧を持っている。

それをしっかりと握り締めて、侵入者であるギルバート達を睨み付ける。


グゴガアアア

ゴガアアア

「怯むな!

 回り込め」

「はい」

「こっちを向け!

 うおおおお!」

ビリビリ!


ギルバートが放つ威圧の咆哮に、ミノタウロス達の視線が向けられる。

その間に騎兵達は、ミノタウロスを囲む様に配置される。

そして戦闘開始とばかりに、先ずはアーネストが呪文を唱える。


「ソーン・バインド」

グガア…

ゴガウウウ…


ミノタウロス二体に、強力な蔦が巻き付いていた。

アーネストは精霊に呼び掛けて、その蔦をより強固にする様にお願いする。


「大地の精霊ノームよ

 悪しき者を縛る力を貸してくれ」

ギシギシ!


蔦は精霊の力を借りて、より強固に縛り上げる。

しかしミノタウロスも、ランクDの魔物である。

さすがに強化した蔦でも、そう長くは縛り付けられない。

その間に騎兵達は、足を封じる為に切り付ける。


「うりゃあああ」

「でりゃあああ」

ガギン!

ギャリン!


しかし強固な肌を持っているので、なかなか傷を付けられない。


「ぐうっ」

「何て硬さだ」

「しかし殿下も切り裂けたんだ

 オレ達だって」

「ぬがあああ」

ゴギャン!

グモオオオオ


少しづつであるが、騎兵達は魔物に手傷を負わせる。

しかし蔦の方も、そろそろ魔物の力に堪えられなくなっていた。


グモオオオ

ブチブチブチ!

「くそっ!

 引き千切ったか」

「だがすぐには…」


ゴガアアア

「こなくそ!」

ガギン!


大きな戦斧が振るわれて、騎兵は何とかそれを受け止める。

しかし体重差もあってか、そのまま後方に飛ばされる。


「大丈夫か?」

「オレの事は…

 来るぞ!」

「くそっ!」

グモオオオ


魔物は蔦を引き千切ると、戦斧を振り被って向かって来る。

騎兵達は何とかして、それを受け流そうとする。


「させるか!」

ガギン!


「今だ!」

「掛かれ!」

ズドシュ!

ザグッ!

グモオオオ


一人が懸命に受け流して、その間に他の騎兵が切り付ける。

さすがに斧を振っている間は、足の筋肉も緩んでいた。

それで小さいながらも、足に切り傷を与えて行く。


「このまま足を狙え!」

「うおおおお」

グゴアアアア

ガギン!


しかし魔物も、このまま攻撃されては危険だと気付いていた。

騎兵達の振るう鎌を、何とか戦斧で振り払おうとする。

しかし多勢に無勢で、少しずつだが騎兵達が押していた。


「食らえ!

 ライトニングボルト」

ドシュドシュッ!


そこへ顔面に目掛けて、アーネストの雷の矢が放たれる。

矢は魔物の顔に突き刺さり、その両目を潰していた。


ゴガアアア

ブンブン!


魔物は目を潰された痛みで、狂った様に戦斧を振り回す。

それがもう1体の、ミノタウロスに命中する。


グゴアアアア

ドガッ!

グゴオオオ


「今だ!

 これでも食らえ!」

「うりゃあああ」

ドガッ!

ズガッ!


鈍い音がして、騎兵の振るった鎌が魔物の膝に突き刺さる。

そしてもう一人の騎兵は、そのまま脛を鎌で切り裂く。


ゴガアアアア

「体制を崩したぞ」

「腕を狙え!」

「せりゃあああ」

ザシュッ!

ズガッ!


騎兵達はここぞとばかりに、戦斧を握った腕を切り付ける。

それで痛みに堪え兼ねて、魔物は戦斧を取り落としてしまう。

そしてその隙を、騎兵達は見逃さなかった。

一気に鎌を振り上げると、首や胴に目掛けて振り下ろす。


「今だ!」

「死ねやああ」

グゴアア…


こうして先ずは、1体目の魔物が倒れる。

すぐさまもう1体のミノタウロスも、騎兵達の集中攻撃を受ける。

彼等は何とか、一人が吹き飛ばされる程度で済んでいた。

そうして彼等が魔物を倒す頃には、ギルバートも魔物に止めを刺していた。


「せりゃあああ」

ザシュッ!

グゴ…


「さすがは殿下だ」

「こっちが数人掛かりなのに…」

「まあ、殿下だからな」

「違いない」


ギルバートも最初は、戦斧の威力に押されていた。

しかしコツを掴むと、そのまま鎌の柄で受け流していた。

ガンドノフとの特訓が、ギルバートの防御術を高めていたのだ。

それで斧を受け流しては、体制を崩したところに攻撃を加える。

そうして大して息も上がらずに、魔物の首を切り裂いていた。


「ふう

 思ったほどでも無かったな」

「ああ

 しかし前は…」

「この魔物の死骸を使うって言うのか?

 しかしそんな施設は…」


龍の背骨山脈の時と違って、ここには機械の様な物は無かった。

そして光って音を出す物も、壁がせり上がって来る仕掛けも無かった。

魔物達を倒した先には、再び通路が続いているだけだった。


「どうする?

 まだ先は長い様だぞ?」

「そうだな

 このまま進んでみよう」

「おいおい

 本気か?」

「ああ

 ここにもしかしたら、アモンの言っていた機械があるかも知れないんだ」

「そうかよ

 分かったよ」


ギルバートは肩を竦めると、騎兵達を前に向かわせる。

この時にアーネストが、もう少し注意深ければ良かったのだ。

しかしアーネストは、機械が見付かると思って興奮していた。

それで些細な変化に、気が付かないほど油断をしていたのだ。


「さあ

 もう少し進もう」

「は、はい」

「ん?

 どうした?」

「いえ、何でもありません」


ギルバートは何となく、違和感を感じていた。

しかしその正体に気が付かず、そのまま探索を再開していた。

騎兵達は前に出ると、そのまま洞窟の奥に向かった。

そこは少し進むと、岩肌から加工した壁に変わっていた。


「見てみろ

 人工物だぞ」

「ああ

 綺麗な石だな」

「いや

 これは魔鉱石じゃな」

「え?

 魔鉱石だって?」

「だけどこれは…」

「ああ

 石を切り出した様に見えるが、その様に加工しておるんじゃ

 これを見てみろ」

キンキン!

ガギン!


マクツースが斧で殴ると、その岩は崩れる事無く、金属音を発して傷が入っていた。

その削れた場所からは、金属の光沢が覗いている。


「金属だって?

 これが全部か?」

「ああ、そうじゃ」

「こんな…」

「ここだけじゃ無いんだぞ?

 向こうの部屋なんて…」


その先の部屋は、さきほどミノタウロスが待ち構えていた部屋ぐらいの大きさがあった。

そこは何かの入り口の様な場所で、奥の壁が一ヶ所だけ色が違っている。

他は何も無くて、あくまでもその壁以外には何も無さそうだった。

その壁の前まで行って、アーネストとマクツースは念入りに調べる。


「これは何かの入り口か?」

「そうじゃな

 ここの部分が色が違う」

「大きさから考えても、先の魔物が出て来た場所かな?」

「そうじゃな

 足元に跡も残っておる」


そこには何かが通った様に、誇りが足の形に無くなっている。

しかもその大きさから、ミノタウロスが通ったと思われる。

ここを通って出て来たのなら、この中がファクトリーの可能性が高かった。

アーネストは足跡を確認して、周囲を調べ始める。


「埃はほとんど無いが、この足跡から見てもここだろう

 どうやって出入りしているのか…」

「この前みたいに、ここが開くんじゃ無いのか?」

「そうだな

 それにしても、どうやって開けば良いのか…」


恐らくはそれで、間違いは無いだろう。

しかし肝心の、開き方が分からなかった。

開ける為のスイッチや、仕掛けが見当たらないのだ。

壁のランタンや床も調べるが、それらしい仕掛けは見当たらない。


「どうやって開けるんだ?」

「分からないなあ…

 何か魔法でも使うのか?」

「それは無いだろう?

 それなら魔法を使った痕跡が…」


言いながらアーネストは、周囲に魔力感知を使ってみる。

壁のランタンからは、確かに魔力は感じられる。

しかしそれは、灯りを灯す為の魔力だった。

それ以上の魔力は、この部屋からは感じなかった。


だが、アーネストはここで異変を感じた。

魔力が部屋以外の、複数人の騎兵達から感じたからだ。

それは身体強化や生命力察知では無く、身体の表面から感じるのだ。

それも兵士達の魔力では無く、明らかに高い魔力を感じる。


「おい!

 何だ?

 この魔力は?」

「ん?

 どうした?」

「そこの騎兵達!

 何で壁に集まっている?」

「へ?」

「あれ?」

「何でだ?」


彼等は意識してでは無く、無意識に集まっている様子だった。

そしてアーネストに指摘されると、魔力の質が僅かに変わっていた。


「おい!

 そいつ等を取り押さえろ!」

「え?」

「何でですか?」

「良いから早く!」

「あ、はい

 ちょっと…」

「うわっ!」


周りの騎兵達は、言われるままに押さえようと周りを囲む。

そこで彼等達から、急激に魔力が放たれる。

それは騎兵達を動かして、拘束を阻もうとしていた。


「へ?」

「何でだ?」

「身体が勝手に…」

「おい!

 武器を手にするな!」

「お前達、どうしたんだ?」

「分からん

 分からんが身体が勝手に…」


騎兵達はのろのろと緩慢だが、何かに操られる様に動き出す。

そして鎌に手を添えると、抗う様に身構えていた。


「アーネスト?

 どうしたら良い?」

「力づくしか無いだろう?

 怪我はさせるな」

「分かった

 うおおおお!」

ビリビリ!


ギルバートは突然、威圧の咆哮を上げた。

無傷で取り押さえるのなら、間違っていない判断ではある。

しかし室内での咆哮なので、他の騎兵達も半数が動けなくなっていた。


「おい…」

「仕方が無いだろう?

 これが確実なんだ」

「それはそうだが…」


「取り押さえましたが?

 どうされますか?」

「うむ…

 これはどういう事なんだ?」


異変を起こしていた騎兵達は、見た目は何ともなかった。

しかし確かに、他の騎兵達とは異なる魔力を発していた。


「彼等は何かしていたか?」

「何かって…」

「普段と行動が違っていたとか…」

「そういえば、さっきから大人しかったな」

「そうだな…」

「さっきって?」

「魔物と戦ってからです」


どうやらミノタウロスと戦った辺りから、様子がおかしかった様だ。

しかしミノタウロスからは、何も異変は感じていなかった。


「他には無いか?」

「他ですか?」

「そうですね…」

「あ、そういえば!」

「何だ?

 何があった?」

「いえ、そいつ等はライカン何とかと戦って…」

「ライカンスロープだ…」

「そう

 そのライカンスロープと戦っていました」

「そういえば…」

「こいつも、あいつも…

 返り血を浴びていたな」

「え?

 お前は?」

「オレは浴びていないんだ

 だからこいつ等は…」

「魔物の血を浴びた?

 それが原因か?」


異常な行動をしていた騎兵達は、縛られて部屋の隅に集められる。

反抗的な訳では無く、あくまで操られている様子だった。

だからアーネストも、その様な処置しか思い付かなかった。


「共通しているのは、魔物の血を浴びている事か?」

「そうですね?」

「他には朝食の事もありますが…」

「それではバラバラであまり共通点は…」

「さすがにそれは無いだろう

 そうなって来ると…」


どう考えても、原因は魔物の返り血を浴びた事だった。

中にはそのまま放置している者も居たが、拭いている騎兵も居た。

しかし共通点は、結構な返り血を浴びていた事だけだ。

それが原因としか思えなかった。


「魔物の血が原因?

 まさかな…」


アーネストは嫌な予感を感じながら、外に残した皇女を呼びに向かわせた。

何かあると分るのは、皇女と光の精霊だけだろう。

彼女に確認してもらう為に、呼びに向かわせたのだった。

先ずはこの状況が、何が原因か確認するしか無かった。

まだまだ続きます。

ご意見ご感想がございましたら、お聞かせください。

また、誤字・脱字、表現がおかしい点がございましたら、ご報告をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ