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聖王伝  作者: 竜人
第十八章 北へ向けて
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第587話

ギルバート達は、北の大地を東に向かう

神殿に向かう為には、北東に向かう事になる

しかし険しい山脈が立ちはだかり、思う様には進めなかった

だから一旦東に向かって、山脈から離れる必要があった

山脈を横手に見ながら、一行は東に向けて進む

その山脈は大きくて、どこか龍の背骨山脈を思い出させた

ギルバートはその山々を見上げて、ダーナの事を思い出していた

思えばあの山に向かった頃から、世界は大きく変わった様な気がしていた


「この山も、龍の背骨山脈みたいに古代竜の遺骸なのかな?」

「それは分からないな…」

「ワシ等も聞いた事は無いのう

 しかし確かに…」

「シャンバラもこんな感じじゃったのう」

「まさかな…」


ギルバートが警戒しているのは、この中に施設があるかも知れないからだ。

ファクトリーがあるのなら、ここから魔物が出て来る可能性がある。

そうすればここで、また魔物と戦わなければならない。

女神が足止めを狙っているのなら、ここに魔物を配置していてもおかしくない。


「何を警戒しているんだ?」

「いや

 魔物が出て来たら厄介だろう?」

「それはそうだが…」

「何だ?

 歯切れが悪いな」


それはアーネストが、ファクトリーに興味を示していたからだ。


「もし…」

「もし?」

「ファクトリーがあるなら、見てみたいんだが…」

「ファクトリーをか?

 危険だぞ?」

「それはそうなんだが…

 今はアモンもエルリックも居ないだろ?」

「それはそうだが…」


アーネストはそう言いながら、ポーチから三枚のディスクを取り出す。


「これの事もあるからな」

「それは?」

「アモンからの土産だ」

「アモンの?」

「ああ

 これで何か見られるらしいんだが…」


しかしアーネストは、ディスクの使い方は知らなかった。


「ふむ

 薄い金属の円盤じゃな」

「何に使うんだ?」

「さあな

 アモンのメモでは、機械?

 何だか分からないが入れるって書いてあったが…」

「機械か?

 それならワシ等が分かるかも知れんが…」


機械と聞いて、マクツースが目を輝かせる。

彼等は機械には、興味津々だった。

兵器は嫌だったが、機械自体には興味が湧いていた。

だからアーネストが持つ、ディスクを見る機械には非常に興味を惹かれていた。


「おいおい…

 あまり時間は…」

「そうも言っていられないみたいだな」

「え?」

「言ってる傍から…」

「団体様の登場じゃ」


ギルバートは言われて、慌てて周辺に魔力感知を行う。

すると確かに、山の方に魔力を感知する。


「魔物か?

 迎え撃つ準備をしろ!」

「はい」

「どうやら当たりの様だな」

「魔力の出て来た場所は覚えておけ

 何かある筈じゃ」

「何かって?

 何が?」

「急に出て来たんじゃ

 出入り口の様な物がある筈じゃ」

「なるほど」


ギルバートは頷きながら、魔力の感じた場所を見る。

確かにそこには、何も隠れれそうな場所は無かった。


「あの辺りに…」

「ギルは油断するな!

 強そうな魔物だぞ」


それは先頭に、牛の頭を載せた魔物が立っていた。

後ろには狼の頭を載せた人間が続いている。


「何だ?

 あの大きな魔物は?」

「大きさだけなら、オーガより一回り大きいな」

「しかしオーガに比べると…」


それは3m近い大きさの、筋肉隆々とした男が牛の頭をしている様に見えた。

首の継ぎ目が見えないので、どうやら被っている様では無い。

しかも腰布しか身に着けていないが、全身の筋肉が脈打つ様が見て取れる。

とてもじゃ無いが、まともに戦って勝てそうには無かった。


「気を付けろ!

 あの牛の化け物が一番危険だぞ!」

「あれは何なんだ?」

「文献の記録で思い出されるのは、迷宮の守護者ミノタウロスだ!」

「ミノタウロス?」

「ああ

 あいつは持っていないが、大きな両刃の斧を振り回して襲って来る」

「あれが持っているのは大木の棍棒だな」


ミノタウロスと思しき魔物は、その辺の木を引き抜いて棍棒代わりにしていた。


「その周りの魔物は?」

「あれは…

 獣人なのか?」

「いや、獣人とは違う様じゃ

 獣人ではあそこまで、獣に近い姿では無い筈じゃ」

「それじゃあ狼の獣人じゃ無くて、ライカンスロープって魔物か?」


「ライカンスロープって何だ?」

「狼に近付いた魔物なんだが…

 詳しくは分からないんだ

 病だとも書かれていたが…」

「そうじゃな

 気を付けなければ、噛まれた者もライカンスロープになる可能性があるそうじゃ」

「ライカンスロープになる?

 それってうつるって事か?」

「そうじゃ

 罹れば高熱を出し、数日でライカンスロープになってしまう」

「月の出ている晩にしか変身しないって書かれていたが…」

「どうやらそうでも無さそうじゃな」


ミノタウロスが1体先頭に立ち、その後方にライカンスロープが8体続いている。


「ミノタウロス?

 あの巨人は任せろ

 騎兵は噛み付きに警戒しつつ、その周りのライカンスロープを頼む」

「はい」

「動きが素早いらしいから、気を付けろ」

「はい」

「爪は引っ掛かれると麻痺すると言う話じゃ

 鎧の継ぎ目を狙われるなよ」

「麻痺ですか?」

「分かりました」


マクツースの助言を聞いて、騎兵達は警戒しながら進む。

馬の数は先の戦いで減っていたが、帝国軍から逃げた馬が居た。

それを回収したので、今は馬の数は十分に足りている。

32名の騎兵達が、4名ずつでライカンスロープに向かって行った。


ギルバートも馬に乗ったまま、ミノタウロスに向かって行った。

最初ミノタウロスは、周りを駆け抜ける騎兵達を狙おうとしていた。

しかしそれを見たギルバートが、ミノタウロスに向けて威圧の咆哮を仕掛ける。


「マズい!

 うおおおおお!」

ビリビリ!

グガルルル…


ギルバートの咆哮を受けて、ミノタウロスは振り被ったままギルバートに振り返る。

そして咆哮を受けて、ライカンスロープの動きも鈍っていた。

騎兵達は耐性が出来ていたが、ライカンスロープには耐性が無かったのだ。

それで威圧が効いて、少しながら動きが鈍っていた。


「今だ!」

「殿下の威圧が効いている内に、ライカンスロープに少しでも傷を…」

「うおおおお」

「せりゃあああ」

ギャン

キャウン


騎兵達はライカンスロープを囲むと、振り回す爪を躱しながら切り付ける。

今までの魔鉱石の剣であれば、手傷を負わす事も出来なかっただろう。

しかしミスリルの剣は、抵抗を受けながらも魔物に傷を負わせる。

それは深手では無かったが、的確に手傷を負わせていた。


「やれる!」

「油断はするな」

「そうだぞ

 マクツースさんが言ってただろ」

「爪は麻痺だって話だ」

「噛み付かれるのもマズいな」

「ああ

 こいつ等の仲間にはなりたく無いな」


アーネストの見立て通り、ライカンスロープの症状は感染する。

元々ライカンスロープとは、狼の魔物の事では無い。

その症状を引き起こす、病の元になる微小な魔物の事なのだ。

その為に魔導王国でも、その正体は不明となっていた。

魔導王国では、その微小な魔物を発見する事は出来ていなかった。


「傷を負わない様に気を付けろ!」

「はい」


アーネストは騎兵に声を掛けながら、ライカンスロープの様子を窺う。

何かあれば彼等を守る為に、魔法を掛ける用意をしていたのだ。


一方でギルバートは、ミノタウロスの攻撃を躱していた。


ウゴガアアア

ドスン!


「くそっ!

 なかなか近付けないな」


ミノタウロスは力任せに、木を棍棒の様に振り回す。

その巨体から振り回される木は、周囲に枝葉を散らしながら唸りを上げる。

動きはそこまで早く無いので、躱す事は容易だった。

しかし躱せても、攻撃するまでの隙はなかなか無かった。


「こうなれば…」

「む?」

「おい!

 無茶はするなよ?」

「ああ

 こいつは感染しないんだろう?」

「それはそうだが…」

「ならば…

 ふん!」

ウゴアアア…

ガギン!


ギルバートは巨木を、クリサリスの鎌で受け止める。

それでミノタウロスに隙が出来て、ギルバートは木を受け流しながら腕に切り付ける。


「せりゃああ」

ザン!

ウガアアア


ミノタウロスは腕を切り裂かれて、痛みで片腕を引っ込める。

その隙にギルバートは、ミノタウロスの足元に踏み込んだ。


「もういっちょ!」

ザン!

グガルルル


ミノタウロスの右足に、深々と鎌が切り傷を刻む。

それでミノタウロスは、痛みでバランスを崩した。

そこへ再び、ギルバートは馬で踏み込んで行く。

そして馬の背に上ると、素早く飛び上がった。


「もらった!」

ウガアアア

ブン!


「危ない!」

「何て無茶を…」


ギルバートの跳躍を見て、魔物は太い腕を突き出す。

バランスは崩れていたが、その腕は的確にギルバートを狙っていた。

しかしそれこそ、ギルバートが狙っていた事だった。

そのまま宙で体制を整えると、ミノタウロスの腕を切り飛ばす。


「待っていたぜ!」

ズバッ!

ゴガアアア…


ギルバートは左腕を切り飛ばすと、そのまま切り飛ばした腕を足場に飛び上がる。

そして魔物の正面に回ると、その首筋に鎌を振り上げる。


「せりゃあああ」

グガア…

ズドシュッ!


鎌は鋭く振り抜かれて、魔物の太い首筋を切り裂く。

そこから血が吹き上がって、魔物は意識を失いながら崩れる。


ズシン!


地鳴りを立てながら、魔物の巨体はその場に崩れる。

ギルバートは少し離れた場所に、そのまま着地した。

ギルバートの姿を見付けて、馬が慌てて戻って来る。


ヒヒーン

「どうどう

 無事で良かった」


ギルバートは馬の首筋を撫でると、そのまま背に飛び乗る。

そして周囲を見回すと、騎兵達は優勢に戦っていた。

最初の咆哮が効いていて、魔物の動きは暫く鈍っていた。

それで騎兵隊は、その間になるべく手傷を負わしていた。


「うおおおお」

「このまま押し込め!」

「うりゃあああ」

ザン!

ズシャッ!

ギャウン


先ずは1体目のライカンスロープが、その場で首を押さえようとする。

しかし首は刎ね飛ばされていて、既にそこには無かった。

多量の血を噴き上げながら、そのまま魔物は倒れる。


「油断はするな」

「そうじゃぞ

 正体のよく分からない魔物じゃ」


そこから少し離れた場所でも、騎兵が魔物の首を切り裂く。

しかし首が切り裂かれても、魔物はなおも反撃しようと爪を振り回していた。


「まだ…

 生きているのか?」

「なかなかしぶとい」

「腕も切り飛ばせ」

「ああ」

ザン!


首が半分ほど切れているので、そのままぶら下がっている。

しかし魔物は、それでも爪を振り回していた。

騎兵達はその腕を躱しながら、鎌で切り飛ばした。

魔物は首が切れているので、鳴き声も上げずに腕を振り回す。

しかし爪のある部分は切り飛ばされているので、血を撒き散らしながら振り回していた。


「死なない?」

「しかし最早攻撃は出来ないだろう」

「次に向かうぞ」

「おう!」


騎兵達は倒れていないが、魔物は何も出来ないと判断する。

それで他に戦っている、仲間の加勢に向かった。


「変だな?」

「何じゃ?」

「あの魔物の事だよ

 何で死なないんだ?」

「むう?」


確かに魔物は、首が切られていた。

最初の魔物は首を刎ねられて、そのまま動かなくなった。

しかし2体目の魔物の方は、未だに腕を振り回していた。


「そのうち動かなくなるじゃろう?」

「それにしてもだ

 まだ魔力が残されている」

「するとこ奴等は、死霊みたいな物か?」

「ううん…

 首が無くなれば動かなくなるからな…

 どうなんだ?」


死霊によっては、首が落ちても動く物はいる。

そういった死霊は、再び首を拾って襲い掛かって来る。

首が刎ねられた魔物は、既に動かなくなっていた。

しかしその身体からは、魔力は感じられていた。


「念の為に、死体も焼いておこう」

「その方が良さそうじゃな」


他にも致命傷と思える、心臓の辺りを切られた魔物も動いていた。

何故生きているか分からない以上、そのまま放置するのは危険だった。

アーネストは呪文を唱えると、動かなくなった魔物に火球を飛ばした。

魔物の死体は火球が命中すると、そのまま燃やされていった。


「うん

 燃える様だな」

「どうやら殺せる様じゃな」

「ああ

 それに燃やしたら…」


炎に包まれた魔物は、魔力の反応も無くなっていた。


「魔力の反応も無くなった」

「それではあれも?」

「ああ

 完全には死んでいないんだろう」


その視線の先には、動かなくなった魔物が倒れている。

先ほどまで腕を振り回していた、首の取れかけた魔物の死体だ。

しかしその遺体も、魔力を僅かながら放っている。

それはこの魔物が、まだ死んでいないという事だ。


「何が原因か分からないが、完全には死んでいないな

 いや…」


ここでアーネストは、魔物の切り飛ばされた腕に視線を向ける。

そこには肘の辺りから、切り飛ばされた腕だけが転がっている。

しかしその腕から、何故か魔力を感じられるのだ。


「魔力?」

「ん?」

「何であれに魔力が?」

「あれとは?」

「あの腕だよ」


アーネストが指差す先には、魔物から切り飛ばされた腕が転がっている。

しかし腕だけになっても、そこから魔力を感じたのだ。

まるでまだ生きていて、魔物の身体に繋がっているかの様に。


「何でだ?

 何で魔力を感じるんだ?」

「さっきまで動いておったからじゃ無いのか?」

「いや

 それならあっちも…」


アーネストはミノタウロスの死体に視線を向ける。

しかしミノタウロスの死体からは、魔力を感じる事は無かった。


「どういう事だ?」

「分からん

 しかし、それが何じゃと言うんじゃ?」

「そうだが…」


ここで気が付いていれば、対処が出来たかも知れない。

しかしアーネストは、その意味が理解出来なかった。

それで結局、魔物を燃やすだけにしておいた。

それで死体からは、魔力を感じなくなったからだ。

まだまだ続きます。

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