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聖王伝  作者: 竜人
第十七章 土妖精の郷
565/800

第565話

ガンドノフとアーネストは、魔力の盾の話をしていた

近くには騎兵達が、半ば忘れ去られて転がっていた

ガンドノフの指示で、アーネストがマジック・アローに睡眠の効果を上乗せしていた

その結果で騎兵達は眠らされていたが、彼等はそれをすっかりと忘れていた

騎兵達は2時間ほど、アーネストとガンドノフが飽きるまで放置されていた

中には必死に睡魔に抵抗して、30分ほど耐えた者も居た

しかしアーネストもガンドノフも、彼等に気付かずに話に夢中になっていた

研究職の者は、得てしてそういう傾向が強いのだ


「だから悪かったって」

「すまん

 すっかり話に夢中になって…」

「良いんですよ」

「そうです

 お二人は我々が、魔物に襲われても平気なんでしょうから」


放置されていた騎兵達は、その後に様子を見に来た皇女に発見される。

それまではそのまま、眠らされていたのだ。

皇女に魔法で起こされた騎兵達は、すっかり拗ねてしまっていた。


「もう!

 アーネストさんもガンドノフさんも

 みなを眠らせて放置なんて、何を考えているんですか?」

「いや、だから…」

「有用な魔法の議論をしておってな」

「そんな事は良いんです

 どうして起こさなかったんですか!」

「それは…」

「忘れてたんですよね」

「いや」

「決してそんな…」


「忘れてたんですよね!

 みんなが起きた時に、何で寝てるんだって言ってましたもんね」

「おい

 お前が余計な事を言うから」

「だって、すっかり魔法に意識が行ってて」

「こそこそ話して無いで!

 どうなんですか!」

「はい」

「すいません

 忘れてました」

「私にじゃない

 騎兵のみなさんに謝りなさい」

「すいませんでした」

「申し訳ない」


アーネストもガンドノフも、皇女に叱られて騎兵達に謝っていた。


「どうせオレ達じゃあ、訓練になりませんからねえ」

「違うって

 決してそんなつもりじゃあ…」

「だったら何で、訓練中に魔法を?」

「いや、魔法は最初から掛けていただろう?」

「そうじゃありません

 何で睡眠の魔法なんて掛けたんです?」

「そうですよ

 みんなが眠ったから良かったです」

「そうで無ければ怪我人が出てましたよ」

「いや、それに耐える為の訓練なんじゃが…」

「はあ?」

「耐えられると思っているんですか?」

「ああ

 それの話をしておって…」


「アーネストさん、ガンドノフさん

 言い訳は見苦しいですよ」

「違うって

 これを見てくれ」

「これって…

 読めませんわよ」

「あ…」


アーネストは魔導書を見せて、説明しようとした。

しかし魔導王国の文字なので、皇女でもほとんど読めなかった。


「これは魔術師用の防御魔法で、シールドの呪文なんだ」

「シールド?

 確か防御用の魔力を張るって?」

「知っているのか?」

「ええ

 昔の魔術師は使っていたって

 でも、焚書で失われたって聞いたわよ?」

「それが載っているんだ」


それを聞いて、皇女も少しだけ納得していた。

アーネストや皇女にとっては、重要な魔法にはなる。

しかしだからと言って、騎兵達を放置する理由にはならない。


「魔法については分かったけど、それでみんなを放って置くのは…」

「いや、問題はこの魔法の説明なんだ」

「え?

 どういう事?」


「ここに書かれている事は、魔力に身体強化や属性、耐性を付与出来るって事だ」

「それが何か?」

「これを応用出来れば、身体強化にも使えるんだ」

「身体強化に?

 どういう事?」


アーネストの説明に、皇女も食い付いて来た。


「おい

 身体強化にも使えるって事は…」

「オレ達も使えるって事か?」

「ああ

 だから驚いていたんだ」

「それは…」

「だからってオレ達を放置するのは…」

「それは本当にすまなかった」


アーネストはそのページを、共通公用文字に翻訳する。

その上で騎兵達にも、使い方を説明する。


「今までは呪文も無しで、訓練で慣らして身体強化を使っているよな」

「ええ

 殿下からも、その様に指導されました」

「それを使う時に、この呪文を唱えるか頭に思い浮かべるんだ」

「思い浮かべるだけで良いんですか?」

「ああ

 しかし慣れるまでは、呪文を唱えた方が効果があるだろう」

「なるほど…」

「ガード・パラライズ」

「ガード・スリープで睡眠に対する耐性ですか?」

「ああ

 それを唱えながら、身体強化を使ってみろ」

「え?」


騎兵の一人が、言われたままに呪文を唱える。


「呪文を唱える時に、身体強化を使いながら眠りに抵抗すると強く念じるんだ

 そのイメージが強ければ、それだけ抵抗出来る」

「はあ…

 ガード・スリープ」

「よし

 マジック・アロー

 スリープ」

「ちょ!」

バシュッ!


アーネストは、呪文を唱えた騎兵に魔法の矢を射る。

これは先程、騎兵達に射たのと同じ睡眠の矢だ。

しかし今度は、騎兵は上手く身体強化で魔法の矢を弾く。

そして同時に、睡眠の魔法の効果にも耐えた。


「くっ…

 あれ?」

「おい?」

「眠く無いか?」

「ああ

 何故か眠くない」


「この様に、身体強化に耐性も持たせれる

 それを身に着けられれば…」

「これって毒の耐性もありますよね」

「ああ

 だからポイズン・サーヴァントも、もう怖くない」

「これは便利だな」

「なるほど

 防御を高める必要がありましたからね」

「しかし…」


効果を発動させるには、呪文とイメージが必要になる。

呪文の方は、何とか暗記して覚えるしか無い。

しかし問題は、戦闘中にイメージをしながら防御が出来るかだ。

これに関しては、何度も繰り返して身に着けるしか無かった。


「効果としてはどうなんです?

 本当に毒を防げるんですか?」

「そこは…」


アーネストは確証が無いので、思わずガンドノフの方を見る。


「ワシの見て来た感想では、多少の効果じゃな

 じゃからポイズン・サーヴァントとなれば…」

「さすがに難しいか?」

「ああ

 あれは猛毒じゃからな

 しかし毒草や矢に塗った軽めの毒なら、防ぐ効果には期待しても良いじゃろう

 じゃが効果を出すには…」

「訓練でイメージと呪文を間違えずに詠唱か?」

「そうじゃのう

 無詠唱にしても、頭の中でちゃんと詠唱出来なければ、効果は下がるじゃろう」

「それではこれを覚える必要が?」

「うむ

 必要はあるな」


麻痺や毒に対する耐性でも、しっかり呪文の効果を発揮する必要がある。

その為には、詠唱はしなくても頭の中で呪文を唱える必要がある。

そしてその耐性を発揮していると、しっかりと意識する必要がある。

それを戦闘中に、無意識にでも防御で使う必要があるのだ。

それには何度も防御の訓練で、呪文を唱える必要がある。


「暫くは自分達で、防御の練習をしながら使うしか無いな」

「そうじゃのう

 慣れて来たら、アーネストに魔法で攻撃してもらおう」

「え?

 それってさっきみたいな?」

「ああ

 マジック・アローに魔法の効果を付与して、訓練中に抜き打ちで撃ってもらう」

「でも、それでは何の魔法か…」

「ああ

 それは撃つ時に事前に説明はしておく

 じゃないといきなり撃っても、防げないからな」

「そうですね…」


「それとは別に、耐性を上げる訓練も必要じゃな」

「え?」

「それはどういう…」

「ああ

 実はマジック・アローを使ったのも、それが原因だ」


身体強化で耐性を上げるのも重要だが、それ以前に基礎の耐性も上げる必要がある。

それは騎兵達が、油断してたとはいえ簡単に眠ってしまった事にある。


「不意討ちとはいえ、簡単に魔法の睡眠が効いていた

 恐らくみんな、そういった魔法や属性の耐性は低いと思う」

「それはそうでしょう

 私達は人間で、元々耐性なんて無いんですから」

「そうじゃ無い

 訓練次第で、耐性の獲得は出来る

 例えばオレは、魔法や麻痺毒の耐性はある」

「そうなんですか?」

「ああ

 自分に向けて魔法を使って、何度も訓練したんだ」

「え?」

「いや、それは…」

「本気ですか?」


アーネストの言葉に、皇女を始めとして騎兵達まで顔を引き攣らせる。

自身に魔法を掛けて、それに耐えようとするなど普通は考えないだろう。

それがまだ、元々耐性があるなら分かる。

しかしアーネストは、魔術師らしく痩せて体力がある様には見えない。

それが無茶をしてまで、魔法を耐えようとしたと言うのだ。


「えっと…

 具体的にはどんな?」

「ああ

 さすがに炎や雷はマズかったな

 重傷を負って叱られたよ」

「そりゃそうでしょ!」

「何て無茶な事を!」

「いや

 魔法の威力を確かめる為にも…」

「普通は自分には掛けないでしょう!」

「それで死んだらどうするんです?」

「だから叱られてな

 それ以降は危険な魔法は使って…」

「最初から使っちゃ駄目でしょ!」

「全く

 殿下といい、アーネスト様といい…」


「ああ

 ギルもやっているぞ

 多少の炎や氷の魔法では、身体強化で耐えていた

 今思えばあれも、この耐性の魔法と同じ原理なんだろうな」

「そうじゃな

 戦士としてスキルを授かっておれば、呪文を使わなくとも耐性を発揮出来る

 まあ、呪文と違って限られた耐性にはなるがな」

「そうか

 それで雷や睡眠には抵抗力が落ちるのか」

「うむ

 苦手な耐性はある筈じゃ」


「殿下にそんな事をしてたんですか?」

「何て無茶な事を!」

「いや、ちゃんとポーションも用意してたぞ

 危険だからな」

「当たり前でしょう!」

「というか、ポーションがあってもしては駄目でしょう!」

「いや

 これは非常に理に敵った訓練じゃぞ

 魔導王国では、新兵に行っていたぐらいじゃ」

「え?」

「勿論さっき話した、最低限の耐性を上げる術を身に着けてじゃがな」

「しかし…」

「多少の危険があっても、それで耐性を身に着けれる

 まあ、魔物ほどでは無いが、魔物と戦うには必要じゃ

 というか…」


ガンドノフ話しながら、不可解だと顔を曇らせる。


「ん?

 どうした?」

「いや

 耐性は少しだが…

 あるぞ」

「え?」

「何で?」

「それは称号があるからな

 当たり前じゃろう?」

「え?

 称号って?」

「何じゃ?

 知らんのか?」


ガンドノフは呆れた顔をして、アーネストを見る。


「いや、鑑定の魔法は知っているが…」

「こ奴等称号を持っておるぞ?」

「いつの間に…

 本当だ!」

「え?」

「そうなんですか?

 しかし何も聞いてませんが…」

「そうですよ

 世界の声(ワールド・アナウンス)は聞こえていませんよ」

「ああ

 だからオレも、そんな事になっているとは…」


騎兵達を改めて見ると、みんな名前の下に称号が増えていた。

一部は戦士や勇敢な者とあるが、いつの間にか騎兵と一律に称号が増えていた。


「騎兵?

 いつの間にそんな称号が…」

「称号とは元々、その者が与えられた栄誉みたいな物じゃ

 女神とは別に、スキルを得た時に授かっておる」

「しかしスキルを得ていたのなら…」

「女神の声は聞こえなんだのか?」

「ああ

 それが在れば、オレも確認していた」


何故声が聞こえなかったのかは分からないが、いつの間にか称号は増えていた。

そしてアーネストは、改めて騎兵達のスキルを見る事にする。

しかし何故か、スキルは特に増えていない者も居た。


「あれ?

 スラッシュやブレイザーはあるけど…

 他には特に増えていないぞ?」

「そんな事は無いじゃろう?

 耐性や特化が増えておる」

「特化?」

「何じゃ?

 お前は鑑定がランク5なのに、そんな事も知らんのか?」

「え?

 いや、確かに5に上がってはいるけど…」

「もっと魔力を込めて…

 ステータスと念じて見てみろ」

「え?

 ステータス?」


ガンドノフに言われて、アーネストは騎兵をもう一度鑑定してみる。

今度は言われた様に、ステータスと念じる事を忘れない。

すると今までは、名前と称号の横にはスキルしか表示が無かった。

しかし名前と称号の間に、新たな表示が増えていた。


「体力…

 素早さ?

 それに耐性…」

「それがステータスじゃ

 あくまで個人の特徴を表す、指標の様な物じゃな」

「こんな事まで鑑定出来るのか?」

「ああ

 鑑定をある程度上げる必要があるがな」

「私も出来たわ

 こんな事が出来るなんて、知らなかったわ」


皇女も神聖魔法を授かる時に、鑑定の魔法も修得していた。

今はランク3ではあるが、ステータスの基本の値は見れていた。

それで詳細は見れないが、名前と称号、それからステータスまでは見えていた。


「ランク3なら、基礎のステータスまで見れる

 もう少し上げられれば、細かい耐性や特化も見れるがな」

「知らなかった…」

「ええ

 私も鑑定は、状態異常を見る為に覚えたもの」

「そうじゃな

 ステータスを見るには、ランク3は必要じゃ

 しかし詳細を知るには、もう少し上げる必要がある」

「詳細ですか?」

「ああ

 今のままでは、毒とか負傷しか見れんじゃろう

 傷の具合や必要な手当てを知るには、最低ランク5以上は必要じゃ」

「そうなんですね」


鑑定はランク1で、鑑定した相手の名前が見える。

物や魔法に関しては、その大まかな名前程度だ。

ランク2になると、称号やある程度の情報が見えて来る。

例えば魔法なら、ファイヤー・ボールから火の魔法といった感じだ。


ランク3になって、やっと使える魔法になって来る。

相手のステータスという事で、体力や素早さといった能力も見れる。

そして何よりも、状態も見えて来る様になる。

毒や負傷が分かる様に、神聖魔法を使える者は鑑定のランク3が最低限必要なのだ。


ランク3で、道具や魔法の注釈が見える様になる。

それでも攻撃魔法だとか、鉄製の剣といった程度だ。

ランクが5になると、ようやくある程度の情報が見られる様になる。

しかしアーネストは、そこまで細かく見ていなかったのだ。

それは鑑定の魔法が紹介されているページに、そこまで詳細が載っていなかったからだ。


「ワシの鑑定は、ランク7になる

 この能力もあって、魔道具の加工方法を知る事が出来る」

「え?」

「鑑定の情報で、素材や必要な魔石等が見れるからのう」

「そんなに便利なのか?」

「いや、万能では無いぞ

 あくまで出来上がった物じゃ

 未完成な物では、必要な素材などは見えん」

「しかし既にある物なら?

 分かるって事だな」

「ああ

 じゃから魔導兵器の開発をさせられておった」

「ああ…」


ガンドノフが兵器作りをさせられたのは、この鑑定の能力のせいだった。

旧時代の遺物を調べて、可能な限り再現させようとしたのだ。

しかし材料が揃わなかったので、未完成で終わっていた。

あれで素材が揃っていたら、旧時代の魔導兵器が完成していただろう。


「それで、これからの事じゃが…」


ガンドノフは鑑定の結果から、どう訓練すべきか話し始めた。

まだまだ続きます。

ご意見ご感想がございましたら、お聞かせください。

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