表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖王伝  作者: 竜人
第十七章 土妖精の郷
563/800

第563話

ギルバートはドワーフの郷の、少し開けた場所で座っていた

近くにはアーネストが立ち、魔力を集中させている

この魔力を使って、ギルバートに攻撃に対する意識を向けさせているのだ

魔力に反応して、咄嗟にそこへ身体強化の魔力を集中させる

言葉にすれば簡単だが、それはとても集中力の必要な事だった

アーネストが放つ魔法に、ギルバートは素早く3ヶ所に魔力を集める

最初は何も出来なかったが、この5日で3ヶ所までは反応出来る様になった

そのまま身体強化で、魔力を弾き返す

そして得意気に、ニヤリと笑ってみせる


「ふん

 そのぐらいなら、防げる様になったぞ」

「うむ…

 思ったよりも早かったな

 これもガーディアンじゃからか?」

「さあ…

 しかし予想以上だな」


ギルバートの様子を見て、アーネストもガンドノフも呆れる。


「序でにだが、ある程度の気配も感じられる様になったぞ

 もしかして、この訓練はそれが目的なのか?」

「ああ

 精神を落ち着かせて、魔力の流れを感じる

 それが第一段階だ」

「魔力を感じれば、そこに何者かが居るのも感じるじゃろう?

 それで慣れて来れば、そこに気配を感じる事も出来る筈じゃ

 しかしそこまでできる様になるとは…」

「うーん

 これは思わぬ収穫ですね」

「ああ

 普通はこれも、何十年と戦って身に着けれる事じゃ

 運が悪ければ、その前に死ぬがのう」

「ふふふふ

 オレの才能があればこそだな」

「調子に乗るな!」


三人の遣り取りを見て、騎兵達も意識を切り替えていた。

防御術の訓練もするが、ギルバートの真似をして集中する訓練も始めていた。

しかし彼等は、そこまでの域には達して居ない。

精々数人が、気配や魔力の流れに気付いた程度だった。


「ところで…

 そろそろ説明してくれないか?」

「ん?」

「これに何の意味があるんだ?」

「え?」

「まさか気付いておらんのか?」

「へ?」


ギルバートの反応に、二人は頭を抱える。

その様子に、周囲で訓練する騎兵達も呆れていた。

いや、一緒に訓練していた、ハイランドオーク達もだ。


「なあ…

 もしかして全然気付いていないのか?」

「幾ら何でも…」

「ん?」


「いや、今のお前は、魔法の攻撃を弾いているんだぞ」

「え?」

「そうじゃぞ

 同時に魔法の矢とはいえ、3発を弾いておる

 これが攻撃に応用出来れば…」

「ちょっと待て!

 魔法で攻撃?」

「ああ

 マジック・ボルトだが、数発を待機させている」


ギルバートが慌てて目を見開くと、確かに数本の魔法の矢が空中に漂っている。

しかもマジック・アローでは無く、威力や射出速度の速いマジック・ボルトの方だ。

こんな物が飛んでいたら、油断したら負傷していただろう。

実際にマジック・ボルトは、マジック・アローよりも威力が高いのだ。


「おい!

 こんな危険な物を…」

「ああ

 使っているのは昨日からだ

 確実に防げると判断してね」

「いや、防げるって…

 ん?

 防いでいるのか?」

「ああ

 身体強化で弾いていたじゃ無いか」

「いや、それは魔力を…

 本物の魔法だったって事か?」

「ああ

 そうじゃ無きゃ、実戦では意味が無いだろう」

「だからって…」

「危険が無い程度にだぞ」

「そうじゃ

 ワシも見張っておったからな」

「しかし…」


最初の3日は、単純に魔力を感じさせていた。

しかし残りの時間は、少しずつ魔法の矢に変えていたのだ。

身体強化を効率良く使えば、魔法の矢も弾ける。

そう判断しての訓練だった。

そしてギルバートは、ほぼ無意識にそれを行っていたのだ。


「ここまで出来れば、後は実戦訓練で慣らせるだけじゃ」

「え?

 ここまで出来れば…」

「それは意識を落ち着かせて、集中しているからじゃ

 戦闘中に出来んでは、意味が無いからのう」

「それはそうだが…」

「という訳で、行くぞ」

「わっ!

 おい!」

ガキン!


ガンドノフはいきなり鉄棒を放り投げると、問答無用で切り掛かった。

しかしギルバートは、それを鉄棒で上手く受け止める。

それも力任せでは無く、腕の力を抜いて柔らかく受け止めた。


「うむ

 ここまでは出来る様になったな」

「え?

 あれ?」

「意識が攻撃にでは無く、気配と魔力で反応しているからな

 以前の様な力みも無いし」

「そう言われれば…」


「おお…」

「あんな風に受け止めるのか」

「確かにあれなら、武器にもダメージが少ない」


ギルバートの上手い受け方に、騎兵達からも感嘆の声が上がる。


「先ずは基礎が出来る様になったのう」

「基礎?

 これでか?」

「ああ

 しかしこれだけでも、武器を痛めずに攻撃を防げる

 十分な進歩じゃ」

「そうか…

 上手く受けられれば、武器も壊れない」

「そういう事じゃ」


ガンドノフはそう言うと、その先について説明を始める。


「これでお前は、戦場での気配察知と魔力察知を身に着けた

 それでこれからは、その応用に入る」

「応用って?」

「受け崩しの事じゃ

 そもそも、受け崩しをする為に防御術の基礎を教えた訳じゃが…

 忘れたのか?」

「え、いやあ…」

「はあ…

 これの、事じゃ」

「うわっ!」

ギャリン!


ガンドノフは体制を変えて、力を受け流す。

それでギルバートは、前のめりになって隙が出来る。


「どうじゃ?

 思い出したか?」

「ああ

 確か相手の力を使って…」

「うむ

 今では前と違って、少しは分かるのでは無いか?」

「ああ

 確かにガンドノフの、力が右に向かっていた」

「そうじゃ

 お前が使える様に、戦う相手が使える可能性も十分にある

 そうした時に、相手の受け流しを上手く使えばどうなるか?」

「あ!

 逆に隙を作らせれる」

「そういう事じゃ

 これから数日は、この訓練を行うぞ」


ガンドノフは力強く言うが、ギルバートは返答に困っていた。


「なあ

 これが必要なのは分かる

 しかし良いのか?」

「ん?」

「こうしている間にも、女神はどこかに魔物を送っているかも知れない

 襲われているのは、オレの国だけじゃあ無い筈だ」


ギルバートは心配している、懸念をガンドノフに告げる。

それは女神が、他国にも魔物を送っている事だ。

それは事実でもあるが、他国は他国で戦っていた。

そしてガンドノフは、そんなギルバートを叱った。


「他国も襲われているじゃと?」

「ああ

 西方諸国にも現れているみたいだし…」

「それで?」

「いや、早く何とかしないと…」

「はあ…」


「お前は、それでどうしたいんじゃ?」

「え?」

「その国に向かって、魔物を倒すのか?」

「いや、それは…」

「そこに向かうのに、どれだけの日数が掛かる?

 それに向かったとして、その魔物を倒せるのか?」

「しかし…」

「それじゃあどうしたいんじゃ?」

「女神を止めに…」


「馬鹿もん!

 今のお前が向かって、一体どうなる?」

「いや…」

「精々途中で、魔物に囲まれて死ぬじゃろうな」

「だからって!」

「焦るなとは言わん

 この状況じゃ、焦る気持ちも分かる」

「だったら!」

「だからこそ!

 お前は女神の下へ、辿り着ける力が必要じゃ

 違うのか?」

「ぐうっ…」


ギルバートは何も言い返せなくなる。


「ギル

 気持ちは分かるが、今のはガンドノフの方が正しい」

「アーネスト?」


「今のお前の力では、ランクEの魔物がやっとだ

 ランクDの魔物では、お前一人では無理だろう?」

「だが、今までは…」

「それはアモンが居たからだろう?

 アモンは居ないんだ」

「ぐ…」

「それに…

 着いて来る騎兵やハイランドオークも少なくなっている

 この状況では、本来は一旦帰国すべきだ」

「しかし…」

「だからこそ、力を身に着けて進むべきだろう?

 お前も騎兵達も」


「そうですよ!」

「オレ達も、いつまでも守られてばかりでは居られません」

「ここで殿下を守る力を手に出来るのなら…

 身に着けたいです」

「お前達…」


「確かに、時間は差し迫っているのかも知れない

 だからこそ、判断を見誤るな」

「アーネスト…」


「騎兵達だけではない、ハイランドオーク達も新たな力を身に着けようと頑張っている

 ここには居ない、皇女もだ」

「皇女が?」

「ああ

 彼女は今、セリアと精霊魔法の訓練をしている

 神聖魔法をより強力に扱う為に、光の精霊と特訓をしている」

「そんな事を?」

「ああ

 だからお前も、今は力を身に着けろ」


アーネストの言葉に、ギルバートは頷く。


「分かったよ

 今は進むよりも重要なんだな」

「ああ」

「それなら…

 どうすれば良い?」


ギルバートは改めて、ガンドノフの方を見る。


「先ずは…

 気持ちを落ち着けろ」

「いや、落ち着けっても…」

「焦りは禁物じゃ

 焦っておっては、冷静な判断も出来ん」

「しかし…」

「気持ちを落ち着かせろ」

「ぬう…」


ギルバートは目を瞑り、言われた様に深呼吸をする。

そうして昂った気持ちを、静かに鎮めて行く。

そうすると先ほど、座っていた時の様に周りを感じられる様になる。

周囲の魔力だけでなく、誰がどこに居るのか生命力も感知する。


「ふむ

 落ち着いたな」

「ん?」

ガキン!


ガンドノフの動きに合わせて、再びギルバートは武器を打ち合わせる。


「そのまま目を瞑っていても良い

 先ずは魔力や生命力から、攻撃を感じ取れ」

「こうか?」

ギン!

ガキン!


「そうじゃ

 ワシの攻撃に合わせて、武器を上手く打ち合わせろ」

「分かった」

ギャリン!


そのまま数合、二人は無言で武器を合わせる。

次第に慣れて来たのか、ギルバートは脱力して受けれる様になる。


カシャン!

カン!


「よし

 そのまま武器を合わせた時に、ワシの動きに合わせて攻撃を流せ」

「ん?

 こんな感じか?」

「ああ

 しかしまだ固いのう」

キン!


二人はそこから、武器を打ち合わせては受け流す。

次第に武器が打ち合う音も、重くない金属音に変わって行く。


ジャリン!

カシャン!

シュリン!


「良いぞ

 もっと肩の力を抜くんじゃ」

「ううん

 こうか?」

「そうじゃ

 力で流すのでは無く、相手の攻撃に合わせろ」


ガンドノフはそう言いながら、騎兵達の方を見る。

そして頷くと、騎兵達に手招きをする。


「今から攻撃が増える

 気にせず受け流しに集中しろ」

「え?

 ちょ!」

「意識を乱すな!

 集中しろ」


ガンドノフのと入れ替わる様に、複数の騎兵達が攻撃に加わる。

しかしギルバートは、それに安定して合わせて行く。

騎兵達の武器は、いつの間にか魔鉱石の剣に変わっていた。

しかしギルバートは、それに対しても上手く受け流していた。


シャリン!

キャリン!

カシャン!


軽く金属音が鳴り、武器が上手く受け流されている事が分かる。

いつの間にかギルバートは、6名の騎兵達の攻撃を受け流していた。

それは流れる様に緩やかで、しかし的確に武器を受け止める。

そして騎兵の力に合わせて、流れる様に受け流していた。


「うむ

 先ずはここまでは出来る様になったな」

「これは…

 思ったよりも早く上達しそうだな」

「いや

 今は合わせているし、殺気の籠った攻撃では無い

 それに意識しないでとなると…」

「時間が掛かるか?」

「ああ

 どうしても何度も、戦いを行った経験が必要じゃ」


これは訓練だから、まだ何とか追い着いている。

しかし実戦では、この様に出来るとは限らない。

魔物が襲って来る姿を見れば、どうしても気持ちが焦ってしまうからだ。

その状況でも何とか出来る様になるには、もっと回数を重ねて慣れる必要があった。


「しかしな、この訓練にもメリットはある」

「騎兵の訓練にもなるか」

「そうじゃ

 この訓練を続ければ、あいつ等もマシになるじゃろう」

「ガンドノフの見立てでは?」

「そうじゃな…」


ガンドノフは騎兵を見て、それからハイランドオークを見る。


「先ずは騎兵じゃが…

 馬との相性もあるが、今のままではランクEも厳しいかのう?」

「アーマード・ライノでは?」

「ん?

 蜥蜴は鈍重じゃからのう、ミスリルの剣があれば勝てるじゃろう」

「それじゃあ何に?」

「それは人型の魔物や、グレイ・ウルフの様な素早い魔獣じゃな」

「なるほど

 速度に着いて行けないか」

「ああ

 そうなって来た時に、重要なのは防御出来るかじゃ

 上手く攻撃を防げば…」

「反撃の隙もあるか?」

「そういう事じゃ

 このままでは、グレイ・ウルフの攻撃でも危険じゃ」

「なるほど…」


騎兵達も腕が上がってはいるが、人間として速度には限界がある。

この中で一番素早いギルバートでも、グレイ・ウルフの攻撃をやっと躱せるかだ。

騎兵達となれば、躱しきれなくて殺されてしまうだろう。

そうならない為にも、攻撃を受け切る技術は必要だった。


「素早い動きとなれば、上手く受け切れるのか?」

「それは躱すのと、防御する事の違いじゃ

 躱すには大きく動く必要があるが、防御なら攻撃してくる方向に合わせれば良い」

「しかし強力な一撃では…」

「そうじゃな

 そのまま受け止めれば、それこそ致命傷じゃろう」

「それなら…」

「じゃからこそ、ワシ等には防御術がある

 力を受け流すな」

「ああ

 そういう事か」


ドワーフの防御術は、元々が動きが遅いドワーフの為の防御術なのだ。

それは動きが遅いドワーフが、生き残る為に鍛え上げた技術だ。

だからこそ当然、素早い動きや致命的な威力の攻撃にも対処する様に編み出されている。

グレイ・ウルフ程度の攻撃では、軽く受け流せるのだ。


「まあ、それも身に着けられればじゃがな」

「うーん

 難しいか」

「そうじゃな

 しかしここに居る間は、ワシ等が鍛えてやれる」

「頼んでも良いのか?」

「ああ

 そのぐらいなら構わん」


ガンドノフはそう言って、ニヤリと笑うのであった。

まだまだ続きます。

ご意見ご感想がございましたら、お聞かせください。

また、誤字・脱字、表現がおかしい点がございましたら、ご報告をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ