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聖王伝  作者: 竜人
第十七章 土妖精の郷
559/800

第559話

ドワーフの郷の中では、今まで封印されていたミスリルが作成されていた

それは嘗て魔導王国で使われていた、魔法鉱石と呼ばれる金属だ

ドワーフは歓喜の声を上げて、その金属を打ち上げる

そして出来上がった武具が、次々と運ばれる

昨日の騒々しさから一転して、彼等は真剣に武具を調整する

剣を丁寧に磨き、鎧も組み上がって行く

その光景を見ながら、ギルバートは驚きの声を上げる

それは美しく輝き、目を見張る物であった


「これは…」

「お前達は皮鎧を主に使っているな

 ハイランドオークは後回しにして、先ずは板金鎧にしてみた」

「この皮は?」

「先ほど倒したアーマード・ライノの皮を加工した

 しかし乾くまで時間が掛かる

 使えるまで後1日は欲しいな」

「そうだな

 皮が馴染むま…え?」

「1日で良いのか?」

「ああ

 炉の熱を使ってな

 後はドワーフの秘伝の技術じゃ」

「いや、だからって…」


普通は皮鎧の皮でも、数日干してから馴染ませる。

そしないと乾きに斑が出て、使っている間に割れるからだ。

しかしアーマード・ライノの皮は、綺麗に水分も抜けている。

あれだけの高温を発する高炉だ、余熱も相当だったのだろう。

しかし短時間でここまで加工出来るのも、そのドワーフの技術があるからだろう。


「今は見るだけじゃぞ」

「ああ

 しかし…」

「これは強度と…

 衝撃の吸収?」

「そうじゃ

 それから皮鎧に板金を組み合わせる事で、重量も押さえてある」

「凄い…」


「今の鎧よりは重たいから、着て慣れる必要がある

 しかしお前のは…」


ギルバートの鎧は、白い熊の皮鎧に魔鉱石の板金を組み込んでいる。

一般の騎兵に比べると、その分重たかった。

だからミスリルプレートの鎧と、重さはあまり変わりが無かった。

その代わり防御面では、ミスリルの鎧の方が上だった。


「ちょっと鎧を見ても良いか?」

「ん?

 ああ…」


ギルバートは頷くと、着ている鎧を脱いだ。

ガンドノフはそれを受け取ると、熱心に調べる。

それからアーネストに頼んで、魔法を幾つか当てさせる。


「良いか?

 ワシが合図したら、順番に魔法を当ててくれ」

「大丈夫なのか?」

「ああ

 問題無い」

「しかし魔力が通っていないぞ?」

「大丈夫じゃ

 試すのは元々込められておる、素材の持つ属性じゃ」


ガンドノフが合図を送って、アーネストは魔法を放つ。

マジック・ボルトからファイヤー・ボール、雷や吹雪の魔法も試す。

さすがに吹雪の魔法は、アーネストも得意では無かった。

それにここの気温も高いので、効果はそこまでは無い。

しかしガンドノフは、満足気に頷いて鎧を返した。


「この鎧は素晴らしいな」

「え?」

「何の素材か分からないが、この魔獣の皮が魔法を阻害する効果がある

 精神系は分からんが、並みの攻撃魔法なら…

 5~30%ダウンといったところかのう?」

「そんなに?」

「ああ

 しかし言っておくが、並みの魔法ならじゃ

 小僧…アーネストの魔法なら、一部で傷を入れれる」

「え?」

「それだけの魔力があるという事じゃ」

「ふふん!」

「ぬう…」


ガンドノフの言葉に、アーネストは自慢気にふんぞり返る。

それを見て、ギルバートは嫌そうな顔をする。


「負けるか!」

「なら、勝負するか?」

「おい!

 ここでじゃれるなよ

 やるなら外でやれ」

「え?」

「いや、そこは止めろよ…」


ガンドノフの言葉に、逆に二人が慌てる。

しかしガンドノフは、良い機会だから色々試せと勧めて来た。


「ギルバートよ

 お前さんの今までの戦い

 それは機動力を活かした一撃離脱じゃ」

「え?

 そうなのか?」

「むう?」

「はあ…

 こいつはそこまで考えていませんよ

 ただ本能に従って、攻撃して回避する

 それが偶々、一撃離脱の戦法になっていた…」

「そうなのか?」

「なんと…

 いやはや、守り人と言うのは…」

「守り人?」


「守り人と言うのは、女神や人間が言うところの、ガーディアンという者じゃ

 この世界を女神に託されて、守る為に存在する…」

「え?

 でもオレは…」

「そうじゃな

 守り人になられては困るから、その命を狙われた

 ワシはそう考えておる」

「そうだな

 オレもその意見には賛成だ」


本来ならば、ガーディアンとして人間の世界を守る為に戦う。

しかしどういう理由か、偽の女神は人間を滅ぼしたがっている。

そこで人間を守るギルバートが、彼女にとっては邪魔な存在だったのだ。

だから産まれた時から、執拗に命を狙っていた。


「守り人は通常の人間に比べると、魔力や生命力が桁違いじゃ

 その力を使って、人間を守るのじゃからのう」

「カイザート達六大神も、ガーディアンだったと考えられる」

「六大神?

 あ奴等はそう呼ばれておるのか?」

「ええ

 初代皇帝カイザートと、それを守る5人の勇者達

 皇帝が暗殺された後は、帝国の守り神として崇められていました」

「守り神のう…

 何とも皮肉が効いた話じゃ」


ガンドノフの言うのは、皇帝の暗殺を知っているからだ。

カイザートが亡くなった事は、アモンから聞かされていた。

だからガンドノフは、人間を信じられ無くなっていた。

ギルバート達を招き入れたのは、アモンが連れていた事に興味を覚えたからだ。


アモンもまた、人間を信じていなかった。

カイザートを殺した事で、むしろ積極的に人間を殺していた。

ドワーフを殺さなかったのは、彼等もまた、人間の被害者だと思っていたからだ。

そんなドワーフの郷に、人間を嫌ったアモンが連れて来たのだ。

興味を引くには十分な理由であった。


「黒の猛獣…

 アモンがお前達を連れて来た時は、ワシも驚いたわい」

「何でだ?」

「アモンは人間を憎んでおった

 友であるカイザートを、私利私欲で殺したんじゃ

 当然じゃろう?」

「ああ

 そういう事か…」

「そういえば、ダーナに来た時も様子が変だったな」


ベヘモットから聞いていたから、試す様な感じで接していた。

あれがそうで無ければ、いきなり殺されていても不思議では無い。

思えば連れていた魔物も、殺す気満々の布陣であった。

何とか切り抜けられたが、そうで無ければ状況は変わっていただろう。


「そうだな

 巨人を引き連れた時は…

 操られていたとはいえ、心底人間を憎んでいる様な口調だった

 あれがアモンの本音だったんだろうな…」

「人間を憎むと同時に、人間を信じたかった

 思えば可哀想な奴じゃ…」

「そうだな」


「アモンの生い立ちは…

 聞いておるか?」

「いや」

「話しても良い事なのか?」

「そうじゃな

 お前等なら、話しておいた方が良いじゃろう」


ガンドノフはそう言うと、ギルバート達に座る様に促す。

ギルバートとアーネストは、手近な椅子を持って来て座る。

それからガンドノフは、お茶を淹れながら話し始めた。

エールを出さなかったのは、真面目な話をする為だろう。


「アモンは…

 獣人なのは知っておるな」

「ああ」

「何となく察していたよ」

「うむ

 それでもお前達は、変わらずあ奴と接してくれた

 それがあいつにとって、どれほど嬉しい事だったか…」

「え?」

「ギル

 前に話しただろう?

 獣人は差別されていたんだ」

「あ…」

「そうじゃ

 まさにそれが問題なのじゃ」


ガンドノフは、アモンから聞いた話を語り始める。

それは本人から聞いた話だけなので、所々抜けているところもある。

そして概要は、こういう話だった。


アモンが生まれたのは、帝国より東にある平原だった。

当時はそこに、多くの獣人達が集まっていた。

兎や猫、狐といった小型の獣の獣人だけでなく、熊などの大型の獣人も住んで居た。

しかし獣人達は、その性質は穏やかで、集落ごとに畑を開墾して生活をしていた。

獣の要素を取り入れてはいたが、根っ子は人間に近かったのだ。


そんな彼等を、突然の悲劇が襲った。

魔導王国が推し進める、奴隷狩りの魔の手が伸びて来たのだ。

最初は獣人達も、言葉による説得を行っていた。

しかし王国の兵士は、強力な魔道具を駆使して攻めて来た。

そして次々と虐殺と、奴隷として隷属を要求して来た。


「な!

 何て非道な…」

「当時の人間は、人間以外は亜人と蔑称し、次々と奴隷にしていったのじゃ

 そうして逆らう者は、皆殺しにして回ったんじゃ」

「胸糞悪いな」

「そういう感性を持つ、お前達はマシじゃな

 奴等はそんな考えを、一切持たなくなっておった」


ガンドノフは哀しそうに首を振る。

彼も長く生きたからこそ、その辺の事情をよく知っていたのだ。

そして話は続けられる。


アモンが産まれたのは、犬と狼の獣人の集落だった。

しかし狼の獣人は、そのほとんどが茶や灰色の毛並みである。

黒い毛並みの狼の獣人は、非常に珍しかった。

他にも白や白銀も珍しかったが、こちらは神聖視されていた。

黒は闇を連想して、不吉の象徴として扱われた。

それでアモンも、直接では無いが腫物の様に扱われていた。


そんなアモンに転機が訪れたのは、折しも王国が攻め込んで来た時だった。

熊の獣人が盾になったが、多くの犬や狼の獣人が犠牲になった。

その原因が、アモンである事にされたのだ。


彼は当時は、まだ10歳ほどの子供だった。

母親は必死に庇ったが、その彼女も仲間に殺されてしまう。

不吉の象徴である、忌子を産んだという罪を着せられて。

そして彼の父親も、彼を忌子として追放する事にする。

後にアモンは、それが父親の優しさだったと気付く。

しかし当時は、彼にはそんな優しも伝わらなかった。


同族から蔑まれ、忌子として排除される。

そして魔導王国に捕まってからは、獣として虐げられる日々が続いた。

いつしか彼は、周囲を全て憎む様になっていた。

折しもその姿の様に、暗く危険な思想に染まっていたのだ。


魔導王国では、危険な戦場での使い捨ての兵士として駆り出される。

獣人は元々、魔法があまり使えなかった。

その事が人間から、獣として扱われる原因でもあった。

その代わりに、獣人は魔力を力に変えれた。

それは身体の半分が、魔物の様に獣で構成されていたからだろう。

だからこそ、獣人は前線で捨て駒として使われていた。

アモンもそうして、多くの戦場に駆り出された。


アモンが20歳になった頃、再び転機が訪れる。

王国に反旗を翻す、人間の集団が現れたのだ。

アモンは戦場で、その集団と激しい戦いをする。

そうして激戦の末に、敵のリーダーの男に打ち負かされる。


「まさか?」

「そうじゃ

 それこそが後に、カイザートと名乗る少年じゃった」

「え?」

「少年?」


「ああ

 当時はまだ、カイザートは少年兵じゃった

 しかしその力は強く、王国の強化された兵士でも敵わんかった」

「少年で…」

「何を言っている

 ここにも居るだろう?」

「ん?」

「そうじゃ

 ギルバート

 お前によく似ているとは思わんか?」


ギルバートは意識していなかったが、まだ青年と言える年齢なのだ。

そしてギルバートが、兵士に敵わないと言われたのは少年であった頃の話だ。


「え?」

「カイザートもまた、少年時代から頭角をあらわしておった

 ちょうどお前と同じ様にな…」

「オレが…

 カイザートと同じ?」

「だろうな

 お前にも同じ血が…

 ガーディアンの血が流れているんだ」

「話を戻すか…」


カイザートに負けたアモンは、彼等の拠点に連れていかれる。

最初はアモンは、何度も抵抗して脱獄しようとした。

それは彼等も人間で、自分を殺そうとするかと思ったのだ。

しかしカイザートは、その度に彼を庇った。

彼が奴隷として、戦場に無理矢理駆り出されていると気付いたからだ。


それから半年ほど、彼はカイザートの元で説得される。

何度もカイザートに反攻しながらも、次第に彼の人柄に惹かれて行ったのだ。

彼の獣人も亜人も分け隔てなく、人として接する行動。

次第にその人柄に触れて、黒の猛獣は鳴りを潜めて行った。


そしてカイザートが17歳を迎えた時、遂に本格的な戦いが始まった。

アモンはカイザートに同行して、獣人の集落を回った。

そして同時に、東の遊牧民達も仲間に引き入れた。

彼等は常々、蛮族として蔑む王国を憎んでいた。

それでカイザートの提案を受け入れて、共戦協定を結んだのだ。


「カイザートがワシ等の元に来たのは、そんな時じゃった

 魔導王国の兵器を壊す為、そしてワシ等を解放する為じゃった」

「それで王国の兵士を…」

「それで、ここは解放されたのか?」

「カイザートはそのつもりじゃった

 しかし、彼等も一枚岩では無かった…」


ガンドノフはそう言って、哀しそうに頭を振る。


「彼等が去った後に、ここは再び人間に支配された

 そうして無理矢理、魔鉱石の武器を作らされた

 それがあの炉が出来た原因じゃ」

「な!

 それはカイザートには?」

「伝わらなかったんじゃろうな…

 アモンが来るまでは、人間はワシ等を奴隷として扱った」

「そうか

 確か女神の指示で…」

「ああ

 再び兵器が作られておると、ここの様子を見に来た

 しかしワシ等もな、それで解放されたと思っておった…」

「精霊か?」

「ああ

 それがマズかった

 あれでアモンとは意見が割れてな、以後は精霊様を守る為に戦った」

「でも、それは仕方が…」

「そうじゃな

 しかしアモンからすれば、魔導兵器は王国の破壊の象徴

 何としても破壊したかったんじゃろう」


アモンの半生と、ここの関りは分かった。

しかしまだ、カイザートとの話が途中だった。

ここを去った後、彼等がどうしていたのか?

それが知りたくて、ギルバートはガンドノフに話の続きを求める。


「なあ

 その後のカイザート達はどうなったんだ?

 オレ達が知っているのは、皇帝になった後の暗殺の話だけだ」

「そうだな

 アモンがどうやって女神の使徒になったのか…」

「そうじゃな

 そこも話しておこうかのう」


ガンドノフはそう言って、再び話の続きを始める。

まだまだ続きます。

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