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聖王伝  作者: 竜人
第十七章 土妖精の郷
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第556話

ギルバート達は、地下でムルムルと対峙する

彼は女神に操られて、死霊を従えて現れた

皇女の活躍もあって、何とかムルムルは女神の力から解放される

しかしそれは、ムルムルの消滅でもあった

魔石が壊れた事で、ムルムル自身の命も燃え尽きる

彼は三人に遺言を残して、その生涯を閉じる

ムルムルが燃え尽きた後に、ギルバート達は地下の奥に向かった

魔導王国が造り出した、魔導兵器を破壊する為だ


「こ、これは!」

「何だって!」

「ひっ!」


その異様な姿に、一同はその場に硬直する。

ガンドノフだけが、何とか前に進む事が出来た。

彼はこれが造られた時に、これの姿を見ていたからだ。

しかしそれでも、動き出さないか慎重に近付く。


「ふう…

 どうやら動きはしないな」

「動くって…

 本当にこれは動くのか?」

「ああ

 さすがに精霊力が流れていないと無理だがな」


ガンドノフはそう言いながら、それの表面を軽く叩く。

カンカンと金属音を立てて、それが金属で出来ている事を示す。

しかしそれは、金属とはいえ異質だった。


「何だ…

 これは?」

「これが魔導兵器なのか?」

「ああ

 竜神機と呼ばれていた

 元は古代兵器の、同じ龍神機を元に造られておる」

「古代の?」

「同じ竜神機だと?

 それでは過去にも…」

「ああ

 古代魔導王国で、兵器として造られておった

 それを魔導王国で、兵器として造ろうとしておった」


「という事は…

 昔にも同じ物が?」

「ああ

 遺跡から発掘された物があった

 それをワシ等にバラさせて、使える様に造り直させておったのじゃ」

「これが?

 それじゃあ古代魔導王国では?」

「ああ

 恐らく戦争に使われておった

 古代魔導王国の遺跡が残されておらぬのは、これの仕業じゃと考えられておる」

「これの?」

「となると、一晩で王都が海の底に沈んだという伝説も…」

「恐らくこいつの元になった、竜神機で破壊されたのじゃろう

 空中に浮遊しておったそうじゃからな」

「空中に?

 こんな物も作っているし…

 古代魔導王国って恐ろしいな」

「ああ

 よほど文明が発達していたのだろう」


それは金属で出来た、ドラゴンを模した彫像だった。

しかし問題は、それが動いて暴れ回るという事だろう。

どの様な力を秘めているのか、今では想像しか出来ない。

だが見た目からは、まさに以前に戦ったドラゴンより強そうだった。


「体高は5mか…」

「翼を広げれば、幅は10mを超えるな」

「動くのか?」

「ああ

 動く筈じゃ

 試しておらんし、試したいとも思わんがな」


幸いにもそれは、今まで動かした事は無かった。

完成はしていたが、動かす前にアモンが潜入した。

それで王国の兵士は倒されて、動かす事も無かった。

残された研究者達も、後にカイザートが捕縛して連れて行った。

それまでここは、危険だとして封鎖されていた。

だから完成した後も、この兵器はそのまま放置されていた。


「しかし…

 本当に動くのか?」

「動くだろうな

 魔力は感じられる」

「え?」

「そうじゃ

 精霊様から吸い上げた精霊力を、この機械で魔力に変換しておる

 その魔力を使って、この兵器は動くのじゃ」

「差し詰め…

 巨大な魔道具の集合体か」

「これが?」


ギルバートは懐疑的だったが、アーネストは動くと確信していた。

それはこの金属の塊が、魔道具と同じだと感じていたからだ。

アーネスト自身は、魔道具作りの才能は無い。

しかし父親の仕事を、幼いながら何度か目にしていた。

だからこの兵器が、魔道具だとは確信していた。


「これが魔道具として…

 魔力は精霊からか…」

「ああ

 膨大な魔力が必要でな、それを賄えるのは精霊様という考えじゃ」

「なるほど…

 するとこれは…

 役立たずだったんだな」

「へ?」

「むう…」


アーネストの言葉に、ガンドノフ苦々しく頷く。


「その通りじゃ…

 しかし、何故そうじゃと分かった?」

「いや、これって口や手から炎を出すんだよな?」

「むう!

 それも分かるのか?」

「ああ

 親父が魔道具作りだったからな

 何となくだが分かるぞ」

「それじゃあ何で…」


「簡単だ

 先ずはこいつは、ここから出せなかったな?」

「そうなのか?」

「でも、足は着いているわよね?」

「そうだが、どうやって出るんだ?」

「え?

 それは歩いて…」

「ギル

 ここから出口まで、どれぐらいの距離がある?」

「あ!」


そうなのだ、ここから出口までは、回廊と階段を使う必要がある。

秘密の研究をする為に、この工房は地下深くに造られた。

しかし地下深くなので、地上までは相当な距離がある。

そこをこの兵器を、移動させる必要があるのだ。


「しかし…

 地上に出さないと意味が無いんじゃ無いか?

 そもそもこんな地下で、こいつを使うのは危険だろう?」

「そうなんだよ

 だから使えないのさ」

「その通りじゃ

 ケーブルもこの通り、そこまでの長さを用意出来なかった」


ガンドノフはそう言って、金属製の管を手に取る。

それは巻いてあったが、そんなに長くは無かった。

伸ばしても恐らく、地上どころか階段までだろう。


「ケーブル?

 それが必要なのか?」

「ああ

 ここを通して魔力が供給される

 これが無ければ、こいつは動かない」

「え?

 この長さって…」

「ああ

 精々が階段までじゃ」

「なんでそんなに短い…」

「長くするとな、それだけ魔力が途中で消耗される

 それでこの長さなんじゃ」

「はあ…

 確かに使えないな」


「何を言う!

 それを補っても、こいつは強力な炎を吐き…」

「使えない理由がそれだ」

「え?」

「何じゃと?」


アーネストは残念そうに、竜の口に嵌った金属の筒を指差す。


「腕のはまだ…

 しかし口のは大きな筒だな?」

「それがどうした?」

「ガンドノフ

 腕のはあれを大きくした物だろう?」

「むう?

 確かにそうじゃが…」


アーネストがあれと言ったのは、足元に転がっている金属の筒だ。

それは上の階にも転がっていた、魔道具の筒だった。

魔力を流せば、任意の刻まれた魔法を発揮する。


「魔力の量の安定化と、出力である魔法が不安定だよな?」

「ぬう…」

「何だ?

 どういう事だ?」


「この筒はな、魔力を吸って魔法を発動する」


アーネストはそう言いながら、足元の筒を拾う。

しかし拾った瞬間、筒の先から炎が飛び出した。

アーネストが筒を手放すと、炎はすぐに消えていた。


「うわっ!

 危ないな」

「だろ?

 こいつは勝手に火を出してしまう

 そんな物が付いていたら?」

「あ…」


あれが同じ物なら、魔力を吸って火を吐き続ける。

しかも筒は、魔力が流れ続けると耐えられなくて爆発する。


「ガンドノフ

 あれも爆発するんだろう?」

「ふん!

 そこも考えてな、絶縁体を間に噛ましている

 起動させなければ、魔法は発動しない」

「しかし起動させれば、出っ放しになるんだろう?

 それでいずれは…」

「そうじゃな…」

「バン

 爆発してしまう」

「はあ?

 何だってそんな物を?」


「仕方が無かったんじゃ

 ワシ等も懸命に真似てみたが、肝心の素材が分からなんだ

 それで出来上がった魔道具は…」

「不完全な粗悪品だった」

「そうじゃ」


ガンドノフ達は、王国が持って来た魔道具の一部をバラした。

しかし製法も素材も分からず、当時集められる素材で色々試してみた。

結果はこの通りで、それでも数秒もつだけマシだった。

結果としてこの兵器は、不完全で危険な物となった。

アモンが来ていなければ、その後も研究されて完成していたかも知れない。

しかし結果として、研究はここで打ち切りとなっていた。


「それじゃあこいつは…」

「ああ

 動かすだけでも危険な代物だ」

「ああ

 残念ながら、そうなるな」


ガンドノフは悔しそうに首を振る。

内心は完成しなかった事を喜んではいるが、同時に自身の手で完成出来なかった事が悔しいのだ。

これは職人の意地で、モラルや兵器に対する感情とは別だった。

物作りをする者達の、一種のプライドみたいな物だろう。


「それじゃあこいつは…」

「ああ

 しかし破壊しておかないとな」

「何でだ?

 完成していないのなら…」

「ギル…

 お前は本当に馬鹿だなあ」

「何だと!」

「殿下

 完成はしてませんが、危険な事には変わりがありません

 魔力が流れたらと言っていたでしょう?」

「あ…」

「それにな

 誰かがこれを、見付けて完成させたら?」

「ぬう…」


皇女とアーネストが言う事も、尤もだった。

そのままでも、何かの拍子に暴発する恐れがある。

足元に転がっている魔道具が、良い例になるだろう。


それに、このまま放置するのも危険だ。

いつ、誰の目に見付かるか分からない。

その時にこれが、兵器として開発される恐れは十分にある。

どの道このまま、ここに放置は出来ないのだ。


「しかし…

 壊すってどうやって?」

「それなんだよな…」

「おい!

 何も考えが無いのか?」

「だからそれを考える為に、こうして現物を見に来たんだろうが」

「そうか…

 それで?

 何か方法は?」

「だから、今考えているんだろうが!

 良いからお前は、少し黙っていろ!」

「何だよ

 そんなに怒らなくても…」

「何!」


アーネストが不機嫌なのを見て、ギルバートは肩を竦めて隅に移動する。

アーネストはガンドノフと、兵器の周りをうろうろと見回す。

どうにかしてこの兵器を、破壊する方法を探っているのだ。

皇女も何か無いかと、奥の机の周りを調べる。


「ここが動力なんだろ?」

「ああ

 魔獣の筋肉を加工してな、それに魔力を流して…」

「あちゃあ…

 腐って崩れてるぞ」

「何?

 本当じゃ」

「加工したと言っても肉だからな

 いずれは腐敗するだろう」

「ふうむ…

 そういうのも含めて、古代の技術は不明じゃのう…」


二人は脚の隙間から、身体を動かす構造を調べる。

幸い筋肉が腐敗して、その周囲の金属も腐食させていた。

それで金属板も剥がせて、中の構造を確認出来る。

しかしそこを見ても、破壊するヒントになる様な物は無かった。


「はあ…

 料理のレシピや金属の加工指南

 どれも役に立ちそうに無いわね」

「ん?

 一応回収しておいてもらえるか?

 破壊には使えなくても、その他で使えるかも知れない」

「分かったわ

 しかし…肝心の兵器の記録が無いわね」

「ほとんど持ち出されたのじゃろう

 そもそもそもこに、それだけの資料が残っておるのも奇跡じゃ」

「どうして?」


「ここが封鎖されてから、どれほどの月日が経ったか…」

「そうだな

 カイザート皇帝の治世が始まる前だ

 少なく見積もっても100年以上は経っている」

「あ…

 そうか、羊皮紙でも…」

「ああ

 保存状態が悪ければ…」

「上の兵士達の死体も、羊皮紙を持っていれば一緒に腐敗して…」

「そうか、資料も消えてしまったのか」

「そうじゃ

 後はワシの頭の中に残っておるだけじゃ

 それも不十分な内容じゃ」


ガンドノフが主になって、この兵器を開発していれば良かった。

しかしガンドノフも、装甲や動力のケーブルの作成しか携わっていない。

それで兵器を壊したくても、壊す方法が分からないのだ。

ガンドノフに出来るのは、精々ケーブルの構造を話すぐらいだ。


「ガンドノフ

 あんたがしていた仕事は?」

「こいつの装甲の開発と、このケーブルの作成じゃな」

「ケーブルの素材は?」

「表面は魔鉱石の鋼板を、薄く板状に巻き付けておる」

「これか…」

カンカン!


装甲は薄く、やろうと思えば魔鉱石の剣でも切れる。

問題はその中身の方だ。


「この中はどうなっている?」

「魔獣の体液を加工した樹脂と、それに巻かれた魔鉱石の線じゃな」

「魔鉱石の線?

 それはどういう事なんだ?」

「その魔鉱石の線で、魔力を伝達するんじゃ

 ちょうど魔法陣の文字や円陣と同じ意味合いじゃな」

「なるほど…

 だから無理矢理切ると…」

「ああ

 中から精霊力や魔力が漏れ出す

 その漏れた魔力がどう作用するか…」

「分からないから、迂闊に切れないのか」

「そうじゃ」

「え?

 切っちゃ駄目なのか?」

「お前なあ…

 話をちゃんと聞け!」


ケーブルを手にして、ギルバートは試しに切ろうとしていた。

アーネストは頭を抱えて、ギルバートに食って掛かる。


「迂闊な事はするな!

 何が起こるか分からんのだぞ!」

「あ…」

「え?」

「はあ?」


アーネストがギルバートを叱っていると、不意に皇女が声を上げる。


「取れちゃった?」

「ええ!」

「おい!」

「何をやっとるんじゃ!」


皇女の方を向くと、そこには抜けたケーブルを持った、皇女の姿があった。

ケーブルからは何も出ておらず、すぐにどうこうは無さそうだ。

しかしそのケーブルは、壁に沿って上に向かって伸びている。


「おい!

 これって…」

「ああ

 しかしそれでは?」


皇女がケーブルを抜いたのは、大きな金属の箱の片側だ。

その反対側からは、兵器に向かってケーブルが伸びている。

しかし幸いな事に、ケーブルが抜けても兵器には影響は無かった。


「問題…無いのか?」

「分からん

 しかしどう見ても…」

「精霊の方に向かっているな」


方向からすれば、それは精霊が囚われている場所に向かっている。

これが精霊に繋がっていた物なら、今頃は精霊は解放されている。

状況は分からないが、一行は精霊の元へ向かう事にした。

精霊が解放されたのなら、問題の一つが解決した事になる。

後は兵器を、何とか破壊するだけだ。


ギルバート達が上に戻ると、そこは騒ぎになっていた。

それは死霊が暴れているのでは無く、精霊の元へ向かっている様だ。


「精霊様が解放されたぞ」

「やった!

 遂にこの時が…」

「ああ…

 解放されたんですね」


ドワーフ達はそう声を上げながら、奥の精霊が居る場所に向かっていた。


「どうやら…」

「ああ

 皇女、お手柄だぞ」

「ええ」


ギルバート達も、ドワーフ達の後を追って駆け出す。

精霊が解放された事を、確認する為に。

まだまだ続きます。

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