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聖王伝  作者: 竜人
第十七章 土妖精の郷
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第549話

アーネストと皇女は、ガンドノフに連れられて洞窟の奥に向かっていた

洞窟の奥には、頑丈な扉が作られている

その中にはさらに、地下の奥深くに繋がっている

そこには死霊と、危険な魔道具が置かれている

ガンドノフは扉の、厳重な鍵を外す

扉は重い音を立てて、ゆっくりと開いた

その先には暗い回廊が続き、左右には部屋が続いていた

その部屋にはそれぞれ、昔の魔道具や武器が仕舞われていた


「気を付けてろ

 ここにある魔道具はどれも危険だ」

「危険?

 そんなに危険な物があるのか?」

「ああ

 どんな物があるか分からん、迂闊に触るなよ」


ガンドノフは警告をするが、ドワーフは元々好奇心が強い。

しかも魔道具となると、余計に好奇心が引かれてしまう。


「どれどれ?

 これは何じゃ?」

「あ!

 おい!」

「ポッチとな」

シュゴオオオオ!


「うわあああ」

「熱い!」

「何やってんだ!」


魔道具からは勢い良く、炎が噴き出していた。

それはアーネストの前髪を焼き、皇女も危うく火傷するところだった。


「馬鹿もん!

 だからあれほど触るなと…」

カチッ!

ドスン!


慌ててガンドノフが魔道具を取り上げるが、その際に足元の何かを踏み抜く。

その瞬間に頭上から、重たい石が落ちて来る。

みなは慌てて、その石を避ける。


「危ないな…」

「ふう…

 だから言っただろ」

「いや、そんな罠まであるとは…」


アーネストは改めて、周囲の壁や床を見てみる。

暗い回廊なので、どこに罠があるのか分からない。

アーネストは明かりを灯す為に、手近な魔道具のランタンに近付く。


「あ!

 おい!」

「ん?」

「だから危険だと…」

ブン!

ガタン!

シュババババ!


ランタンが点いた瞬間、今度は壁の一部が音を立てて開く。

そして壁の穴から、小型の矢が数本射出される。

その矢には毒が塗ってあり、紫にギラついた煌めきが走り抜ける。


「うおっ!」

「危ないな」

「もう!

 何なのよ、ここは」


アーネストは用心して、次のランタンに魔力を流す。

全てのランタンが罠では無いので、中には何事も起こらない物もある。

しかしそういったランタンの側には、別な罠が仕掛けてあった。


「これは…」

「全く…

 そこら中に罠が配置してあるな」

「しかも罠以外に魔道具も危険じゃ

 くれぐれも気を付けてな」

「ああ」


部屋に置かれた魔道具も気になるが、一番危険なのは足元に転がっている魔道具だ。

何の効果があるか分からない魔道具が、無造作に転がっている。

何かの魔石を組み込んだ杖や、魔力を放出する筒、そういった物が転がっているのだ。

それが何かの拍子に、発動しては行く手を阻む。


「ぬおおお

 今度は吹雪か」

「さ、寒い」

「くそっ!」


発動する度に、魔道具を拾っては効果を止める。

そうして少しずつ進んで、回廊の中ほどまで来た。

ここで周囲の空気が、不意に重たく冷たく感じる。

それは少し先の部屋から、ゆっくりと姿を現した。


「いよいよだな…」

「ああ

 死霊が現れおった

 準備は良いな?」

「はい」

「こっちも良いぞ」


アーネストは呪文を唱えて、杖に魔力を込める。

皇女も剣を引き抜くと、魔石に魔力を込め始めた。


フシュウウ…

「死霊の…

 ゴーストか」

「あれがゴースト?」

「ああ

 負の魔力で身体を構成している

 普通の武器では当たらないぞ」

「任せて

 浄化の光(ホーリー・ライト)

ブウウン!


皇女は神聖魔法の、聖なる光を剣に纏わせる。

細剣は輝きを放ち、近付いて来ていた死霊は後退る。


グガアア…

「はあっ!」

シュバッ!


皇女は剣を構えると、素早く魔物の懐に迫る。

そのまま触られては、生命力を吸収されてしまう。

そうなる前に、素早く細剣を魔物の身体に突き立てる。


ザシュッ!

ゴアアア…


魔物は苦悶の表情を浮かべて、細剣の刺さった胸を押さえる。

そうして刺さった場所から、淡い光が漏れて来る。

魔物はそのまま、浄化の光に焼かれて消えて行く。

皇女はそのまま、次々と迫る魔物に突き刺して行く。


「はああああ

 せりゃああ」

ザシュッ!

シュバッ!


ゴアアア…

オアオオオ…


死霊は次々と刺し貫かれて、光を撒きながら消えて行く。

それは苦悶の表情から、消え去る時には穏やかな表情に変わっていた。

浄化の光に焼かれて、負の魔力から解放されているのだ。

そうして皇女の攻撃を躱しながら、数体がアーネスト達にも向かって来た。


「掛かって来い!

 ホーリー・ライト」

ジュワアアア…!

ウゴアアア…


アーネストの杖から放たれた、白い光が魔物を焼き払う。

こちらも浄化の光なので、消え去る時に死霊は穏やかな表情を浮かべていた。

まるで悪い夢から解放されて、清浄な世界に還って行く様だった。


「ふう…

 何とか効いているな」

「ええ

 やはり死霊は、神聖魔法には弱いわね」

「よし

 その調子じゃ」


皇女とアーネストが死霊を祓い、その存在を浄化して行く。

死霊が消え去った事で、周囲に立ち込めていた重苦しい空気も祓われる。

そうして不気味な寒気も収まり、ランタンの灯りが回廊を照らしていた。


「一先ずは終わったか?」

「そうじゃな

 周囲にはもう居らんじゃろう」

「何とかなりましたね」


ガンドノフは念の為に、死霊が出て来た部屋を開ける。

そこには骨も風化して、鎧だけが転がっていた。

鎧の大きさから、恐らく死んでいたのは人間だと思われる。


「これは…」

「恐らくは魔導王国の兵士じゃな」

「ここで殺されたんだな…」


魔導王国の兵士は、ここで兵器の管理を行っていた。

それはドワーフを奴隷化して、無理矢理魔道具を生産させていた。

それが原因で、ここは女神が送った魔王アモンによって攻められた。

それで魔導王国の兵士は、ここで殺されてしまっていた。


「恐らくワシ等を解放する際に、黒の猛獣が殺したんじゃろうな」

「アモンがか?」

「そうじゃな

 他にはここでは…

 いや、カイザートも潜入しておるか」

「皇帝か…

 しかし皇帝は…」

「ああ

 ここの危険性を重く見て、封印したんじゃ

 あの扉も、その時に造られた物じゃ」


アモンが魔導王国の兵士を殺し、それで死霊が溢れてしまった。

それでカイザートが来た時には、ここには死霊が歩き回っていた。

カイザートはそれを危険と判断して、そのまま扉で封印したのだ。

その際に魔導兵器は、そのまま放置される事になった。


「それじゃあ魔導兵器というのは?」

「ここからさらに下に下りた場所になる

 しかしそこまでには…」

「そうか

 死霊や危険な魔道具が転がっているから…」

「ああ

 罠に関しては、ここに侵入出来なくさせる物じゃ

 しかし魔道具は…」


「そもそも

 何でこんな危険な物が転がっているんだ?」

「それは恐らく…」


ガンドノフは転がっている、兵士の鎧を見詰める。


「恐らくじゃが、こいつ等が戦う為に運んでおったんじゃろう

 ほれ、そこに…」


兵士の鎧の近くには、魔道具を入れていたと思われる箱が転がっていた。

彼等がアモンと戦おうとして、魔道具をここに運んでいたのだろう。

しかし結局は、彼等はアモンにあっさりと倒されてしまった。

その際に魔道具が、この辺りに散らばったのだろう。


「それじゃあアモンに殺されて?」

「だと思うな

 兵器の類は、地下の工場で作っておった筈じゃ

 それがこんな場所に、転がっている理由とすれば…」

「そうだな

 それが妥当か…」

「それじゃあこの魔道具は…」

「ああ

 元は兵器として開発された物じゃ」


言われてみれば、確かに不完全だが、これらの魔道具は武器にもなる。

そして魔導王国は、ここで兵器を作らせていた。

そう考えれば、これらが元は兵器として作られていたと考えるのが自然だろう。

実際に魔力が流れて、炎や吹雪が放出されて危険であった。


「兵器としてか…

 魔石を使って魔法を行使する…

 そんなところかな?」

「ああ

 魔石と魔法陣を組み合わせてのう

 魔力を流せば魔法を発動出来る

 しかしなあ…」

「ん?

 何か問題でも?」

「いや

 お前も見たじゃろう?

 魔力が流れると、勝手に発動する…」

「ああ

 そういう事か」


作ったのは良いのだが、制御が出来ていないのだ。

先の様子を見る限り、触れた者の魔力を吸収して発動していた。

能動的に発動するのでは無く、勝手に発動してしまう。

それは兵器としては、欠陥があるとしか言い様が無かった。


魔道具は本来ならば、魔力を通して何かを行う道具だ。

それは兵器としても、同様であるべきだった。

しかし魔導王国は、兵器の開発で失敗をしていた。

魔道具の魔力を伝達する仕組みを、兵器では上手く扱えていなかった。

これは攻撃魔法が、直接魔力を吸収して発動するという事が原因であった。

その為にどうしても、魔力が常時流されて発動してしまうのだ。


「どうしてこんな事に?」

「さあな?

 しかし魔法が垂れ流しになる以上、魔力が少ない者では持つだけで魔力枯渇になる危険性がある

 そして魔道具も、常に攻撃魔法が発動した状態になってしまう」

「そんな…」

「それは危険では?」

「ああ

 だから魔導兵器も、同じ理由で封印されている

 強引に魔力を流さない様に、魔法陣を削って封じておるのじゃ」

「それでは…」

「ああ

 魔法陣が何かの拍子に発動すれば、この辺りは灰になる可能性がある」

「そんな危険な物なのか?」

「そうじゃ

 じゃからカイザートは、ここを封印する事にしたんじゃ

 誰も兵器に近付けん様にな」


転がっている魔道具も危険だが、兵器はもっと危険な物だった。


「それではやはり…」

「しかしな

 無理に破壊しようものなら…」

「精霊に影響があるのか?」

「ああ

 あの管を見たじゃろう?

 あれが兵器まで伸びており、精霊力を魔力として吸収しておる」

「それじゃあぶった切れば」

「無理じゃ!

 あれは魔法鉱石を使って、頑丈に作られておる

 それに下手に切れば、そこから魔力が漏れ出して…」

「え?」


魔力が漏れ出すという事は、そこら辺に転がっている兵器にも魔力が流れる。

それに制御が出来ないので、精霊の力を一気に吸出し兼ねない。

そうなってしまえば、精霊はその存在自体を失い兼ねない。

それがガンドノフが、兵器を壊したがらない理由だった。


「くそっ!

 それじゃあどうやって!」

「それを考える為に、再びあの場所に向かうんじゃ

 何か方法が無いか、考える為にな」

「ううむ…

 しかし精霊力を吸い出すって?

 一体どうやって?」

「実はワシも、それはよく分かっておらん

 当時のミッドガルドの研究者が生き残っておれば…

 或いは何か考えが聞けたかも知れん

 しかし…」

「みんな死んでいるのか?」

「ああ

 あの馬鹿が皆殺しにしおって…」


アモンが攻め込んだ時には、兵器はまだ未完成だった。

しかしアモンと戦っている間に、研究者は無理矢理起動しようとした。

結果は周囲の魔力も吸って、研究者達は魔力枯渇で死んでしまった。

それで兵器は、一度だけ動いて止まったそうだ。


「動いた?

 実際に使われたのか?」

「ああ

 雷が大気を切り裂き、地下は炎に包まれた

 それで生き残っていた者達も、みな死んでしまった

 兵器はそれで、稼働を止める事になった」

「なるほど

 地下に居た者達の、魔力を吸って動いたんだな

 となると…」

「不完全な出来なんじゃが…

 しかし危険で近寄れなんだ」


ガンドノフは、当時は兵器の近くに居なかった。

それで兵器の暴走には、巻き込まれずに済んでいた。

しかし同時に、兵器がどの様な状態かは分からないのだ。

だから封印に関しても、入れない様にするしか無かった。

迂闊に近付けば、何が起こるか分からなかったからだ。


「それじゃあ近付いたら…」

「ああ

 危険かも知れん」

「おい!」

「しかし…

 どうにかしなければならんじゃろう?

 ワシは魔法に関しては、素人に近いんじゃ」

「それでオレが頼りと?」

「そういう事じゃ

 お前が何とか出来なければ、後はそのまま封じるしか無かろう?」

「それはそうだが…」


ドワーフ達は、魔石や魔法陣を組み合わせて魔道具を作る事は出来る。

しかし肝心の魔法陣に関しては、魔導王国の者にしか分からなかった。

だから魔道具の壊し方も、詳しくは分かっていないのだ。


「そういう訳でな

 このまま進むぞ」

「はあ…

 大丈夫かな…」

「そうですね

 でも、話を聞く限りはいずれは破壊しなければ…」

「ここが危ないか」

「ええ

 私達もですが、どこまでその兵器で破壊されるのか…」

「そうだよな

 この地下だけでは済まない可能性もあるか」


魔力災害で、魔の森や死の沼が生まれた事例もある。

それを考えれば、件の魔導兵器の破壊がどこまで広がるのか分からない。

もしかしたら、この地下だけでは済まない可能性もあるのだ。

いや、兵器などと大層な名前を付けているのだ、恐らくは広範囲を破壊するだろう。


「女神が恐れたぐらいですもの」

「そうだな

 国の一つや二つは破壊するかも知れないか」

「ああ

 魔導王国では、実際にそんな兵器の開発をしておった」

「え?

 ここでじゃなくて?」

「ああ

 ここの兵器もじゃが、他でも一つの街を一晩で焼き尽くしたという話もある

 ワシが聞いた限りでも、これもそれと同じぐらい危険な筈じゃ」

「街を一晩で?」

「それって女神がやった…」

「ああ

 帝都を砂に埋めていたが、あれぐらいの破壊力があるって事だな」

「何じゃと?

 女神がどうしたと?」

「いや…」

「私の故郷、帝都があっという間に砂の底に沈んだわ」

「何じゃと!

 女神はそんな事も出来るのか?

 それじゃあこの兵器程度では…」

「いや、そうでも無いかもな?

 同じ街を破壊するにしても、砂に埋めるのと焼き尽くすのとでは違うだろう

 女神はこの兵器を、恐れていると思う」

「それは何でじゃ?」

「そうで無ければ、ここを襲う必要は無かっただろう?」

「ううむ

 それもそうじゃな…」


女神が兵器の破壊を目的に、ここを襲撃したとは限らない。

しかし少なくとも、警戒はしているとは思われる。

そう考えれば、兵器を破壊した方が良いのは確かだった。

アーネスト達は、そのまま地下に向かって進むのであった。

まだまだ続きます。

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