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聖王伝  作者: 竜人
第十六章 竜の牙
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第528話

ギルバート達が魔王城で訓練を始めてから、一月近くが経っていた

騎兵達の動きも洗練されて、ハイランドオーク達に何とか勝てる様になっていた

アーネストも体力が着いて、何とか息を切らさずに山道を登っていた

皇女もその後に続き、何とか山道を登っていた

ギルバートはアモンとの打ち合いを終わって、休憩をしていた

ここ数日で、ギルバートは獣人化したアモンとも戦える様になっていた

しかしさすがに魔王で、獣人化したアモンには勝てなかった

何とか動きには着いて来れたが、アモンの攻撃を防ぐのがやっとだった


「ふう…」

「どうした?」

「いや、さすがは魔王だ

 防ぐのがやっとだよ」

「何を言っている

 ワシは武闘派の魔王じゃぞ?

 ベヘモットなら追い着く事も出来ん」

「え?

 そうなのか?」


「ああ

 そもそもあ奴は魔法特化型じゃ

 あの小僧ならいい勝負を出来るじゃろう」

「え?

 アーネストが?」

「ああ

 小僧は最近、さらに魔力の練り方が上手くなっておる

 このまま行けば、ベヘモットに引けを取らんじゃろう」

「そうなんだ…」


「それで?

 そろそろ出発するのか?」

「ああ

 さすがに1月近く時間を費やした

 そろそろ向かうべきだろう」

「そうか…」


ギルバートは女神の待つ神殿に、いよいよ向かうつもりだった。


「女神は強力じゃぞ?」

「ああ

 よく分かっている」


「ギルバートよ

 お前はドラゴンと戦ったそうじゃな?」

「ドラゴン?

 ああ、あの大きな蜥蜴か?」

「蜥蜴って…」


「ドラゴンはどのぐらいの強さか知っておるのか?」

「え?

 具体的な強さは…

 しかし巨人よりは強かったぞ」

「そうじゃな

 巨人がランクD相当で、ドラゴンは本来はランクCじゃ」

「ランクC?

 あれでか?」

「馬鹿者

 聞けば不完全なドラゴンじゃったそうじゃないか

 それならばもっと下のランクD相当じゃな?」

「待て待て

 あれがランクDだと言うのか?

 それじゃあランクCってのは…」

「ん?」


「いやいや、ドラゴンって大きい蜥蜴だが、強かったぞ」

「そりゃそうじゃろう

 1体で国を滅ぼすぐらいじゃぞ?」

「国を滅ぼす?

 いや、確かに強かったが…」


「ドラゴンはお前達の基準では、魔獣になるな」

「ああ」

「あの膂力もさることながら、厄介なのが炎や吹雪のブレスじゃ」

「ブレス?

 あの炎を吐く攻撃か?」

「ああ

 強烈な炎は、並みの人間では焼き殺されるじゃろう」

「そうだな…」


ギルバートはエルリックが、危うく焼き殺されそうになったのを見ていた。

セリアやアーネストが防いでいたが、あれをまともに食らったら無事では済まないだろう。

それほどドラゴンが吐く炎は、人間には危険な物だった。


「しかしあれでランクCって…

 その上はどんな化け物なんだ?」

「そうじゃな…

 ただのドラゴンではない、上位のドラゴンも存在する」

「上位のドラゴン?

 それって…」

「ああ

 魔物や魔獣の上位種と同じで、強力な個体になる

 それがランクBの代表じゃな

 他にはキマイラやヒドラ等が居る」

「キマイラ?

 ヒドラ?」


「キマイラは合成魔獣の事でな

 複数の強力な魔獣を組み合わせた物になる

 しかし危険なので、実戦投入された事は無い」

「危険って…」

「咆哮やブレス

 それに空を飛ぶ事も出来る」

「空を飛ぶって…」


ギルバートは宙を舞い、炎を吐いたり咆哮を上げる姿を想像する。

しかも複数の魔物を、合成しているというのだ。

その姿はギルバートには、想像出来ない物だった。


「ヒドラってのは?」

「ヒドラは水棲の魔獣で、首が複数ある蛇の様な魔獣じゃ

 これも危険なので、使われた事は無い」

「そうか

 どっちも使われていないんだな」

「ああ

 危険度からランクBとなっておるが、実物を見た人間は居ないじゃろう」


魔獣危険度は分かったが、しかしまだランクBだった。


「それより上の魔物は?」

「ああ

 伝承には出て来るが、使われた事は無いじゃろうな

 ワシも話に聞いただけじゃ」

「どんな魔物が…」

「いや、聞いただけじゃと言ったじゃろう」

「そうか…」


ギルバートは興味があったが、アモンは話そうとはしなかった。


「恐らく会う事も無い

 そんな物は気にする必要は無いじゃろう」

「それもそうか…」


アモンにそう言われて、ギルバートは一先ず安心する。

そんな化け物が現れては、ギルバートでも敵わないだろう。

先のドラゴンも、不完全だったから何とか勝てたのだ。

まともに戦ったのでは、ギルバートでもヤバかっただろう。


「それで?

 ここまで頑張ったお前には、褒美をやらんとな」

「へ?」

「女神の神殿には、ワシも途中まで同行する」

「え?

 お前も来てくれるのか?」

「当たり前じゃ

 いくらお前が強くなったと言っても、まだまだ危険じゃ

 さすがに女神様とは戦えんが、一緒に着いて行ってやる」

「それは助かるが…

 良いのか?」

「ああ

 ワシから言っておるのじゃ」


アモンはそう言って、決めポーズをする。

その暑苦しい姿を見て、ギルバートは顔を引き攣らせる。


「しかし…

 ここは大丈夫なのか?」

「ああ

 幾らかハイランドオーク達を残して行く

 あれも鍛えんといかんからな」

「いいのか?」

「ああ

 このままでは、オーガでも厳しいじゃろう

 せめてオーガを倒せるぐらいには、鍛えてやろうと思う」

「そうか、助かる」


「神殿までハイランドオーク達も来るのか?」

「ああ

 騎兵だけでは危険じゃろう

 あいつ等が居れば、少しは戦える筈じゃ」

「何から何まで助かる」

「ふっ

 良いって事じゃ

 ワシもお前等には迷惑を掛けたからな」


アモンは嘗て、巨人を率いて王都を襲撃している。

それで国王は亡くなり、王都の住民も多くが亡くなっていた。

アモンはその事に責任を感じて、こうして協力を申し出ているのだ。


「ワシのせいで、お前等には随分と迷惑を掛けた」

「何を言っているんだ

 あれは女神が操っていたんだろう?

 お前のせいじゃ無いさ」

「そうは言ってもな…」


「正直、女神の神託を聞くまでは、お前を恨んでいたさ

 しかしつまるところ、お前も被害者なんだ」

「そうは言うが…

 ワシはお前の父を…」

「言うな!

 私も考えない様にしてるんだ

 訓練の時だって、何度カッとなりかけたか…」

「…」


「それよりも

 出発する為の準備をしないとな」

「そうじゃな

 食料はワシが出そう」

「助かる

 森で探していると言っても、この季節は少ないからな」

「ああ」


そろそろ冬を越しているが、まだまだ森の中の食料は少なかった。

王都近郊ほどでは無いが、ここも冬の寒さの影響があるのだ。


「武器やポーションの余裕はある」

「そうか」

「途中までは馬車も行けるかな?」

「ううむ

 しかし険しい山脈があるぞ」

「竜の背骨山脈みたいにか?」

「ああ

 あそこも恐らく、古代竜の亡骸じゃろう」

「え?

 他にも古代竜の亡骸があるのか?」

「全部で何体居たのか、ワシも知らない

 しかし恐らく、あそこも古代竜の亡骸じゃと思う」

「そうか…

 険しい山があるのか」


これから向かう先が、どういう場所なのかギルバートは知らない。

帝国から持ち寄られた地図も、そこまでは記されていなかった。

地図に記されていたのは、この竜の瞳の周辺と帝国の周囲だけであった。

これから向かう場所は、そこからさらに北に向った場所になる。

さすがに帝国の地図でも、そこは空白になっていた。

ただ未開の荒野があると、地図には記されていた。


「荒野としか書かれていなかったが…

 薪や食料は補充出来るのか?」

「ああ

 荒野では無く、森や平原もあるぞ」

「え?

 じゃあ何で、荒野なんて書かれていたんだろう?」

「さあな

 大方見に行った者が、荒野だけ見て帰ったんじゃないのか?」

「ううむ

 確かにそれなら説明が付くか…」


帝国から北に向って、荒野に踏み込んでみた。

しかし思ったより苦しい旅で、荒野を抜ける事無く帰還した。

そう考えるのなら、地図が不完全なのも納得が行く。


「資源や領土を求めて、北に向ったのかな?」

「さあな

 しかしいずれにせよ、無謀な旅をしたのだろう」

「そうだな…」


ほとんどが荒野とだけ書かれている。

ここに森や平原があるとは、この人物は思わなかったのだろう。


「そこに向かうに当たって、注意すべき事は?」

「そうじゃな

 毒消しのポーションはあるか?」

「毒消し?

 そんな便利な物は…」

「それならば、取り敢えずはワシが用意しておこう」

「いや、そこまでしてもらうのは…」

「何じゃ?

 要らぬのか?」

「いや、必要だけど…

 作り方を教えてもらえば」

「そうか?

 それならば…あの小僧に教えるか」

「アーネストにか?」

「ああ

 魔法のポーションは、作成するのに魔力が必要じゃ」

「魔力が?」

「ああ」


アモンは立ち上がると、アーネストの元へ向かった。


「小僧」

「小僧じゃない!

 アーネストだって言ってるだろ」


アーネストは不機嫌そうに、アモンを睨みながら言った。

いつまで経っても、アモンはアーネストを子供扱いしていた。

しかしそれは馬鹿にしている訳では無く、親しみを込めて呼んでいた。

だが、呼ばれるアーネストは不機嫌になっていた。


「一体何の用だ」

「ああ

 ギルバートに頼まれてな

 お前にポーションづくりを教えようと思う」

「ポーション?」


「ああ

 これから行く場所には、毒消しのポーションが必要になる」

「解毒という事か?」

「ああ

 特殊な魔法のポーションでな、軽度な毒なら打ち消せる」

「そんな便利な物が?」

「ああ

 しかし薬草だけでは無く、調合の際に魔力を込める必要がある」

「なるほど

 魔力で薬草の効能を上げて、毒を打ち消すわけか」

「そういう事じゃ」


アモンは懐をまさぐって、魔法のポーションを何本か取り出す。

それから薬草も取り出すと、どういう調合が必要か説明する。


「こっちの薬草が…

 所謂解毒の薬草だ」

「それって傷に貼り付ける…」

「ああ

 身体を腐敗させる、毒を打ち消す薬草じゃ」


それは傷口に貼って、化膿を抑える為の薬草だった。

これを貼り付ける事で、傷口が化膿する事が抑えられる。

しかしまさか、この薬草に解毒の効能があるとは思わなかった。


「こっちは腹下しの…

 これは解熱の薬草だな」

「ああ

 予備は持っておるか?」

「ああ

 いつも持ち歩く様にしている」


アーネストはそう言って、ポーチから薬草の束を出す。


「これは一部だ

 全部出すと仕舞うのが大変だからな」

「ああ

 十分だ

 着いて来い」


アモンはそう言うと、アーネストを連れて城の中に入る。


「わ、私も行って良いか?」

「ん?」

「皇女

 薬草をポーションにするんだぞ?」

「ええ

 私は聖女として、みなの傷を手当てする役目がある

 それにはそのポーションも役に立つだろう」

「良いのか?

 魔王に教わるんだぞ?」

「ええ

 私は反省したんだ

 今は必要なら、魔物にも頭を下げるつもりだ」

「ふん

 勝手にしろ」


そうは言っているが、まだまだ魔物だ人間だと線引きをしている。

前よりマシになったが、まだ差別意識は完全に無くなっていなかった。


「先ずはお前達には、魔力を使ったポーション作りを教える」

「魔力を使った?」

「ああ

 魔力を込める事で、薬草の効能を高める

 その為には先ず、どうやって魔力を込めるかが重要になる」

「へえ…

 オレも試した事はあるが…

 中々難しいぞ」

「ほう

 お前は作れるのか?」

「ああ

 ただし傷を癒すポーションだけだ

 他は分からない」

「そうか

 ならば先ずはワシが実演する

 お前達はそれを真似して、実際に作ってみろ」

「分かった」

「やってみせるわ」


アモンは薬草を取り出すと、先ずは乳鉢でそれを擂り潰す。


「ここまでは普通のポーションを作るのと一緒だ

 しかしこれからが重要だ」


アモンはそう言って、乳鉢に水を加える。

それから乳鉢に向かって、魔力を放出する。


「これは…」

「凄い魔力ね

 でも、どうやって?」

「簡単な事じゃ

 魔法を使う時の感覚で、魔力を掌に集めろ」

「集めろって、どうやって?」

「意識を集中して、掌に力を集めるんだ」

「え?」


アーネストは肩を竦めると、皇女の手を取って魔力を流す。


「今、魔力が流れているのは分かるか?」

「え、ええ…」

「それを今度は、掌から押し出してみろ」

「こ、こうかしら?」

「そう、その調子だ」


アーネストに教わって、皇女は掌から魔力を放出する。

しかし基礎魔力が少ないので、すぐに魔力が少なくなって苦戦する。


「う…」

「無理するな

 ゆっくりと…」

「こ、こうね…」

「ふむ

 初めてにしては上出来じゃ

 慣れれば簡単になるし、魔力量を増やす訓練にもなる」


それから二人は、アモンから渡された薬草を擂り潰す。

それから水を加えて、魔力を放出しながらゆっくりと混ぜる。


「難しいわ」

「すぐに出来るもんじゃ無い

 何度もやって慣れるしかない」

「そうね

 ふう…」


皇女は魔力が切れて、ふらふらと座り込む。


「ふむ

 まだまだ魔力が少ないな

 魔力切れになる事が、魔力量を増やす近道じゃ」

「そうなのね

 頑張るしか…」

「無理はするな

 今は休んで、魔力を回復しろ」

「くっ

 口惜しいわ

 私は魔力があると思ったのに…」

「まあ、普通の人よりはあるな

 しかしポーションを作るには、ちょっと不足しているかな」


それから二人は、アモンに教わりながらポーションを作った。

それが訓練にも繋がるので、皇女は額に汗して頑張っていた。

その甲斐あって、1本だが魔法のポーションが完成する。


「で、出来た」

「ああ

 まだまだ魔力が安定していないから、成分に斑があるな

 しかしそれでも、十分に出来上がったな」

「そうじゃな

 これを何本も作って、数を用意するのじゃぞ」

「ああ、任せとけ

 オレは魔力量は多いからな」

「私は無理

 ゆっくりと作るわ」


二人はそうして、ポーション作りを続けた。

まだまだ続きます。

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