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聖王伝  作者: 竜人
第十六章 竜の牙
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第515話

王都は魔王討伐に向けて、物々しい状況になっていた

兵士は訓練に打ち込み、職人達は新しい武具を作っていた

竜の顎山脈にある、魔王の城に攻め込む準備をする為だ

竜の瞳城に住む、魔王アモンを討伐する為に

魔王アモンは、竜の顎山脈の竜の瞳という場所に住んでいる

そこは古代竜の眼窩で、そこに魔王の城が建っている

竜の瞳城という魔王の城に向けて、ギルバート達は討伐に向かう事になる

魔王が狂暴化して、そこで待ち構えているからだ


「アーネスト

 資材の用意はどうだ?」

「どうにか間に合いそうだ

 武具も今、職人達が急ピッチで作成している

 そっちはどうだ?」

「ああ

 騎兵は何とかなりそうだが…

 歩兵はまだまだだな」

「そうか

 何とかならんか?」

「そうだな

 訓練は移動中も続ける

 それでどうにかしよう」


魔王城に向かう間に、どうにか魔物を倒して鍛える。

それで歩兵達も、何とか訓練しようという計画だ。

武器の訓練だけ、訓練場で行う事にする。

しかしそれでも、武器が出来上がるまでは訓練が出来ない。


やきもきしながら、ギルバートは訓練場で基礎の訓練を行う。

兵士達は身体強化と、魔力を使う訓練を行う。


「うわあああ」

「はあああ」

ガキン!


しかしすぐに魔力切れで、兵士達はその場に座り込む。


「はあ、はあ…」

「うう…

 頭が…」


「はあ…

 やはり魔力切れか

 暫く休んでいろ」

「はい…」


兵士達を休ませると、ギルバートは騎兵達の訓練を見に行く。

そこでは魔力切れは無く、身体強化を使った訓練が続いている。


「せああああ」

「甘い!」


騎兵ともなると、身体強化の訓練もこなしている。

騎士になれないのは、実績と教養の差である。

だから彼等は、オーガと戦えるぐらいの実力は身に着けている。


「どうですか?

 毎日これぐらいは鍛えております」

「ああ

 子爵に任せて正解だったよ」

「はははは

 そう言っていただけるとありがたい」


騎兵達のほとんどが、子爵の管轄となっていた。

子爵は叙爵や将軍の座は断っていたが、騎兵の面倒は見ていた。

生来の生真面目な性格が、騎兵達を見捨てる事が出来ないのだ。

それで毎日の様に来ては、彼等の訓練も指導していた。


「しかし子爵

 今日も討伐に出たのでは?」

「ああ

 あそこの魔獣は部下に任せました

 もう、ワシが居なくても出来ますからな」

「そうですか…」


ギルバートだと心配して、こっそりと様子を見に行くだろう。

しかし子爵は、部下を信じて全面的に任せる。

この辺が子爵が、将軍に向いていると言われる所以だ。

まあ、本人はそんな器では無いと固辞していたが。


「それで?

 殿下の方はどうです?」

「ああ

 また魔力切れだ」

「まあ、それは仕方が無いでしょう

 元々王国の方は、魔力を使う機会が少ないんでしょう?」

「ああ

 そうだな…」


帝国では元々、魔力の多い者が産まれる。

それに加えて、生活環境が厳しいので、魔力を使う機会が多いのだ。

火を付ける魔道具や魔石も無いので、苦心して魔法で火を着ける。

子供の頃からそんな生活をしているので、自然と魔法を使う機会が多くなっていた。


「ワシ等は子供の頃から、簡単な魔法を使う機会が多いからのう」

「魔石とか無いんでしたよね」

「いや、あるにはあるんじゃが…

 数が少ないからのう

 結局足りない所は、何とか魔法で凌ぐしかない」

「そうですね…」


王国の場合は、魔石が無い頃は道具で火を着けていた。

それでも簡単に着かないので、結局は火を絶やさない工夫が必要だった。

魔物が現れる様になって、魔石が手に入る様になった。

それだけは、魔物が歓迎される事だった。


「魔物が現れた事で、王国も魔石を手にする事が出来ました

 それまでは帝国から、戦後の補償としてもらった魔石しかありませんでしたからね」

「ああ

 王国ではそれで…」

「ええ

 戦前に帝国で集めていた、魔石が入りましたので」

「そうですね

 砂漠では少ないですが、カザンや他の地域で魔物は狩れていましたからね」

「カザンですか?」

「ええ

 以前は多かったんですよ」


子爵は魔力災害が起きる前に、魔物が多く湧いていた事を話す。

それはギルバートにとっては、予想外な事だった。


「あそこがまだ緑が多かった頃に、ゴブリンやコボルトが多く湧いていたんですよ」

「あの森がですか?」

「ええ

 魔力災害でああなったと…

 あれ?

 殿下もアーネスト殿に聞かされましたよね?」

「あ…

 ええっと…」


ギルバートは視線を逸らすが、子爵はジト目で見ていた。


「それで…」

「ああ

 緑が多かったからでしょうな

 あそこは狩場でしたから」

「しかしゴブリンやコボルトでは…」

「ええ

 ですから魔石を集めるのも一苦労だったらしいですよ

 それでも魔物が多かったですから」

「ふうん…」


ギルバートはそう言いながら、何かあった様な気がした。

それで暫く考えていて、ようやく思い出す。


「あ!

 魔王の城か」

「え?」

「ほら

 竜の顎山脈に魔王の城があって…」

「ああ、なるほど

 それで魔物が多かったんですね」

「ええ

 まさかあそこに魔王の城があったなんて、当時は分からなかったでしょうね」

「そうですね

 確かにあそこは、元は獣人の住処でしたからね」

「獣人?」

「ええ」


「まだ獣人が多く住んでいた頃、あそこに獣人の国があった筈です」

「え?

 まさかそこに、黒い狼の様な獣人は居ましたか?」

「よく知っていますね

 さっきは魔力災害も忘れていたのに…」

「それはもう、忘れてください」


しかし子爵に話は、重要な意味を持っていた。

そこに黒い狼の様な獣人が居たのなら、アモンの可能性が高い。


「それで…

 その獣人は?」

「ああ

 確かその獣人の国の王で、滅法強かったらしいですよ

 何でも腕っ節で王位を決めるらしくて、50年近く国王を務めたとか…」

「へえ…」

「しかし最後は、我が帝国の騎士と戦って、敢え無く最期を迎えたとか…」

「そうですか」


「しかし殿下は、どうして獣人の王の事を?」

「それはアモンが…

 魔王が黒い狼の様な魔物だったからです」

「魔王が?

 まさか!」

「ええ

 その可能性が…」

「あり得ないです

 今から100年以上昔ですよ

 それに初代皇帝に負けて、あの地を去ったとか…」

「そうなんですか?

 しかし彼は、人間に恨みを抱いている筈

 そうなると、違う魔物なのかな?」

「でしょうな

 生きていたら、とうに寿命を迎えていますよ?」

「そうですか…」


ギルバートは魔王が、その獣人の国王だと思っていた。

しかし子爵の話が本当なら、その国王は何処かへさっているし、とっくに寿命を迎えている。

もしかしたら、その国王の息子か孫かも知れない。

そう思いながら、ギルバートは子爵の話を聞いていた。


「初代皇帝が、建国する前に

 その魔獣の王国と戦いました

 それで獣人の国と、友好的な関係になったんですが…」

「ですが?」

「ええ

 その後に貴族が攻め込んで、勝手に奴隷狩りを始めまして…

 それで獣人達も、散り散りに逃げまして」

「それはまた…」


「皇帝は友好的にしてたんですよ

 それを皇帝を亡き者にして、貴族達が勝手な事を…」

「それはもしかして…」

「皇帝を亡き者にした、貴族の生き残りです」

「はあ…

 昔からそうだったんですね」

「お恥ずかしい限りです」


勿論、公爵や子爵の様なまともな貴族も居る。

しかし魔導王国の流れを組む貴族には、奴隷制や選民思想がしっかりと受け継がれていた。

そこで労働力や奴隷を求めて、貴族達が獣人の王国を攻めたのだ。


「まあ、王国にもそんな貴族は居ますからね…」

「それはでも、少数でしょう?」

「いいえ

 子爵が会ってないだけで、王国にも居ますよ

 例えば然る公爵は、国王が亡くなられた隙に国王を僭称しましてね

 好き勝手やってくれましたよ」

「それはまた…」

「ええ

 私も奴等に、危うく殺されるところでした」

「殿下がですか?」

「ええ

 私が病に罹っていたでしょう?」

「ああ、なるほど

 確かにあれでは…」

「ええ」


子爵もギルバートが、負の魔力に侵されていたのは知っている。

それで力を失い、半ば意識を失っていた。

そんな状態では、いくらオーガでも軽々と屠るギルバートでも、戦う事は出来ないだろう。


「それでその公爵は?」

「バルトフェルド様が、アーネストと一緒に倒しました」

「ああ

 それではもう」

「ええ」


しかし子爵は、ここにもそんな貴族が居たのかと思った。


「王都には今居ませんが、他の領地にはまだ貴族が居ます

 その中には、やはり選民思想や奴隷制を認める者も居ます」

「そうですか…」

「まあ

 何処へ行っても、碌でも無い人間は居るって事ですね

 ですから女神が人間に失望するのも、あながち間違いじゃあ無いんですよね」

「殿下も…

 そう思われていますか?」

「うーん…」


ギルバートは少し考えて、それから答えを出す。


「確かに駄目な奴は居ます

 だからと言って滅ぼすのは…」

「そうですよね」

「悪い人間は一部です

 それで全ての人間を滅ぼすなんて、女神は極端なんですよ」


ギルバートはそう言って、憤慨して剣を振るう。


「こうなれば、女神のゲームに打ち勝って…」

「勝算は?」

「無いですね」

「…」


「でも、このままおめおめと敗ける気はしません」

「そうですよね」


ギルバートは子爵と話した後、再び訓練場を移動する。

へばっていた兵士達も、魔力が回復して動き始めていた。

元の魔力が少ないので、回復するのも早いのだ。


「おお

 もう動けるか?」

「ええ」

「しかし身体強化を意識してると…」

「すぐに魔力切れで…

 うう…」

「無理はするなよ

 繰り返し使う事で効率も良くなるし、魔力量も上がるんだ」

「はい」


その後もギルバートは、兵士達の訓練を見守る。

3日目からは、新しい武器も支給された。

それを使った実戦形式の訓練も、訓練の一環として行われる。

ただし身体強化は危険なので、魔力切れの時に行われる。

頭痛で苦しい状態でも、戦える様に訓練する事にもなる。

ギルバートはそうやって、兵士達に厳しい訓練を施した。


そうして1週間が経ち、いよいよ出発の準備が整う。

新しい年を迎えて7日目の朝に、王都の東門には多くの兵士が集まる。

ギルバートを代表とした護衛の兵士達。

彼等は護衛騎士として新たに24名が編成されていた。


それから騎兵隊が48名、隊長を2名加えて50名で集まる。

その後方に歩兵達が、馬車を用意して50名集まる。

総勢124名の兵士達が、東門に集まっていた。


兵士以外にはギルバートとアーネスト子爵が先頭に立つ。

それから帝国のマリアーナ皇女が、神聖魔法の回復役として同行する。

それにイーセリアが、周囲を魔物から守る為に同行する。

今回もセリアの、精霊の加護が期待されていた。


「どうやら集まった様だな」

「ああ

 直前で辞退する者も居ないみたいだ」

「それはそうだろう

 今は王国の危機なんだ

 辞退する気にはなれんさ」

「そうだな…」


王国の危機と言うが、正確には人間の存続の危機だろう。

女神は人間を滅ぼすと宣言している。

それが本当なら、何処へ逃げてもやがて魔物に襲われる。

それなら今こそ、こうして抗ってみせた方がマシだ。


「カザンの街には連絡は?」

「ああ

 協力を要請している

 しかし戦闘は…」

「ああ

 それは仕方が無いさ

 あっちも魔物の被害が出ている

 自領を守るだけで手一杯だろう」


カザンの街からも、兵士が幾らか同行する。

しかしそれは、あくまでも資材の運搬や素材の回収だけだ。

実際の戦闘は、王都の軍が行う手筈になっている。

その後の魔物の遺骸の回収が、彼等の主な役割になる。


恐らく手強い魔物が用意されているだろう。

それだけ得られる素材は、未知の素材を期待出来る。

それが加工出来たなら、今後の戦いも有利に進めれるだろう。


「あの時のドラゴン…」

「ん?」

「いや、竜の背骨山脈で戦った魔物が居ただろ?」

「ああ」

「あの時のドラゴンって居ただろ

 あの素材があれば…」

「それは仕方が無いだろう

 女神もそれを警戒して、死んだらすぐに消え去っていただろ」

「ああ…」


ハイオークやオーガの死体もだが、ドラゴンの死体もすぐに消え去っていた。

どうやらあの場所では、死んだ魔物や人間は、ただちに死体が分解される様だった。

それがどうなっているかは分からないが、兵士達の死体も消え失せていた。

残されていたのは、彼等が身に着けていた物だけだった。


「竜の瞳にも、同じ様な仕掛けがあるのかな?」

「そうだな

 あそこにも端末があるって話だったな」

「それじゃあ魔物を生み出す物も…」

「ああ

 可能性は高い」


それを聞いて、ギルバートはぶるりと身体を震わす。

珍しく恐ろしいのかと、アーネストはギルバートの顔を覗き込む。

しかしそこには、戦いを期待した嬉しそうな顔が見られた。

アーネストは思わず、大きく溜息を吐いた。


「はあ…

 あのなあ、戦いが目的じゃあ無いぞ」

「え?

 でもアモンを…」

「倒さなくて済むなら、それに越した事は無い

 あくまでも女神の居場所を知る為だ」

「そ、そうか…」


明らかにギルバートは、失望した様にしょんぼりとする。

その様子を見ながら、アーネストはもう一度溜息を吐くのであった。

まだまだ続きます。

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